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ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ(紙ジャケット仕様)

 「しょうがない」で提示された要素が見事に開花した傑作アルバム。音の傾向としては、「コンストラクション~」から続くメタリックなオルタナティヴ・ロックであるが、そこはクリムゾン。見事に叙情性とユーモアが取り混ぜられ、惜しみなく各自のテクニックを投入した音作りがなされている。

 「ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ」と題された小曲が散りばめられる構成は、かつての「ポセイドン」を連想させるが、「ポセイドン」ほど叙情性に流されることもなく、かえってクールな印象さえ与える。「ザ・パワー・トゥ・ビリーヴ3」はタイトルチューンとして機能するインプロヴィゼイションの色が強い曲だ。

 さて、アルバムの本章として最初に登場するのは「レヴェル5」であるが、これは「太陽と戦慄パート5」と考えてほぼ差し支えないと思われる曲。テクノっぽいリズムにメタリックなリフが重ねられるメタル・クリムゾンの正統だ。「エレクトリック」は「コンストラクション~」のタイトルチューンを想起させる細かいアルペジォの掛け合いがクールな曲。同様にインストの「デンジャラス・カーヴス」は、プロジェクト・シリーズの集大成を思わせる即興的でありながら構築美にあふれたシリアスな曲である。

 歌モノとしては、「しょうがない」に収録されたものの別バージョンを聞かせる「アイズ・ワイド・オープン」と「ハッピー~」、そして新曲「ファクツ・オブ・ライフ」がある。「アイズ・ワイド・オープン」は今回はアコースティックではないバージョンで収録。当アルバムのキャラクターにマッチしている。「ハッピー~」は同じ演奏をエディットしたものと思われるが、展開がスピーディでよりカッコいい。「ファクツ・オブ・ライフ」は最近のクリムゾン作品に必ず収録されているお遊び系の曲だ。

 意外と話題にならなかったアルバムではあるが、私としては、クリムゾンのベスト・アルバムとして強く推挙したいところだ。

しょうがない~ハッピー・ウィズ・ホワット・ユー・ハヴ・トゥ・ビー・ハッピー・ウィズ

 「ザ・コンストラクション・オブ・ライト」で確かな感触をつかんだフリップが、更なる発展へと向け「ヌーヴォ・メタル」なる道標を掲げて放ったミニ・アルバム。「コンストラクション~」でのソリッドでメタリックな要素はそのまま受け継がれているが、よりヘヴィメタルへと接近しつつパット・マステロットの鋭いエレクトリック・ドラムとのアンサンブルによって、既成のロックにはない緊張感を生み出している。

 本作の白眉は一応タイトルチューンである「ハッピー~」であるが、ブリューのポップ・センスとオルタナティヴ・ロックの持つ現代音楽的なアプローチ、そして先鋭的なリズムセクションが見事に融合し、緊張感がありつつもユーモアのある佳曲となっている。また、「アイズ・ワイド・オープン」は「スラック」の「ワン・タイム」を彷彿とさせる曲だが、アコースティックな響きが印象的で叙情性はより深いものとなっている。

 本作の中で最も異彩を放つのが「ポテト・パイ」。前作の「プロザック・ブルース」で示されたブルースへの接近が、この曲ではより顕著に...と書いていて思わず笑ってしまうほど、モロにブルースになっているこの曲は、あくまでお遊びだろう。しかしお遊びにしてはなかなか良い曲だ。

 「太陽と戦慄パートIV」はライヴ・バージョンだが、フリップが「ヌーヴォ・メタル」を意識した原点となる曲だと語っているとおり、そのエッジや重みは「コンストラクション~」に収録されたバージョンから格段の進化を遂げている。ある意味「ヴルーム」以上にフルレンス・アルバムへの期待を煽ったミニ・アルバムだった。

ザ・コンストラクション・オブ・ライト

 ダブルトリオで世界中を行脚した後、新作のリハーサルに失敗したクリムゾンは「プロジェクト1~4」と呼ばれるミニ・グループに分裂し、それぞれが活動するという何とも奇妙な行動に出る。ところが、それら「プロジェクト・シリーズ」から届けられたライヴ・アルバムを中心とした作品群は、クリムゾンとはまた違った個性を放ちながら、ニュー・クリムゾンへの期待を高めるに充分な魅力を持っていた。

 果たして、またも復活したクリムゾンは、ダブルトリオではなかった。前作のメンバーより多忙を極めるトニー・レヴィンが抜け、さらに重鎮ビル・ブラッフォードが遂にフリップと袂を分かったのである。

 さて、そのような紆余曲折を経て制作された本作は、「ヴルーム」、「スラック」に匹敵する衝撃を持って迎えられた。本作で展開されたのは、あまりにもエッジの鋭いプログレッシヴ・ヘヴィメタルだった。タイトル・チューンは「ディシプリン」を髣髴とさせるリズミックなナンバーだ。従来の作品へのオマージュともとれるタイトルからは想像もつかない程「進化」しまくった「フラクチャード」と「太陽と戦慄パートIV」を聴けば、クリムゾンは充分にプログレッシヴ・ロックしていることが分かる。「フラクチャード」に関しては、もはや人間業とは思えないハイスピード&ヘヴィなアルペジォが展開され、鳥肌だけでは済まされないものとなっている。「太陽と戦慄パートIV」は、従来の「太陽と戦慄」シリーズがどこかで抱えていたユーモアを捨て去り、これでもかと言うほどヘヴィなプログレが展開される。「コーダ・アイ・ハヴ・ア・ドリーム」でブリューの歌声が聞こえてきた頃、やっと一息付ける様な緊張感が凄まじい。

 一方で、ヘンな楽曲も多く挿入されており、ブルース嫌いのフリップがブルースに歩み寄った「プロザック・ブルース」、意味不明の歌詞とコード進行が可笑しい「イントゥ・ザ・フライング・パン」と「オイスター・スープ~」が作品にユーモアを与える。ただし、演奏はヘヴィそのものであることに言及しておかなければならない。

 なお、本作でのクリムゾンは「プロジェクトX」としての側面も持ち、ボーナストラック的に1曲だけプロジェクトX名義の曲が収録されている。

スラック(紙ジャケット仕様)

 ミニ・アルバム「ヴルーム」で衝撃的な復活を遂げたクリムゾンが、満を持して放った会心のフルレンス・アルバム。

 「ヴルーム」で試みられたダブルトリオの可能性をより整理した上で各楽曲を組み立て、アルバム全体を一つの流れに統一した。それ故にトータル・アルバムとしての完成度の高さをも内包した傑作に仕上がっている。

 オープニングを飾る「ヴルーム」は、ダブルトリオが二手に分かれて左チャンネルと右チャンネルをそれぞれ占拠し、同一楽曲を別個のスタイルで演奏するという、前作とは異なるアプローチが成され、ダブルトリオの一つの形を鮮やかに提示して見せる。

 続いてブリューの叙情的な歌声が印象的な「ダイナソー」。むしろ初期のクリムゾンを想起されるような傑作チューンで、この曲とより暴力的に展開される「スラック」、ダブルトリオ・クリムゾン一流のポップス・チューン「ピープル」の3曲で本作はほぼ決まり。

 最後を飾る「ヴルーム・ヴルーム」は、展開やテイストすべてが「レッド」を思わせ、この頃のクリムゾンが何を目指し、何を復活させようとしていたのかがよく分かる。パワーとカッコ良さが程よく同居した、まさに傑作アルバムだ。

ヴルーム(紙ジャケット仕様)

 「スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー」以来、永らくシーンに登場しなかったクリムゾンが、遂に復活。まずその音はミニ・アルバムという形で届けられた。それが本作である。

 クリムゾン停止期間中でも、「ディシプリン」のメンバーはそれぞれに音楽シーンで活動しており、それぞれの分野で成果を上げていたのだが、ファンが望んだのはやはりクリムゾン復活であった。復活したクリムゾンは「ディシプリン」メンバーに加え、フリップの愛弟子トレイ・ガン、ロックシーンの新鋭ドラマー、パット・マステロットという布陣だった。

 ダブル・トリオと呼ばれるこの編成は、様々な表現を試みるばかりではなく、演奏に厚みを与えた。その成果はタイトルチューン「ヴルーム」や次のフルレンス・アルバムのタイトルともなった「スラック」、そして「ケイジ」に現れている。特に「ケイジ」は、これが手弾きかと疑わせるほどの超絶アルペジオとヘヴィなディストーション・ギターのサウンドが交錯する爆弾チューン。短いが、パワーに溢れた傑作だ。

 その他の楽曲は、荒削りながらも爆発寸前を思わせるパワーを発散するメタリックなもので、それらは次のアルバム「スラック」でより洗練された形の楽曲として提示されることとなった。そのため、このヘヴィさを好むファンも多く、「スラック」よりむしろ「ヴルーム」という意見もまま聞かれる。

スリー・オブ・ア・パーフェクト・ペアー(紙ジャケット仕様)

 「完璧を成す3つの要素」という意味深なタイトルを持つこの作品は、やはり基本的に「ビート」と共に「ディシプリン」の続編である。よりダンサブルというかリズム重視の傾向が窺える「レフト・サイド(アナログのA面にあたる)」と、このメンバーでのプログレッシヴ・ロックを追求した「ライト・サイド(B面)」からなり、「ビート」で試みられたキャッチーとプログレッシヴのギャップをより鮮やかな形で示したものと言える。

 タイトルの意味はよく分からないが、この時期のクリムゾンはフリップ、ブリュー、レヴィンというソロプレイヤー3人体制とも言え、彼らの三位一体の演奏がここに完成を見たと宣言しているのかもしれない。

 クリムゾン史上、最も異色に響くダンス・ナンバー(!)「スリープレス」の格好良さは、ブリューの幻想的なヴォーカル、効果音のようにも聞こえるフリップのギター、スラップ・アンド・プルの職人芸が冴えるレヴィンのベースが織り成すものであるし、最終を飾る「太陽と戦慄パートIII(!)」はシャープ・スピーディ系プログレッシヴ・ロックのお手本とも言えるもの。

 この後しばらくクリムゾンとしての活動は停止されるが、復活したクリムゾンは、この時期のメンバーをベースにしたものであり、音楽性もこの時期と「レッド」期の融合を目指したものであった。

ビート(紙ジャケット仕様)

 「ディシプリン」で鮮烈な「デビュー」を遂げた新生クリムゾン。その方向性は忠実に守られ、続編と呼ぶに相応しい作品が発表された。それがこの「ビート」である。

 タイトルから連想されるような、いわゆるビートの強調といった側面は特に感じられず、より前作のインパクトを拡大する方向で製作されたと思われる本作。前作よりも「プログレ」の要素が強まり、ブリュー節とフリップ節はより両極端になった印象である。ただし、それがこのアルバムをまとまりの無いものにしているのかと言えば、そういうわけではない。4者4様の個性がうまく反応しているというか、強力なパワーで満たされている。

 「ニール・アンド・ジャック・アンド・ミー」や「サートリ・イン・タンジール」は、前作の要素を一歩推し進めようと試行する様を聴くことが出来る。「ウェイティング・マン」のようによりパーカッシヴな側面を強調したものも散見される。

 巷の評価はあまりにも低いが、それは不当というもの。これは孤高のプログレッシヴ・ロック・グループであるクリムゾンの、挑戦が結実したアルバムである。

ディシプリン(紙ジャケット仕様)

 「レッド」「USA」以来沈黙を保っていたロバート・フリップは、突如キング・クリムゾンを復活させた。ロバート・フリップとビル・ブラッフォードという前作からの残留組に、アメリカンであるエイドリアン・ブリューとトニー・レヴィンという名うてのミュージシャンが加わり、それは始動した。

 そこに展開された音楽は、これまでのクリムゾンと全く違う方向性を示していた。前作までが、エキゾチックな要素を散りばめながらも、ブリティッシュの香りを少なからず漂わせていたのに対し、この「ディシプリン」は本当に手で弾いているのがにわかに信じがたいような高スピードかつ正確無比なシーケンス・フレーズを主体にした、速度的な爽快感を醸し出す音楽である。

 「フレイム・バイ・フレイム」、「セラ・ハン・ジンジート」などにそれは顕著で、スピード感、難曲感、その上グルーヴ感さえも漂わせているのは驚嘆すべきことだ。

 「暗黒の世界」に収められた「突破口」でその片鱗は窺えたが、ブリューを得て、一気に開花した印象。これは現在の耳で聴いても相当カッコいいアルバムである。

USA(紙ジャケット仕様)

 「レッド」で終結宣言を告げたクリムゾンが、最後に放ったライヴ盤。「アースバウンド」とは異なり、音質は高レベル、演奏も精緻。何から何まで好対照を成すライヴ盤である。

 オーヴァーダビングが施されていて完全な生ライヴではないが、脱退したクロスに変わってオーヴァーダブに参加したのが、ロキシー・ミュージックやジェスロ・タル、UKに参加するというキャリアを築くエディ・ジョブソンであり、クロスよりもエキセントリックなプレイがこのライヴ盤の印象を決定付けているようだ。

 しかしながら演奏自体はやはり素晴らしく、この時期のライヴ盤は後に発掘盤として沢山リリースされたが、どれもこれも恐ろしい完成度を誇っていた。その上、壮絶とも言えるインタープレイには、誰しも戦慄を覚えること必至である。当時正規ライヴ盤はこの「USA」しかなかったので、ファンは、きっとレコードの溝が擦れる位聴いたに違いない。CD化もここに掲載した紙ジャケット盤が初めてで、長い間の廃盤状態が伝説化を一層強めたようだ。

 なお、オリジナル盤は2~7曲目のみが収録されており、1、8、9曲目はCD化に際しての新収録である。

レッド(紙ジャケット仕様)

 "クリムゾン"と同系の意味を持つ名を冠す「レッド」が、事実上クリムゾンの終焉を告げた。ライヴ盤である次作「USA」は、レッド以前に収録されたものであり、時系列的に言えばこちらがフリップ=ウェットン体制最後のアルバムとなる。

 単純に、このアルバムはロック史上に残る傑作であり、同時にプログレッシヴ・ロック最後の華麗なる爆発の瞬間でもある。それは、ダイナミズムに溢れた感覚的なインプロヴィゼイションをベースに、精緻な音楽を構築しようという試みが、珠玉の作品を生み出した瞬間だ。

 あらゆる「ハードロック」を超えたメタリックに過ぎるタイトル・チューンから、ヨーロッパの薫り高いバラッドの「堕落天使」、伝説のタムタム・プレイ炸裂のハードロック・ナンバー「再び赤い悪夢」、凄絶なインプロヴィゼイションが繰り広げられるライヴ録音の「神の導き」、プログレッシヴ・ロックの代名詞とすることに異論を待たない最終曲「スターレス」まで、このアルバムには一切の無駄がない。特に「スターレス」は変化していくテンポや繰り出される変拍子、鳥肌モノのクライマックスまで完璧である。

 なお、直前に脱退したデイヴィッド・クロスや、盟友イアン・マクドナルドがゲスト参加しており、クリムゾン終結に花を添えた。

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