第15話 不死鳥の砦

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ストーリー

 宇宙怪獣グロマイトをGUYSスペーシーが捕捉し、破壊した。しかし、グロマイトの中枢器官が残存し地球に落下。その後、熊代山麓で巨大生物が探知された。CREW GUYSが調査を命じられ、出動しようとしたその時、アライソ整備長がそれに待ったをかけた。アライソは、エンジンコイルの慣らしが終わっていないと言う。トリヤマ補佐官とマルがアライソを制止し、CREW GUYSは出動した。

 グロマイトを発見したCREW GUYSは、ガンフェニックスをスプリットさせて撃退作戦に出る。それを見つめるセリザワの姿があった。テッペイが発見した弱点を攻撃すべく、「マニューバモードだけは使うな」と言うアライソの言葉をよそに、リュウがガンウインガーのメテオールを発動させるが、13秒で解除されてしまう。グロマイトの吐く火球がガンウインガーに迫るが、間一髪でウルトラマンヒカリが現れ、リュウは救われた。ヒカリはグロマイトに善戦するものの、後一歩のところで逃走を許してしまった。

 戦い終わったヒカリに異空間で呼びかけたのは、ゾフィーであった。「もう充分だ。光の国へ帰りたまえ」と言うゾフィーだったが、ヒカリはそれを拒否。ゾフィーは「君も弟たちと同じだな。長くは待てないぞ」と言って姿を消した。

 リュウ達がフェニックスネストに帰還すると、アライソは激怒していた。メテオールが使えなかったことを責めるリュウに対し、メテオールに頼った闘いを批判するアライソ。リュウはさらに、メテオールがなかったから過去の戦闘機は墜落ばかりしていたんだ、と畳み掛ける。睨み合いになる両者。アライソは「活きのいいのを一匹都合してもらえんか」とサコミズ隊長に依頼する。

 ミライはアライソに同行した。ミライはアライソに、メテオールが嫌いなのかと問う。一方で、サコミズ隊長はリュウに、メテオールの使用制限が何故あるのかを示唆していた。メテオールは確かに危険だが、クルーの命を救うことが発想の元になっているという。メテオール搭載を決定したのは、アライソだった。アライソは40年前のジェットビートルからずっと、歴代の戦闘機を整備してきた。皆生きて帰ってきたことを誇りにしていたのだ。しかも、メテオール搭載機のテストパイロットにはセリザワが務めていた。セリザワ率いるCREW GUYSのガンクルセイダーにはメテオールが搭載されず、撃墜されパイロットたちは命を失った。この一件が、ガンフェニックスにメテオールを搭載させたのだった。アライソはミライを連れて、ニューヨーク総本部へと飛んだ。

 ミライとアライソがニューヨークに渡っている頃、リュウとテッペイは、ガンフェニックスを整備していた。自分たちの力で飛べることを証明する為に。同じ頃、グロマイトも再び姿を現わしていた。

 グロマイト出現の報を受け、出動するCREW GUYS。マニューバモードを提案するマリナに、「その必要はねぇ」と返すリュウ。実は、素人整備でマニューバモードに耐用できないことを、リュウは良く知っていたのだ。たちまち窮地に陥るリュウを救ったのは、ニューヨークから帰還したアライソとミライの乗るガンブースター。直ちにリュウのガンスピーダーをガンブースターに換装させるオペレーションが開始されたが、気流の乱れとガンブースターの辛口の機体感覚により難航する。ガンスピーダーで着陸したミライは、ウルトラマンメビウスに変身した。

 サコミズ隊長の叱咤やマリナ、コノミの助言を受け、リュウは見事ガンブースターにドッキングを果たす。ガンブースターのマニューバモードを発動させたリュウは、グロマイトの弱点を見事に撃ち、その隙にメビウスはグロマイトを粉砕した。フェニックスネストでは、ガンフェニックスの素人整備に激昂するアライソが待っていた。

解説

 新型機ガンブースター登場編。また、リュウの主役編でもある。ただし、アライソという強烈かつファンサービスたっぷりなキャラクターが登場するため、リュウは食われてしまっている感がある。

 まずは本エピソード最大のトピックとして扱わざるを得ない、アライソについて言及しておこう。

 「ビートル、ホーク、アロー、ファルコン、コンドル、ハイヤー」というセリフに、まず旧来ファンはビリビリと電撃の走る思いだ。これらはもちろん、科学特捜隊のジェットビートル、ウルトラ警備隊のウルトラホーク、MATのマットアロー、TACのタックファルコン、ZATのコンドル、UGMのスカイハイヤーである。40年前から、ずっと防衛チームの戦闘機を触ってきたという感触が、このセリフだけからも重みとして伝わってくる。演ずる綿引氏の力量も大きい。

 そして、ファンとして勿論気になるのはMACのメカに触れていないことだ。MACは唯一(「ウルトラマンA」冒頭で全滅した地球防衛軍を除けば)全滅の憂き目にあった悲劇の防衛チームである。それ故、何となく鬼門扱いされている節があるのだが、それを汲んでワザとアライソが触れていないのであれば、これはシリーズにおける何らかの伏線と考えられなくも無い。しかし、作劇ポリシー的に考えられる部分もある。それは、「パイロットが生きて帰ってくる」という、本エピソードのテーマに沿っているか否かということである。

 MACの隊員は、軍事組織としてのリアリティを出すためか、またはウルトラセブンことダン隊長とウルトラマンレオことゲンの2人をクローズアップするためか、他の隊員の異動が激しく、中にはヤラレ役となってしまう者さえいた。それがMACというチームの特殊性でもあるのだが、ある意味「生きて帰れないかもしれない」闘いに明け暮れていたわけで、機体の整備云々を超えたところで生死の決定する性格が強い。つまり、MACにはアライソのドラマが入り込む余地がないのだ。

 さて、過去の防衛チームの話はこれくらいにして、もう一つの肝心であるガンブースターについてである。ガンブースター他のガンスピーダー換装シーンの仕上がりも素晴らしく、華々しいデビュー戦を飾っていた。ニューヨークから直行した上で戦闘に参加し、さらにマニューバモードまで発動するこの機体のポテンシャルは、凄まじいものと言えよう。この理屈(またはリアリティ)抜きの高性能振りは、おおらかなりし昭和ウルトラの香りを漂わせる。思えば、「帰ってきたウルトラマン」で中途参加した伊吹隊長の登場シーンも、ニューヨークから直飛行した上で攻撃に参加するものだった。

 今回は冒頭述べたようにリュウの主役編でもあるのだが、リュウは他のメンバーと異なり、CREW GUYS以外のプライベートを持たないキャラクターである。キャラクターの掘り下げは、そのままCREW GUYSにおける過去に委ねられるわけだが、今回はそれさえも通り越して、リュウが入隊する以前のセリザワについて言及された。リュウは未だ、セリザワの存在に大きく影響されていると言えるだろう。本エピソード冒頭でウルトラマンヒカリが登場する前に、わざわざセリザワが登場していたり、ガンブースターの活躍を見てヒカリに変身しないシーンがあるところからも、セリザワの存在はリュウにとって行動原理でさえあるのかも知れない。また、リュウが他のメンバーの助言を、悪態をつきながらも素直に聞き入れているのにも注目だ。リュウの性格や熱血振りこそ変わらないものの、チームワークの重要性をよく理解するまでに成長しているのが見て取れる。

 ウルトラマンヒカリと言えば、遂に今回、単独での活躍の場が与えられた。グロマイトを倒すことこそできなかったものの、登場シーンは長く、ヒロイックな描写に徹している。そして異空間内ではあるが、遂にゾフィーが登場。ヒカリを「ヒカリ」と呼んでいるところから、地球で起こっていることについては、かなり詳しいようだ。登場はほんの少しだが、存在感はなかなかのもので、今後の登場にも期待が持てる。

データ


監督

北浦嗣巳

特技監督

北浦嗣巳

脚本

谷崎あきら