第38話「空高く、 翼舞う」

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 今度こそ、ジュウオウバードの活躍編。前回、引っ張るだけ引っ張った効果は存分に現れていると思います。

 基本的には、徹底して大和とバドの物語。他のメンバーやキャラクターは脇役あるいは説明役となり、それが却ってバドの悲哀と孤独を際立たせていました。

 また、ジュウオウバードとイーグルの共闘は、戦隊史上屈指の空中戦として描出され、その充実度たるや劇場版をも凌駕していたように思います。

サグイルブラザーズ

 前回、次々と現れる兄弟たちに、一体どんな仕掛けがあるのかと疑問を持ちましたが、実態はなんと双子の兄弟で、一人生き残っていれば分裂して復活することができるという仕掛けでした。

 この「命を分け合っている」という設定は、割と前例に事欠かないものであり、独断ながら最もインパクトのあった例は「宇宙刑事シャリバン」の最終編でしょうか。「シャリバン」では最終ボスである魔王サイコとその化身体であるサイコラーが命を分け合っており、同時に倒さない限り何度でも復活してしまうという「典型」を示していました。そのシチュエーションが先輩宇宙刑事であるギャバンを招聘するエクスキューズとなり、二大宇宙刑事の共闘という素晴らしいクライマックスを盛り上げていました。

 今回のサグイルブラザーズは、その仕掛けが土壇場でやっと明らかになったのもあって、実に悪辣なキャラクター性を発揮することになりました。兄弟が倒れても大して動じないあたりに、そこはかとない不気味さを感じていたのですが、実は自分が倒されない限り復活が約束されているという事実が、その余裕を生んでいたわけです。種明かしの際に得体の知れない不気味さは失われましたが、「双子」といいつつ細胞分裂のように復活するビジュアルが、別の不気味さを生み出していて面白かったですね。

 双子であることは、カラーリングを除いてほぼ同一デザインであるジュウオウイーグルとジュウオウバードのコンビと双極を成してもいて、ビジュアル的に納得させられるものでした。やはり前回と併せて実に緻密に設計された話ですよね。

明かされるバドの謎

 バドは20年以上前にリンクキューブの番人になった過去を持ち、実はセラたちの大先輩だったことが明らかになりました。タスクに「自分の父に訊けば知っているかも」というようなセリフが与えられていましたが、これは20年前という年月を巧く表した見事なセリフだと思います。前回は素面アクションにおいてあまり良いところを見せてくれませんでしたが、元々の強さがリンクキューブの元番人ならではのものだと説明されることによって、セラたちを圧倒した過去を補足説明するあたり、なかなか巧いところです。

 王者の資格を盗み出すきっかけとなった事件も回想として描かれました。

 リンクキューブの番人を務めていた際、バドはジューランドに迷い込んできた人間を保護し、互いに心を通じ合わせる仲になったとしています。しかし、掟に重きを置くジューランドの重鎮たちは、ジューランドの秘密漏洩を恐れ、その人間を拘束してしまいました(切迫ムードを全く感じさせない造形の「馬型ジューマン」がちょっと笑えますが)。その後、その人間は脱出を図って行方不明になってしまいましたが、この事件がバドに与えた影響は非常に大きかったようです。

 バドは、一旦は人間と強固な繋がりを持つに至るかも知れなかったものの、それを保守的なジューマンによって阻まれてしまい、人間の信頼を裏切る形になってしまったわけです。それ故に、ジューマンと人間が関わり合うこと自体を否定するようになり、リンクキューブの機能を失わせれば人間界からの迷い人も来ることはなくなると考え、王者の資格を盗み出した...という顛末。実に悲しい過去を背負っていたバドは、自らが孤独になることと引き替えに、これ以上人間に不幸な出会いを味わわせないことを選びました。

 ここで、バドの人間との繋がりを絶つという行為が、実は人間を好きであることの裏返しなのだと分かります。それだけに、余計に悲しいものとして映るわけです。

 一方、大和に何度も(都合三度)手を差し伸べる理由は、偶然という言葉で片付けています。ただし、これが嘘であるのはバレバレ。大和を評して「あの人に似てきた」と呟く姿に、未だ謎となっている大和の父親の存在が見え隠れしています。一つ、バドの謎を大きく明らかにしたところで、ふと残った謎を置き去って行くのが粋ですね。

 そして、何と言っても村上幸平さんの風貌と抑えた芝居がバドの孤独を際立たせています。ジューマンパワーを大和に与えて白髪になっていることが、却って彼のキャラクター性を強化しており、そこに村上さんの「眼力」が加わることで、意志の強さとその影にある悲哀がより強調されます。この完成度の高さは「ジュウオウジャー」にとって何よりのアドバンテージではないでしょうか。

大和との繋がり、そしてジュウオウバード

 人間とジューマンの繋がりを絶つことを決心しているバドと、ジューマンとの繋がりで地球を守っている大和。二人は相容れない世界に生きているようですが、根本にあるのは他の種族への敬意、敬愛であり、そこは完全に共通しています。

 バドは大和に「繋がっている」ことの大切さを見せられることにより、本来相容れない筈の種族、相容れない筈の二人が探るべき別の道を見出した...ように見えます。王者の資格を盗み出したことで人間界にやって来たジューマンたち(バドの過去の事件とは逆の構図)が、大和や操といった人間と共にデスガリアンに立ち向かっている姿は、バドに大きなインパクトを与えたに違いなく、彼をしてジュウオウバードとして参戦する決意をさせるのです。

 この微妙なポジションでの参戦は、単に「仲間が増える」という商魂逞しさからは随分と乖離した(笑)、重厚なドラマを感じさせていて良いですね。戦いが終わって風のように去って行くのも良いです。

 さらに、イーグルとの差異がちょっとオレンジがかったカラーリングという程度にとどめられたスーツデザインが、常に加入している状態を許容しないので、より特別な感じを増幅しています。今回はそのあたり徹底に徹底を重ねていて、大和とバド以外を戦闘不能にしてしまい、実質イーグル&バード VS サグイルブラザーズのバトルアクションをクライマックスに持ってきました。空中戦は一体どうやって背景を撮影しているのかと思わせる立体的かつアクロバティックな構図が素晴らし過ぎて、二人の活躍を存分にアピールしていましたね。

 巨大戦では、さすがにバド専用のジュウオウキューブが登場することはなく、最後の最後にバドの活躍の場をレギュラー陣に預けることになりましたが、ここは少々残念。巨大戦は省略されても良かったんじゃないかな~と思ったりもしましたが...。

次回

 次回は岩永洋昭さんがゲストに登場! ニチアサ的には「オーズ」の伊達さんですが、私が好きなのは二代目シャイダーこと烏丸舟。あの軟派過ぎるステレオタイプなお調子者キャラクターは大好きです。予告では何となく烏丸色が出ているような...。セラがどう翻弄されるのか楽しみですね。