ブレイブ41「ヤナサンタ!デーボスせかいけっせん」

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 年末商戦に向けた一大販促編!

 と侮っていたら、とんでもない火傷モノの一編。獣電竜総登場に加え、世界を股にかけた獣電巨人の大バトル!

 しかも、バトル重視・ビジュアル重視でストーリーは二の次かと思いきや、一大娯楽編と呼ぶに相応しいドラマ性と、今後に繋がる要素も満載。単なるクリスマス準備編のパターンに留まることのない、素晴らしい一編でした。

 今回の敵はデーボ・ヤナサンタという、クリスマス編としてはベタベタなのが楽しいデーボモンスター。声優界屈指の芸達者の一人であるチョーさんをキャラクターボイスに迎え、そのキャラクター性を更に昇華させていました。チョーさんと言えば、戦隊における名演が記憶されます。そう、「シンケンジャー」の骨のシタリです。日和見者なのか野心家なのか判然としない上、秀逸かつ醜悪な造形にも関わらず、どことなく愛嬌のあるキャラクターとして成立していたのは、チョーさんの声があったればこそ。やはり人気があったので、「シンケンジャー」では生死不明とされ、その後もクロスオーバーシリーズで顔を見せています。

 そのヤナサンタの設定もすこぶる楽しいものとなっており、5兄弟であったり、期待を著しく裏切るプレゼントを用意して子供の怒りを集めたりと、実際のサンタクロースの特徴をモンスター化。後者は特撮TVドラマにおける定番の翻案であり、その定番っぷりが本編に安定感を与えています。前者は非常にフレッシュな設定で、今回はその内二人しか出て来ていないという意外性もあり、なかなか鮮烈です。合体によって力を倍加する(しかも、数字のお遊びを付加している)能力もクライマックスのバトルをしっかり盛り上げており、正に今回のカウンターに位置する主役と言っても過言ではありません。

 そして、ヤナサンタとは別に、今回大暴れするのは、何とデーボス。

 このデーボス、地球上のあちこちに出現するのですが、一応「ご本人」ではなくクローンという設定。ところが、クローンという出自にありがちな「オリジナルより劣る」という要素を完全に排除した強敵として描写されており、この辺りにも新味が感じられます。

 このクローンデーボスの一群を、獣電巨人が総出で迎撃するという展開は、正に年末商戦向けの構成ではありますが、素直にエキサイティングなビジュアルとして楽しめます。ダイゴと空蝉丸が繰り広げるドラマパートと並行し、ほぼ一話の尺をフルに使って激闘が描かれるという、充実した危機描写も奮っており、かつてデーボスと対決した頃よりも数段パワーアップしたキョウリュウジャーをもってしても、苦戦を強いられる事となります。この巨大戦は、世界各地という設定を受けて様々な工夫が凝らされており、それぞれの地の特徴を盛り込んだ景色の合成や、時差を実感させる照明の妙味(セッティングの手間が5倍!)、各ロボのキャラクター性に基づいた特徴的なアクション等、充実度は半端ではありません。何気に10人のキョウリュウジャーが揃っているのもポイント。

 面白いのは、この強力なクローンデーボスの一群が出現した真の意味を、直接的な地球各地の制圧ではなく、ドゴルドの陽動作戦の要に求められるという点です。

 即ち、今回のクローンデーボスはドゴルドの駒に過ぎないという事になり、元来デーボスを頂とする戦騎が、その存在に拝謁するどころか、力を利用しているという、ねじれた構造を呈しているのです。

 戦隊におけるこのパターンで印象的なのは、「フラッシュマン」における大帝ラー・デウスと大博士リー・ケフレンの関係。本来、ラー・デウスが究極の生命体となる為に、歴代の大博士に改造実験させていたのですが、その目的に気付いたリー・ケフレンがマッド・サイエンティストの本懐を遂げるべく、ラー・デウスを自らの「作品」の素体として利用するに至ります。

 この「フラッシュマン」における敵内部のドラマは、反逆譚の一つの到達点とも言うべき見事なものですが、今回はその構造を拝借しつつも、デーボス自体の意思自体が薄い為、かなりライトで明瞭な「力の利用」にシフトしており、そこに過剰なドラマを導入しない=キョウリュウジャー側のドラマに重きを置くという姿勢が徹底されているようです。

 また、クローンデーボスが単なる陽動とされている事で、デーボス軍の目的が武力制圧ではなく、怒りの感情を集める事、キョウリュウジャーを分断してダイゴを仕留める事だったという意外性も発露。「シャイダー」におけるフーマの侵略美学にも通じる、大小のスケール感を巧く配置した展開が見事です。

 そんなドゴルドの作戦は図に当たり、ダイゴはかつてない危機に陥るのですが、それを打破するのが空蝉丸でした。

 ドゴルドとは因縁浅からぬ空蝉丸。ドゴルドの悪辣さは、戦国時代における空蝉丸のトラウマに訴えかけるという行為で最高潮に達しますが、対する空蝉丸は感情に流される事なく、冷静に戦況を判断してダイゴを救出します。この逆転劇が実に爽快で、空蝉丸自身の成長も余す事なく描かれていました。空蝉丸の怒り、そして微笑みの表情がこれまた異様なまでに格好良く、剣によるアクションも流麗ときており、むしろ変身後のアクションよりも充実度が高かった程です。

 更に、ドゴルドの依代となっているエンドルフの存在が、改めてクローズアップされている処に注目。

 敢えて忘却の彼方に追いやっていたかのように、突如クローズアップされたのには、何か理由がある筈。ラッキューロ、キャンデリラに続く何らかの変化が、ドゴルドにも訪れる事は間違いなさそうです。まずは、今回のラストで言及された「ダンテツの身体を狙う」という展開に期待したい処。恐らく、「キョウリュウジャー」らしく次回でその要素には決着を付けてしまうんでしょうけど(笑)。

 なお、ダンテツの身体を手に入れた暁には、デーボスすらも凌駕する力を以てデーボス軍の長となる事をドゴルドは企図しており、彼の野心家振りに戦慄を覚える事になります。残念ながら、このテの話は巧く行かない事が大体決まっていて(笑)、恐らく失敗するのでしょうが、もしドゴルドがもっと器の大きさを感じさせるキャラクターだったら、あるいは分からなかったと思います。裏を返せば、ドゴルドは小悪党の域を出ないキャラクターであり、逆にそれが彼の魅力であると言えると思います。

 次回は、いよいよクリスマス編本番。ダンテツとドゴルド、そしてエンドルフはどうなるのか...興味は尽きません。