Mission 41「怪盗ピンクバスター!」

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 早乙女レイカ=怪盗ピンクバスターこと、新川優愛さんの魅力が素晴らしかった一編。

 メサイアカードに関する「おさらい」も行われ、4クール目突入の段取りはなかなか手際も良く。しかし、やはりここに来て妙にバラエティ編の体裁を強調してきた辺り、何となくとっ散らかった印象も拭えなかったりします。

 前回は、割とメインキャラクターのコアな部分に踏み入る作劇だったのに対し、その前と今回は、ゲストがストーリーの全てを握っているという構成でした。これが意味する事は、「ゴーバスターズ」のキャラクターに関するドラマは語り尽くされてしまった...という事なのかも知れません。

 勿論、ヴァグラスはなおも暗躍を進めているし、陣の危機的状況は進行中だし、ヒロム達にしても、肉親がもしかすると助かるかも知れない、あるいはヒロム達自身に何か秘密が...といった、「引き」を色々と散りばめているのですが、それらはクライマックスで一気に畳みかけるように繋げてくる可能性が高い。すると、残った「掘り下げ」がもう枯渇していて、ゲストの魅力を中心に据えた作劇にならざるを得ない...そんな感じが漂っています。

 その感覚から捉えれば、ギャバンも際だった魅力を持つ「ゲスト」であり、水木一郎さんもしかり。つまり、メサイアのシャットダウンが本当に「ゴーバスターズ」のクライマックスだったと言えるようです。

 この感覚に近いシリーズが、「超時空要塞マクロス」。当初の予定話数を消化するも、好評につき延長。事実上のクライマックスを迎えた後は、異様なまでの愛憎群像劇で強引に話数を稼いでいく事になり、これはこれで面白いのですが、何となく「祭りの後」感が漂っていました。

 「ゴーバスターズ」は当初より4クール契約の筈なので、「メサイアのシャットダウンが当初の最終話だった」などという話は全くないわけですが、あのタイミングでキャラクタードラマの終点を描いてしまった事は間違いないでしょう。本筋であるヴァグラスとの「諜報戦」はあの時点で終了し、現在は同一の世界観の上で、別の話を展開しているような感覚すらあります。

 もう何度も言及していますが、これは黎明期戦隊シリーズにおける王道としての「バラエティ編」を踏襲したものであり、いわば、「ゴーバスターズ」は30話かけて黎明期戦隊の1〜2話に当たる「設定編」をやったわけですね。私は「ライブマン」辺りから、一年間かけて「設定編」をやり始めた印象があります。これは、換言すれば「刑事ドラマ」から「連続ドラマ」に移行したという事で、この連続ドラマ志向は「ジェットマン」で一気に開花し、いくつかの例外を挟みつつ、現在もこの傾向は続いていると思います。

 「ゴーバスターズ」は、当初の印象や硬派な設定からして、4クール全編を連続ドラマとして構築してくると思っていましたが、一旦その流れを断ってしまいました。その成否はシリーズ終了後に評価されてしかるべきですが、私としては現時点でやや不満です。

 何故か。

 それは、圧倒的に不徹底だから。

 「バラエティ編」の肝は、完成されたキャラクターをどう動かすと、勝手にキャラクターが転び始めるかにあると思います。懐古主義を批判されるのを承知で言えば、「ゴレンジャー」はもう全編が「バラエティ編」なのですが、どれもこれも面白い。それは、キャラクターが自由闊達に動き回っているからでしょう。「ゴーバスターズ」はどうか。ビジュアルやキャラクターの完成度という面では満足のいくポイントを稼いでいますが、何となく窮屈な印象があります。

 何故窮屈なのか。

 やはりそれは、圧倒的に不徹底だからです。

 ギャバン編を例にとれば、ギャバンが出てくる必然性が全くドラマで語られない。ただ存在する。舞台装置がないから、役者は一生懸命パントマイムやセリフで「場を表現」しながら、なおかつ自分の芝居をしなくちゃならない。

 ライオー編では、ライオーと他のバスターマシンの技術的関連性(例えばプロトタイプだとかそういう事)が一切ない。出自不明のガジェットを操るという「超展開」を、一生懸命エクスキューズの奔流で何とか繋げようとする。

 ヨーコの担任の先生は、教え子の頼みという事だけで、何故あんなにも危険な囮を演じられるのか、そして、特命部は一般人を作戦に利用する事について、何か有効なコンセンサスを取っていたのか、殆ど説明がない為に、コミカルなシチュエーションが空回りしている。

 空手少年には、エンジニアを目指しているという具体的な描写が殆どない為、あまりに達人オーラを発しているのを隠す事が出来ず(笑)、リュウジを動かして何とかエンジニアに結びつけようとしている。

 怪盗ピンクバスターには、何故怪盗稼業をしていたのか、義賊のポリシーの元になった出来事が何なのか、裕福な家庭環境の描写を含めての描写が皆無(!)なので、物凄く底の浅いキャラクターになってしまっている。アクションは素晴らしいものの、そのバックボーンが全くない為に、一体どういう出自で格闘技に長けるのか、全く不明。故に、ヒロムとの共闘も「燃え」はするものの、「納得」は出来ない。

 特に、今回のレイカに関するキャラクター性への不徹底は、もはや「謎」レベルでした。そもそもの「素材」の良さが際立っている為、ビジュアルの魅力は暴発気味なくらい徹底されていましたが、その存在感を担保するキャラクター造形が完全に抜け落ちています。

 こうした「怪盗モノ」は、劇中人物が正体を知らずとも、視聴者はそれを知っているという鉄則中の鉄則があり、そこをスポイルしてしまっては、「バラエティ編」ならではの「バラエティ感」が乏しくなってしまうわけです。「バラエティ感」は、完成された世界観の上で、別の作劇手法を大胆に拝借して、ある種の違和感から生まれる躍動感を得る事であり、今回はビジュアル面ではそれに成功しているものの、ドラマ面では成功しているとは言えないと思います。

 以前、はっきり「面白くない」等と言いましたが、やっぱりあまり面白くない。その理由は、上記の通りです。

 ちなみに、怪盗ピンクバスターは「カーレンジャー」のホワイトレーサーや、「アバレンジャー」のアバレピンクと同一線上にある、「主人公と同列には絶対並ばないが、主人公よりインパクトのあるコスプレヒロイン」の一種だと考えられます。

 ただ、先達二人のように、「ヒーローへの憧れからのコスプレ」でない辺りが新鮮。衣装の適度なパロディ感覚も秀逸な上、新川さんの美貌と上品さが素晴らしい為、ドラマ性を充実させて、もっともっと魅力的なキャラクターになって欲しかったですね。ヒロムに求愛している辺りも含めて、今後に活かせるキャラクターなので、実に実に惜しいと思います。

 次回はヨーコ編で、何となく懐古趣味的なヒロイン像を予感させますが...料理次第といった処で。