ブレイブ42「ワンダホー!せいぎのクリスマス」

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 クリスマス編の後編。

 クリスマス編の恒例であるギャグ編、販促編、総集編のうち、総集編を除いた構成であるのは、前編から既に分かっていましたが、前後編を通して見ると、今後に大きく関わってくる設定を大きく取り上げており、単なるイベント編として見逃すと大変危険な代物でした(笑)。

 ダンテツの旅の意味や、遂に明かされたトリンとの出会い、確実にダイゴに受け継がれているダンテツの意志等々、盛り沢山の内容でまばたきの暇すらない、年を締め括るに相応しい一大巨編となっています。

 ギャグ編(コメディ編)のメインを務めるのは、前回に引き続いて登場するデーボ・ヤナサンタ。引き続きと言っても、五兄弟のうちの二人が前回既に撃破されており、今回登場するのは残りの三人。声は前回と同様にチョーさんが担当していますが、五兄弟全員が別人に聞こえる芸達者振りはさすがです。

 ただし、今回は早々に三兄弟が合体してしまう等、前回程のインパクトはありませんでした。劇中、他の要素があまりにも充実していた為に、やや尺不足になっていたのは否めない処で、ヤナサンタが割を食ってしまったきらいがあります。巨大戦もかなりやっつけな感じでしたし...。もう1話分くらい尺があれば、ヤナサンタの活躍をもっと見られたのではないでしょうか。

 なお、コメディ描写としては、ラッキューロとキャンデリラの改心予備軍ペアが補強していました。まだデーボス軍の一員である事自体に何の問題もない様子ですが、座り込んだりしてやる気のなさを露呈する辺りが笑いを誘う一方、その心中の複雑さを想像する余地をも感じさせ、大いに興味をそそられる次第です。

 キャンデリラに関しては、復活したエンドルフによって抹殺されようとしているドゴルドを助けたり、そのエンドルフに「一番怖いのは姐さんかも知れない」と称される等、単に明るい悪幹部というキャラクター以上の印象を与えており、戸松さん演ずる人間態を含めたこれまでの弾けっぷりとは一味違う「迫力」を感じさせるに至りました。常に機嫌の悪いドゴルドに対する仲間意識のようなものを、キャンデリラ達が有していたのもなかなか衝撃的で、喜怒哀楽の四人衆の結束が、本来の目的以外の処で高まっている描写には、思わず引き込まれてしまいます。

 さて、ドゴルドとエンドルフの名前が出た処で、彼等について言及しておきましょう。今回のメインストリームの一つは、明らかに彼等の動きであると言えます。

 かつて、エンドルフがドゴルドの依代となった際、突出したキャラクター性を誇るエンドルフがこれで退場とは実に惜しい...等と思っていましたが、やはりただでは済まなかったわけです。一方で、当初からのレギュラーキャラ体制に収まってくれた事に対する安定感の高さも評価していたので、今回のエンドルフ復活はより衝撃的に映りました。

 しかし、今回のエンドルフの復活に関しては、興味深い事に、ドゴルドのキャラクター性を際立たせる為のものであったという印象が強いのも事実。

 エンドルフの身体でも飽き足らず、ダンテツの身体を狙うもののそれには失敗し、結局自らが気付かないうちにエンドルフに意志を乗っ取られ始め、エンドルフの復活を許してしまう今回のドゴルドには、全く以て良い処がなく、キャンデリラの進言がなければ潰えてしまう処でした。その際立つ情けなさが、ラストにおける「他人の身体を乗っ取らなければ自分を保てない腹立たしさ」を一層強調していて、彼の抱える苛立ちの正体を垣間見るに充分なシーンとなっていました。前回、小悪党的なキャラクターだと述べましたが、正にそれを体現しているように見え、嬉しくなってしまいます。

 エンドルフは、登場当初の印象そのままの、奸智に長けた野心家の面が強調されていました。ドゴルドの、短絡的かつ直情的な側面を有する野心とは全く異なり、静かに確実に目的を遂げようとするその姿勢は、喜怒哀楽そのままを体現した四幹部とは乖離した「異端」であると言えます。

 この「異端」がシリーズ終盤を盛り上げるのに大変効果的である事は、これまでの戦隊シリーズでも証明されています。「デンジマン」におけるバンリキ魔王を嚆矢とし、「サンバルカン」のイナズマギンガーで完成、以後、敵組織内を揺さぶりつつ、主人公側にドラマが波及していくという形で発展を遂げていきます。特に、「ダイナマン」におけるダークナイト登場から女将軍ゼノビアの裏切りに繋がり、更にはその裏切りの原因となったものが、実はダイナマンの司令官による発明だった(若さ故の過ちだったという告白が秀逸)...という流れは、戦隊シリーズにおける最終譚の語り口の中でも、頂点を極めたものの一つとして印象に残ります。

 このダークナイトが、実は王位継承の鍵を握る人物でもあり、物語のメインは完全に敵側に軸足を移しているにも関わらず、ヒーロー側のドラマが希薄にならなかったのは、司令官が事件の発端であったという「仕掛け」があったからこそ。「サンバルカン」終盤辺りが、完全に敵側主導の大河形式にシフトし、更には司令官(岸田森!)が敵ボスにとどめを刺すという、完全にヒーロー置いてけぼり展開だったのに対して、かなり理性的であったと言えるでしょう。まぁ、私は上原正三先生の語り口が好みなので、敵側に感情移入してしまう上原節は、多少理性を欠いていても大好きですけど。

 いつもの如く話が逸れましたが、エンドルフの「異質感」は、最終クールにドライブをかけてくれる事間違いなし。ラッキューロとキャンデリラの迷いに、ドゴルドの失脚。様々な模様が交錯する中、エンドルフがどう作用していくのか、興味は尽きません。キョウリュウジャー側はむしろド安定で鉄板な結束力で事態を突っ切っていく勢いなので、こうした敵側の内乱は歓迎すべき処ですね。

 ところで、今回はダンテツに関するトピックが織り込まれました。タイミングとしては、イベント編としての色彩が濃いクリスマス編とあって、やや唐突な感は否めませんが、逆にこれほど重要なトピックを年内に披露しておくという英断、あるいはシリーズ構成の巧みさが際立つ結果となりました。

 特に、ダンテツがトリンから地球に選ばれた「キング」だと称するシーンは鳥肌モノ。

 ダイゴは仲間から常に「キング」と呼ばれていますが、実は父親もトリンからそう呼ばれていたと判明し、父子の間にある運命の縦糸が見えました。トリンがダイゴを「キング」と呼んでいない理由も、ダンテツをそう呼んでいるからに他ならないと分かり、色々な要素に辻褄が合わせられていく流れは爽快ですらあります。

 面白いのは、ダイゴに対するトリンのポジションが、あくまで戦隊における後見人の域を出ていない(ただし、トリンがダイゴの影響を強く受けている描写は多々ある)のに対し、ダンテツは、トリンにとって自分を受け入れてくれる(懐のデカすぎる)盟友であるという点。ダンテツはトリンの本性を瞬時に見抜き、トリンはそんなダンテツを尊敬しているようにすら見えます。この辺りは恐らく山下真司さんの存在感に依る処が大きいのだと思います。あの迫力で「地球が」とか言われると、納得してしまいますからね(笑)。

 それにしても、ダイゴ役の竜星さん、山下さんを前にしても堂々としてますよね。しかも、ちゃんと親子に見えます。ダイゴの役柄が持つ「大物感」を、竜星さんが巧く消化している証拠ではないでしょうか。この父子の物語は、そのままサンタクロースに感じられる父性愛と重なり、クリスマス編にこのエピソードを持ってきた意義を強く感じる事が出来ます。

 エピローグは、クリスマス編における最大の「らしさ」を感じさせるものとなっており、ヒーロー自らプレゼントを配って回るというシチュエーションにワクワクします。

 というわけで、ここらで10大キョウリュウジャー勢揃い編は一区切りといった処でしょうか。年明けからは、最終編に向けて各キャラクターの仕上げにかかっていくものと思われます。

 第一弾はソウジ編で、予告に超の付くサプライズが!!

 何と、ソウジの両親はダイナブラックとダイナピンクであったという...!!

 今回はアクションにおける火薬の量が多めでしたが、ダイナマンへのリスペクトだったのか!?

 という事で、来年もよろしくお願い申し上げます。