epic8 「ゴセイパワー、暴走」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 パーフェクトにアラタ編。他のキャラクターは完全にアラタの取り巻きになっています。

 物語の構成は、敵の能力によって天装術をコントロール出来なくなったアラタの奮闘を、ややコミカルなテイストで描くというもの。

 アラタの天装術の制御不能状態が、ゴセイジャーにとって大変な危機を呼ぶ…ということは全くなく、単にアラタの戦力を欠いた状態になるに過ぎません。このおおらかさ。「ゴセイジャー」は、こういったおおらかな世界観を主たるテイストにしているように思います。

 というわけで、今回の見所は、ほぼアラタのメチャクチャな天装術が巻き起こす騒動に占められます。

 そのあたりは、ギャグの絶妙なタイミングを含め、文章では伝わらないので本編を見て頂くこととして、テーマ性にフォーカスするというマニアックな視点で行ってみましょうか。

 今回のウォースターの刺客は、トツネホ星・出鱈目のファンダホー。ファンダホーの名は、「ファンタスティックフォー」と「wonderful(ワンダホ~)」をかけたものでしょう。思慮に欠けたお調子者の雰囲気を見事に表現しています。

 このファンダホー、機械の信号伝達機構のみならず、人間のシナプスにまで影響を与える能力を持っています。ファンダホー自体は、誰の指示を受けるわけでもなく、勝手に地球にやってきた迷惑なヤツであり、元々地球侵略の意図はなかった模様。物語後半にブレドランが加担したことで、ようやく地球侵略の尖兵と化すわけです。

 何と、それまでは単なる迷惑な宇宙人であり、ゴセイジャーに倒される確固たる理由付けは出来ないのです!

 逆に、地球に侵入して迷惑をかける宇宙人は、そこに悪意があろうとなかろうと排除するのが、護星天使のJob。そういうことになってしまうのです。

 深く考えてみれば、地球ナショナリズムともいうべきイデオロギーなわけですが、そのあたりを巧妙にボカしているのが、「ゴセイジャー」なんですね。これは、古くは「ウルトラマン」から、作家たちが何とか隠蔽しようと奮闘を続けてきた部分なわけで、まだこの苦闘は続いている!?

 閑話休題。ディープに走り過ぎました。

 さて、ファンダホーによって、アラタの天装術が狂わされてしまい、それを何とかしようとゴセイジャーが動くことにより、今回のストーリーが回っていきます。

 アラタの「天装術暴走」により、意図しない能力が現出したり、変身が1日解けなかったり(よく耐えられたなww)、望がそんなアラタの日常生活を妄想したり、とにかくドタバタが畳み掛けられていきます。これらはしつこさを感じさせずテンポが良い為、アラタの、ひいてはゴセイジャーの焦りを完全にスポイルしてしまっていますが、逆にアラタの楽天的な性格を全面に押し出しているような作風に好感が持てます。

 もう一つ、望の絵画の腕前が素晴らしすぎることと、アラタの絵画の才能が壊滅的であることが示されます。

 望に関しては、いつものごとく「絵が上手いこと」が物語に生かされることはないのですが、一方のアラタの壊滅的な才能は、それなりに活用されます。

 アラタを救う為の手立ては、ファンダホーのアンテナを破壊するという事でしたが、これを突き止める作戦が、何とゴセイジャーの「ファンダホーを褒めまくる大芝居」。いやぁ、実におおらかです。第一印象では、理知的なハイドが考えついた作戦とは思えない節もありますが、ここはファンダホーの性格を巧みに利用した心理戦だと解釈しておきましょう。

 残念ながら、これらの要素が有機的に作用することはなく、アンテナ破壊という目的よりも、アラタの諦めない姿勢がクローズアップされることになり、そこに絡んでくるアラタの壊滅的な絵画の才能も、その絡み方が今ひとつ。

 結果的に、エキゾチックゴセイグレートの販促から逆算した形を露呈してしまったのは致し方ないこととしつつも、アラタの「似てないドラゴンヘッダーの絵」が、どうして4色のドラゴンヘッダーに変化したのか、その理由をもっと描いて欲しかったところ。

 勿論、アラタの諦めない姿勢が奇跡を呼んだという流れではあるのですが、そこが今ひとつ弱いのです。アラタの天装術暴走によって、あまりゴセイジャーがダメージを負っておらず、当のアラタにしても、文字通り出鱈目な天装術を何度も漫然と繰り出しているように見えてしまうという、演出上の不手際も散見されます。

 あまり悲愴にならないようにというポリシーがありそうですが、もう一歩危機感を追求していれば、エキゾチックゴセイグレートのカタルシスがあったように思います。

 で、あえてテーマ性を探るとするならば、どれだけ思い通りに行かない状態になってしまっても、諦めなければ突破口は見出せるということでしょうか。そこには、楽観的で前向きな姿勢が不可欠であり、不器用でも素晴らしい結果を生む可能性は、誰にでもある。そんなテーマがありそうです。

 それは、そのままアラタのキャラクター性であると共に、最新レッドキャラクターの、他に類を見ないおおらかさです。その意味で、千葉雄大さんというキャスティングは、正に奇跡とも言えるのではないでしょうか。

 この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.2 [DVD]に収録。