第7話「ニキニキ!拳法修行」

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 ここのところ、二回に一回のペースで展開されている、先輩ゲスト編。

 今回は、ゲキレッド・漢堂ジャンの登場です。「獣拳戦隊ゲキレンジャー」は、「ボウケンジャー」でやや王道への揺り戻しがあったのを受けてか、異色作として展開されたシリーズ。賛否両論(むしろ否定的な意見の方が多数派だったような...)あったようですが、私は往年のカンフー映画が好きだったのもあって、見事にハマった作品でした。

 基本的なストーリーは、これまた至って王道。

 他のメンバーに劣る実力を自覚したハカセとアイムが、ジャンに出会って修行を志願するという話で、ホントにただそれだけ。

 また、ゲキレンジャー関連のゴーカイオー強化パーツ(?)も登場せず、マーチャンダイジングの要請がほぼ皆無だったのも、やや寂しい印象でした。

 しかしながら、かなりの満足感を得られたのは、何故でしょう。

 続きでは、その辺りに触れてみたいと思います。


 満足感を得られたのは何故か。ズバリ、結論を言ってしまうと、このエピソードが素直な「獣拳戦隊ゲキレンジャー」の後日譚だったからでしょう。言うなれば、「ゲキレンジャー」に思い入れがあったか否かで、評価はガラッと変わります。勝手にそう断言してますが、その筈。

 まず、ゲキレッド=ジャンの扱いについて。

 これまで、マジレンジャー、デカレンジャーといった歴代ゲスト編がありましたが、マジレンジャーは「試す者」としての登場、デカレンジャーは「共に事件解決に動く者」として登場しました。ところが、ジャンは完全に傍観者であり、ハカセとアイムに戦いに関するアドバイスを授ける事もなく、単に「ゲキレンジャー」のテーマを語っただけに過ぎません。

 続いて、ストーリー展開について。

 普通に、ごく普通に、特撮TVドラマの一編として見た場合、ジャンの元でハカセとアイムが基礎的な拳法の形を習ったところで、あんなに強くなる筈はないんです。時間軸的にも、恐らくアイムがジャンに習ったのは、賞味2時間程度。ハカセに至ってはその半分以下だと思われます。普通に考えると、絶対に強くなる筈はありませんよね(笑)。

 いかがでしょうか。前述の二要素をざっと眺めても、これが説得力を持っているわけがない。

 でも、これが「ゲキレンジャー」なのです。

 「ゲキレンジャー」のテーマは、「高みを目指して学ぶ」ということ。これは、ジャンが直接ハカセとアイムに語りました。そして、「学ぶ」のは何も技術を学ぶのではなく、その精神状態を作り上げる事なのです。

 「ゲキレンジャー」とは、そういう物語でした。だから、メンタルなパワーアップが、フィジカルなパワーアップに繋がりそうにないと思ってしまった、つまり納得出来なかった視聴者にとっては、かなりとっつきにくい物語だったのだと思います。勿論、フィジカルなパワーアップを納得させるような展開もありましたが、それはむしろ敵側である臨獣拳に用意された展開でした。これが、「ゲキレンジャー」を異色作たらしめる所以ですね。

 というわけで、もうお分かりだと思いますが、今回はまんま「ゲキレンジャー」なわけですよ。だから、「ゲキレンジャー」にハマったならば、そのまま素直に楽しめたわけです。

 そして、なんと言っても、マスター・ジャンですよ。マスターですよ。大事な事だから、二度言いました(笑)。鈴木裕樹さん、当時のジャンの可愛らしさを残しつつ、マスターとしての貫禄を感じさせる、いい俳優さんになりましたよね〜。相変わらず細身ながらしなやかというか、秘めた力を感じさせる雰囲気は、さすがです。

 もう一人、忘れてならないのは、マスター・シャーフーの登場。ゴーカイジャーとは一切関わりませんでしたが、最後の最後に登場して、永井一郎さんの名調子を披露してくれました。マスターになったとはいえ、ジャンはシャーフーの愛弟子。シャーフーは着ぐるみキャラですが、師弟愛が透けて見える雰囲気が素晴らしいですね。心なしか、やや着ぐるみがくたびれていた感じもしましたが(笑)、それはそれで年月の流れを感じさせてくれた気がします。

 では、「ゲキレンジャー」に違和感を持っていた方にとっては、どうだったのか。

 確かに、ストーリー展開は主にメンタル面が重視されていたので、甘々だったかも知れません。しかし、その辺りを「ゴーカイジャー」流に補強していたのが良かったのではないでしょうか。

 補強要素を挙げてみると、「修行」というキーワードをハカセとアイムだけが担うのではなく、マーベラス、ジョー、ルカにも背負わせた点、ルカが男女のパワーの差を自覚している点、ハカセとアイムは、元々高いポテンシャルを秘めている事が感じられる点。

 「修行」をマーベラス、ジョー、ルカにも背負わせたというのは、マーベラスが船内で常に超重量級のブレスレットを着用している事、ジョーは剣の鍛錬を怠らない事、ルカは流れ星を見つける事で動体視力を養っている事。これらが「高みを目指している」事として描写され、「ゲキレンジャー」のテーマをフィジカル面から補強しています。

 ルカが男女のパワーの差を自覚しているというのは、前述の動体視力の話。ルカが男性陣にパワーで劣るのを自覚しているからこそ、テクニカルな面を磨いているわけです。こういう精神主義を逃れた現実主義的な処が、「ゴーカイジャー」らしいと思います。特にルカはロマンよりマネーなリアリストですから、尚更際立っていますね。

 そして最後の、「ハカセとアイムは、元々高いポテンシャルを秘めている事が感じられる点」ですが、これは、それまでの戦闘で、特に他のメンバーに遜色ない戦い方をしている事から分かります。明らかにダメだったのは今回だけであり、要するに「苦手なタイプに対応出来ない」といった趣でした。つまり、二人はジャンの元でメンタル面を改革された事で、「開眼」したように描写されているわけです。

 あと、「ゲキレンジャー」の要素をグッと抑制した事で、「ゴーカイジャー」の色を出そうという方向性が見えました。

 各々が繰り広げるコミカルなシーンは印象的だったし、豪快チェンジにわざとゲキレンジャーと同様の「動物系」を持ってきたのもそう。等身大戦では変身シーンもBGMも普通の豪快チェンジで、巨大戦でもゲキレンジャー要素は少なめでしたし...。

 逆に、「ゲキレンジャー」の要素を期待した側からすれば、肩透かしに近かったのですが、それだけ「ゲキレンジャー」は異色だったという事の証左にならないでしょうか。

 さて、恒例の豪快チェンジのまとめをしておきましょう。

 今回は、ガオレンジャー、サンバルカン、そしてゲキレンジャーに豪快チェンジ。

 ガオレンジャーとサンバルカンは、ハカセとアイムを除いた三人で。どちらも動物系モチーフの戦隊ですが、ガオレンジャーのレッド、ブルー、イエローと、サンバルカンのレッド、ブルー、イエローでは、空担当と陸担当がシフトしているんですよね。なので、アクションに適度な変化が付いていました。

 特に素晴らしかったのは、というかやり過ぎで嬉しかったのは、サンバルカンでしょう。

 バルシャークがシャークジョーズだけでなく、シャークタイフーンの超パワーアップ版を披露したり、バルパンサーがさらに回転アクションを充実させていたりしました。そして、バルイーグルが反則的にカッコいい「夕陽を背に戦う」シーンを披露。ここまで来ると「飛羽返し」を披露して欲しかったのですが、イーグルウイング・太陽パンチで充分素晴らしかったです。新堀さんの特徴的な動き(真似しようとしたら、必ずカッコ悪くなってしまう...)をよく再現してましたね。

 ゲキレンジャーは、それぞれ得意の激獣拳をトレースしていて、当時の興奮を再現しています。ただし、集団で飛び掛っていくなど、あくまでゴーカイジャー流にアレンジされている形跡があり、必殺技に至ってはゴーカイジャーに戻って放つという、控えめな描写でした。前述のとおり、変身シーンやBGMも使用されず、何となくサンバルカンに比べて扱いが小さかったような気がします。

 なお、今回の敵であるパチャカマック13世は、「ゲキレンジャーVSボウケンジャー」に登場したパチャカマック12世の後継キャラで、声も同じ増谷康紀さん。実は私、殆どのVSシリーズを未見なので、全然ネタが響きませんでした(笑)。しかし、これで過去の敵キャラ登場への抵抗が薄れたわけで、もしかすると、石橋雅史さんとか、中田譲治さんとか、あんな人こんな人の出演が期待出来るかも!

 といった感じの、ゲキレンジャー編でした。

 最後に一言、アイムのトレーニング着が素晴らしかった!