第23話「エンド・オブ・ディエンド」

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 ディエンドの世界後編。海東大樹の過去が明かされ、何故「お宝」に執着するようになったのかも、それとなく明かされます。


 ただし、海東の過去に関する描写は回想こそ充実していましたが、心情描写はあまり褒められたものではなく、殆どが士の長台詞に頼っており、その為、士自身も妙に早口になってしまい、何となく違和感がありました。台詞自体も説明台詞に終始しており、どうも登場人物に感情を感じられません。

 士に関して言えば、もはや「通りすがりの仮面ライダーだ!覚えておけ!」も何もあったものではなく、完全にお約束の数々はスポイルされており、私のようにパターンに納得してしまうような人間は、「何だかなぁ」という感想を持ってしまいます。


 また、この世界の特徴である「飼殺しの人間」という描写も、前編では折角充実していたのに、今回は殆ど見られないというのもマイナス。結局洗脳されて微笑んでいるのはユウスケと夏海だけでした。この為、フォーティーンの底知れない不気味さもスポイルされ、しかもコンプリートフォームにあっさり倒される(その上ディエンドの活躍の場はない)という展開も手伝って、何とも弱々しいボスになってしまったのでした。


 しかしながら、純一と海東の関係性を示す数々のシーンは、なかなか充実しており、特に純一の笑顔が象徴的に描かれたのは特筆に値します。結局、純一は洗脳を受けていたわけではなく、従順な笑顔自体も芝居だったことが判明するのですが、なるほど、それで目が笑っていないのかと納得させられます。即ち、笑顔の演技をしているという演技をしていたわけで、さすがは黒田さんです。

 純一自体がこれからどういう行動をとるのかは、視聴者の想像に任せられることになりましたが、やや希望を持たせる展開になっており、しかも純一を「完全には取り戻せなかった」ことで、海東の旅も続くという幕引きは巧くまとまっていると評価出来るでしょう。


 では、見所をまとめてみましたので、ご覧ください。

 前回からの続き。変身の解けた海東を、なおも襲うランス=慎。そして、それを止めようとするラルク=春香。

海東、仮面ライダーラルク、仮面ライダーランス

 「MISSING ACE」を未見なのでよく分かりませんが、春香とほぼ同一人物である夏美は、「ブレイド」らしく裏切りと虚栄心の横溢する世界のキャラクターでしたから、今回の行動は「ディケイド」の雰囲気に迎合したものだと言うことも可能でしょう。

 海東への攻撃の手を止めた慎は、純一が最高のライダーであったこと、そして、純一がフォーティーンの手先になったのは、海東の所為だと吐き捨てます。これは前回の繰り返しであり、おさらいの意味合いがあると思います。

 そして、またも住民達に追われて、逃走を余儀なくされる士達の図も前回と同様...。


 逃走は士&海東組と春香&慎組の二手に分かれており、まず士&海東組の方が描かれます。


 士の元に「ユウスケがさらわれた」と慌てて夏海がやって来ます。海東は、


「恐らく小野寺君は、フォーティーンの意のままになるよう処置されている」


と士達に説明します。さらっと流してしまいそうですが、海東がフォーティーンの元で働いていた過去は、前回に慎のセリフとしては登場するものの、詳しくはこの後に描かれる為、この時点でのこのセリフは、「海東、やけに詳しいな」という感想を持つのが正解の筈。しかしながら、前回のユウスケの洗脳(?)シーンが鮮烈だった為、そういう「引っ掛かり」はあまり機能していません。


 さらにそこへ純一も登場します。


「会いたかったよ。大樹」


 遂に、兄弟の邂逅です。

純一

 相変わらず、素晴らしい笑顔ですが、どことなく不気味な感覚が実に秀逸。


 一方、春香と慎は別ルートで逃走中。

春香、慎

「おい春香!お前何考えてんだよ、大樹を庇うなんて」

「あの人は、昔の海東大樹じゃない。彼が、純一を元に戻したいって言うなら、その気持ちに賭けてみたいの。それに...」

「それに?何だよ」

「あの人の目、似てるの。純一に」

「またそれか。兄弟だから似るの当たり前だろ!このアホ女!」


 目が似ているという発言は、前回、士に対しても使っていましたが、慎の反応を見る限り、頻繁にこのフレーズを使っているのでしょう。ややステロタイプな味付けですが、まぁ違和感はありません。これがちゃんと後の行動に繋がっていますし。


 再度、士と海東サイドに場面は戻り、純一は昔と立場が入れ替わったことを皮肉ります。ここより、海東の過去が明かされる重要な回想シーンの始まりです。今回のメインは、この回想シーンだと言っても過言ではありません。


 海東はかつてフォーティーンの元で、ローチ達とともに行動していました。

海東

 ある日、3人のライダー達(つまり純一、春香、慎)を追っていた海東は、その逃走を許してしまいます。直後、海東の元に純一が現れ、


「この世界の平和は、フォーティーン率いるローチ達が作ったものだ。お前は本当にそれでいいのか?」


と問いかけます。

純一

「違うよ兄さん。僕は奴等の力を利用しているんだ。それでこの世界の秩序が保たれているのなら、いいじゃないか。それに、ローチ達は人々を傷つけてるわけじゃない。あくまでも管理しているだけだ。少しでも犯罪傾向のある者を捕まえて、特別施設でしっかり立ち直らせる。そう、僕の作った教育プログラムで。出来れば兄さんにも協力して欲しいんだ。仮面ライダーを捕まえる為にね」


と答える海東でしたが、その返答がどう心に響いたか、純一は何も言わず去っていきます。


 回想シーンでの純一は終始険しい表情を浮かべており、現在の笑顔一辺倒の純一とは一線を画しています。


 ここで、次の回想シーンに入る前に、ちょっと脱線したいと思います。

 今回を最後まで視聴すると、純一の行動の真意が分かりますが、前述の純一による海東への問いかけは、この真意と微妙に食い違っているように見えます。

 結果的に、純一は自らがフォーティーンとなるべく、フォーティーンを利用していたのですが、海東への問いかけ自体は、字面からの印象では「圧倒的な力による平和」に対する抵抗が見られます。

 逆に、純一の真意に基づいて、この発言を解釈すると、「このままフォーティーンに操られたままでいいのか?我々兄弟で世界を支配しないか?」といった意味に取ることが出来ます。

 この回想シーンを視聴する時点では、勿論純一の真意は不明ですから、視聴者の解釈は自ずと前者になります。しかし、真意を知った後で、後から思い出して、「ああ、なるほど。そういう意味で言ったのか」と言える程の印象がなく、その点残念ではあります。


 本編に話を戻します。回想シーンはさらに別の日の描写に。


 ある日、海東は仮面ライダーの所在を突き留め、ダークローチの大群にそれを襲撃させます。容赦ない襲撃を受けたグレイブは変身が解け、純一の姿に。

ダークローチ、純一

 海東は、自分の兄がライダーだったことに驚きを隠せません。

 純一はダークローチに捕縛されつつも、春香と慎に逃げるように言い、自分はローチ達の手に落ちてしまいます。


 海東はフォーティーンの元へと報告に戻り、純一に「教育プログラム」を受けさせれば良いと提案します。この教育プログラムは海東が考案したものなのですが、フォーティーンは海東にとって衝撃的な事実を話し始めます。


「お前は私の忠実な部下だ。そろそろ本当の事を知ってもいいだろう」

「本当の事?」


 フォーティーンが手渡した携帯には、純一が「処置」を施される様子が映し出されていました。

純一

 ユウスケが受けた、脳内へ虫状の生物を寄生させて「洗脳」する処置です。


「これは?」

「特別施設などというものは存在していない。そう、お前の教育プログラムなど機能していないということだ。お前の兄は自分の意志を失い、私の意のままになる」


 フォーティーンは教育プログラムの名の影で、この洗脳処置を常態化していたのでした。


「そんな、嘘だ!やめろ!やめてくれ!」


 海東はその日、フォーティーンの元から逃亡しました。


 ここでまたちょっと脱線。

 また純一の真意の話になりますが、純一は自らの意志でフォーティーンに従っていたわけで、この洗脳処置が今一つ噛み合いません。しかも、ライダーとして働いていたのは、フォーティーンの意志を体現する為であり...。この洗脳処置のシーンはフェイクなのでしょうか。海東にこの処置を見せたのは、真実を知っても自分に付き従う筈だというフォーティーンの自信だったのか。

 しかし、海東は自分の信じていた理想郷の正体を見るにつけ、純一の真意を知ることなくフォーティーンの元を離れて行ったのですから、海東兄弟の悲劇の深さは言い知れないものがあります。


 このように、回想シーンの充実度は高いのですが、フォーティーンがこの世界に現れた経緯、海東がエリア管理委員会に入った経緯、純一達が仮面ライダーの力を手に入れた経緯、それら全てが抜け落ちている。これが今回最大の欠点だと思います。今一つこの世界の底が浅く感じられるのは、その辺りに原因があるようです。


 さて、当時を回想し、純一は、


「私はお前に感謝しているんだ。私は、お前のおかげで真っ当な人間になれた。今度は、私がお前を救ってあげよう。聞くところによると、お前も仮面ライダーの力を手に入れたらしいね。試してあげよう。お前の力を」


と言うと、いきなりグレイブに変身して海東にパンチを見舞います。

仮面ライダーグレイブと海東

「どうした?変身しないのか?」

「僕の力は、兄さんと戦う為にあるんじゃない!兄さんを、救うためだ!」

「いいセリフだ。感動的だな。だが無意味だ」


 セリフだけでも不気味な笑顔を浮かべているのが分かる素晴らしさ。それに対する海東の熱さもなかなかです。元々直線的な性格を有する海東ですが、今回はそこに「情熱」のようなものが宿っています。

 そこへ、ダークローチによってユウスケが連れて来られ、その場に打ち捨てられるように転がされます。ネガの世界でもそうでしたが、この世界でもユウスケの扱いは随分酷いものとなっています。


 士と海東は、ダークローチの大群を迎撃すべく変身。ダークローチとの乱戦に突入していきますが、その隙に夏海が連れ去られてしまいます。

 すぐに追いかけようとする士ですが、グレイブが手をかざすと爆発が起こり、いつの間にか純一達は姿を消してしまいます。

仮面ライダーグレイブ

 この能力は仮面ライダーのものを超えている印象であり、既に純一は、フォーティーンに近い存在になりつつあったのかも知れません。


 光写真館。ユウスケはキバーラに対して異様なまでに優しく、洗脳の効果が顕著に表れています。一方で栄次郎は、夏海がさらわれたと聞いて慌てふためいていました。士は「必ず何とかする」と栄次郎に約束します。夏海に対する士の思いも、やや変化しているようですね。


 同じ頃、顛末を報告しに来た純一に、フォーティーンは、


「まさか海東大樹を取り逃がすとは。仮面ライダーの力を手に入れた奴は、お前の手に余るということか」


と少々の皮肉を交えた言い回し。


「いえ。実はもう一匹、妙なライダーの邪魔が入りまして」

「何者だ?」

「分かりません。恐らくは大樹の友かと」

「友?私の知る海東大樹は、友を作るタイプではなかったが...」


 現在でも、海東は友を作るタイプではありません。士とは「友」というより腐れ縁に近く、また、共闘は偶然の産物となる場合が殆どです。ただし、今回は士の側からグッと海東に歩み寄る姿勢を見ることが出来ます。


 「友」という言葉を茶化すかのように、士も遂に指名手配に。

海東と士、指名手配

 指名手配自体は、目立ちたがり屋の性分なのか、士はまんざらではなさそうですが、


「しかし、海東の奴と一緒とはなぁ、気に食わん」


との感想を漏らします。そこに現れた海東が、


「それは僕の言うセリフだ」


と応酬。ここからは、やや早口の士が、しっかりと海東というキャラクターの根底に流れる熱さを代弁します。


「今までお前のことを、ただのお宝マニアのコソ泥だと思っていたが、昔は信じるものがあったんだな。だがお前は、その信じるものに裏切られた」

「何が言いたいのかな?」

「お前は自分で自分のことを信じることが出来ない。だからお宝を集めることで、そんな自分を誤魔化そうとしていた...違うか」


 苛立つ海東。工事現場のフェンスを蹴り倒したりします。


「分かったような口を利かないでくれないか!?君に何が分かる!」

「分かるさ!お前は兄貴を助けることで自分を取り戻そうとしている。まぁ、それはそれでいい。俺も夏みかんを助けたい。この際だ。一緒に手を組もう」


 士の差し出した手を払いのける海東。


「断る。僕の問題は、僕の力で解決する!」

「一緒に映ってる仲だ。でかいプリクラみたいじゃないか、な」


 え?プリクラ?

 士のセンスっぽくない珍妙な例えですねぇ。これはキャラに合わないなぁ...。


 なお、その会話は、春香と慎も聞いており...って、海東といい春香と慎といい、どれだけ偶然登場するのか(笑)。

 で、話を聞いていた春香と慎も、海東に手を貸すといいます。春香の「純一の目に似ている」が、ここに繋がって来るわけです。4人で力を合わせれば、フォーティーンを倒せるかもしれないという話になるのですが...。

士、春香、海東、慎

「迷惑だ。やめてくれないか」


と海東は一言。その後、春香と慎を華麗なアクションで倒し、士に殴りかかる始末。海東が友を作るタイプではないということを、端的に示しているシーンですが、戸谷さんの長い脚で繰り出させるキックが美しく、不思議と厭味がありません。

 士に繰り出したパンチは、軽く阻まれてしまいます。


「俺はお前を信じている。何故なら、お前の弱さを知ったからだ」


と、割とクサめなセリフを吐きつつ、無理やり海東の手を取る士。

士と海東

「俺とお前が手を組めば、お前はお前自身を信じることが出来る。その気持ちは、お前の好きなお宝だ」


 このセリフは、やや説得力に欠けます。何で士と組むことで、海東が自分自身を信じられるようになるんだろうか?

 基本的に誰も信じない士(これは今回のストーリーを回す為の方便にも見えますが...)が海東を信じられるのだから、自分自身をもっと信じられるだろうと言っている...そういうことでしょうか。


 さて、ややすっきりしない感がなくもないですが、士は、夏海と海東の交換を純一に要求し、その場へのフォーティーンの立ち会いを要求します。


「なるほど、面白い」

「罠です」

「だから面白いのだ」


 フォーティーンの余裕綽々な様子は、ずっしりとした悪役風情を感じさせます。その割には、後の扱いが少々軽いのですが(笑)。


 約束の場所では、士と海東が待っていました。海東は後ろ手に縛られており、その腕を縛ったロープは緩く、すぐに解けるようになっています。海東が夏海との交換になったら、士と海東が2人で一気にフォーティーンを攻撃する算段です。

 士はこの機に乗じ、


「ところで、訊きたいことがある」


と海東に尋ねます。


「何だ?」

「お前の過去は大体分かった。次は俺の番だ。以前、俺の過去を知っているようなことを言ったな。教えろ」

「いいだろう。君は...」


 ここで中断。いい所で中断するのは、まぁお約束ですね。


「士さ~ん!」


 夏海が純一に連れられてやって来ました。「士君」でなく「士さん」なのが笑えます。元々丁寧語で喋るキャラクターなので、敬称を変えるくらいしかなかったんですね。可笑しいです。約束通り、フォーティーンも同行しています。

フォーティーン、夏海、純一

 いよいよ海東との交換になり、夏海とすれ違います。すれ違いざま、海東がロープを解いて変身しようとすると、何と夏海に掴みかかられるのでした。

海東と夏海

 夏海はフォーティーンの意のままであり、浅薄な作戦も読まれていました。しかし、海東は夏海を振りほどいて変身を果たします。

海東

 そこに、春香と慎も駆け付けて変身!

春香、慎

 更に、士も変身します。

士

 そして、


「ケリを付けてあげましょう。大樹」


と、純一も変身!

純一

 これでこの世界に現在存在しているライダーが全員揃い、大乱戦が開始されます。

仮面ライダーグレイブ、仮面ライダーディケイド、仮面ライダーディエンド

 この乱戦は、「MISSING ACE」のライダー達のデザインが似通っているにも関わらず、アクションの完成度が高く、敵味方の描き分けも秀逸です。

 そして、士が純一を抑え込んでいる間に、海東はフォーティーンを狙います。フォーティーンは臆することもなく、その巨大な正体を現します。士と海東が立ち向かうものの、その巨大さ故、一向に歯が立ちません。

フォーティーン

 「MISSING ACE」で使用されたCGモデルを流用しているものと思われますが、もはや特撮TVドラマという枠を超えた、素晴らしい完成度を誇る画面だと評価出来ます。巨大缶を感じさせるアングルも素晴らしい。


「愚かな人間共!私は、この世界に平和をもたらしてやったのに!」


と嘯くフォーティーン。その言葉に対し海東は、


「違う!お前が作ったのは、地獄だ!」


と応えます。士も、


「その通りだ。お前は人間達の目を閉じ、耳を塞ぎ、心を消した!人は自分の意志で生きなければならない。どんな世界でも、その意志は変えない!」


と熱く語るのですが、どうも空回り感が否めず。井上さんの演技・言い回しはとても良いのですが、台詞自体がナレーションのような文章なので、生きた感じがしないのです。

 ここで士は、ケータッチでコンプリートフォームに変身します。

フォーティーン VS 仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム、仮面ライダーディエンド

 例のケータッチを装着するシーンは、とうとうあからさまなカット割りで処理されてしまいました。コンプリートフォーム、現場では使いあぐねている感じなのか、どうにも燃える要素に乏しいのは残念なところです。


 選抜されたのは、何と装甲響鬼。「HIBIKI KAMEN RIDE ARMED」で呼び出します。

仮面ライダー装甲響鬼と仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム

 コンプリートフォームは短期決戦がお約束なので、全く苦戦することなく、「FINAL ATTACK RIDE」でフォーティーンを粉砕します。

FINAL ATTACK RIDE

 フォーティーンが滅びることで、ダークローチ達も消滅し、夏海も脳内の寄生虫が消えて元に戻ります。ここでの夏海の様子がポイント。寄生虫が消えた途端、寄生されていた間の記憶を失います。この様子を覚えておいて下さい。


 さて、元に戻ったであろう純一の元へ、春香と慎が駆け寄りますが、2人は純一の一撃を受けます。

仮面ライダーディエンド、仮面ライダーグレイブ、仮面ライダーラルク、仮面ライダーランス

 士はそれを見て、


「やっぱりな」


と呟きます。ここから先は、キャラクターのセリフの応酬によって純一の正体が暴かれていく展開なので、セリフをそのまま追ってみましょう。


純一「馬鹿め。俺は自分の意志で動いていた。昔から、お前(海東)と同じだったんだ。自分の意志でフォーティーンの元で働いていた」

春香「どういうことなの?純一!あなたは、私達の仲間だったじゃない!」

純一「確かにな。だが、それは反乱分子を誘き出す為の、作戦に過ぎなかった」

慎「作戦!?どういうことだ!」

純一「仮面ライダーに味方をする者があれば、そいつはこの世界の反乱分子ということになる。俺は、そんな奴等を誘き寄せる為の、正に餌を演じていたんだよ」

海東「そんな...兄さんが...」

純一「この俺が、第2のフォーティーンとなり、この世界を支配する!」

海東「嘘だ...嘘だ!」


 ここで、先程の夏海の様子を思い出してみましょう。

 夏海の場合は、寄生虫の消滅と共にフォーティーンの影響下にあった間の記憶を失っていますが、純一の場合は、フォーティーンの影響下にあったと劇中人物が考えている間の記憶が完璧に残っています。これはつまり、最初から洗脳なんかされていなかったということ、即ち、例の洗脳シーンは確実にフェイクだったということになるわけです。


 さて、「取り戻す」筈の純一が元々「取り戻せない」ものだったことを知り、やや混乱気味になった海東は、純一に戦いを挑みます。

 士は、怒りに燃えて純一を攻撃しようとする慎と春香を制止し、海東と純一の戦いを見守るよう告げます。


 壮絶な兄弟対決!アクションのテンポが高く、互いの攻撃の飛び交う様子は興奮モノです。

仮面ライダーディエンド VS 仮面ライダーグレイブ

 最終的には海東が純一の隙を突いて優位に立つこととなりましたが、海東は純一を撃てませんでした。逆に、撃てない海東に剣を振り下ろす純一でしたが...純一も海東を斬れませんでした。

海東と純一

「甘いな...大樹。何故攻撃を止めた?」

「兄さんだって」

「後悔するぞ。俺を倒さなかったことを」


 この時点でも、海東兄弟は互いの主義主張が相容れない状態なのですが、実は互いの事をよく理解しているように見えます。現実の兄弟も、大多数は程度こそあれ、そんな感じではないかと、私は思います。


「お前はフォーティーンにはなれない。海東大樹は今、自分を信じ、自分の意志で動いている。そんな弟をお前は倒せなかった。それは、お前が人間の中の自由な意志を認めているからだ」


と、士がこの状況を補完するような台詞を口にしますが、これは蛇足な気がします。例の「チャラ~♪」が鳴り響くタイミングとしても、かなり中途半端です。この台詞、ない方が深みのあるシーンになったと思うんですけどね。

 この後、海東の元を去る純一が、笑顔を見せることはなかったという、実に秀逸な演出が見られるだけあって、やや残念です。

純一

 この後も、純一を見送った士がダメ押し的な台詞を披露します。


「お前は一番大事なお宝をこの世界で手に入れた。もう盗みをしなくても済むな」

「やめてくれないか。そういうそれっぽいこと言うの」


 この海東の感想が、そのまま私の感想ですけど、そこまで視聴者の感情とシンクロするよう計算されていたのならば、素直に感服します。


「おい、どこへ行く?」

「決まってるさ。新しいお宝を探しに」

海東

 士はいつもの海東に戻ったのを見届けて微笑みます。

士

 士が光写真館に帰ると、ユウスケも元に戻っており、しかもキバーラに優しくなくなっていました。極端ですが、これはこれで可笑しい。


 そして、次はまさかのシンケンジャーの世界。これは見モノです。ライダーファンの中にはアンチ戦隊の方もおられることと思いますが、そもそも元祖戦隊の「ゴレンジャー」が複数ライダーという発想から生まれたものですから、30数年を経て、遂に邂逅を果たすという、感慨深い瞬間なのです。好き嫌いに関わらず、とにかく見ましょう(笑)。

次はシンケンジャーの世界

「ディケイド、聞こえるぞお前の悲鳴が。次の世界は...」


と、せせら笑う鳴滝。

鳴滝

 士の悲鳴が聞こえることはないと思いますが、大体仮面ライダーそのものが存在しない世界ですから、さぞかし驚きはすることでしょう。色々と楽しみは尽きません。