第7話「ゴゴゴゴーストが出た」

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 恒例の「春休み合体ヒーロー祭り」という事で、仮面ライダーゴーストがゲスト出演。

 例年、様々な仕掛けと工夫で「競演」を描いていますが、何故か今回は「ゴースト」側も含めて物凄くあっさり目な味付けになっており、実際の処、お互いストーリー上ではあまり意味がないという、凄まじい状態となっていました(笑)。

 ちなみに「ゴースト」の方はというと、大和しか出演しない上に、完全に通りがかっただけというシチュエーションで、助太刀したらさっさと爽やかに退散する薄味っぷり。しかもアランの心境変化を詳らかに描写するという重要回だった為、ここに大和が出てギャグやっちゃっていいのか? と、逆に心配になるような出演で...(一応、出会って間もない大和と「共闘」した事がタケルの心境にも影響しましたが)。

 とりあえず、ゴーストのゲスト出演はメインのトピックにはならず、あくまでショッカーをチラ見せするという「通りすがりの番宣」。今回のメインはタスクとアムであり、二人の関係(友情?)にスポットを当てた物語でした。

シオマネキング

 今回は何と、デスガリアンの怪人が登場しません。代わりに登場したのは、我らが仮面ライダーを狙うショッカー本部の次なる使者・シオマネキング。

 黄金ショッカーベルトを身につけた強力怪人・シオマネキングは、「仮面ライダー」のスチールでも登場頻度が高く(恐らく水辺の迫力ある構図が格好良いからでしょう)、秀逸なデザインと相俟って人気のある怪人です。近年の昭和ライダー共演映画等で、過去の怪人が再造形により復活する機会も多いですが、当時の水準以上の完成度で復活する姿には、やはり嬉しさを覚えますね。

 声は関智一さん。「ゴースト」でも英雄の声を一手に引き受け、最近では納谷悟朗さんの声帯模写でショッカーの首領系まで担当しており、最早この起用自体がギャグに近い印象すらあります。

 このシオマネキングが何故「ジュウオウジャー」の世界に出て来たのか、そして、何故ゴーストがそれを追ってきたのか、その辺りは全くと言って良いほど説明がありません。基本的に、タスクとアムをストーリー上孤立させる為に、このシオマネキングが登場したわけでして、まあ平たく言うと敵であれば誰でも良かったという事ですね。その証拠に、「コンティニュー」で巨大化してジュウオウワイルド(しかも6・2・3の初合体)と戦うシーンまでが用意されていて、既にショッカー怪人である必然性すら失われています。

 この巨大戦は、海が舞台になっている為、大胆な海辺との合成で表現されました。オープンセットを用いた巨大戦ほどのリアリティはありませんが、マンガチックな演出が楽しい画作りとなっていて、ライダー側の特撮に近似した雰囲気を漂わせていたように思います。それにしても、ショッカー怪人が巨大戦を繰り広げている様子は実にシュールです。

仮面ライダーゴースト

 最近の「ゴースト」本編では、闘魂フォームに直接変身する事が多いですが、「ジュウオウジャー」側にはコモンなイメージとなるノーマル形態で登場。居合わせた大和、セラ、レオのパーソナルカラーに準じてフォームチェンジするというサービスが楽しいです。

 「ゴースト」側では、大和の素面でのトランポリンアクションや、ジュウオウイーグルの華麗な空中戦を披露するというサービスがありました。こういった処で「合体祭り」の恩恵が感じられますよね。

 シオマネキングの項で述べた通り、このゴースト=天空寺タケルも通りすがりに過ぎないゲストなので、ストーリーのテーマに関わるようなポジションではありません。ただし、アクション面ではやはり戦隊とライダーの違いというものが感じられ、存分に彩りが添えられていました。あと、「仮面ライダー1号」の宣伝が「ゴースト」側ほど明確でなかったのは良かったと思います。今回の映画には戦隊が関わっていませんし。

大和、セラ、レオ

 今回は前述の通り、この三人はタスクとアムのペアとは分断される必要があったので、三人体制のジュウオウジャーが見られる事となりました。

 三人での名乗りまで行っており、正にサンバルカンやライブマンの趣。これは意外なサービスでしたね。この三人がサンバルカン体制で派手に立ち回るので、タスクとアムのドラマがより深化していたように思います。

 ゴーストとのキメについては、ジュウオウゴリラの出番。お互いに現時点の最強フォームを披露し合うというシチュエーションは共演スペシャルならでは。やはり燃えるものがあります。

タスクとアム

 几帳面なタスクと、ずぼらなアム。この二人の対比が実に面白いです。結構ありきたりなポジショニングではありますが、二人とも独特の雰囲気なので、なかなかの新鮮味を醸し出しています。

 タスクは、几帳面で口うるさい処がありながらも、アムから見ると弟のように見える少年っぽさを有しており、単なるクールキャラではない雰囲気があります。アムの様子に辟易しつつも彼女に翻弄されまくる姿は、兄が妹に対して「しょうがないやつだな」と思っているというよりは、弟が奔放な姉に振り回されているように見えます。正にこれが絶妙。これにより、アムが単なる「天然キャラ」とはまるで異なる「自由人」として成立しているんですよね。

 アムは人間界に来た時からその風俗習慣に興味がありすぎて、多くの時間(と、どこからか湧き出ている金)をその興味の為に費やしています。今回は、家事当番をサボって買い物に出かけるという奔放振り。しかも、文句を言いたそうな相手を黙らせるテクニックがピカイチで、タスクはまんまと術中にハマり、結局本編エピローグの直前まで、言いたい事が言えず仕舞でした。これらの、少々「あざとさ」すら感じさせる描写が、アムというキャラクターを魅力的に仕上げています。もう一人のヒロインであるセラが、割と裏表のない、喜怒哀楽をストレートに表現するキャラクターとして分かり易く仕立てられているのに対し、「ネコ科」を意識したのか、妙に掴み所の無い雰囲気を与えられているのがアムです。

 そんなアムは、直々に前線に出て来たクバルによって、「アムメーバ」にされてしまいます。簡単に言えば、メーバにアムのジューマン頭を乗っけた造形物なのですが、間違いなくアムに見えるのは、やはりジューマン態を持つという設定ならではですね(しかもスーツアクターが「ご本人」)。面白いのは、目の色こそ違えど、トラの顔が悪役としても通用する造形である事。いわば、わざわざ可愛らしく造形されているわけではないという事です。という事は、必然的に仕草で違いを出すのが重要になってくるわけでして、やはり芝居って凄いですよね...。出で立ちは、何となく「フラッシュマン」のネフェルーラ(初期)を彷彿とさせていました。

 そして、タスクがアムメーバに痛めつけられるという結構ハードなシーンが続きます。基本的にライトな作風なので、こういったシーンがあるとギョッとしてしまうわけですが、それだけタスクの懸命さが伝わって来ますよね。

 結局、その懸命さの元になっていたのは、アムに一言(実は多くの小言)を言いたかったという、何とも軽くて楽しいオチでした。しかしながら、アムを正気に戻したのが、誤解を招くようなタスクのセリフ(「僕は君の事が...」)だった事で、ちょっとした恋愛コメディっぽさをも取り入れている辺り、ニクい処。正気を取り戻し、密かにクバルを騙す為の芝居を段取るアムの疎明さ(と恐ろしさ)も抜群で、演じる渡邉さんと立石さんの芝居力が要求される回でしたね。素晴らしい成果を上げていたと思います。

次回

 レオをフィーチュアし、初の「普通の人間ゲスト」登場という触れ込み(笑)。徐々に市井の人々との交流が描かれるようになる事は予想されますが、まず最初にレオというのが面白いですね。期待が高まります。