第21話 虚空の呼び声

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ストーリー

 GUYSスペーシーが、地上10万キロ上空にウルトラゾーン発生を観測。同時にウルトラゾーンから漏れてくる電波も観測しており、半年前に火星から地球に向かう途中で遭難した、日本の宇宙貨物船アランダスからの救難信号であることが判明した。ミライは乗組員が「絶対に生きている」とし、ムキになって救助を訴えた。CREW GUYS JAPANによる調査優先権が認められ、ミライ達は宇宙へ飛ぶことになった。サコミズ隊長は「辛いものを見ることになるかも知れない」とミライに告げる。かくして、ガンフェニックスとガンブースターをバインドアップさせて完成したガンフェニックストライカーは、ウルトラゾーン目指して宇宙へと飛び立った。ガンフェニックストライカーには、ジョージとコノミ以外のメンバーが乗り込んだ。

 ガンフェニックストライカーがウルトラゾーンに突入すると、そこには怪獣墓場が広がっていた。シーボーズ、インセクタス、レッドキングなどが浮遊しており、テッペイは興奮する。その時ミライが引力を感知、その方向に発見したのは小惑星であった。救難信号もその小惑星より発信されていた。小惑星は地球によく似た大気成分を示しており、リュウ達はガンスピーダーでアランダス探索を開始した。

 テッペイによると、アランダスは火星で採掘したスペシウム運搬から帰還する途中に遭難し、勇敢な一人の乗組員が、キャビンを手動で切り離して他の乗組員を地球に帰還させたという。その勇敢な乗組員の名は、バン・ヒロト。アランダス船長バン・テツロウの一人息子だ。マリナは遭難時の時刻で止まった彼の懐中時計を発見。ミライは遭難時の様子を録画していたレコーダーの壮絶な映像を見て、悲嘆に暮れる。その頃、ガンブースターで待機していたサコミズ隊長は、ウルトラゾーンの扉が閉じ始めるのを捉えた。しかし、双方共に連絡不能となってしまう。

 その時、アランダスをレッサーボガールが襲撃。メテオールの特例を適用し、キャプチャーキューブでレッサーボガールを足止めする作戦に出るCREW GUYS。レッサーボガールは2体おり、1体をサコミズ隊長が狙撃するが、キャプチャーキューブの解けた1体が狙撃されたレッサーボガールを捕食して巨大化した。ミライは「みんなで帰るんです。1人残らず」と言って自ら陽動するが、レッサーボガールに波動弾の直撃を喰らってしまう。

 ミライの絶望的な状況を見たリュウは、必死でミライ救出のためにレッサーボガールを攻撃する。そこへウルトラマンメビウスが出現、メビウスはサコミズ隊長に目配せする。それを確認したサコミズ隊長は、ウルトラゾーンの扉が閉じる前に、ミライを忘れて脱出しろと命令する。不本意ながらリュウは帰還航路をとった。メビウスは凶暴なレッサーボガールに翻弄されつつも、メビウスブレイブとなってこれを粉砕した。

 ウルトラゾーンの扉が閉じる直前、ガンフェニックストライカーは地球圏への帰還に成功。リュウはミライを残してきたことに深く悲嘆するが、ミライはガンスピーダーで脱出に成功していた。CREW GUYSに安堵の笑いが起こった。

解説

 ミライ編となる連続ストーリーの前編。意味深なミライの発言とサコミズ隊長の行動を織り交ぜ、まずは物語のキーとなるバン・ヒロトの物語をCREW GUYSの視点より描いていく。

 第一に、今回のポイントとなる「ウルトラゾーン」に触れなければならない。劇中の「ウルトラゾーン」は、限りなくSF作品におけるワームホールに近い描かれ方をしているが、「怪獣墓場」という要素を混ぜ込むことで、非常にウルトラ的な舞台を用意することに成功している。「怪獣墓場」には、旧来ファンお馴染みの怪獣たちが浮遊しており、録画した方あるいはDVDを入手した方はスロー再生でその数々を楽しむことが出来る。特に、シーボーズがロケットを抱いている姿には感涙必至であり、このシーンには独特の「ノリ」が感じられる。テッペイのウンチクもテンポ良く挿入され、主たるターゲットである子供にも分かりやすい。謎の小惑星と、そこに棲息するレッサーボガールも、年長のファンよりも子供達に分かりやすい配慮ではないだろうか。

 一方、ワームホール的な描かれ方は、扉が閉じるまでのタイムリミットという効果的なシチュエーションを生む。別世界の扉が、特定の時間しか開かないという状況設定自体は、既に使い古された手法である。だが、逆に未だに国内外のSF作品で使われ続けているということからすれば、これほどサスペンスフルなシチュエーションを生むに相応しい設定は稀だということだろう。さらに、そこへサコミズ隊長の謎に満ちた行動を加えることにより、別の「引き」も用意してみせるという、ストーリーテリングのお手本のようなエピソードだ。

 サコミズ隊長の謎の行動とは、勿論メビウスの目配せに答え、リュウ達に「ミライのことを忘れて脱出」することを命ずるシーンである。この図式は、メビウス=ミライということを知っていなければ成立しないシーンだ。ただし、それはウルトラマンメビウスという作品において、サコミズ隊長というキャラクター故に成り立つ論法だということを忘れてはならない。過去のウルトラシリーズ、特に昭和ウルトラシリーズでは、ウルトラマンたる主人公の隊員を半ば見捨てて退避するシチュエーションが散見されるからだ。勿論、それは軍隊(あえて「防衛チーム」という呼び方を使用しない)としてのリアリティをスパイスとして取り入れることで、場面を盛り上げる手法なのだが、メビウスには軍隊の香りがしないということを、逆に裏付ける要素とも言えるだろう。

 ところで、本エピソードにはガンフェニックストライカーが、前触れも無く突如として登場する。ガンフェニックストライカーはガンブースターのトイが発売された時点で、既に知ることの出来た形態であるが、今回の登場は些か唐突な感が否めない。穿った見方をすれば、放映スケジュールとスポンサー要望の擦り合わせの結果ということになろうが、それでもガンフェニックストライカーの完成に至る合体訓練やプログラミングなどのプロセスが、完全に省略されているのは少し残念である。ガンフェニックストライカーのインパクトが非常に弱いのは、やはりそこが原因だ。ただし、ガンフェニックストライカーの「合体プロセス」に関しては、非常に丁寧かつリアリティをも感じさせる仕上がりとなっており、スタッフの意地を感じられるシーンとなっている。

 今回、バン・ヒロト役としてミライ役の五十嵐隼士氏がクレジットされているが、実は殆ど画面に登場していない。旧来ファンならば、ミライの尋常ではない救助への執着と、五十嵐氏のクレジット、さらに「自己犠牲」というキーワードによって、容易にミライのモデルとなるであろう人物と想像できるだけに、ここは登場回数を抑えて逆に印象を強めたと考えていいだろう。地球人の姿を借りる場合に、明確なモデルが存在するというパターンが登場するのは、ウルトラセブン・第17話「地底GO!GO!GO!」のみ。セブンでは、モロボシ・ダンのモデルとなった薩摩次郎にとって、ダンはドッペルゲンガーとして存在したままになっているが、果たしてミライとバン・ヒロトはどのような関係になるのだろうか?

データ


監督

村石宏實

特技監督

村石宏實

脚本

谷崎あきら