その4「ゾワゾワ!五毒拳」

 3人はマスター・シャーフーの下、カレイド・スパイラル・ジャンプを飛ぶ修行の為、スケートリンクに来ていた。ランとレツは諦めムードだったが、ジャンだけは妙に張り切っている。折りしも、プロスケーターの八木沼純子がリンクに居合わせており、見事なカレイド・スパイラル・ジャンプを披露。「諦めない限り、未来は開かれている」という八木沼純子の言葉に、ランとレツは奮起した。

 理央は夢を見る。激突か柔和か、巡り合いの予感を募らせた理央は、邪悪を極めし五人のリンリンシー・五毒拳を召喚した。メレは既に臨獣殿の印をビルに刻んでおり、マスター・シャーフーは五毒拳の到来を予感。その予感どおり、五毒拳は街で暴れ始めた。五毒拳の前に立ちはだかるゲキレンジャー。しかし、五毒拳は獣人態と化し、3人を翻弄する。マスター・シャーフーは3人を救出し、林の中へと逃げ込んだ。しかし、そこにはメレが待っており、さらに理央も登場する。

 理央はかつてマスター・シャーフーの弟子であり、激獣拳の拳士であったが、裏切ったのだという。理央は「臨気凱装」によって黒獅子となった。マスター・シャーフーは理央と手合わせするが、「不闘の誓い」により手は出せない。ジャンはマスター・シャーフーの危機を見て、夢中で立ち向かっていく。理央はその激気に驚嘆した。理央の「予感」はジャンだったのだ。一方のジャンも、理央との戦いに「ニキニキ」していた。

 突如、モリヤはジャンに毒を仕込んだ。5分以内に解毒剤を五毒拳から奪うこと、それが理央の提案したルールだ。3人はゲキレンジャーとなり、獣拳合体でゲキトージャとなった。5対1の戦いは毒の効果もあって圧倒的に不利。だが、マスター・シャーフーは理央の持たないものを3人が持っていると言い、事態の好転を予期していた。機転によりカレイド・スパイラル・ジャンプを繰り出すゲキトージャ。大分分脚によって五毒拳を蹴散らし、解毒剤を入手した。

 理央は勝負アリと見て、五毒拳を下がらせる。マスター・シャーフーに捨て台詞を残し、理央は去っていった。

監督・脚本
監督
渡辺勝也
脚本
横手美智子
解説

 第4話で、いきなりテンションを上げてきた。リンリンシーが5人も新登場し、しかも一人ずつではなく、いきなり5人で攻めてくるという凄まじさ。理央の黒獅子への変身も披露され、さらには理央がかつて激獣拳側に居た事実も語られる。

 冒頭の、リンリンシーの独房は、凶暴なる拳士が力を持て余す様子が、華麗かつ不気味に描かれ、今回の名シーンとなっている。メレの押さえた口調も解説的なセリフにマッチ。各々の個性的な拳法の分かりやすさも手伝って、五毒拳の特徴を短い尺で見事に説明している。

 ゲキレンジャー側の危機は明らかなのだが、それを長々と引っ張ることなく、一旦はゲキレンジャー側を勝利させるという潔い展開も良い。それに絡め、理央の拳士としてのプライドも描かれているあたり、実に無駄がない。特に、マスタ・シャーフーの傍にいながら、ゲキレンジャー対五毒拳の戦いを見守り、一切激獣拳側に手を出さない理央の奥ゆかしさは、特筆に価する。

 「五毒拳」の元ネタは、1978年に制作された香港映画。カルト的扱いのカンフー映画であり、大ヒット映画「Kill Bill」にもオマージュが見られる。臨獣・五毒拳のキャラクター・モチーフであるムカデやコブラといった拳法は、そのまま拝借している。

 理央の「臨気凱装」は、まさにゲキレンジャーのビースト・オンの対極にある。非常にカッコ良く仕上げられた臨気凱装シーンは、理央をアンチヒーローの系譜に位置づけようとする意気込みに溢れる。その意気込みは、理央の放つリンギが、ゲキビーストと同様の描写となっていることにも現れている。

 巨大戦は、3話程ビル街の戦闘が続いた為なのか、山岳地という設定。しかし、山岳の精緻なセットとオープン撮影の妙味が融合し、リアルなバトルフィールドを表現。地形を生かし、五毒拳それぞれの技が巨大戦でも特徴的に描かれているのも面白い。

 今回、プロスケーターの八木沼純子氏が本人役で出演。ゲキレンジャー達に「奥義を授ける」という重要な役割を果たす。「修行」に関しては、これからもそれに助力するアスリート達が、ゲスト出演する可能性がある。こちらも大いに楽しみだ。