第31話 仲間達の想い

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ストーリー

 インペライザー戦を終え、青沢峡谷より帰還したCREW GUYS。しかし、ディレクション・ルームに向かう通路でミライは倒れてしまう。どうやら過労のようだ。リュウ達は、ミライがウルトラマンメビウスであることを知ったが、これまでと変わらないCREW GUYSの仲間であることを確認し合う。一方その頃、円盤群が地球に近づきつつあった…。

 目覚めたミライはディレクション・ルームに向かう。バーニングブレイブへの変化がどうやって起きたのかは分からない。だが、今は地球に残って仲間達と戦っていけばいい。ミライはそう思うのだった。ディレクション・ルームはサコミズ隊長のバースディパーティの飾りつけで盛り上がっていた。誕生日プレゼントを買い忘れていた為、ミライは「豆」を調達に出かける。やがてサコミズ隊長が帰還すると、パーティは開幕。早速ミライが買ってきたプレゼントを手渡すが、ミライが買ってきたのは、何と「コーヒー豆」ではなく「福豆」であった。

 翌朝、GUYSスペーシーからV88を含む怪獣要撃衛星5基が破壊されたという緊急連絡が入る。GUYSスペーシーの防衛網には大きな穴が開き、日本上空は手薄となった。その後、日本をはじめとし、世界各地でUFOが目撃された。先制攻撃を提案するトリヤマ補佐官だったが、サコミズ隊長は総本部の意向を尊重するようたしなめる。そこへミサキ総監代行が現れ、1時間以内に未確認飛行物体が何らかの意思を示さない限り、ミサイル「AZ2006」での攻撃を開始するという総本部の決定を伝えた。

 そして、日本に新たな未確認飛行物体が急激に接近。テッペイは、この飛行物体にだけ巨大な生命反応が確認できる、つまり生物だと言う。アウト・オブ・ドキュメントにも記録のない新種の円盤生物・ロベルガーを迎撃すべく、唯一運用が可能なガンブースターで空から、他は地上より攻撃することとなった。テッペイとコノミも出撃した。ロベルガーは二足歩行形態に変形し、市街地を破壊し始めた。ロベルガーの通信を解析すると、日本語で「ウルトラマンメビウス抹殺、指令、抹殺」と繰り返していることが分かった。それを知ったミライは、単身ロベルガーに挑むことを決意する。「僕が倒します」と言うミライに、リュウは「僕がじゃなく、僕ら。そうだろ?」と返す。

 メビウスに変身したミライはロベルガーに立ち向かい、一進一退の攻防を繰り広げるが、やがて強大な戦闘能力の前に苦戦を強いられる。その危機を救ったのは、ジョージとマリナの駆るガンブースター、リュウによる地上からの援護、そしてテッペイとコノミの運用するファイアーウィンダムだった。善戦するウィンダムを見、仲間達の熱い想いを感じ取ったメビウスは、バーニングブレイブにチェンジ。メビュームバーストでロベルガーを跡形もなく粉砕した。地球に飛来していた円盤群は、ロベルガー消滅と共に消え去った。

 「いいチームだ、ホントに」サコミズ隊長はそう呟いた。戦いを終えたミライは、笑顔で自分を待つ仲間の元へ駆け寄る。「あの炎は、仲間達の想いが灯らせるんだ。仲間達のおかげで、僕は強くなることができるんだ」ミライはそう気づき、皆にそっと礼を言った。

解説

 「ウルトラマンマックス」のプロデューサー兼監督を務めた、八木毅氏の手による、インペライザー編とその後を橋渡しとなるエピソード。

 しっとりとしていて陽性の雰囲気を湛えたドラマと、ド派手な画面作りが光る特撮のバランスが絶妙。まさにお祭り状態だったインペライザー編の後を受けつつも、「祭りの後」に堕していないところが高く評価できる。

 冒頭は、前回の直接の後日譚として開始。バーニングブレイブで逆転勝利を飾ったものの、ミライの身体に相当なダメージが蓄積していたというのは、なかなか壮絶な幕開けだが、そこはメビウス流にさらっと料理。リュウ達が絆を再確認するというベクトルにうまく向けられている。陰鬱・沈鬱という要素を排除し、常にポジティヴに前へ前へと押していく作風は、えてして暑苦しいものになりがちだが、そういった面は微塵も感じられない。その要因はどこにあるのだろうか。

 本エピソードを見ると、その答えが用意されているのが分かる。それはミライとサコミズ隊長だ。リュウやジョージ、マリナ、コノミは割と従来のウルトラシリーズの防衛チーム類型に沿ったタイプのキャラクターだ。テッペイは新しいタイプではあるが、実は役割的にナレーターのキャラクタライズであるとも言えるだろう(勿論、それだけではないが)。

 ミライは、これまでのウルトラシリーズでも類を見ない程、地球の風俗習慣に疎い存在として描かれている。それがウルトラマンメビウスの純粋な心とも直結しているのはご承知のとおりだが、ウルトラマンの純粋さを描く同じような例として、ウルトラセブンであるモロボシ・ダンが挙げられる。ただし、モロボシ・ダンは純粋さ故に宇宙の狭間で苦悩する存在だった。逆に、地球人の姿での言動が「コミカル」であるところをミライと同じくするのは、ウルトラマン80である矢的猛(特に1クール目の学校編)だ。ただし、エイティは卓抜した戦闘テクニックと戦略を備えた万能戦士であった。ヒビノ・ミライ=ウルトラマンメビウスは、この両者をウマくブレンドしたキャラクターだと言えるだろう。それ故の屈託のなさが、地球人との友情物語を紡ぐに相応しい存在を成立させたのである。

 続いてサコミズ隊長であるが、これほどつかみどころのない隊長は初めてだろう。演ずる田中実氏の素晴らしい演技力は、要所要所で緊張感を画面に与え、緊張を要しない場面では逆に和みの要素を生み出す。しかも、それ故にキャラクターがブレることもない。ミライの正体を最初から知っていたことで、ストーリー進行上の障害となるファクターを事前に除去する役割も果たしていたが、総監との関係や、様々に配された謎めいた言動も相俟って、まさにメビウスというシリーズを象徴するキャラクターとして存在している。バースディパーティに笑顔を見せる姿も全く違和感のない、爽やかキャラクターの筆頭が、このサコミズ隊長だ。

 さて、「円盤生物」の新種であるロベルガーが出現するとあって、何となくノスタルジィを感じさせる「円盤群」が登場。その形状も様々なのが嬉しい。「誕生日」に「円盤生物」と言えば、ウルトラマンレオ・第40話「MAC全滅! 円盤は生物だった!」で見られたシチュエーション。円盤群の脅威が世界中に及ぶのは、ウルトラマン・第39話「さらばウルトラマン」を彷彿させる。また、AZ2006と名づけられたミサイルは、ウルトラマンT・第25話「燃えろ!ウルトラ6兄弟」に登場したAZ1974の後継であることを伺わせる。このように、ファンに対する謎かけにも似た小ネタも十分で楽しませる。ロベルガーに関しては、さすが円盤生物と思わせる生物兵器振りが秀逸で、無数の光弾を矢継ぎ早に繰り出す様は、何発ものナパームの迫力との相乗効果でスリリングなシーンを作り出している。

 また、ガンブースターによる攻撃、ミライのメビウスへの変身、ロベルガーの脅威、ウィンダムの登場、バーニングブレイブへの変身という一連の流れは、実にスムーズでありながら密度も濃く、盛り沢山で充実した特撮シーンを見ることが出来る。このシーン運びの完成度はすこぶる高く、構成美すら感じさせるものだ。

 最後に気になったシーンを一つ。伏線になることは恐らくないだろうが、トリヤマ補佐官の「そうして呑気なことをしているから、地球は何度も侵略されそうになったのではないのかね」という発言である。コメディリリーフとしての役割を最大限に発揮してきたトリヤマ補佐官が、はっきりと極端にタカ派な発言をしたのは初めてだ。ウルトラファンにとってそれが誤った考えであることは既知であるが、一般に常識的な意見でもある。トリヤマ補佐官が一般的な考え方の代表であるという面も見て取れる興味深いシーンだ。サコミズ隊長が、やんわりと反対意見を述べてその場を収めるのも面白い。やはりさすがはサコミズ隊長といったところか。

 なお、今回はウルトラ兄弟のアバンタイトルが廃され、エンディング後のメビナビが復活している。ウルトラ兄弟のアバンタイトルは、兄弟客演時の特例なのかも知れない。

データ


監督

八木毅

特技監督

八木毅

脚本

川上英幸