第32話「心は裏表」

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 パワーアップイベント編が一段落したとあってか、ようやく本流のブラッドゲームに戻ってきました。ブラッドゲーム、古き佳き特撮TVドラマに顕著な回りくどい作戦を彷彿とさせ、割と好きなんですよね。

 今回は、ヒーローの精神面を掻き回すという、料理如何によってはすこぶる楽しいものになる素材でした。そして、その料理は実に見事な成果として提示されたわけです。

オモテウリャー

 久々に登場した「再生ではない怪人」(笑)。

 そのネーミングは実に分かり易いもので、デザイン自体も表と裏で全く異なるなど、分かり易いものが目指されているようです。特筆すべきは、「表」状態での腕がダミーとなっている点で、この「違和感」が得体の知れなさを強調していました。そして、「裏」状態で改めて腕が生えてくるという衝撃的なギミックにより、実は「裏」こそが本体なのだと示す。やはり分かり易いです。

 裏表と言えば、逆に、裏表が全く同じ姿というキャラクターも。「ウルトラマンレオ」のアシュランがそれで、色違いの同造形が裏表でくっ付いているという、奇妙かつコミカルなデザインでした。スーツアクターがシーン毎で前後逆に入るという演出も抜群でしたね。

 オモテウリャーの能力は、人々の「裏の顔」、いわゆる本音を増幅させるというもので、性格チェンジ譚では最も効果的なパターンの一つでしょう。キャラクターの個性がドラマの牽引力となっていた「ジェットマン」でも、同様のエピソードがあって楽しませてくれましたね。

裏表のないレオ

 裏に潜む本音を増幅されれば、普段とは違う強烈にネガティヴな面が見られるはずで、現に大和たちはそのような状態に陥ったわけですが、レオだけは普段と殆ど変わらないというオチがついていました。オチというよりは、あまりに何も変わらないので混乱からは置いてけぼりを喰らっており、その様子がジワジワと可笑しさを醸し出すといった具合でした。今回の操の妄想シーンにおけるエッジの効いた笑いとは異なり、非常に上品な笑いを提供していたように思います。ある意味、戦隊シリーズでは珍しいタイプの笑いだったのではないでしょうか。

 笑いの部分とは別に、レオの直情型の性格が、裏表のなさをも内包していたことが分かりました。ズケズケとものを言うにも関わらず厭味がないというレオ。それは、裏表が本当にこれっぽっちもなかったことに由来していたわけです。ある種のギャグ回で、キャラクターの本質を問うて浮き彫りにしていく華麗な筋運びがたまりませんね。

 そんな裏表のなさが、ともすればレオのキャラクター性から面白味をスポイルしてしまい、実際にそんな場面もないとは言えなかったわけですが、逆にそんな直線的な造形が今回のように活きてくることもあります。そして、物語をグイグイと牽引するパワフルさこそがレオの真骨頂であると、ここで理解できるのです。正にレオこそ、ジュウオウジャーが総崩れにならなかった今回第一の功労者であったと言えるでしょう。

不器用なタスク

 「不器用」の意味は捉え方によって変わって来るのですが、タスクの場合は人付き合いが不器用なだけで、決して手先が不器用なわけではありません。手先の器用さがはっきり描かれたわけではないですが、解毒薬の調合をしてみせるといったシーンに片鱗を見る事ができます。

 では、人付き合いについては不器用なのかというと、私にはそれほど不器用だとは思えないのですが、とりあえず社交的な周囲の面々に比べれば不器用な方なのかも知れません。今回は、指摘したい事項があるとズケズケと言ってしまい、逆に照れくさい本音については表現を躊躇っているという性格が問題視されていて、オモテウリャーの能力によって照れくさい本音の部分が表面化することで、クライマックスの展開を呼び込むという流れでした。これが実に巧い流れで、既に周知されているタスクの性格がより良い形でクローズアップされた恰好となりました。

 「照れくさい本音」というのは、勿論「面倒臭いと感じている操だが、大好きでもある」という(衝撃的な...)もので、やはり名コンビは深層で繋がっているということですね。

面倒臭い操

 冒頭のシーンにて、パンケーキをデコりまくって批判された操は、通常通りヘコんでしまいます。これでも充分面倒臭いですが、まだ軽〜いジャブ。

 その後の、オモテウリャーによって本音を増幅された大和たちの罵詈雑言(とまでは行かないが)に、操は大ダメージを受ける...というド定番の展開が楽しすぎます。風圧やワイヤーアクションまで駆使してダメージを被るマンガチックな描写は、非常にキレがあって良かったですね。

 この操の一件の直前に、大和たちも互いに増幅された本音をぶつけ合うというシーンがありましたが、こちらもなかなかの迫力。特に女同士のバトルは必見で、正直変身後で良かったなぁと(笑)。そして、わだかまりを残さないあたりもさすがの信頼関係でした。

 さて、浮き沈みの激しさは操のパワーの源とばかり、タスクの「告白」で浮上したジュウオウザワールドの強さよ! とは言え、このようなところもやっぱり面倒臭いという視点が何となくあって、その匙加減が心地良いのでした。

 そして、面倒臭さはさらに暴走し、皆の罵詈雑言の嵐が徐々に快感に変わってきたと衝撃の告白(覚醒)をしたり、タスクに「告白」されたものの、自分は大和とコンビを組みたいと「告白」(覚醒)したり。いや〜、実に面倒臭い人ですよね(笑)。

裏表アクション

 オモテウリャーの戦闘時の能力として、相手の前後を瞬時にひっくり返すという能力がありましたが、それを回避するための二人一組による背中合わせアクションが素晴らしい。一見荒唐無稽ながらも説得力のあるアクションコーディネートは、さすがと言ったところですね。こういった変化のあるアクションが入ってくると、インパクトのあるドラマとのバランスが取れて、全体的な雰囲気の活性化に繋がります。

敵も裏表

 ジニス、クバル、そしてバングレイ。三人とも裏に何か隠し持っています。クバルとバングレイは色々と明らかになってきていますが、やはりジニスはまだまだミステリアス。何となくクバルの真意を知っていて自由にさせている感じも窺えて、ボスらしさが増してきましたね。それでも、まだまだデスガリアン側の描写は不足しているように思えますが...。

次回

 ネコ科コンビという、これまで殆どフィーチュアされなかったレオとアムの組み合わせが新鮮に映りそうです。今回レオはググンと株を上げた感があるので、更なる掘り下げに期待したいところです。