Space.6「はばたけ!ダンシングスター!」

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 戦隊のセオリーに則ったオーソドックスな再団結モノかと思いきや、いきなりバラエティ編の要素を投入してくる凄さ。さらにはパワーアップ編の一部要素まで貪欲に取り込んで、多面的な展開を見せるエピソードとなりました。

 ちょっとやり過ぎというか、飛ばし過ぎな感も否めないですが、それでも意外と濃い味付けではなかったので、爽やかな読後感を味わうことができます。

 前回で9人が揃ったのに、そこには全くこだわっていないという潔さにも驚かされましたね。

デンビル

 今回のダイカーンは長い首の造形が特徴的なデンビル。これといって特徴的な能力がない(鞭によって強制的に体操させるという能力はありますが)のが特徴で、恐怖支配によって人々に集団行動を強いているという、「キュウレンジャー」の世界観にマッチした怪人となっています。

 デンビルによって集団行動を強いられた人々は、半ば洗脳状態のように描写されており、特撮ヒーロー番組でよく展開された「操られる市井の人々の攻撃にヒーローが抗えない」というパターンを踏襲しているようにも見えます。そこにある種の懐かしさを覚えると共に、本当のチームワークを獲得したキュウレンジャーと、デンビルによる強制的な集団行動とを対比する構図が新しさを感じさせ、巧いストーリーテリングになっています。

 興味深いのは、被害者たる人々の解放にはあまり重心が置かれていないことで、さらには、デンビル攻略でさえも「結果」として付いてくるという流れでしょう。徹頭徹尾、キュウレンジャー側の精神強化を描くあたり、潔さも極まって見えますね。

 巨大戦は、自ら巨大化せずにモライマーズによって展開。ロボ操縦型と巨大化型が使い分けられるという、シチュエーションの贅沢さがまたパターン化の回避に一役買っていますね。

イカーゲン&マーダッコ

 「刺客」とのことで、カローなのかどうかは今のところ不明なコンビ。分かり易いネーミング&デザインが楽しく、性格も含めて凸凹コンビな感じが良いです。イカーゲンに関しては、塩屋翼さんが声を担当。超ベテランの起用に驚きました。その独特の口調と声質が深みをもたらしていますね。マーダッコには喜多村英梨さん。塩屋さんとの年齢差を感じさせない強烈なキャラクター性を発揮していて、こちらも楽しいですね。

 まずはスティンガーが、少しだけこの二人と戦うことになりましたが、クールかつ強力なスティンガーの戦闘シーンを描くと同時に、イカーゲン&マーダッコの実力の程も垣間見せるという、見事なバランスを見せてくれました。これからどのような活躍を見せてくれるのか楽しみですね。

ハミィとガル

 予告を見たところではハミィが単独メインなのかと思いきや、意外なところでガルとの対立劇を持ってきました。多人数のメリットを生かして、単独メインでは不足しがちな「会話」の面白さを描き、キャラクターを活写する手法が光ります。

 今回のハミィの言は視聴者の代弁になったのでは...と思われる節がありました。ラッキーは恐るべき強運の持ち主だが、それだけで「勝手に」レッドを名乗って突撃隊長をやっている...。確かに、何となくそんな印象はありました。恐らくは、そう見えるように演出・構成されていたのでしょうけどね。今回は、ハミィがそこに斬り込むことで、ラッキーの隠れたキャラクター性を浮き彫りにするという流れが巧く機能しています。

 一方で、ガルはラッキーに心酔しているキャラクターだということが明確にされました。ラッキー以外にリーダーは考えられないという態度を隠さないあたり、狼だけに「ラッキーの犬」と揶揄されないか心配な面もありますけど(笑)。

 ラッキーの扱いを巡って対立するという構図は、自分の主義を主張して対立するというオーソドックスなパターンからの「ズラシ」が効いていて、面白い効果を上げています。当のラッキーは「ペガさん」に夢中で既にリーダーが誰かという話には殆ど関心がないように見え、やがて二人の対立劇は、ダンス練習の解散へと拡がって行きます。そして、この瓦解寸前の状態を救うのもまたラッキーの態度であり、ハミィはその確認を行う役割を負っていました。その意味では、ヒロインの役割というよりもライバルキャラが負う役割に近く、実質ラッキーのライバルたるキャラクターが不在である「キュウレンジャー」において、その特殊なポジションを序盤において獲得し得る可能性も出て来たというわけです。

 ガルは...常に可愛いですね(笑)。

ペガさんとラッキー

 ペガサスキュータマの「能力」は、色々と謎な「ペガさん」を実体化させることでした。いきなり説明もなく登場し、ペガサスアーマーとしてシシレッドの胸に装着され、ラッキーの意志とは関係なく大暴れする「暴れ馬」。しかも軽いノリで喋る、シシレッドの変身解除後もラッキーの胸に装着されたまま...という、要素がてんこ盛り過ぎて誰もツッこめないという、正に勢い重視のキャラクター(?)でした。後からショウ・ロンポーの説明(というより武勇伝)が披露されるもナーガに「嘘」だと一蹴される始末で、その胡散臭さがまた楽しいですね。

 「暴れ馬」が登場したら乗りこなすのが伝統の戦隊レッドであり、この辺も王道パターンを踏襲していると言えます。ラッキーは皆がダンス練習を放棄した後も、人知れず単独でペガさんと共に練習に励み、見事に一体となったダンスを会得するに至りました。ショウ・ロンポーの弁によれば、これこそがラッキーの強運の正体であり、単に運が良い人というだけではないラッキーの強さだと語られるわけです。完全に運だけのレッドでも面白いことになるのでは...と思っていましたが、それだと戦隊の話を作るのは難しいですよね。「カーレンジャー」のように振り切った作品なら可能ですが、「キュウレンジャー」はビジュアルとシチュエーションこそパターン破りだけれども、やっていることは戦隊の王道に忠実であろうとしているように見えるので、私はこのくらいが丁度良いのではないかと思います。

 さて、ペガサスシシレッドはペガサスアーマーの美しいカラーリングがクールで実に格好良く、児童誌の表紙に物凄く映えるデザインです。それが強烈な印象だったので、序盤にいきなりパワーアップ編か! と思っていましたが、蓋を開けてみればペガサスキュータマの入手過程などなく、しかも勝利の第一要素でもなく、殆どゲストキャラ扱いだったという(笑)。王道っぽく見せておいて要所要所でズラしてくるあたりがニクいですね。

ダンス!

 団結力を磨くためにダンス特訓をしよう! という時点で既にシリーズ序盤にあっては異色な展開なのですが、ショウ・ロンポーの「テキトー」な面(そして思慮深いかも知れない...という面)を巧く利用した点で、「キュウレンジャー」としては違和感がないあたり素晴らしいです。ハミィに同調して特訓自体が成り立たなくなっていく過程はちょっとしたスポ根モノっぽいですし、ひたむきなラッキーに感化されて再集結するあたりも青春譚っぽさがあって楽しい限り。そして、様々なキャラクターが一体となって踊る画面には活気が横溢しており、とにかく賑やかさを前面に出そうという意図が感じられて良いですよね。

 そして、このダンスが単なる精神性の鍛錬に留まらず、敵の攻略に利用されるというのが実に見事。基本的に、こういった流れはギャグ回として成立してしまうものですが、ダンスを用いたアクションシーンはコミカルな絵面ではあってもギャグにはなっておらず、むしろ完成度の高い立ち回りの一種として見られる、様式美のパロディにすら昇華されていました。硬軟取り混ぜた画作りの凄味が感じられましたね。

次回

 バランスをメインに据えて何をやらかしてくれるのか...! バランスは現在のところ面白いキャラクターの筆頭に位置するので、実に楽しみですね。