第36話「ハロウィンの王子様」

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 前々回と前回のシリアスな展開から一転して、またまたユルい季節ネタ編で攻めてきました。

 ユルいとは言え、ビジュアル面では派手な演出が炸裂する楽しいエピソードとなっており、コスプレやアクションの色彩が非常に豊か。ハロウィンを題材にしつつも、それはあくまでコスプレのエクスキューズに過ぎず、実質は子役をメインに据えたシチュエーションコメディとなっていました。

ハロウィン

 すっかり日本でも「Trick or Treat」の定着が感じられます。ここ数年で急激に認知された印象がありますね。

 本邦特撮TVドラマで初めてハロウィンが風俗習慣として描かれたのは、恐らく「ウルトラマンティガ」だろうと思います。近未来の話であることを示すために、当時は認知の薄かったハロウィンが既に定着している様子を描き、現世界との時間をズラして見せたわけです。これは実に見事な手法でしたね。

 個人的には、ハロウィンは「定着」したわけではなく、ここ数年で流行しているだけのようにも思います。あまり子供たちの出番はなく、街における仮装のエクスキューズに過ぎず、本来の意味性というものは殆ど失われているからです(まあ、定着して比較的長い時間が経過しているクリスマスやバレンタインデーといったものも、とっくに意味は失われていますが)。これからどうなるか、よく分かりませんね。

 今回、「Trick or Treat」の字面に関しては、アムがお菓子をねだるというシーンに反映された程度で、やはりメインは仮装でした(笑)。

サンババ

 非常に派手で気持ち悪いデザイン。今回の派手なビジュアルの一翼を担っています。気持ち悪さを醸し出してはいるものの、その言動は常にコミカルなもので一貫しており、一方では楽しさの一翼を担うことにもなりました。

 能力は踊って火を付けるというだけ。踊る際にサンバのリズムセクションが鳴り響くのですが、今にもキョウリュウジャーが出て来そうな感じでしたね(笑)。この能力を使って何のゲームをしたかったのかは...とりあえずどうでもいいでしょう。さして重要ではありません。

真美

 今回の主役ゲスト。クルクルと変わる表情が素晴らしく、年長者たちを凌駕する演技力で場を完全に支配していました。いわゆるメガネキャラでもあるので、近眼ギャグまで披露。実にオーソドックスにまとめられた完成度の高いゲストだったと思います。

 この真美がサンババ襲撃の現場に居合わせ、ボーイフレンドが自分を置いて真っ先に逃げたことに失望し、さらにタスクに助けられたことによってタスクを「王子様」と見做したことが事件の発端になるわけですが、こうした流れは「ヒーローを好きになる少女」という定番に則っています。この定番は、結構コミカルながらも心情描写自体はディープになる場合も多いのですが、今回はあくまでギャグテイストに仕上げられました。

 蛇足ながら、「ヒーローを好きになる少女」のパターンは戦隊でも散見され、「サンバルカン」ではバルイーグルこと飛羽高之に恋する少女として、「透明ドリちゃん」の主演や「宇宙刑事シャリバン」のみゆき役で長年の特撮ファンにはお馴染みの、柿崎澄子さんが出演されていました。この話でも、今回のようにレギュラーキャラクターが「ライバル」としてポジショニングされていますが、結構ヒリヒリするような感情表現が鮮烈なので、未見の方は是非。

 さて、真美自身は大真面目にタスクを気に入っているわけですが、実際は「男性として」という感覚が徹底的に排除されていたように思います。これはやはり、ギャグであることを至上命題としていることに加え、大人と子供の組み合わせが図らずも表出させる、背徳感といったものに最大限の配慮をしたのではないでしょうか。そして、その最大の「証拠」として、最後はアムに鞍替えしてしまうというエピローグが用意されたわけです。

 エピローグにおけるアムの件も考えると、そこには「恋」ではなく「憧れ」があったようです。セラの言う「恋に恋する年頃」というのは半分当たりで半分外れ...といったところでしょうか。

タスク

 操絡みで不器用キャラを育ててきたタスクですが、操の印象があまりにも強烈なので、今一つ不器用キャラを生かし切れていない感じでした。しかし、今回は巧く作用していましたね。真美に言い寄られて戸惑う様子が実に見事。状況をどう扱って良いのか分からずに、ついつい先延ばしにしてしまう辺りにも、らしさが出ていました。

 「王子様」のコスプレはなかなかの完成度で、ヘアスタイルを変えた彼の、普段の優男っぽさとは異なる雰囲気が非常に鮮烈でした。あんなに男っぽくなるもんなんですね〜。凄いです。他の面々に比べ、どちらかと言えば正当派なコスプレだったので、インパクトが弱いかと思いきや、別の面でインパクトは絶大でした。

 そして、戸惑いつつも、最後にはちゃんと伝えるべきことを伝えようとする彼は素敵でした。タスクは一際誠実であるとはっきり示された良いエピソードとなりましたね。

アム

 サブタイトル的に一見タスクがメインでありながら、実はアムの方がメインを張っていたという...。人心を掌握する術に長けたアムは、タスクの対極に位置しており、スムーズな手口(?)でタスクにお菓子を買ってきてもらう(結局タスクは忘れていましたが)など、今回も気ままに振る舞っています。

 ただし、そこがまるで厭味にならないのが彼女の凄いところ。これぞ真の小悪魔キャラということでしょう。今回は、図らずも真美にとってのライバルになってしまいますが、「王子様を助けるお姫様も格好良い」という、よく分からない「アム理論」は真美を納得させることになり、しかもアムへの憧れを喚起するまでに至りました。

 結局、タスクはアムに出し抜かれた格好になってしまい、ギャグとして大きな成果を上げています。この流れもかなりオーソドックスで、しかも「読める」展開ではありましたが、最後に少女が女性を選択するという結末自体は、結構なインパクトを持っていたように思います。

 クライマックスのアクションでは、タスクとアムがペアとなって、ダンスのように流麗な立ち回りを披露。これもまた実に完成度が高く、所々に男女ペアを強調するフォーメーションを入れ込んで、ちょっとくすぐったくなるような楽しさを随所に感じさせていました。このコンビネーションを目撃して真美が諦める展開をも想像させるものでしたが、そこは見事に裏切られましたね(笑)。

コスプレ!

 今回の目玉はレギュラー陣のコスプレ。タスクとアム(美麗な男装)については、割と正当派にまとめられていたのですが、他の面々はなかなか強烈です。

 大和はジャック・オ・ランタン。ほぼ着ぐるみ(笑)。操は全身を布で覆ってお化けに。強烈なメイクもしており、そのノリに若干の面倒臭さを感じさせるあたりは、さすが。

 セラは魔女に。意外にも露出度が高く、刺激的なコスチューム。キャラクターの由来からして、今シーズンでは水着回を期待されていたのではないかと思いますが、ご承知のとおりそんなサービス回はありませんでしたから、今回はかなりのサービスになったのではないでしょうか。

 恐るべきはレオのメイド服姿。あの美脚を何とする(笑)。しかも結構可愛いという...。セラの、折角のインパクトを凌駕してしまいました。いやはや、恐れ入りました。

次回

 一週お休みを挟んで、いよいよ伏線改修か!? 鳥男ことバドの再登場に新戦士?? ようやく謎の一端が見えてくるかと思うと、楽しみですね。