Space.3「砂漠の星から来た男」

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 スティンガー=サソリオレンジ登場!

 前回のバランス&ナーガのコンビもそうでしたが、スティンガーも「敵として登場する追加戦士」のテイスト。オレンジというカラーリングの妙味もあって、良い意味での違和感があります。

 先発レギュラーの素面キャストとしては、彼がラストメンバーということになり、いよいよ伝統の素面5人体勢が完成...とならないのが「キュウレンジャー」の面白いところですね。

 一方で、司令官キャラであるショウ・ロンポーも登場。こちらもかなりぶっ飛んだキャラクターのようで...。

モーレツヨインダベー

 今回の怪人に相当するのが、ツヨインダベーのエリートという設定のモーレツヨインダベー。戦闘員の上位型ということで、これといった特徴には乏しいのですが、恐らくはスティンガーを敵として目立たせるための措置ではないかと思います。

 ポジションも完全に咬ませ犬状態で、戦いを邪魔されたスティンガーの餌食になって終了という悲しいもの。しかも巨大戦には持ち込まれず、巨大戦の担当はモライマーズのロボット形態が担当してしまいました。初めからそのエリアの支配者として登場するため、事件の発端を担わないのが現在までの怪人の特徴となっていますが、今回はそれがより明確な形で示される格好になりましたね。

モライマーズロボ

 プラネジュームと呼ばれる惑星のエネルギーを搾取する宇宙船がモライマーズ。ただの宇宙船ではなく、今回はロボットに変形するという意外な機能を搭載していることが判明しました。

 「トッキュウジャー」のクライナーロボの衝撃再び! といったところですが、クライナーロボと同様に、ヒーロー側のメカよりも複雑な変形を、トランスフォーマーばりに瞬時に行うあたりが実に格好良いですね。未就学児向けアイテムに制約されないメカの在り方を垣間見ることができます。それの善し悪しについて論ずる気は全くありませんが、またそろそろマジキング並みの複雑な合体ロボトイも見てみたい気がしますねぇ。

 さて、このモライマーズロボ、意外と戦闘力は高い。ナーガの奇策(勝手にハミィ担当の左腕と交替合体)が炸裂するまでは、結構苦戦してましたからね。各戦隊の初期エピソードでは絶対的に無敵な場合が多い巨大ロボ群ですが、キュウレンオーは意外とピンチの描写が多い気もします。合体バリエーションの多さを見せるための策だとは思いますが、弱く見えるか否かのギリギリの線で均衡を保っている状態ですね。

ショウ・ロンポー

 3話目でやっと登場する司令官というのが、まずは珍しいですね。基本的に、戦隊結成に関わっているのが司令官キャラですから、初回でいきなりその存在感をアピールするのが常です。

 登場の珍しさもさることながら、その派手で重厚なデザインとは裏腹に、物凄く適当な性格というのもユニーク。いきなり多数のキュータマを持ち帰って無造作に投げ置き、キュータマ自体の神秘性を瞬時にスポイル、キュウレンジャーの危機に指示を出すかと思いきや別のことを考えていてラプターに怒られるなど、その司令官像は一言で言って「異様」です(笑)。元々美形キャラの担当が多かった印象のある神谷浩史さんですが、今回の芝居は「格好良くも抜けた中年」を的確に捉えていて素晴らしいですね。近年、ぶりぶりざえもんなどギャグキャラ担当も多いので、ショウ・ロンポーにも大いに期待できます。

 設定などを読むと高田純次さんあたりを意識しているのかな...と思いましたが、既に良い意味で別種のキャラクター性を宿していると感じました。彼もドギー・クルーガーよろしく変身したりといったことがあるのでしょうか?

 ちなみに、そのドギーへのオマージュがセリフにありましたね。「了解」の言い方を決める際、「ロジャー...これは論外」などと「デカレンジャー」におけるコールをネタにしていました。Twitterでドギー役の稲田徹さんが反応していて楽しかったです(笑)。

チャンプの過去

 あまり悩みが無さそうに見える猛牛・チャンプにも暗い過去がありました。自らを生み出したアントン博士が、何者かに殺害されたという過去です。チャンプはその犯人がスティンガーだと認識していますが、このあたりはまだ話が進んでみないと分かりませんね。

 ロボットキャラであるチャンプに、生みの親が設定されたのは意義深いと思います。ロボットやアンドロイドの精神性を語る際、その誕生に関わった人間の存在がクローズアップされるのはよくあることで、今回もアントン博士による「教え」がチャンプをヒーローたらしめる構図を披露しています。「戦いに心を奪われちゃいけない。ただの機械になってしまう」というアントン博士のセリフが、チャンプの根底に流れる精神性を表しているわけですね。

 実際、仇と認識しているスティンガーを倒すことしか考えられなくなったチャンプは、ラッキーの考える「キュータマに選ばれた者に悪いヤツはいない」という真理(?)に対しての眼を曇らせており、戦闘マシンになりかけていた...という描写があります。ただし、今回はスティンガーが本当に悪辣に描かれているのもあり、ラッキーの言説の根拠が揺らいでいるのと、チャンプへの感情移入の比重が高いこともあって、このテーマはやや上滑りしている気がします。アントン博士が吹き込んだ精神に優しさが横溢しているため、チャンプの復讐心へより理解が寄ってしまうわけです。アントン博士役・うじきつよしさんの芝居がこれまた素晴らしくて、余計に感情移入してしまうんですよね...。この場では、むしろラッキーの言い分が乱暴にすら聞こえます。

スティンガー

 サソリの尾を備えたヒューマノイド。既にサソリキュータマを所持し、サソリオレンジへのチェンジ能力も持っていて、キュウレンジャーと同等以上の戦闘力を持った敵として現れる...といった具合に、追加戦士のパターンの一つに倣っている(それこそ、元祖のドラゴンレンジャーと同パターンですね)のが良いですね。

 素面の状態で毒針を駆使できるという設定もなかなか衝撃的で、回想シーンではアントン博士を殺害したように見せていたりと、蠍の恐ろしいイメージを巧く利用したキャラクター作りが成されています。変身後にも尻尾は露出しており、毒針攻撃も有効な攻撃の一つとしているあたり、徹底していますね。興味深いのは、ガルやハミィたちにも一刺しを見舞っているのですが、彼らはすぐに回復してしまうという点です。毒をわざと弱くしたのか、それともキュウレンジャーたるに相応しい回復力なのか...? 前者だと熱いのですが。

 その戦闘力の描写も見事で、肉弾戦優位のチャンプを圧倒したり、サソリボイジャーを自在に操ったり、ラッキーと互角以上に渡り合ったりと、やはり強力な追加戦士の様相。味方になれば物凄く心強いという感覚が当初から味わえるあたり、贅沢な構成だと思いますね。

 そして今回は、まだ味方にはならないという幕引き。順調に九人揃っていくのかと思いきや、巧くかわして興味を引くあたり、さすがですね。ただ、戦隊はあくまで戦隊なので、ライダーのようにドロドロと敵対関係を引き摺るようなことはして欲しくないですが...(笑)。

次回

 次回は地球へ! 「ジャスピオン」と相似形を成す構成がオールドファンには堪りません。そしていよいよワシピンクが登場するとのことで、こちらへの期待も否応なく高まります。