Space.9「燃えよドラゴンマスター」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 新戦士・リュウコマンダー誕生!

 「ジュウレンジャー」への改名を却下するという、かなりギリギリなギャグを披露しつつ、とうとう10人体制を全肯定してしまう凄さ。「究極の救世主」だから人数が減ろうが増えようが「キュウレンジャー」なのだという思い切りの良さが逆に笑えます。

 一方で、いい加減なオヤジというキャラクターの裏に秘められた凄絶な過去...という展開はやはり燃えるものがありますね。そのテキトーさは苦悩を隠すための芝居なのか、それともリベリオン壊滅後も長く戦ってきたことで得たものなのか。ショウ・ロンポーというキャラクターの魅力の虜になること必至です。

マーダッコ斃る!

 リュウコマンダーのあまりの強さは反則スレスレ! 数話にわたって存分にキュウレンジャーを苦しめてきたイカーゲンとマーダッコですが、リュウコマンダーの前ではその実力も大したことはなく...。まあ、ちょっとやり過ぎかも知れませんね。

 この「あなたが居れば戦隊は要らない」というテーゼ、またまた「バトルフィーバー」の倉間鉄山を例に出してしまいますが、必殺武器さえ弾き返すような怪人を一刀両断して倒してしまうような後見人が出てくると、どうしても避けられないんですよね。鉄山の場合は、その後の巨大戦をヒーローが担う必要があったので、そのあたりを少し緩和していました。

 「デカレンジャー」のデカマスターも、このテーゼをかなり気にしていたのか、「部下の成長が第一」というモットーをエクスキューズにして変身自体を抑えていました。ショウ・ロンポーというキャラクターの印象からすると、なんとなく同じ手は使えそうにないので、これからどう振る舞っていくか楽しみなところです。今回は、巨大戦までもワンマンショーの様相を呈していましたが、巨大戦における敵を増やすことにより、ギリギリのところで踏みとどまりました。でも、なかなか危うい感じですよ(←楽しんでいる)。

 思いっきり話が逸れましたが、今回はマーダッコがリュウコマンダーの猛攻の前に敗れ去りました。ただし、いわゆる「公式サイトの退場リスト」には載っておらず、また残ったマーダッコの一部をイカーゲンが持ち去るというシーンもあったので、これで終わりではないようです。まだまだ活躍の余地はありそうなので、リュウコマンダーを苦しめるような展開も期待してしまいますね。

便利な量産型ダイカーン

 メッチャツヨインダベー、ムッチャツヨインダベー。またまたツヨインダベーの出世版です。そして、やっぱりスカッと倒されるためだけに登場。巨大戦のメインとしても活躍の場を与えられましたが、残念ながら今度は瞬時にリュウボイジャーの餌食に...。

 前回のダイカーンには、スパーダの行動の契機となるような役割を与えられましたが、今回の二人はダイカーンでありながらイカーゲンとマーダッコの尖兵のように扱われ、完全に当て馬。超強力なリュウコマンダーを加えてヒーロー側が劇的に強化された状態ゆえに、頭数を揃える必要があったわけですね。ツヨインダベーの出世版が出て来たときは、ドラマへの関わりが薄いと考えるのが妥当ということでしょうか。

スパーダとラッキー

 前回に引き続き、スパーダがドラマの感情部分を担いました。今回は圧政に苦しむ人々の描写がないので、ショウ・ロンポーを心配するという展開になり、あくまで仲間内でのドラマとされています。

 リュウバイオレットとしての活動時間に限界があることを悟ったスパーダ。彼には優れた洞察力、観察力があるようですが、前作でのジュウオウタイガー=アムがそうだったように、概ねそういった役割はヒロインが担当することが多いように思います。スパーダのように柔和な雰囲気を持ったヒーローならば、そのようなロールが与えられても違和感がありませんね。しかも、今回はなんと人質要員まで演じてしまうという...(笑)。文字通り、実に美味しいキャラクターです。

 一方でラッキーは、単独でスパーダ救出に向かったショウ・ロンポーに合流しようとするわけですが、まんまとショウ・ロンポーには当て身を喰らわされてしまいました。実はショウ・ロンポー、ラッキーの行動パターンを自身の過去と重ね合わせ、危惧していたことが明らかになります。重層的なキャラクター配置が巧く機能していて良い感じです。

 前回、今回にわたり、ショウ・ロンポーもラッキーもスパーダも独断による行動で危機を迎えることになり、集団ヒーローにおける独断の危険性を訴えていました。ウルトラシリーズの防衛チームでもよく似通ったテーマが語られますが、全員が変身して戦う性格上、切迫度がより高いのは戦隊ならではですし、視覚的にも分かり易いビジュアルを提示できる強みがあります。

リュウコマンダー誕生!

 ショウ・ロンポーは、リベリオンがまだ機能していた頃、時間制限付きの変身能力を過信し、上司であるビッグベアを死に至らしめるという凄絶な過去を背負っていたことが明らかになります。その独断により、リベリオンはほどなく壊滅してしまったのでした。そのビッグベアの遺したキュウレンジャーを探せという言を、ショウ・ロンポーは胸に秘めて戦い続けてきたわけです。そして、命令に背くことが結果として何を生み出すかということを、誰よりも深く理解していたわけですね。故に、前回は冷淡なまでに作戦に沿った行動を強いたと。

 その、ある意味集団への執念にも似た思いはキュータマの反応を呼び、新たな姿、ドラゴンマスター・リュウコマンダーへの変身能力を獲得することになります。そこには、ラッキーの「一緒に戦おう」という言葉が強く作用しており、ラッキーがやはり「キュウレンジャー」のアイコンであることをアピールしていました。このキュータマの呼応に関しては、直後にリュウボイジャーが簡単に登場してしまうことなどと併せ、ちょっとした「奇跡」を思わせる展開になっていて、少々安易なご都合主義は否めないところですが、「そんなことはどうでもいい」という勢いで押してくるのだから、これはもう圧倒されても仕方がない(笑)。

 どうします? このリュウコマンダーの格好良さ。

 マントを擁したデザインが格上の戦士を思わせる素晴らしさ。他のメンバーとは、カラーリングのパターンも大差ない範疇で収められているのですが、このマントがあるだけで随分高貴な感じになりますね。アクションも動きを抑えつつ静と動の巧みな使い分けで、その強さのほどを猛アピール。タイムリミットの解除を喜ぶ軽口はショウ・ロンポーらしいですが、他の言動はヒロイックすぎて最早別キャラの趣でした(神谷さんの巧さよ!)。

 そしてリュウボイジャーは、「ダイレンジャー」の龍星王の進化形を思わせるミニチュア特撮が素晴らしく、古参ファンにもアピールしまくっていました。今回はまだロボにならないという引きも、良い匙加減でしたね。

ジュウレンジャー!?

 格上戦士を加えたとはいえ、合計10人に。つまり「9レンジャー」ではなくなり、劇中で「ジュウレンジャー」への改名を提案するという「暴挙」に出ました(笑)。勿論、当たり前に却下されるわけですが、ファンからのツッコミに先に対処してしまうメタなお遊びが楽しいですよね。オマージュと言えるか否かは正直微妙ですが、先の「サファリ」のように、ところどころこういったお遊びが散りばめられるのも良いと思います。

次回

 え? 11人目?