第24話 復活のヤプール

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ストーリー

 異空間で、地球へ向かおうとするウルトラマンタロウを、ゾフィーが制止していた。「巨大な力の干渉で、恐ろしい敵が蘇ろうとしています」というタロウに、ゾフィーは「今はまだ様子を見るのだ。メビウスは一人きりではない」と言う。

 トリヤマ補佐官により、GUYS感謝祭が催されることとなったが、サコミズ隊長は出張中で、半ば強制的にリュウが隊長代行として働くこととなった。感謝祭は大盛況。「いいチームになったよな」とリュウは感慨深げに語る。「地球は俺たちが守ってる。ウルトラマンと一緒に」と胸を張って言える、その言葉にミライは嬉しさを隠せない。その時、一人の一般市民が赤く目を光らせ、ミライにテレパシーで語りかけてきた。「赤い雨が降る。それが我等復活の前触れ」「滅ぼされたものたちの恨み、思い知るが良い」「今度は貴様が滅ぶのだ。ウルトラマンメビウス」次々と一般市民がミライに語りかけてくる。ミライは取り乱してしまう。

 そして、赤い雨が降った。リュウはミライを連れて調査に向かった。夕暮れ時、突如空が割れ、超獣バキシムが出現。リュウを捕らえて消え失せてしまった。ミライはウルトラマンメビウスへの変身を阻止され、倒れ伏してしまった。

 ミライが能面の人物に襲われる悪夢から醒めると、そこにはリュウを含むCREW GUYSの面々が居た。リュウは「特に異変はなかった」と言う。リュウにはヤプールが憑依しており、ミライに「誰も信用しない。この声は貴様にしか聞こえない」と言った。ヤプールはウルトラ兄弟とメビウスが倒したはずなのだが…。

 CREW GUYSにガイズタフブックが支給された。マケット怪獣のカスタマイズを可能にした最新のメテオールツールだ。実験は次の日の正午に行われることになった。ウィンダムをファイアーウィンダムに強化し、ガンフェニックスが模擬弾を搭載して実戦さながらの実験が行われる手筈だ。ところが、リュウが正体不明の物体のスイッチを入れると、ガンウインガーとガンローダーは勝手にメテオールを発動。ファイアーウィンダムを撃ってしまった。ファイアーウィンダムはそれを敵と認識し、同士討ちを始めた。直ちに実験は中止。リュウはミライが細工したのだと皆に言い触れ、「お前は誰だ!」と言ってミライを追い詰める。リュウがミライにとどめの銃口を向けた瞬間、サコミズ隊長がそれを阻止した。「たとえどんな状況でも、本物のリュウがミライを撃つはずがない」というサコミズ隊長の言葉に、リュウは正体を現わした。リュウ=ヤプールの召喚で、バキシムは再び出現した。

 ただちにバキシムの迎撃が開始された。ミライはリュウを追った。リュウはガンフェニックスやフェニックスネストに仕掛けた爆弾の起爆装置を持ってミライを脅迫する。ミライはリュウに銃口を向ける。撃てないミライは「ウルトラ五つの誓い」を暗唱し始めた。その時、ミライにリュウの声が聞こえた。「撃てミライ!俺の心の炎を撃ち抜け!」 ミライはリュウを撃った。リュウから抜け出たヤプールは「貴様は大切な人間の命を奪った。もうまともに戦うことすら出来まい」と嘲笑し、バキシムと一体化。しかし、ミライは「必ず守ってみせます」という決意の元、ウルトラマンメビウスに変身した。

 バキシムは強大な力を発揮してメビウスを苦しめるが、ジョージとマリナの駆るガンウインガーとガンローダーのサポートにより、メビウスブレイブにチェンジ。見事バキシムを木っ端微塵に粉砕した。

 リュウは生きていた。ミライが撃ったのは「心の炎」つまりメモリーディスプレイだった。何も覚えていないリュウは、ミライがメモリーディスプレイを壊したと知り、憤慨。ミライは必死に取り繕うのだった。

解説

 映画「ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟」の後を受け、開始されたヤプール編。まずはその第一編を堪能。

 まず、大雑把に今回全体の演出趣向とストーリータイプを眺めてみると、第2期ウルトラにおける市川森一氏の担当回を強く意識していることが分かる。モチーフになっているのは、帰ってきたウルトラマン・第31話「悪魔と天使の間に」、ウルトラマンA・第3話「燃えろ!超獣地獄」、ウルトラマンA・第24話「見よ!真夜中の大変身」、ウルトラマンA・第48話「ベロクロンの逆襲」だ。この内、A・第3話と第24話は市川氏担当ではないものの、怨念としてのヤプールの存在を強く印象付けた回としてファンの間で名高いエピソードである。

 それぞれのモチーフを紐解くと、魚眼レンズ(を思わせるクローズアップ)で顔をとらえ、瞳を赤く光らせることで人間にあらざる者を表現する手法と、ウルトラマンにのみテレパシーを送り、攻撃的な行動をとらせることで周囲の疑念を向けさせるという筋書きは、帰マン・第31話より。バキシムを、空が割れて出現するというくだりまで含めて再現したが、その元となったのはA・第3話。A・第24話からは、怨念としてのヤプールの存在と赤い雨。そして、能面の女と勝利者の背負う怨念というモチーフを、第48話より拝借している。これらの要素が有機的に結びつき、強大な戦闘力の持ち主としてではなく、より内面的な恐ろしさを訴えかけるヤプールの存在が浮き彫りになる。

 これは私見だが、ウルトラマンAという作品において、ヤプールという存在は市川森一氏独特の観念的なものから、様々な脚本家の料理を経て、バラついた印象へと変化してしまい、単なる超獣の親玉という印象に堕してしまったと考える。ところが、ヤプールはしつこく生き残り、Aの最終話においては地球人の子供の心を利用してウルトラマンAを地球から「追い出す」ことに成功しているのであり、注目されてしかるべき敵キャラクターなのだ。今回、映画を含めてより原点に近い(というよりAを通じて市川氏が結論付けた)怨念としての存在が描かれることで、滅びることのないウルトラ兄弟最大の敵としての存在感を遺憾なく発揮している。これはAを贔屓するファンにとって非常に喜ばしいことだ。

 さて、本エピソードの見所は、上に挙げたような執拗なヤプールの精神攻撃であるが、ファンサービス的な、マニアックな遊びが繰り広げられていたり、完成されたGUYSのチームワークを堪能できたりと他にも見所がある。

 まずは冒頭に突如登場するゾフィーとウルトラマンタロウ。映画の後日譚として、この冒頭のシーンはなかなか興味深い。従来、裏設定レベルに過ぎなかった「タロウがメビウスを教えた」というトピックが、ここで初めて公にされた。マニアとして気になるのは、東光太郎の存在であるが、ここではとりあえず保留としておくことにしよう。ゾフィーに対して「兄さん」と呼ぶのも嬉しい。ちなみに物語前半(つまりタロウとゾフィーが会話している時間)、サコミズ隊長は不在ということになっている。果たして…?

 続いて、市民感謝イベントである。それぞれの特技を生かしたブースが楽しい。歴代防衛チームを紹介したパネルが映り、「おっ」と思った刹那、今度はビートルとウルトラホーク1号・3号が航空ショー! ここまでサービスカットが多いと、逆に今後が大丈夫なのかと思えてくるが、ここは素直に喜ぶこととしたい。他にも、細かいところだが「ヤプールは兄さんたちが倒したはず」というミライのセリフがある。映画では、メビウスが途中よりウルトラ兄弟を「先輩」から「兄さん」と呼び変えており、それが反映されているものと思われる。

 そして、特筆すべきはミライとリュウの信頼関係だ。一度はヤプールの罠に堕ち、GUYSの面々より疑念の矛先を向けられるのだが、リュウはミライを庇うのだ。さらに、リュウがヤプールに操られたときに颯爽と登場する、すべてを悟ったようなサコミズ隊長が反則的なカッコ良さを湛えている。「ウルトラ五つの誓い」を経て、リュウが心の叫びで射撃の位置をミライに教えるくだりでは、深層心理でミライを全面的に信頼しているリュウを垣間見ることが出来る。帰マン・第31話は陰鬱なシーンの連続と心に突き刺さるようなストーリーテリングによって、信頼関係の急所をえぐり出した名作だが、今回はそれを「培った友情」で克服する物語だった。帰マンファンにとっては、少々甘い展開という評価を与えてしかりの作品だが、メビウスというシリーズにおける一作品としては、このストーリーが至極打倒だったことは言うまでもない。

データ


監督

アベユーイチ

特技監督

アベユーイチ

脚本

長谷川圭一