忍びの38「魔女っ娘は八雲がお好き?」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 Easyな似非英国紳士を見るも良し、芸達者な子役を見るも良し、先輩ヒーローを見るも良し。贅沢な要素を散りばめて届けられた八雲編。

 ただし、八雲編の傾向は濃厚に踏襲された為、やはりギャグテイスト満載。今回はアオニンジャー超絶の初登場という重要回でもあったのですが、さすがは八雲編、超絶化はテーマ性よりもノリが重視されたものとなりました。

エレナ

 今回の主役と言うべき重要ゲスト。ポジションとしては、天晴に対するキキョウと同じもの。ただし、キキョウは明確に天晴と同年代でカップルを形成しうる関係だったのに対し、今回のエレナは明確に子供なので、関係性はかなり異なります。

 エレナは八雲が通っていた魔法学校校長の娘で、しかも八雲は彼女と親しいという設定からして、八雲が優秀な生徒であった事は疑いようもありません。それにしても、今回迎えに来たサプライズゲストの先生といい、このエレナといい、八雲も含めて妙に日本人(っぽい人)の多い魔法学校だことで...(笑)。

 ところで、このエレナは典型的なコメディの体現者でした。いわゆる「結婚の約束」がそれで、ませた女の子に青年がタジタジになるというパターン(古くは「バトルフィーバー」にも見られ、その際のターゲットは「フランス紳士」)です。今回はそれを受け、「英国紳士として」自身のイメージを守る為に奮闘する八雲の姿に笑いを求めているわけですが、エピローグにダメ押しで「フラれる」というオチまで用意されていて、実に小気味良いギャグになっていました。

 それでも、エレナに小悪魔的なものが垣間見られるかというとそうでもなく、極めて普通の感覚を有した子供っぽい女の子という印象でまとめられているのが良いですね。恐らくは、既に名声を手にしている小林星蘭さんの芝居力も大きく影響しているものと思われます。今回はレギュラー陣のベテラン俳優が旋風のみでしたから、その芝居力がさらに強調されていました。本当に感心します。この年代は子役当たり年といわんばかりに芸達者達が活躍してますよね。

アミキリ

 今回の妖怪は「網切」をオリジンとするアミキリで、十徳ナイフがモチーフ。意外性よりも親和性を重んじたモチーフ選択が清々しく、何でも切断するという能力も実に分かり易いものとなっていました。

 妖怪的な不気味さよりは、機能美を求めたデザインが秀逸で、何となく「仮面ライダースーパー1」のジンドグマ怪人に通ずる雰囲気。従って、今回のコミカルな本編の雰囲気にも合致しています。

 恐れを集める事を第一優先とした為に、「大事な物を切断する」という生命に影響しない蛮行から始まりましたが、クライマックス前ではエレナを「八雲の大事な物」として切断しようとする等、急激にバイオレンス寄りへ。この時点で一気に悪役度を増す辺り、なかなかの凄味を感じさせました。ここで晦正影も含めた卑怯者としての地位が確立した事で、八雲が放った偽装作戦もある意味正当化される事となり、一気呵成に決着へと突き進む爽快感が約束されます。

八雲の嘘

 これまた常套句。遠方の知己との手紙のやり取りで、相手を喜ばせる為につい嘘を書いてしまうという、お約束のパターンです。

 私がこのパターンで最も記憶に残っているのは、「ドラえもん」でのスネ夫の弟・スネツグの話です。ニューヨークの叔父に養子に出されているスネツグは、スネ夫と定期的に手紙のやり取りをしていて、スネツグの抱く「素晴らしい兄」のイメージを裏切りたくないスネ夫が、嘘を並べ立てているというストーリー。スネ夫の生来の見栄っ張りな性格と相俟って魅力に溢れ、ちょっとホロリとさせる傑作です。

 八雲は見栄っ張りではありませんが、英国紳士を気取っているという点で気障なのは周知の通り。厳密にはエレナに対する見栄ではなく、エレナの期待する魔法使いであろうとする優しさから、「日本で魔法戦隊のリーダーをやっている」という嘘をついているわけですが、「魔法戦隊のリーダー」という時点でかなりの見栄が入っているような気がしますね。

魔法戦隊マジマジジャー

 エレナ突如の来日に焦る八雲が、苦し紛れに天晴達を巻き込んで「偽装」する様子は、終始ドタバタ劇の様相を呈していて可笑しい限り。その最たるものが、この「マジマジジャー」でした。黒いマントを羽織っただけですが、雰囲気は一気に魔法戦隊化。やはりマントは偉大です。

 これを含めた数々の偽装の間、霞が意外とピリピリしていて可笑しさを誘います。逆に風花は同情的。二人の態度の対比が出て来るシーンは珍しいので新鮮味がありました。

初のダブル超絶!

 こう書くと凄い事のように思えますが、ダブルの内の片方は完全にギャグ...。

 まず、エレナを人質に忍シュリケンを要求する晦正影に、それが罠であると確信していた八雲が、「一人で赴く」振りをして各人の変化したアイテムを纏って現れる奇策で対抗。エレナを危険に陥れる晦正影に対する怒りで突進する八雲の熱さに、獅子王が応えるという形でアオニンジャー超絶が誕生します。こちらは単純に格好良いシチュエーションで展開され、普段はクールに振る舞う八雲が熱くテンションを上げていく様子は、かなりの盛り上がりを見せます。

 巨大戦でも八雲のテンションは上がる一方。違和感を覚えるくらいのテンションでワクワク(一方でハラハラ)してしまいました。

 エピローグでは、「忍者成人式」の衣装をどうするか...という話で盛り上がったところで、まさかの八雲生身超絶。風花に続いて二人目の快挙で、変身前後で超絶化したのは初となりました。いやはや、何が起こるか分かりませんねぇ。

小津翼登場!

 忍者系の先輩ゲストはストーリーにガッツリと関わってきましたが、今回は魔法系だった為か、本当にサービスといった感じの登場でした。

 マジイエロー=小津翼はマジレンジャー兄妹の中では二番目に若く、ちょっと不良っぽい雰囲気が特異なキャラクターでした。演者の松本寛也さんは、後に「ゴーバスターズ」で物語の重要な鍵を握る追加戦士・ビートバスター=陣マサトとしても出演。ちょっと風変わりながらもすっかり大人になった雰囲気でストーリーを盛り上げました。

 翼はエレナを迎えに来ただけですから、八雲に魔法の手ほどきをしたりといったシーンは、残念ながらありませんでした。しかし、今シーズンはやはり忍者のお話なので、これで良かったのだと思います。「魔法」というキーワードに反応して、出てくれたら面白いなぁ...と漠然とした思いを持っていたので、むしろ、よくぞ実現してくれたと言いたい処です。

次回

 次回はまさかの牙鬼幻月の息子登場。「最強の敵」という雰囲気ではなさそうですが...戦隊にはこういう第一印象を裏切る例が散見されますからねぇ。油断は出来ません。