第5話 逆転のシュート

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ストーリー

 謎の女がディノゾールを呼び寄せた。しかし、宇宙空間で、ウルトラマンに似た何者かに撃破されてしまう。

 トリヤマ補佐官はいつになく機嫌が良い。というのも、世論はCREW GUYSを好評価しているからだ。隊員達は雑誌の記事にはしゃぐが、ジョージは機嫌を悪くして飛び出してしまう。リュウは「放っておけ」と言うが、ミライは放っておけずにジョージを追う。

 ジョージはスペインリーグにおいても、卓越した技能でスタンドプレーを信条としてきた。世間の評価はジョージに冷ややかだったのだ。グラウンドで、ミライはジョージの流星シュートを受けると意気込むが、ジョージは「笑えないジョークだ」と言ってそこから去ってしまう。

 同じ頃、霧吹山に怪獣が現れた。CREW GUYSは直ちに出動するが、特殊な霧の為にレーダーが使用不能に。ジョージは優れた視力で怪獣の動きを察知。ドキュメントMATより、その怪獣はサドラと確認された。同時にテッペイによって、耳の先端が弱点であることも解析された。

 ジョージは自分が仕留めると息巻く。ところが、ジョージの発射したバリアブルパルサーを、謎の女が歪曲させてしまった。ガンウインガーとガンローダーは、霧の影響で着陸を余儀なくされる。ジョージは直撃寸前にビームが曲がったことにショックを受けていた。一方、マリナは「獣が獲物を食べてるみたいな」音を聴く。密かに舌なめずりする謎の女の姿があった…。それを追うミライ。そして、リュウは前隊長セリザワの姿を見る…!

 帰還したリュウは、単独行動をとったジョージを激しく叱責する。ジョージは何かに邪魔されたと言うが、聞き入れられる筈も無く、遂には司令室を出て行ってしまった。サコミズ隊長は、コーヒーの豆を切らしたという理由をつけて、マリナに追わせた。マリナはCREW GUYSから離脱しようとしているジョージに、「昔はファンだった」と告げる。「大きくなったらウルトラマンみたいに皆が憧れるヒーローになりたい」という幼少のジョージの言葉が好きだったようだ。そこへさらにミライが現れ、ジョージに勝負を挑んだ。

 三本勝負の一本目、ミライは「弾道を見た」と言った。二本目、ミライはボールに触れた。三本目、ジョージは熱くなりすぎてゴールを大幅に外した。「無理な勝負で古傷を痛ませた」と解釈して後悔するミライの姿に、ジョージは「お前最高にヘンなヤツだ」と言って負けを認める。

 その夜、東多摩ニュータウンにサドラが出現し、人間を捕食し始めた。CREW GUYSが出撃し攻撃を開始するものの、サドラが発生させる濃霧に苦戦。さらに謎の女によってガンウインガーは不時着してしまう。ジョージは攻撃を命中させることができたが、サドラはすぐさま後方に現れた。ミライはウルトラマンメビウスに変身する。

 メビウスは濃霧で苦戦を強いられる。ジョージはガンローダーのマニューバモードを発動させ、メビウスを的確にサポート。メビウスはサドラを撃破することができた。ところが、さらに2体ものサドラが出現。そこへ謎の巨人が飛来し、強力な光線で瞬く間にサドラを粉砕した。謎の女は、その巨人を「ツルギ」と呼んだ。

解説

 ジョージがCREW GUYSの真の一員となるエピソード。ジョージのスペインリーグでの過去を交え、優れたスタンドプレーヤーであるが故に、周囲との溝が深いというキャラクター造形が、上手く生かされている。

 動体視力に優れ、狙うべき軌道が見えるというジョージの特技だが、熱くなった時に思わぬミスを誘発するという演出が巧み。サドラとの第一戦で外したのは、謎の女の超能力によるものだが、リベンジ戦では冷静な判断で確実な方法を選択したように描写されているのが一つ。もう一つは、ミライとのゴール対決で描写される。

 一方、ジョージがウルトラマンに憧れていたという、子供時代のエピソードに関しては、少々詰め込みすぎな感も。キャラクター付けとしては、このあたりで言及しておく必要があったのは承服できるが、マリナがファンになる重要な要素であるかのように描かれるのは、少し違和感がある。ただし、「今思い出した」というジョージのセリフは、絶妙なタイミングで発せられることもあり、好印象。

 全体的な構成を見渡してみると、ジョージに関する縦糸は、非常に強い構成を貫いている。しかしながら、謎の女のミステリアスな行動、セリザワの出現、ハンターナイト ツルギの登場など、あらゆる要素を詰め込みすぎた為に、ストーリー運びが散漫になり、本来のテーマが薄れてしまっているのが残念。それぞれの場面転換に工夫は見られるものの、同時進行のドタバタさを解決するまでには至っていないのが惜しいところだ。

 さて、サドラである。

 「帰ってきたウルトラマン」に登場し、その印象的なスタイリングで、ファンに人気の怪獣である。何となくマッシヴなスタイルに変貌し、顔付きも凶暴になったサドラ。バードンがイメージ通りの造形で登場したため、サドラに関してはイメージと少々異なる登場に賛否あることだろう。ただ、この「イメージチェンジ」が、実は適切だったのではないかと思われる場面が幾つかある。

 まず一つ目は、人間を襲うシーン。近年のシリーズでも「ウルトラマンネクサス」を除けば珍しい描写だが、旧サドラの雰囲気で登場した場合、少々物足りない感じがしないだろうか。さらに、市街地に出現するシーンを見てみよう。旧サドラのオーソドックスな山岳怪獣の雰囲気は、この一連のシーンにはマッチしない気がする。ジョージのマニューバモードでの活躍、ウルトラマンメビウスの苦闘、ハンターナイト ツルギの鮮烈な登場を飾るのにも、この新サドラの凶悪な顔付きが相応しい。複数体出てくると、その凶悪さをより際立たせるのが良い。

 最後に、ハンターナイト ツルギに関して。ウルトラマンらしいスタイリングと、鎧の新鮮な意匠。さらに、「ハンターナイト ツルギ」という、ある意味、違和感満載のネーミング。勿論、その行動自体も謎めいており、かのウルトラマンアグルにも似た、強力なライバルキャラクターとなるに違いない。今後の活躍に期待したい。

データ


監督

高野敏幸

特技監督

高野敏幸

脚本

長谷川圭一