第19話 孤高のスタンドプレイヤー

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ストーリー

 テッペイは、CREW GUYS JAPANに配備されたメテオールショットを説明していた。ジョージが銃口の多さを指摘すると、テッペイは「アメイジング・トリプル」の為の3つの銃口であると説明する。アメイジング・トリプルは、同時に3弾を発射し、それぞれを脳波コントロールするというもので、人間の空間認識能力では使えない機能だと言う。ジョージは、「ならば俺が使うことにしよう」と発言、有無を言わさずメテオールショットを持ち出した。

 その頃、宇宙の彼方より宇宙怪獣ディガルーグが飛来、GUYSスペーシーが捕捉し、シンクロトロン砲を発射して撃破に成功する。しかし、直後に桜木市中心部に向かって飛来するディガルーグの存在を確認。市街地中心部に3体ものディガルーグが出現した。センサーを確認すると、ディガルーグは1体のみが映っていた。それぞれ、センサーに映ったディガルーグを攻撃したものの、それぞれが別のディガルーグを攻撃することになってしまい、しかも命中した弾はすべて突き抜けてしまった。

 地上からジョージが3体のディガルーグを見て何かに気付き、アメイジング・シリプル発射の為、リュウ達にエリア外への退去を進言。しかし、テッペイは状況を分析出来ずに焦り、ジョージが独断で発射しようと構えた途端、ディガルーグは姿を消してしまった。

 その晩、リュウはジョージが勝手に作戦立案したことを叱責。懸命に謝るテッペイにも「黙ってろ」と一言。「カッとなると一人でゴールに突っ走ってたんだってな」とスタンドプレーを責めるリュウに、ジョージは「それでも俺はゴールを決めてきた。お前にそれが出来るか」と言って作戦室を出た。ジョージの元に現れたミライは「何故ちゃんと話さないんですか」と問い詰める。ジョージは「お前に俺の見ているものが見えるか」と逆に問う。他の人間に見えないものを分かってはもらえない為、話してもムダだと言うのだ。かつてチームでプレーしていても、ジョージの言うことをチームの皆が理解してくれないということが度々あったのである。マリナは、他人に理解されないことに慣れてしまったのだろうと理解を示すが…。その頃、テッペイは分析により、ジョージには何かが見えていたということを悟った。

 翌朝、リュウはサコミズ隊長にジョージのことを相談する。「分からないのが当たり前なんだ」と言うサコミズ隊長は、リュウ達が、ジョージにとって生まれて初めてのチームになりかかっているかも知れないと告げた。その時、ディガルーグは再び大気圏外に現れ、日本に飛来しようとしていた。テッペイは、アメイジング・トリプルによって3体のディガルーグを同時攻撃し、3分の1の確率論的な存在であるディガルーグを1体に収束させる作戦に賭けることにした。

 ジョージは地上に降り立ち、ディガルーグを迎撃する態勢に入った。ジョージはあの時、ディガルーグ3体の角が、規則的に3拍子を描いて点滅するのを見て、本能的に3体が3分の1の実体を持っていることに気付いていたのだ。アメイジング・トリプルを発射するジョージは、見事に3体同時命中を達成。ディガルーグは1体に収束した。

 メテオールを発動して攻撃するリュウ達だったが、収束することで従来の3倍の能力となったディガルーグは強力で、ジョージは負傷してしまう。ミライはウルトラマンメビウスに変身して立ち向かうが苦戦を強いられる。リュウがジョージ救出に向かい、共にエリアから脱すると、メビウスはメビウスブレイブとなってディガルーグを粉砕した。

 テッペイがジョージに対し、ディガルーグの秘密に何故気付いたのかを問うと、ジョージは3体のディガルーグを見て、メテオールショットに3つ銃口があるのを思い出し、新しい機能を試したくなったと答える。ジョージはテッペイの推論がなければ何も分かっていなかったと言うが…。

解説

 タイトルからして非常に明確なジョージ編。また、太田愛氏の脚本であるが、それほど色が出ているわけではなく、量子力学の難解なタームを意図的に導入している以外は、割とオーソドックスにまとまった感のある、爽やかなエピソードである。

 同時に、新武器・メテオールショットが登場。ジョージのキャラクター、メテオールショットの特殊機能「アメイジング・トリプル」、その特殊機能を使わなければ打破できない状況。それら3つの要素が無駄なく、また必要不可欠な結び付きを示し、非常に完成度の高い因果関係を描き出していて感心する。

 ことにジョージに関しては、3体のディガルーグの角の発光の規則性を見抜く動体視力と、3発のメテオール弾を正確に同時命中させる空間認識能力(この能力に関しては本エピソードが初出)の双方どちらかが欠けても成立しない。これまでで最高にジョージの能力が描写されたエピソードである。逆に、その能力によって孤独を強いられていたという、ジョージのキャラクターを決定付ける過去がきちんと語られ、サッカーという競技イメージとの相乗効果が上手に利用されていた。この、特殊能力ゆえに孤立するという展開が、実は「帰ってきたウルトラマン」や「ウルトラマンA」の主人公に散見された要素であるというのが興味深い。CREW GUYSという防衛チームの、特殊な成り立ちを象徴するキャラクターだと言えるだろう。

 一方、CREW GUYSのチームワークは、リュウがサコミズを隊長と認めたことと、ミライが仲間の存在を再確認したことで、完成されたと思われていたが、ジョージにはまだくすぶった部分があったということである。些か引き摺り過剰だと思えるきらいもあるが、メテオールショットの威力の明快さや、ジョージの軽妙なキャラクター性、リュウとサコミズ隊長の変化後の関係が描かれることで、見応え充分に仕上がっていると言えよう。リュウと合流したときの、既に互いのことはよく分かっているかのような振る舞いや、ラストでのテッペイに対するフォローなど、ジョージの株を上げる見所シーンも多い。

 今回はディガルーグに関する説明が少々難解になっているが、これは「ウルトラマンガイア」を彷彿させる。「ウルトラマンガイア」では、主人公の我夢がアルケミースターズという天才集団の一人であるため、最新の量子論や物理学のタームが頻出したが、メビウスにおいては少しばかり違和感があるのは否めない。というのも、メビウスはある種超常的なバックボーンを擁した、第2期ウルトラの世界観を色濃く継承しているため、硬質な理屈がしっくりこないという側面を有している。「ディガルーグの角が理論不明な分身能力を司っており、それを破壊すると1体になる」程度の説明でも事足りていたような気はする。

 さて、市街戦が充実した今回は、随所に特撮の見所が存在。細かい点で感心したのは、実景の建物+エキストラに怪獣を合成するのみならず、ミニチュアの建物+怪獣にエキストラを合成するという逆転の手法も盛り込んで、画面的な違和感を削除していたことだ。また、破壊シーンの爆破テクニックとミニチュアの完成度、カット割りの上手さがマッチして、臨場感も高いレベルに達している。メビウスブレイブにチェンジした後の高速回転を伴う技も目新しく、特撮の底力を見せる回であった。

 細かいチェックポイントとしては、今回、GUYSスペーシーに初めて隊員の描写が登場している。業務的なセリフに終始したものの、割と登場シーンが長く、しかも顔をわざと見せていないことからも、これは恐らく今後への伏線であろう。GUYSスペーシーの詳細が描写されることに期待したい。

データ


監督

小原直樹

特技監督

鈴木健二

脚本

太田愛