epic34 「ゴセイナイト・ジャスティス」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 ゴセイナイトが、今度こそ本当に仲間になる話。

 幽魔獣編でも充分一緒に戦っていましたが、一応、幽魔獣が地球汚染源だったということで、人間を守る(もう「地球を守る」から完全にシフトしてます)事と、汚染源殲滅という目的が、たまたま同じベクトルを示していたという理由付けになっています。勿論、ゴセイジャー達に対するゴセイナイトのシンパシィは、それなりに芽生えてはいますけどね。

 で、今回。

 前回に続いて、望が大きな役割を果たす事になるのですが、前回は望の自発的な行動が遠回しに繋がって、一つの結果を生み出すような構造でした。しかし、今回はゴセイナイトが仲間になるという結末から逆算しているような印象が強く、結構無理矢理な作劇だったのではないかと思うのです。

 論法としては、いい線行ってると思うのですが、根拠に乏しいというか何というか。しかも、殆どがセリフでテーマ語っちゃってるという…。視覚より聴覚に思いっきり頼ってしまっているのは、ちょっと勘弁ですねぇ。

 というわけで、折角ゴセイナイトが仲間になるお話なのに、何だか釈然としない感じで、しかもメタルAのインパクトだけが一人歩きしてしまっている印象でした。

 あんまり続きを書く気になりませんが、まぁ、一応書きます。

 すみません、ぶっちゃけ正直飽きてきました。


 今回、マトリンティス帝国が送り込んだマトロイドは、シュートのザンKT2(ザンケーティーツー)。前回のザンKTのアップグレード・バージョンです。

 マトリンティスの描写自体は、やっぱりいいんですよ。メタルAが色々計算して、どのスペックをどのように上げれば勝率が100%になるとか、スペック至上主義的な部分がやたらカッコいいんですね。

 このスペック至上主義に物申す感じで、どうせなら精神論をぶちかましてくれれば痛快だったんですけど、どうも「ゴセイジャー」は精神論よりも使命感をテーマとして振りかざしているきらいがあるので、盛り上がらない。

 例えば「シャリバン」あたりでは、主人公を徹底的に研究して、戦力的に拮抗する怪人なり怪物なりを作り出す話が出てきます。主人公が敵のスペックを上回ることはないにしろ、最終的に勝利をモノにする要因は何か。それは「心」だという結論を導き出すのです。要するに、メンタルなパワーは、フィジカルなパワーを補って余りあるという事であり、それは強靭な肉体以上に強靭な精神を持つヒーローならではだという事が、暗に示されるわけです。

 「ゴセイジャー」の場合、使命に対する諦念を常に捨てている状態なので、少なくとも戦いにおいてはメンタルな弱さを殆ど見せない。なので、いつも限界が来るとミラクルが降ってきて、何となく事件が解決してしまう構造になってしまい、こういったジャンルのヒーロー物の醍醐味がかなり薄れているんじゃないかと思います。

 今回は、その「ミラクル」にあたる部分をゴセイナイトが担っています。

 戦力の増強としてのミラクルは一切ありませんが、別の戦力が助けに現れるというパターン自体が、この「ミラクル」パターンに一致しているのです。しかも、ゴセイジャー達の振りかざす使命感が、奇蹟の対象に伝達された結果、助力が出現するという詳細パターンまで一致しています。

 今回のその使命感の伝達ですが、望を介して周到に行われます。

 まず、望は既に、ゴセイナイトの肖像画をソラで描ける程になっており、彼のゴセイナイトに対するシンパシィが示されます。前回の五人の似顔絵と連続性を持たせる配慮は、なかなかのものだと思います。しかし、何だかちょっとあざといんですよね。エピローグで、ゴセイナイトをモデルに絵を描かせてもらうといった描写の方が、より自然であり、ゴセイナイトがゴセイジャー達の目線にまで「降りてきた」事が示せるような気がするのですが…。

 続いて、メタルAによって、人間こそが地球の汚染源であり、その支配と統率を企図するマトリンティスは、ゴセイナイトの目的と同じベクトルを示している旨が語られます。これにより、ゴセイナイトは元々抱いていた人間という存在への疑問を、より募らせてしまうのです。なお、メタルAのこの発言は、ゴセイナイトを引きこむ為の讒言ではなく、あくまで正直な発言だったと思われます。彼女は嘘をつけそうにないですからね。

 ゴセイナイトの戦力をアテにできなくなったゴセイジャー達は、ザンKT2のなすがままに。逡巡するゴセイナイトは、望との交流で心を揺さぶられていきます。問題はこのフェイズで、殆どがセリフで処理されてしまっていて、ラジオドラマ状態なのです。シーン作りには、何とか雰囲気たっぷりに仕上げようという気概が満ちているのですが、肝心のセリフが、ただ単に今まで繰り返されてきたテーマを、直截的に語っている感じがして戴けない。

 ゴセイナイトを護ろうとした望達人間を、ゴセイジャーが護るという構図により、ゴセイナイトが「気付き」を感じるあたりは「オッ」と思いましたが、「地球を汚したのが人間なら、地球を浄化できるのも人間」で、その人間を護る事が、地球の明日を作り上げるという論は、エコロジーを大上段に振りかぶりつつも、地球の未来を人間だけが担っているという印象を与えてしまい、正直失笑モノでした。残念。

 結局、護星天使の目線は上から目線であり、望の居る地平線には降りてこない。これではゴセイナイトのポジションもフラフラであり、今回の流れが地に足の着いていない印象を与えるのも、むべなるかなといった感じです。

 ただ、「護星天使の使命の中に、私の使命もある!」というセリフと、「私のヘッダーとしての原点を思い出させてくれた」というセリフは良かったですね。このセリフの中身をもっと掘り下げてくれれば…。

 あと、「マトリンティス三原則」がアシモフの「ロボット三原則」をパロっていたり、メタルAが古き良き「おっぱいミサイル」を披露したのが良かったです。

 すみません。何だか投げ遣りになってしまいました(笑)。