第32話「師匠の形見」

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師匠の形見

 プロールが何故サイバーニンジャとなったのか、その過去が明かされるエピソード。

 ここに来て、各キャラクターの過去が続々と明かされているわけですが、一応最終シーズンにあたるので、色々とケジメを付けておく必要があるわけですね。

 ラチェットのエピソードは、オメガスプリームとの関係を、過去と現代に亘って行き来しながら確認するものでしたが、今回のプロールの場合は、既にオールスパークの源に還った師匠との関係を、師匠の関係者と交流する過程で振り返るといった構成になっています。ある意味、これまでのエピソードの中で最も「泣ける」一編となりました。

 しかも、プロールが物凄く重要なキャラクターになる事を予感させるラスト。当初はオプティマスのチームに馴染めないキャラクターとして描かれ、徐々にチームの大切さを学んでいったプロールですが、そのプロセスも、サイバーニンジャを極める為に必要なものだったように描かれ、満足度も一際高いものとなっています。

 以前、一過性のもののように扱われたサムライプロールも、しっかり復活。しかも、以前のサムライプロールのように、純粋な力として鎧をまとうのではなく、明らかに「悟り」の結果としてまとっているのが秀逸です。ちゃんとロックダウンを絡ませる辺りは、さすがロジカルですね。

 では、そろそろ本編の方に。細かいオマージュやネタについても、そちらで触れようと思います。

 オプティマス達は、センチネル、ジャズと協力して、ディセプティコン狩りをしていました。メガトロン不在の今、地球に居るディセプティコンの戦力を弱体化させておく必要があるからだと思われます。

 しかし、一筋縄ではいかず。ディセプティコン側は信号発信機を使うなど、なかなか狡猾な手を使って追手を逃れています。

師匠の形見

 ディセプティコンの信号を遮断する装置の効力がない今、逆に偽の信号を発して捜査を撹乱する辺り、リーダー不在ながらも戦略的な匂いが漂っていて、面白いです。

 そんな中、突如センチネルとの連絡がとれなくなる事態に。

 心配してセンチネルを探し始めたオプティマスは、奇妙なヘルメットを被った謎の影を目撃します。

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 はっきりとは分かりませんが、オプティマスは新手のディセプティコン登場を疑ったと思われます。

 影を追っていくと、そこにはサンストームが。何と、センチネルが一人で捕まえたと豪語しています。

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 明らかに挙動不審なセンチネルには笑えますが、この時点ではどんな手を使ったのかさっぱり分からず。ただ、「あんなズルい取引をするなんて…」とサンストームが言うのを必死で制止していましたから、この時点でも、何らかの取引による結果だという事は分かるようになっています。

 ただ、相手が誰なのか、しかも何を取引材料として使ったのか、さらにはどんな取引をしてサンストームを捕まえられたのか、さっぱり分からない処がいいです。先読みを許しません。

 エリートガードの船に戻ると、何と既にスィンドルとブリッツウィングも捕まえていました。

師匠の形見

 センチネルは明らかに何かを隠していると踏むオプティマス。プロールも同意見で、早速基地に帰って調査を始めることに。

 まず手始めに、オプティマスが見たという謎の影のヘルメットを特定します。

 オプティマスが見たシルエットは、このヘルメット。

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 このヘルメットを見て驚いたプロールに、過去がフラッシュバックしてきます。

 ということで、ここより過去編。

 過去編では、プロールがまだエキセントリックな青二才だった頃が描かれます。つまり、サイバーニンジャになる気も全くない時期です。

 この人物が、サイバーニンジャの師・ヨケトロン。

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 このヨケトロン、タカラトミーの餘家英昭さんへの、スタッフのリスペクトから生まれたとされるキャラクター。餘家さんは、トランスフォーマーの前身であるミクロマン時代から開発に関わっている重鎮であり、正にピッタリなモチーフというわけですね。

 ヨケトロンだけでも相当な話題性がありますが、同じシーンには、ワーパスというキャラクターも登場します。

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 「ワーパスという」なんて言ってしまいましたが、言わずもがな、G1のキャラクターです。

 当時はトイにおいてミニボットの一員として括られ、アニメでは扱いの曖昧な戦車のトランスフォーマーでしたが、結構登場回数も多く、やや呑気で豪気な戦車野郎というイメージが秀逸でした。今回は、巨大な戦車の兵士といった趣であり、よりパワーアップしているものの、イメージはG1のワーパスそのものです。

 プロールはワーパスに、「凶暴なロボット」と呼ばれており、しかも凶暴と揶揄されるだけのパワーを持ちつつ、兵士として戦争に行くのを嫌がっている若者とされていて、その口調もかなり「青二才」を意識したものになっています。

 「何で他人の戦争の為に、危険を冒さなきゃならないんだ」とヨケトロンに言い放つプロール。ヨケトロンは、「そなたの刑務所行きを止めるのに、私は危険を冒した。私の元で学ぶというなら、それも報われる」と返します。

 続いてヨケトロンは、自分に阻まれることなく、プロールがこの部屋を出られたならば、どこへ行くのも止めないと言います。プロールはあざ笑うかのようにトランスフォームして部屋を出ようとしますが、結局ヨケトロンに阻まれ、部屋を出る事は出来ませんでした。

 そして、まずは掃除から始めよ、と、掃除機のようなものを渡すのでした。

師匠の形見

 ここまでのくだり、完全に昔の武道系映画やカンフー映画の典型をなぞっていて、それはそれで笑えてしまうのですが、こういうシチュエーションは「武道のエキゾチックな魅力」の普遍性を担っているものであって、やっぱりいつの時代でも「いいもの」ではあります。

 ここで現代編にスイッチ。

 プロールは、ヘルメットがヨケトロンのものだった事から、オプティマスが話しかけるのも聞かず、すぐ基地を飛び出し、エリートガードの船に足を運びました。

 実はジャズもヨケトロンの弟子であり、プロールはヨケトロンのヘルメットについてジャズと意見交換。

師匠の形見

 そこにやって来たセンチネル。彼はヨケトロンを「ポンコツ」呼ばわりし、プロールとジャズの困惑した睨みの洗礼を受けます。慌てたセンチネルは、いそいそと外出して行きました。

 外出したセンチネルを、ジャズと共に追うプロールに去来する過去…。

 ここで過去編へ。

 プロールの武器を取り上げ、何も無いところから始めなければならないと説く、ヨケトロンのシーンが描かれます。この時のプロールは、恐らくその真意を理解しておらず、単に武器に頼らない体術を磨く事に専念し始めたものと思われます。ヨケトロンの真意は、後に何度も言及される「念じることで成し遂げられる」高みへの、基本となる事柄でしょう。

 ここでまた現代編へ戻ります。

 セーフガードの二人が、エリートガードの船の姿勢制御装置を修理しようとしていましたが、何故かあった筈の取り替え部品がなくなっていました。

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 一方、センチネルはラグナッツをも捕らえており、その凄まじい活躍ぶりに、オートボット達は驚きを隠せません。

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 センチネルが誰かの手を借りているのでは、とプロールは指摘。彼の脳裏にはヨケトロンの存在があり、漠然と何らかの影響を感じている様子です。

 逮捕されたディセプティコンは、武器がなくなっている事に気付くプロール。

 ここで一つミスディレクションが仕掛けられています。先程の過去編にて、プロールの武器を容易く取り上げるヨケトロンが描写されている為、何となくヨケトロンの仕業ではないかと錯覚させられるのです。少なくとも私はちょっと錯覚しましたよ。

 なので、「武器を外すのが巧いロボットを知っている」というプロールの言葉には、この時点で色々な解釈が成立します。

 一つの確信を得たいプロールは、ラグナッツの拳はどこにあるのかと尋ねます。センチネルは、おどけて驚いたような顔をしつつ、それを得意げに披露するのでした。

師匠の形見

 ここでプロール、何か確信したようです。

 シーンは過去編へ。

 ヨケトロンによるプロールの武術の修行が続いています。

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 必殺技コールとか、多分日本版独自なんでしょうけど、演武のような動きには、優雅さが漂っており、やはりサイバーニンジャには東洋系武術のエッセンスがかなり導入されているようです。

 そして、武器を持つに相応しいサイバーニンジャとなったプロールに、ヨケトロンよりソーサーエッジが与えられました。

師匠の形見

 これで一応、プロールは、サイバーニンジャを名乗る資格を与えられたものと考えられます。彼がヨケトロンに案内されたのは、歴代サイバーニンジャの胸像が飾られている部屋。胸像は何体かあるのですが、一つだけ空席になっています。

師匠の形見

 それはかつてのヨケトロンの弟子であり、サイバーニンジャに恥をかかせた人物だといいます。

 その人物の正体は、今回引っ張られる事なく判明します。ネタを出し惜しみしない構成が心地良いですね。

 ヨケトロンは、念力を駆使してプロトフォーム保管庫のチャンバーを開けて見せます。「念じることで成し遂げるのだ」というヨケトロン。この一節が、後で呪文のように繰り返されますので、かなり印象に残ります。なお、チャンバーを開ける際に、ヨケトロンは舞いつつ「ンーーーー」という低いハミングを披露。この奇妙なハミングは、以前プロールが念じる際に使ったものと同様です。こんな処に伏線のようなものがあったとは。

 ヨケトロンによると、サイバーニンジャの使命はサイバトロンの未来であるプロトフォームを守る事だといいます。オメガ計画が失敗すれば、多数のオートボットが死に至る為、ディセプティコンに対抗すべく、大量のプロトフォームが必要となるのです。

 プロールは、ヨケトロンに託された使命の重さを痛感しつつも、念力でチャンバーを閉じる事が出来ませんでした。

師匠の形見

 つまり、まだプロールには「念じることで成し遂げる」までの実力を得ていないという事になります。一人前のサイバーニンジャとなって戻って来いとヨケトロンに告げられるプロール。これはつまり、教える事がなくなったので、後は自ら会得すべしという意味でしょう。

 この辺りも、伝統的でエキゾチックな師弟関係に忠実です。

 再び現代編へ戻ります。

 センチネルは、件の姿勢制御装置を持って何処かへ向かっています。

師匠の形見

 センチネルは何とロックダウンを相手に取引しており、姿勢制御装置を譲渡する見返りに、ディセプティコン達の逮捕を手伝ってもらっていたのです。ロックダウンの実力の高さを物語ると同時に、センチネルの虚栄心の強さを垣間見るやり取りですね。

 というわけで、ヨケトロンのヘルメットを被っていたのもロックダウンでした。

師匠の形見

 プロールは、ラグナッツの拳を見て、ロックダウンの仕業だと気づいていたらしい。ちょっと根拠が弱い気もしますが、以前ロックダウンと戦っている為、「武器の外し方」に特徴があったということかな?

 で、今度はラムジェットが捕らえられていたわけですが、それは実は芝居。

師匠の形見

 ディセプティコン側からロックダウンに出された条件の方が良かったのです。センチネルは逆に電子手錠をはめられてしまい、ラムジェットによって拘束されてしまいます。

 一方で、ロックダウンとプロールの戦いが開始されます。

師匠の形見

 プロールの動きを読むロックダウン。「ヨケトロンの精神論になど興味はないが、ヘルメットは気に入っていた」などと言いながら、余裕の戦いを展開します。

 要するに、ロックダウンもかつてはヨケトロンの弟子であり、例の「恥をかかせた人物」こそが、このロックダウンだったのです。プロールには、思い当たる事件がありました。

 その事件を描く過去編。

 プロールは「念じることで成し遂げる」ステージへと到達出来ず、失意の中ヨケトロンの元へ帰ってきました。

 すると、ヨケトロンは保管庫よりプロトフォームを奪われ、スパークは風前の灯という状態。

師匠の形見

 プロールは咄嗟に代わりのプロトフォームへスパークを移します。しかし、ヨケトロンは、「良いか、未来を過去の為に犠牲にしてはならぬ。いつの日か、この時が訪れたら、お前も分かるだろう…」と言い、自らの寿命を自覚し、オールスパークの源へと還って行ったのでした。「アニメイテッド」の中でも突出して涙を誘うシーンですね。

 そして現代編へ。

 ヨケトロンを襲ってプロトフォームを盗んだ、あの忌まわしい事件の犯人は、ロックダウンでした。あの事件こそ、いわゆる「賞金稼ぎ」の初仕事だったわけです。

 いかにもアメリカンな、モンスターカーにトランスフォームするロックダウン。彼がエキゾチックな武道精神と遠い処にある事を、ビジュアルが既に語っていたわけです。素晴らしい!

 怒りに燃えたプロールは、ロックダウンを追い詰めてヘルメットを取り戻したのですが、奸智に長けたロックダウンは、ヨケトロンのヘルメットに拘束装置を仕込んでいました。

師匠の形見

 そのままロックダウンの船に運び込まれたプロールは、かつて力を求めて着たサムライの鎧を見ます。ロックダウンが作り上げたもので、プロールの部品を組み込む事で完璧になるといいます。

 その時、プロールは「念じることで成し遂げる」を実践し、拘束を解く事に成功します。

 一方、外ではラムジェットとの戦いが展開されていました。お約束とばかりに、ジャズがセンチネルを誤爆!

師匠の形見

 そしてセーフガードも誤爆!

師匠の形見

 さらに、センチネルを抱えて空へと逃げたラムジェットに、オプティマスがウルトラスプレーを浴びせると、センチネルは頭から落下…。

師匠の形見

 ホントに損なキャラですね…。

 密かに拘束を解いたプロールは、ヨケトロンのヘルメットと鎧をまとい、サムライプロールに!

師匠の形見

 「私は学んだである。サイバーニンジャにとって、大事なのは武器ではない!」

 プロールは遂に、力の象徴としてではなく、志の象徴として鎧をまとう事が出来たのです。

 一方、オプティマスとジャズは、ラムジェットにスタジアムのスコアボードを浴びせて動きを封じようとします。ところが、格闘しながら躍り出たプロールとロックダウンも巻き添えに!

師匠の形見

 しかし、プロールは「念じることで成し遂げて」いました。

師匠の形見

 優雅な舞によって、破片が宙を舞っています。

 これをカッコいいと見るか、それとも何かカッコ悪いと見るかによって、物語への入り込み具合が違ってきてしまうわけですけど、この辺りは洋画にあるエキゾチックなシーン作りに、失笑してしまうか否かに通ずるかも知れませんねぇ。

 当のロックダウンは、すぐさま現場を離脱してしまいました。姿勢制御装置が彼の渡ったままな気もしますが(笑)。

 エピローグ。「先生のヘルメット、取り戻したんだな。きっと、先生も喜んでるよ」とジャズ。こういう控えめな処がいいですね。

 「ありがとう。このヘルメットに恥じぬよう、力の限り頑張るである」とプロール。

師匠の形見

 彼はヨケトロンの魂を継承したに違いありません。




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