epic13 「走れ!ミスティックランナー」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 前回の一大イベント編とはうってかわって、スカイック族にスポットを当てた、割とゆる~いお話。

 一応、ミスティックブラザー登場編を兼ねていて、これまた例によって突然の奇跡だったのですが、もう奇跡を毎回の如く楽しむというのが、「ゴセイジャー」の楽しみ方だということを認識しておいた方がいいでしょう。

 何しろ、ゴセイジャーは天使であり、ほぼ忘れられた感もありますが天界の存在。彼等が強く願えば奇跡は容易に発現するのです。このシリーズの基本精神は「人事を尽くして天命を待つ」。ゴセイカードは手に入れるものではなく、降って来るものだということを、視聴するにあたってそろそろ基本認識としておくべきでしょう。

 ただ、それを心底楽しめるかというと、どうも…(笑)。

 やっぱりファンタジー系戦隊は、バランスを取るのが非常に難しいですね。

 さて、そんな愚痴はともかくとして、今回はアラタとエリの関係を垣間見ることの出来るエピソードです。

 エリは基本的にゴセイジャーの中でもお姉さん的な存在だという設定だったように思いますが、いつの間にか「楽天的でちょっとだらしない天然娘」にシフトしてしまい、役割的にモネの方がお姉さんになってしまった感があります(アグリの妹という設定なのに)。

 一方のアラタは、ゴセイジャーの中でも弟分的な存在として設定されていて、これはこれで設定どおりに動いている気がします。ちなみに、本当は望をさらにその弟分として動かす意図があったように見受けられますが、これは完全に失敗あるいは忘れられているような気が。

 この2人を対比させると、設定上はアラタの姉的存在がエリということになり、今回の話は正にその設定があるからこそ生きる構成なのですが、実情は上述のとおり。乱暴な言い方をすれば、他の種族より精神年齢が低そうなスカイック族のペアという印象が強い為に、エリが先生だろうがアラタが先生だろうが、どっちでもいい状態になってしまっているのです。

 普通にいい話なのに、これまでの積み重ねを踏襲出来なかったが故に、少々印象を弱めてしまっているのでした。

 というわけで今回は、テーマを決めずに、さらに徒然なるまま書き連ねていきます。



 今回のウォースターの刺客は、ホグンロ星人・変わり種のパワードダーク。いつにも増して昆虫モチーフであることを強く感じさせるヤツです。ネーミングソースは「ハワード・ザ・ダック」からかな?かなり懐かしいアヒルのSF映画ですね。

 このパワードダーク、パワーシードなる胡桃状の種を食べると、様々な能力を発揮するというキャラで、ブレドランが天装術をプログラミングしたパワーシードを食べることにより、ゴセイジャーより強力な天装術を使うことが出来ます。

 勿論、こういうものにはすべからく弱点が存在するもので、ブレドランが研究した天装術しか反映されていません。よって、アラタの用いる「コンプレッサンダー」に関しては研究から漏れていたらしく、パワードダークを一旦退却させることが出来たわけです。

 この後は、この「コンプレッサンダー」がスカイックの2人で使えていれば倒せたのに…という展開となり、エリがそれを使えるようになるまで、アラタによる特訓が続くことになります。

 ストーリーはいたってシンプルだし、一見筋が通っているようにも見えますが、既にこの時点で綻びが。

 パワーシードは、ブレドランが把握しているあらゆる天装術を発現させるものの筈ですが、何故かゴセイジャーが放った天装術と同じ天装術を、倍返し程度で放っています。つまり、この時点では「モノマネ怪人」パターンを踏襲しているのです。よって、パワードダークが「モノマネ怪人」に見えてしまいます。

 「モノマネ怪人」パターンと言えば、相手がこれまでに登場させた技は完璧に模倣、ひいては防御出来るのですが、新技が登場すると、それを真似出来ず、あるいは防ぎきれずに敗北してしまうのが常套です。

 問題は、パワードダークが完全にこの語法に則っているということ。パワードダークの本質はモノマネ怪人ではなく、天装術を操ることの出来る星人です。つまり、スカイックの天装術には、ランディックやシーイックといった属性の異なる天装術で対抗出来るわけで、この点において、パワードダークがあまりにも知性に乏しい星人になってしまっているのです。

 翻って、この知性のない星人に対抗するゴセイジャーにも知性が感じられません。

 コンプレッサンダーでなければならない理由は全くなく、ブレドランが把握していない天装術のコンビネーションで対抗出来た筈。

 あ、勿論話を転がして行く上での方便だということは分かってますよ。ただ、盛り上がるか否かのファクターって、案外こんな所にあるもんだと思うのです。あらゆる手を尽くし、コンプレッサンダーがパワードダークに対抗する唯一の手段だと分かるプロセスがあれば、その後の展開にも説得力が…って、もういいか。

 さてさて、今回の私が思う最大の見せ場は、やっぱりアラタとエリの幼少時代の回想シーンだったと思います。

 それぞれ、雰囲気の似た子役を起用し、口調も何となく踏襲。二人がそのまんま大人になったように感じさせて、いいシーンだったのです。

 ここに関連させてくる、「好きなものが増えれば強くなる」というテーゼも秀逸。守りたいものが増えれば、それだけ使命感も増し、強くなるという論法は、なかなか新鮮です。

 ただねぇ、ミスティックブラザーの登場が完全にぶち壊してくれちゃった(笑)。

 折角、エリがコンプレッサンダーを炸裂させるに至ったのに、それがカタルシスを生むわけではなく、易々と敵に破られて絶体絶命。そこに奇跡が起こってミスティックブラザー…って、何か予定調和の塊ですなぁ。今回のさとう里香さんは、変身前、変身後共に実に魅力的な演技を披露してくれたのに、ね。

 最近、どんどん口調が悪くなってきてますな。反省。

 別に「ゴセイジャー」が嫌いなわけじゃないんですよ。全ての戦隊シリーズを愛し…って、やっぱり個人的に合わない戦隊もありますけど、とにかく「ゴセイジャー」は、ビジュアル的には好きな戦隊なので、ストーリーをもうちょっとどうにかしてくれれば…。やっぱり「シンケンジャー」が知性派過ぎたんでしょうね。

 この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.4 [DVD]に収録。