第39駅「終わりの始まり」

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 年末という事で、シリーズとしても色々な意味で盛り上がりを演出していく時期となりました。今回は、その前哨戦といった趣。

 今回は、明がシュバルツとの約束を果たすべく、レインボーラインから離脱するというトピックをメインとしています。クリスマス時期特有の「闇減り」と呼ばれる現象を設定する事で、シュバルツの「好機」を印象付け、更にはシャドーラインの静かな内部抗争を盛り上げています。

 グリッタの新規となるセリフがあり、いよいよ日髙さんの本格的再登板も近いと思わせてくれます。まだどうなるか分かりませんけど。

 いわゆる追加戦士は、毎年様々な工夫を凝らして見せ方を変えています。敵になったり味方になったりといったポジショニングは二極化せざるを得ませんが、そこにどのようなドラマや展開を盛り込むかどうかに注力されています。

 今シリーズでは、出自がそもそも敵側であるという事に加え、馬鹿正直キャラという属性が与えられていて、類型を探すのが困難な仕上がりとなった明。彼は、味方になったり敵になったり(?)という贅沢なポジショニングの機会に恵まれたわけですが、根底にトッキュウジャーの目的を叶えてやりたいというきっかけがある事で、無類の優しさを付与されています。それだけに、明の立場は凄絶なまでに哀しい。故に、結構なお祭り騒ぎのビジュアルに彩られている筈の今回は、妙な物悲しさにも包まれていました。

 そして、その物悲しさを盛り上げるシーン作りも抜群に素晴らしいものでした。

 シャドータウンへのポイントを見つける方法を「書き置き」のように置いておいたというシーンには、明の底なしの優しさが溢れています。子供向けにひらがなを多用した内容は、ライト達を気遣っての事なのか、あるいはザラムの学力に相応だったのかは定かではありませんが、実に微笑ましい雰囲気。とても良い趣向だったと思います。で、その優しさがガツンと(特にトカッチに)響くから、とにかく物悲しい。

 明のシンボルともいうべき黄色いヘルメットが残されている...というシーンも情緒に溢れていました。レインボーラインの離脱を端的に表現する名カットであり、ライト達が味わう喪失感を印象付けるに充分過ぎる演出。本編のこの辺り、切れ味鋭い演出が光っていて実に良いですね。それにしても、離脱後の明の出で立ちが、どうもバトルコサック=神誠に見えてしょうがないんですが(笑)。

 また、クリスマスが盛り上がっているという設定のくせに、烈車内以外で殆どそういった描写がないのも、物悲しさに拍車をかけています。世間の賑わいから離れて、明の行動に心をかき乱される五人の心情を考えると、このような抑えた描写になったのも必然。まぁ、街のクリスマスに関する映像素材をわざわざ集めるのは大変だったという見方もありますが。昔の特撮だと、よくニュース映像が流用されてたりしましたね。いきなり画質が悪くなったりして、ライブラリからの拝借だとすぐわかるような(笑)。現在のハイビジョン制作だと、ライブラリの流用にも神経質になってしまいますよね。ましてや、個人情報だのプライバシーだのが厳しい世の中ですから。

 さて、シャドーラインの動きですが、まずは「闇減り」の影響でグリッタの復活が確定的なレベルにまで達しているという状況描写。この「闇減り」の時期に何が起こるかを予測しつつ、グリッタを力技で抑え込む事をしなかったゼットの不可解な心情、絶好機と見て暗躍するノア夫人の空恐ろしさ、保身の為か、自ら動く事を由としないネロ男爵、皇帝を守る為に自ら前線へと赴く献身を見せるモルク侯爵。各キャラクターが各々の思惑に応じてバラバラに動いていく群像劇的な様相は、完全に主役を食っている感じです。ただ、今回はあくまで前哨戦的な意味合いが濃いので、主役を食っていても問題ないと思います。

 ノア夫人は、「闇減り」に乗じて更に闇を減らす為に、闇を浪費するシャドー怪人であるボセキシャドーを遣わすのですが、それがいわゆる「再生怪人」に存在意義を与えていたり、ボセキシャドー自身が「鼻つまみ者」扱いされている事から、再生怪人自体の能力も非常に低く設定されている等、様々なエクスキューズがセルフパロディ的様相を呈していて楽しいです。

 再生怪人は、それこそ「仮面ライダー」のお家芸ともいうべきもので、特に劇場版はスケールアップの為に、戦闘員よりも強い怪人を多数配置してアクションを盛り上げるという手法を採用していましたが、これが今見てもエキサイティングなんですよね。で、見事にパンチ一発とかで倒れていく怪人達の姿に、哀愁を感じるわけです。「再生怪人は弱い」というのは、ピンのボス怪人が存在するというセオリー上当たり前の事なのですが、それでも過去にヒーローを苦しめた怪人が簡単に倒れていく姿には、どことなく滑稽さも感じられ、またそれが味ともなっているわけです。

 そもそも、旧本郷ライダー編の最終回(第13話)からして再生怪人編で、しかも爆弾でまとめて瞬殺されるという顛末でしたから、強力な伝統はこの時点で作られたと言えるのではないでしょうか。

 話を元に戻しますが、今回は再生怪人が見事に弱いですし、更には各怪人から明に関連する思い出を想起させられるという展開になっていて、ちょっとした総集編も兼ねていました。この構成は巧いですね。明がいかに大切な仲間になっていたか、それをライト達が再認識するというくだりになっていて、ホロリとさせられます。コミカルで無理矢理な総集編を挿入されるよりは、ストーリーに密接している分、自然ですね。

 それから、今回は年末商戦向けの宣材としての側面も大いに感じさせます。

 既に忘れ去られたようなガジェットが登場したり、巨大戦での合体変形シーンがほぼフルサイズで挿入されていたりと、笑えるくらいの大充実振り。烈車武装も大盤振る舞いでしたし、大いに盛り上がっていました。巨大戦でも再生怪人が登場する事で、このようなてんこ盛り状態でもちゃんとバランスがとれている辺り、巧いと思います。

 次回は、トッキュウ6号に関するトピックが満載の様子で。楽しみです。