第43話 脅威のメビウスキラー

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ストーリー

 宇宙の何処かでグローザム、デスレム、メフィラス星人、そしてヤプールが会談している。グローザムは自分達4名を「四天王」と呼び、メフィラス星人は四天王の上に立つ者を「皇帝」と呼んだ。ヤプールは、グローザムらをいつか超獣に改造し支配下に置くと息巻き、メビウス打倒を宣言して去って行く。その態度に怒るデスレムだったが、メフィラス星人は静観を決め込んだ。

 その頃、フェニックスネストにはジングウジ・アヤが訪れていた。何とアヤはタケナカ最高総議長の孫であった。学会のついでにタケナカに会いに来たというアヤは、ミライを借りたいと言い出す。タケナカは複雑な表情だ。ミライを半ば強引にデートへと誘うアヤ。アヤはミライに確かめたいことがあると言う。そんな2人の様子を不気味に見守るヤプール人間体、そしてヒルカワの姿があった。

 ミサキ総監代行は、謎の時空波の発信源が沖ノ島近海に認められたと報告。サコミズは時空波の発信源破壊の為、フェニックス・フェノメノンと呼ばれる1億ボルトのイオンビームの使用を提案した。テッペイは発信源の発見自体に疑問を持つが、やがて発信源は移動を開始。コノミはミライへの連絡を試みる。ところが、通信は何者かによって妨害されていた。状況を総合すると罠の可能性が高いものの、時空波を絶つ絶好のチャンスであることに変わりはない。フェニックス・フェノメノン発射には、フェニックスキャノンが必要であるため、直ちにフェニックスネスト・フライトモードの運用準備が進められた。

 何も知らないミライとアヤは、デートを楽しんでいた。そこにニュースが入り、フェニックスネストの発進を伝える。ミライが通信を試みたが、それはヤプールによって妨害されていた。さらにヒルカワが現れ、緊急時にデートをしているミライを追求。アヤはその場をうまく切り抜けるが、ヒルカワはゴシップネタを求めて尾行を開始した。

 一方、発信源を追ったフェニックスネストは、発信源と思われる物体が空に向かって超高速で移動しているのを感知。フェニックスネストは追尾を開始し、大気圏を突破して宇宙に出た。

 ミライの前に、ヤプール人間体が現れる。驚くミライを尻目に、ヤプールはエースキラーを召喚した。市街地に降り立ち、ビルを破壊し始めるエースキラー。ミライはアヤに「戦ってきます」と告げ、ウルトラマンメビウスに変身した。アヤはミライの後を追い、それをはっきりと目撃する。「やっぱりそうなんだ」アヤはミライこそがメビウスだと気付いていたのだ。

 エースキラーと対峙し、格闘戦をやや有利に進めていくメビウス。ヤプールはガディバをエースキラーと合体させた。ヤプールがメビュームシュートを指示すると、エースキラーはメビュームシュートを放ち、メビュームブレードを指示すると、メビュームブレードを発生。メビュームバーストをもヤプールの指示通り放つエースキラーは、「メビウスキラー」となったのだ。絶体絶命の危機に陥るメビウス。

 その時、アヤが「ミライくん」と呼びかける。「前に助けてもらったとき、物凄い優しさに包まれた感じがして、そうじゃないかと思ったの」とメビウス=ミライの確信を語り始めるアヤ。「絶対に死んじゃダメ! 優しさの所為で死ぬなんて、おかしいもん!」アヤの叫びを受けて立ち上がるメビウス。壮絶な格闘戦の末、メビウスキラーに組み付いたメビウスは、全身を紅蓮の炎に包み始めた。やがてメビウスはメビウスキラーと共に爆発四散し、光の粒子状態から復活を果たす。一部始終を見たヤプールは「さしずめメビュームダイナマイトというところか」と分析する。メビウスは力を使い果たし、ミライの姿で昏倒してしまった。アヤが助け起こし、ヒルカワがやって来た途端、地響きと共に地面が割れた。異次元の裂け目へと落ちていく3人。

 そしてその頃、フェニックスネストは月まで到達していた。突如操縦不能になり、月面へと墜落していくフェニックスネスト…!

解説

 エースキラーが「メビウスキラー」となり、メビウスを危機に陥れる。さらに「皇帝」の「四天王」なる一団が姿を見せ、最終展開への加速を感じさせるエピソードである。

 冒頭、いきなりまともな姿を披露する巨大ヤプール、そしてメフィラス星人に驚愕。ヤプールは人間体を清水綋治氏が演じているが、これまでの繋がりを考慮し、ちゃんと玄田哲章氏が声を当てているのが嬉しい。そして、メフィラス星人の声は、初代ウルトラマン登場時のオリジナルキャストである加藤精三氏! 劇場版のザラブ星人に続き、こだわり派のファン納得のキャスティングに感涙必至だ。「よくぞ加藤氏をキャスティングしてくれた」というのが、ファンの正直な感想ではなかろうか。この四天王のシーンは、劇場版の宇宙人連合に類似しているが、ヤプールとメフィラス星人が「四天王」として肩を並べている様子から、明らかに「宇宙人連合」より格上の集団だということが分かる。歴史あるシリーズならではのシーンだろう。

 さて、劇場版関連で言えば、ジングウジ・アヤの登場も大きなトピックである。アヤがタケナカの孫という事実は唐突な感もあるが、劇場版でアヤがサコミズのことを「サコっち」と呼んでいるという点をリンクとして使用。劇場版を視聴した者にとってはアヤの登場が自然なものとして映り、劇場版に触れていない者にとっては、タケナカという既存のキャラクターに関係する人物としての登場が自然に映る。この登場シーンの処理は非常に巧い。

 ところが、ストーリーが進むにつれ、劇場版に関するトピックが連発される。アヤの弟・タカトのこと。以前メビウスに助けられたこと、等だ。劇場版を知る者にとってはごく自然なことであるが、そうでない者にとっては、いま一つ実感の沸かないものであることは否めない。特に、メビウスに助けられた体験に端を発するアヤの叫びが、メビュームダイナマイトを行使させるまでにメビウスを奮起させるシーンは、劇場版が前提にないと成立しないシーンであるのは間違いない。これを機会に劇場版を視聴しようと思う人が、果たしてどれだけ居るのか。それはとりあえず置いておくこととしよう。メビウスというシリーズ自体、昭和のウルトラシリーズを前提にしている部分が、かなりあるのだから。

 さて、今回は清水綋治氏演ずるヤプール人間体が、その存在感を存分にアピールしている。巨大ヤプールの造形物がいかに不気味であろうと(否、まるで不気味な感じはしないが、例えとして)、清水氏の「悪の美学」に溢れた演技の怖さにはかなわない。「エースキラー! 復讐を果たせ!」という召喚の文言に、まず打ち震える。「エースキラー」という呼称自体にも感激だ。そして、メビュームシュートやメビュームブレードなどを、独特の口調とポーズで指示していくシーンは、あまりのカッコ良さに眩暈を覚えるほどである。前回も述べたが、このキャスティングは正に大成功だったと言って良い。

 ヤプールに関連したシーンは、いずれも完成度が高い。エースキラーが異次元より空中回転しつつ登場し着地、すぐさま市街地を破壊し始めるシーンは、ウルトラマンレオっぽいものの、エースキラーの「異次元超人」という肩書きを端的に現すシーンだろう。他にも風船が効果的に使われたり、ヤプール人間体を照らす照明に凝っていたり、色々なトピックを挙げることができる。最後の地割れシーンは、ウルトラマンA・第5話「大蟻超獣対ウルトラ兄弟」がイメージソースだろうか。合成やカット割に芸がある。メビウスVSメビウスキラーと、アヤを大胆に合成して1つのシーンにしているのも見逃せない。このシーンにおけるミニチュアは精緻で、実景との合成に違和感がない。

 一方で、「謎の時空波」に関する展開が急転するのにも注目すべきだ。予告編から分かるとおり、次回の展開を月面にて行う為の準備でもあるのだが、テッペイのセリフにて説明されるように、今までどれだけ探索してもダメだったものが突如現れるという展開は、最終局面のストリームを引き起こすのに絶好な仕掛けだ。「謎の時空波」自体、予定調和的な臭いが濃いのは各方面で指摘されていることであるが、それを別の目的の為の手段(ここでは、展開の加速)に使用したことで、俄然シリーズとしてのまとまりが増した。シリーズとしてのまとまりという点では、劇場版を同一ステージにはっきり置いて見せたアヤや、ヒルカワの再登場も、その貢献者として挙げておくべきだろう。

 テレビ版メビウスにおけるヤプール編は、中盤の「フジサワ博士編」のようなコミカルな印象が強かったが、今回のようにジワジワと危機が訪れる展開は、正に「ウルトラマンA的」という印象であった。アヤとミライの爽やかさが、どこか空回りしている印象すらある。最終局面の前哨として、独特の鈍い光を放っているエピソードだ。

データ


監督

小原直樹

特技監督

菊地雄一

脚本

赤星政尚