第35話「ヴァーチャルリアリティの罠」

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ヴァーチャルリアリティの罠

 前後編、終わってみると、実に硬派なSFモノでしたね。

 サブタイトルでは、「ヴァーチャルリアリティ」の部分をクローズアップしている感じですが、それよりはサウンドウェーブの暗躍がリアル世界に及んでいる不気味さの方が強かったようです。

 随所にギャグとしてのシーンも盛り込まれていて、車輌の運転のままならない人間オートボット達とか、スクラッパーやレックガーの思慮がとっても浅いとか、色々と笑わせてくれるので、全体的なトーンは割とライト。サリにしても、オートボットが掌握されてしまうという、かなりの危機的状況にありつつ、まるでゲームを楽しむかのような感覚で対処しているので、やっぱりライトな感覚で楽しめるのです。

 とにかく、サリの活躍が楽しい一編でした。結局、サウンドウェーブはメガトロンの干渉を一切受ける事なく、単独で行動していた事になりますが、メガトロンに付き従う役柄も見てみたいですねぇ。

 それでは、本編の方へどうぞ。

 いわゆる「洗脳」の作業中、サウンドウェーブのシステムがトラブルに見舞われます。このトラブルによって、一度は危機の大波に飲み込まれそうになったオートボット達は、一時的に考える暇を与えられる事に。

 この機に乗じ、プロールは念じる事によって、このヴァーチャルリアリティの弱点を突く試みを開始します。

ヴァーチャルリアリティの罠

 この試みは達成され、プロールはサウンドウェーブのシステムから解かれます。そして、オプティマスに付けられた装置を外そうとするのですが、サウンドウェーブの力はプロールの予想を超えていました。

ヴァーチャルリアリティの罠

 プロールは再びシステムにとらわれ、仮想空間へと戻ってしまいました。オートボットが意外に手強い事を認識したサウンドウェーブは、システムの稼働を再開。オートボットは再び人間の姿になってしまいます。

ヴァーチャルリアリティの罠

 プロールの行動や、周囲の分析によって、ラチェットは、サウンドウェーブと繋がっているものを攻撃するべきだという結論に達します。

 この、ヴァーチャルリアリティにおける、外界とリンクするシンボルという考え方は、このテの話にはよく登場しますね。しかし、ここで解決へと向かわず、さらに先手を取られて大変な事になるのが、今回の素晴らしい処。

 分かりやすいシンボルとして、黒いサウンドウェーブが登場。オートボット達は、それぞれのビークルモードのモデルとなった車輌に乗って、それを追跡しはじめます。

 黒いサウンドウェーブのカラーリングは、日本製アニメ「ザ☆ヘッドマスターズ」に登場した、サウンドウェーブの強化版であるサウンドブラスターがモチーフになっていて、現在、実際に日本では「サウンドブラスター」としてトイが発売されています。トイ自体は、アクティベイターと呼ばれる簡易変形版カテゴリーにラインナップされていますが、今回、仮想空間の中でゾロゾロと出てくるイメージと、ちゃんと合致しているのが面白いです。

 ところで、地球製ビークルを運転するのが初めてであるオートボット達は、それぞれ運転に苦戦。オプティマスは、「人間は優秀だな。運転というのは、思っていたより難しい」と、運転の難しさを訴えています。

ヴァーチャルリアリティの罠

 ただ、オプティマスは水を撒き散らす程度で、割とちゃんと走行していたのに対し、ラチェットはバック走行していたりと、かなり珍妙な運転をしていて、笑わせてくれます。

 それでも何とか「サウンドブラスター」を追い詰めたと思いきや、実はそれは罠。

ヴァーチャルリアリティの罠

 車輌の運転席という限定された空間に拘束する事で、サウンドウェーブによる再プログラミングが、円滑に進行するよう、仕掛けられていたのでした。

ヴァーチャルリアリティの罠

 正攻法ではオートボットに通用しないかも知れない。そこで、わざわざビークルを運転するという「作業」が発生するように仕向けて、不意を突く作戦だったわけです。自分と同型ビークルを運転させるというサービスシーンを、ここまで理知的に回していく構成力が凄いですね。

 一方、現実世界では、サリが次なる行動を開始。彼女は、ダイノボットの島へとやって来て、ダイノボットに加勢を頼もうとしていました。

ヴァーチャルリアリティの罠

 以前にも、オプティマス達が加勢を要請しに来た事がありましたけど、ダイノボットって意外と戦闘に参加したがらないんですよね。今回も例外ではなく、サリの依頼を断っています。

 ただし、そこにはグリムロックとスワープしかおらず、彼らの話によれば、スナールは何者かのペットになっているというのです。

 サリがスナールを探していると、海岸にスクラッパーが。あのドカンとやった話の後、ここに漂着していたんですね。

 実はスクラッパーがオイルでスナールを手懐け、ペットにしていたのですが、それにしてもスクラッパーの風貌が凄いことになっていて笑えますね。

ヴァーチャルリアリティの罠

 ロボットでも髭が生えるんだなとか何とか呟いていますが、これは遠藤雅さんのアドリブではないでしょうか。この方もビースト組で、当時もキャラクターの見た目を茶化したアドリブを入れたりなさってたので、正にお得意といった処でしょう。

 サリのオイル贈呈の話に乗ったスクラッパー。サリの提案でイカダを作り、スナールを連れて島から移動します。

ヴァーチャルリアリティの罠

 推進力をどうするのかと思っていましたが、何と自分の腕がスクリュー代わり!

 このアイディアにはシビれましたね。どうってことないシーンですけど、こういう細部への気配りが実に気持ちいいです。

 そして、これで仲間が揃ったわけではなく、会話の中の「オートボット達を助けることにより、ヒーローになれる」というサリの言葉に反応し、海中よりレックガーも登場!

ヴァーチャルリアリティの罠

 こちらは、サリのセリフではないですが、相当久しぶりの登場。バラバラになっていましたが、見事復活です。さすがはジャンキオン、G1でもガラクタから容易く復活してましたが、その能力は健在です。

 これで、「オートボット助け隊」が結成と相成りました。

ヴァーチャルリアリティの罠

 ネーミングセンスが、いかにも岩浪監督な感じですね。しかし、これがいいのです。ノリで押していく作風が、今回の雰囲気にピッタリ合致していると思います。

 そしていよいよサウンドウェーブとの対決を迎えます。ところが、サウンドウェーブは洗脳したオートボット軍団を差し向けてきました。

ヴァーチャルリアリティの罠

 トランスフォーマーでは、一部の例外を除いて、青い目がオートボット、赤い目がディセプティコンという分け方をしていますが、「アニメイテッド」では結構演出の道具として活用されている感があります。G1では、それほど青い目と赤い目に演出上の重要性がなく、色指定ミスで入れ替わった時に強い違和感を感じる程度でしたね。

 今回のように、赤い目のオートボットを違和感たっぷりに登場させることで、いかにも「洗脳された」という雰囲気を出しているのが巧いです。音声にもエフェクトがかけられていて、より一層「操られた者」としての雰囲気が高まっています。ちなみに、G1初期の日本語版では、オートボット側はエフェクトなし、ディセプティコン側はエフェクトありという演出になっていました。

 さて、「助け隊」は好き勝手に行動する為か、サウンドウェーブ一体が統制するオートボット達に歯が立ちません。特にレックガーの制御に苦労するサリは、リーダーの大変さを知るのでした。

ヴァーチャルリアリティの罠

 で、その好き勝手な攻撃ですが、中でもスクラッパーの「雪合戦攻撃」は、特に大した効果が感じられない、随一の珍妙な攻撃となっています。

ヴァーチャルリアリティの罠

 それでも、ビークルモードを活用したアタックの良さは際立ってますけどね。あと、遠藤さんが「オラオラオラァッ」とか言わなかったのは、良心かと(笑)。

 この戦闘の間、サリはチームの統制について考えていましたが、やがて、逆にバラバラに攻撃すれば、サウンドウェーブのコントロールが乱れるのではないかという事に気付きます。

ヴァーチャルリアリティの罠

 バラバラに攻撃する事で、サウンドウェーブの集中力を分散させれば、オートボット個々に対する統制力も弱くなり、結果的に弱体化するではないかと考えたわけです。

 サリの考えは図に当たり、バラバラの攻撃は、次第にオートボット達のコントロールを乱す事につながっていきます。

ヴァーチャルリアリティの罠

 成り行きやパワー押しで解決せず、敵味方が知恵を絞って戦闘を繰り広げる醍醐味。トランスフォーマーの世界観は結構楽天的でドライですが、根底にあるのは、キャラクターそれぞれが「生きている」という事。「アニメイテッド」では、特にそれが強く出ていて嬉しい限りですね。

 スナールがラチェットを捕縛したのを皮切りに…。

ヴァーチャルリアリティの罠

 続いてスクラッパーがアイアンハイドを凍結。

ヴァーチャルリアリティの罠

 一方、レックガーはサウンドウェーブに対抗し、「コパ、コパ…」と歌いながら(?)アコーディオンを奏でます。

ヴァーチャルリアリティの罠

 彼一人だけは、何やってるんだか分からないんですね(笑)。ちなみに、コパというのは、Dr.コパではなく、アコーディオン奏者として有名なcobaさんの事だと思いますが…。

 逆に、咄嗟にサリを助けるプロールの姿があったり。

ヴァーチャルリアリティの罠

 このプロールの行動は、操られているのを装っていたという、後のサリの解釈が正解ではなく、念じる事によって抵抗している最中に、プロールの意識が一瞬表出しての事であると思われます。

 前のシーンではバカをやっていたレックガーでしたが、見事バンブルビーを捕縛。

ヴァーチャルリアリティの罠

 短時間でまんまと形勢逆転です。テンポもスリルも高密度。「ながら見」を許さない構成です。そういえば、G1の日本語版は、政宗一成さんのナレーションが殆どラジオドラマ状態だったので、画面を見なくても状況を把握出来たという(笑)。なので、たまに耳寂しい時にG1アニメを流してしまいますねぇ、今でも。

 これで事件は収束に向かうかと思いきや、さらにサウンドウェーブは上手を行きます。今度は、オプティマスのコントロールに集中し、彼のパワーを用いて対抗してくるのです。

 サウンドウェーブ自身、「助け隊」の統率者が誰であるかを既に把握しており、操られたオプティマスは、真っ先にサリを襲撃します。

ヴァーチャルリアリティの罠

 しかし何と、我に帰ったプロールがサウンドウェーブを攻撃!

ヴァーチャルリアリティの罠

 ショルダーキーボードに変形したラットバットを叩き落とします。ここでのプロールは目が青くなっており、目の色による演出が、状況を分かりやすくしていますね。

 プロールは、ずっと念じる事でサウンドウェーブの呪縛から解き放たれようとしていたのでした。プロールのサイバーニンジャとしての能力は、精神のパワーという領域で遺憾なく発揮されはじめています。

 遂に元に戻ったオプティマス。ギター型のレーザービークを手に取り、すかさずかき鳴らしてサウンドウェーブに対抗します。

ヴァーチャルリアリティの罠

 このギタリストスタイルが、妙に様になっているのがいいですね。

 サウンドウェーブも音楽戦に対抗!

ヴァーチャルリアリティの罠

 G1でも音楽戦が色々とありましたけど、中でも「2010」の「音楽惑星への挑戦」は一見の価値ありです。超作画崩壊、ファンタスティック、センス・オブ・ワンダーなストーリーで、一度見たらきっと忘れられないと思います(笑)。

 ここでオプティマス、「音楽を変えるときが来たようだ!」と気合一閃。何をするのかと思いきや、何とギターをサウンドウェーブに叩きつけ、サウンドウェーブを破壊してしまいます!

ヴァーチャルリアリティの罠

 正に、エキセントリックなステージングを繰り広げるギタリストそのものですわ。いやぁ、ビックリしました。

 サウンドウェーブ破壊と同時に、街の人々も我に返ります…って、いつサウンドウェーブの統制下に入ったんだっけ?

 サウンドウェーブが「人間達も云々」と叫ぶシーンがあったので、あの時でしょうね。実際に影響が及ぶシーンは、丸ごとカットされたのかな?

 なお、街の人々の中に、またスパイク一家が登場しています。

ヴァーチャルリアリティの罠

 これを見ると、単体で「出演」していたダニエルも、二人の子であるらしい事が分かります。

 一方、サウンドウェーブのコアは、レーザービークが持ち去ってしまい、まだ復活の余地がある事を匂わせます。

ヴァーチャルリアリティの罠

 G1の頃から、レーザービークは優秀な兵士なのです。

 エピローグでは、「人間の気持ちが分かった、いい経験だった」というプロールの感想が披露されます。

ヴァーチャルリアリティの罠

 一方で、サリはリーダーの大変さを知り、少しだけオプティマスと感覚を共有する事になります。さらに、家族が大事だというテーマが語られますが、これ自体はあんまり効いてない感じがしますね。前述のカットされたと思しき部分が、そのまま人間側の被害に繋がっているので、このあたりの関係性が希薄になってしまったのは、ちょっと惜しまれますね。




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