Space.5「9人の究極の救世主」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 サソリオレンジ正式加入!

 1ヶ月かけてメンバーを揃えるという、近年では珍しい展開を見せた「キュウレンジャー」ですが、これも9人体制ならではといったところでしょうか。今回も人数の多さを逆手に取った構成の巧さが光り、逆に人数の多さに慣れを要求する側面もあり...といった具合に盛り沢山の内容でした。

 スティンガーのキャラクター性にも意外性が盛り込まれ、これからのストーリー展開を期待させる配置になっていました。

ユメパックン

 前回に続いて登場のユメパックン。しかし、メインたる仇敵の役割をエリードロンに譲ってしまったため、非常に影が薄い(笑)。ほとんど巨大戦の勢い演出のために残されたとしか...。

 それでもレッドとの対戦では、そのやられっぷりで強い印象を残してくれました。ラッキーの夢を喰らおうとして、その夢のデカさに自滅してしまうという、お約束の展開が楽しかったですね。

エリードロン

 イテ座系カローという肩書で、いわゆる幹部級なのですが、こんなに早く退場するとは。

 初登場時には、まだメンバーの揃わないキュウレンジャーを圧倒し、その力を見せつけました。故に、今回の9人フルメンバー揃い踏みに対峙し、逆に圧倒されることによって、フルメンバーのキュウレンジャーがいかに凄いのかを強く印象付けることになりました。しかも、スティンガーが正式加入する土壇場まで、常に善戦していたのですから、その実力のほどは保証されていたと言えるでしょう。

 その悪辣さ、残虐さは、ゲストキャラクターである小太郎&次郎の兄弟を、いとも簡単に亡き者にせんとする言動からも明らかで、そのあたりがわざと徹底されないように配慮されたスティンガーとの対比になっています。一方で、策を講じて小太郎と次郎の延命を図るスティンガーの申し出には、特に反対しないといった度量も見せており、カローの余裕を見せているのも巧いところ。かねてより、悪の幹部のこうした余裕(「あとでゆっくりと始末してやる」などなど) はツッコミの対象となるところではあり、話を組み立てる上での予定調和になってしまうわけですが、個人的にはそこにキャラクターの懐といったものを見て取れるので好きですねぇ。

 さて、スティンガーがその正体を現すことで、一気にエリードロンの形勢は不利になります。この逆転劇からの凋落こそが悪の美学。東映時代劇のエッセンスが存分に発揮される、温故知新な展開が楽しいですね。エリードロンとキュウレンジャーの総力戦といった趣が感じられるアクションシーンでは、ナパームの量もなかなか凄いことになっており、早期退場の幹部とはいえ、やはり幹部クラスの戦闘ということなのか、その迫力は出し惜しみなしといたところ。

 巨大戦への移行は意表を突いており、ユメパックンにキュウレンオーの相手をさせつつ、自らはモライマーズで脱出を図るという展開でした。ユメパックンとの一戦では、順当なロボ戦を披露し、モライマーズの追撃では各ボイジャーによる宇宙戦を見せるなど、ビジュアルの工夫と凄さに圧倒されます。そして、最後に先とは異なるフォーメーションでキュウレンオーを再登場させ、合体していないボイジャーと共に必殺技を放つという展開も燃えること必至。エリードロンの悪逆振りが印象付けられているので、より大きなカタルシスが得られました。

小太郎と次郎

 今回は子役ゲストが登場。前回、大人たちに非難されたことが何となく引っ掛かっているラッキーでしたが、まだ勇気と希望を捨てていない子供たちが居た! という構図が良いです。そして、この二人は二つの役割を伴って登場しました。一つは、迷えるラッキーにチキュウ解放を決意させる役割、もう一つは、スティンガーに兄への追憶を反芻させる役割です。

 ジャークマターに対して石を投げるという極めてオーソドックスな「抵抗」から、キュウレンジャーを救世主と呼んで大人たちに希望を取り戻させるに至るまで、そのポジションは古くからの「勇気ある子供」の文法を用いていて、入り込みやすいですね。その勇気にラッキーが同調してテンションを取り戻していく様子には、一度は戦う気力を失ったヒーローの復活劇が重なります。しかし、ラッキーは単純にチキュウの解放に意味があるかどうかを感覚でとらえているだけ(その意味では極めてドライ)なので、感覚的には新しいものとして映りました。浮き沈みではなく、興味を引かれるか否かという部分を戦いの動機としている点で、ラッキーは実は物凄く特殊なレッドなのかも知れませんね。

 一方、兄が弟を庇護しているという、その兄弟の在り方もオーソドックスながら、静かに感動を呼ぶものとして描写されました。この感情に寄り添うのがスティンガーで、実は彼には探し続けている兄が居るということが語られるわけです。(表向きは)冷酷無比なキャラクターであるスティンガーが、ここでその兄弟愛の前にその姿勢を崩していくという機微が巧みで、むしろスティンガーがスパイだったいう設定がない方が盛り上がったんじゃないかと思わせる部分も(笑)。スティンガーの回想に子役を用いたことで、小太郎と次郎とのシンクロ度も高くなり、よりスティンガーの感情の湧出が感じられましたね。

スティンガー

 チャンプの生みの親の仇敵にして、サソリオレンジへの変身能力を持ちながらジャークマターとして行動している強力な戦士。以上が今回前半までのトータルイメージです。しかし、ラッキーは直感的にスティンガーの本質を見抜いており、そのラッキーの見立ては正しかったと証明されることになります。

 前段に示したとおり、スティンガーにはスコルピオという兄がおり、スティンガーの幼少期には優しく強い兄として尊敬の対象となっていました。しかし、彼の惑星がジャークマターに蹂躙された際にはスティンガーに邪悪な微笑みを投げ返す「裏切り者」になっており、その間に何があったのかはこれから明かされることになるでしょう。ちなみに、スコルピオ役の久保田悠来さんは、「仮面ライダー鎧武」への出演歴があり、いわゆる特撮OBのお一人です。「鎧武」自体をあまり真面目に観ていないので詳しく話せませんが、印象の強い役者さんなのでスコルピオを見た時にオッ!?と思いましたね。スコルピオの存在により、スティンガーが正義側にシフトしてもサソリ系の悪役が可能性として残ることになるわけで、その辺、実に巧いと思います。

 そのスコルピオとの幼少期の思い出は、後の「裏切り」とは切り離されてスティンガーの悲しく美しい思い出となっており、小太郎&次郎の姿に重ねてしばし感傷に浸るシーンが設けられました。ここで、ラッキーの見立ての正しさが一部垣間見られるようになっています。しかし、ここではまだ「悲しい過去と意外な優しさを秘めた強力な敵」というイメージを保っています。

 その後、エリードロンが8つのキュータマと子供の交換を拒否したところで、スティンガーの怒りが爆発! 自分がショウ・ロンポーの派遣したスパイだと明かしてキュウレンジャーへの正式加入を果たすわけです。興味深いのは、「結果」としてそうなっただけで、もしかするとこの時点でキュウレンジャーに加入するつもりはなかったのではないか...と思わせるところですね。もし、エリードロンが小太郎と次郎を解放したら、自身はスパイとしてまだジャークマターに潜入し続け、ラッキーたちとはギリギリの均衡を保ちつつ暗躍するつもりだったのでは。スティンガー自身は、小太郎&次郎の兄弟に抗い難いシンパシーを抱いてしまったがために、エリードロンの暴虐にキレてしまったように見えます。ショウ・ロンポー自体、スティンガーがスパイであるということを隠していたようなので(「言うの忘れてた」は実にわざとらしくて見事) 、今回のことはアクシデントだったのかも知れません。

 何にせよ、スティンガーはポイズンスターの異名と共にキュウレンジャーに正式加入することになりました。しかし、普段は諜報活動を継続するために隊列から離れて単独行動をするようです。チャンプとのことは弁解しないと言っていましたし、一定の距離を置くことで人数過多のビジュアルを回避しようということなのでしょうか??

9人の究極の救世主!

 勢揃いとなったキュウレンジャー! その並び立つビジュアルは壮観の一言。「マジレンジャー」最終編や「キョウリュウジャー」終盤でも多人数の戦隊が見られましたけど、シリーズ序盤でこれだけ揃うのはやはり圧倒的に「新しい」ですね。

 そして、9人連続の名乗りが長い(笑)! しかし、5人の「ゴーグルファイブ」の方がもっと長い(個人的な印象で、時間を計ったわけではありません・笑)。こうして並べてみると、既にそれぞれのキャラクターが結構立っていて凄いですね。ナーガとスティンガーが若干クールキャラ寄りのカブり方をしていますが、ナーガの本質はボケ担当キャラですからね。

 楽しいのは、スティンガーの加入を感情的に許容できないチャンプも、議論が面倒臭くなって勢いに任せる辺りです。弁解しないと断言するスティンガーは格好良いし、チャンプはその豪快さを遺憾なく発揮しており、「男気」がビシビシと感じられます。多人数の難しさをいいバランスで払拭していて見事です。

 戦闘シーンでは、やはり人数が多い(笑)。戦闘員との乱戦では、それぞれの特徴的なアクションを見せていますが、これまでの5~6人体制に慣れた目には付いていくのがちょっと厳しい。恐らく、大した時間を費やすことなく慣れていくんでしょうけど...。

次回

 メンバー集めが完了したということで、次回から通常運転か...と思いきや、いきなりぶっ飛ばした予告で驚きです。勇ましいチキュウ解放宣言の直後とは思えない、コミカルなビジュアルに超期待ですね。