第46話 不死身のグローザム

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ストーリー

 サコミズ隊長以下、リュウ、ジョージはケガの為、病床に伏していた。同じ頃、グローザムは高倉市のダムに現れ、その吐息で一気に水を凍りつかせた。

 ダムに向かうミライ達。そこへグローザムが現れ、ミライに挑戦する。ミライの放ったトライガーショットの弾丸も凍りつかせる、恐るべきグローザム。テッペイはグローザムの挑発に乗りかけたミライを必死で止めた。しかし、テッペイは高熱を出して倒れ伏してしまう。ミライはウルトラマンメビウスに変身してグローザムに立ち向かった。

 メビュームシュートで一気に勝負をつけようとしたメビウスだったが、グローザムは類稀なる再生能力により、メビウスを窮地に陥れる。テッペイの差し向けたウィンダムの火炎弾も歯が立たず、メビュームバーストすらも全く効果がない。やがて、力を使い果たしたメビウスはグローザムに胸を貫かれ、ダムに凍りついたまま磔となった。

 絶望するコノミの前に、モロボシ・ダンが現れた。「諦めてはいけない」そう言ってコノミの落としたメガネを手渡すダン。ダンは、強敵に敗れたウルトラマンの窮地を、人間が救ってきたと語る。ダンは「ウルトラマンも人間も仲間が居る限り、どんな強敵とも戦い、勝つことが出来る」と言うと、コノミに目を閉じるよう促した。目を閉じたコノミは、「僕は生きています」というミライの言葉を聴く。

 その頃、メビウスが生きていることを承知で余裕綽々のグローザムに、メフィラス星人は用心を促す。しかし、グローザムは不死身の身体におごっており、耳を貸さない。

 メビウスを救う方法が一つだけあるという。マグネリュウム・メディカライザー。かつて、ウルトラ警備隊がウルトラセブンを救出した際に使用した光線を、メテオール化したものだ。コノミは希望を見出すが、マリナは不死身のグローザムに不安を覚える。しかし、コノミは「必ず勝てます」と自信を見せる。そこへフジサワ博士が登場。新メテオールの搭載をアライソ整備長に依頼してきたという。ところが、フジサワ博士のプランにはガンウインガーとガンローダー両機が不可欠。マリナがガンウインガーに搭乗するのは問題ないとしても、男性陣がケガを負っている為、ガンローダーのパイロットは不在である。コノミは意を決してガンローダー搭乗を志願した。「女性の力、見せてあげますわ」フジサワ博士はサコミズ隊長に宣言する。作戦名「プライド・オブ・ガールズ」。

 コノミは初めての単独フライトに緊張していた。かつてミライが教えてくれた、勇気の出るおまじない「デュワッ!」を試すコノミ。その時リムが現れ、コノミを和ませた。緊張の解けたコノミは、満を持して発進する。

 マリナがガンウインガーのマニューバモードを発動させた途端、グローザムが出現し、その行く手を阻んだ。ダンはウルトラセブンに変身し、グローザムを抑える。マグネリュウム・メディカライザーの照射は成功し、メビウスは復活。メビウス&セブンのタッグは、グローザム戦を優勢に進めた。ところが、メビュームシュートとエメリウム光線で爆発四散したグローザムは、またも復活を遂げようとする。その時、コノミがガンローダーのマニューバモードを発動、新メテオール「マクスウェル・トルネード」を発射し、破片状態で質量が小さくなったグローザムを焼き尽くした。

 ダンは、ミライに「俺が受けた、悲しい思いだけは、君に味わわせたくない」と言い残し去っていく。コノミは、落としたメガネを拾う際、ダンの気配を感じた…。

解説

 北斗=エース、郷=ジャックに続く、モロボシ・ダン=ウルトラセブン登場編。前々回、前回のような、ミライの心理の奥に突き刺さる重苦しい展開とは異なり、メビウスを早々に敗退させ、セブン登場、メビウス復活までを一気に見せる、勢いある構成。そこに、3月3日という日柄を加味し、女性陣の大活躍を絡めるという、「フェミニスト」の異名をとるセブンのゲスト編ならではの(?)ストーリーが光る。

 「プライド・オブ・ガールズ」なる作戦名を与えられた、女性陣の活躍。ストーリー的には、コノミにスポットが当てられているが、ミサキ総監代行、マリナ、そしてフジサワ博士それぞれに光る場が与えられている。

 まず、コノミの初単独フライトが、終盤に至って初めて描かれたことに拍手。緊張度は、中盤で描かれるより数段高く、同時にコノミの成長度も色濃く感じられる具合になっているのだ。マリナの「隠れた才能ね」というセリフがあるが、むしろコノミのメンタルな成長の成果と見るべきであろう。

 マリナは、ガンウインガーを駆って勇ましく活躍。しかし、隠れてキラリと光るシーンがある。それが、ふとグローザム攻略に不安を覚えるシーンだ。メビウスもウィンダムも歯が立たない敵を前にしての、当然の反応であるし、このシーンではむしろコノミの自信たっぷりな様子こそがイレギュラーに映る。勇ましいばかりではなく、繊細な面も併せ持つ、そんな魅力を感じさせるシーンだ。

 続いてミサキ総監代行。サコミズ隊長とほぼ同格の扱いという、これまでの描写を踏襲し、「隊長代行」をやってのける。「GUYS, Sally Go!!」の口上は、以前よりも張りがあり、威厳も増している。ここにもまた、ある種の成長を感じることが出来るだろう。隊長席に座る姿は、第26話のフジサワ博士よりも似合っている。

 そのフジサワ博士は、久々の登場ながら、やはり独特のオーラを放っている。本エピソードは、ウルトラマンガイア・第10話「ロック・ファイト」が印象的なXIGのチーム・クロウを彷彿とさせるシチュエーションだが、そのチーム・クロウのメンバー・多田野慧役だったのが、フジサワ博士を演じる石橋けい氏だ。フジサワ博士独特のクールな口調は、多田野慧にも通ずるところがあり、ガイアファンにとっても嬉しい配置と言えるだろう。

 さて、ウルトラセブンである。

 前回のウルトラマンジャック登場編に関しては、少々手厳しい評価を述べたが、今回も構造そのものは類似している。「ウルトラセブン」自体も完結性の高い物語である故に、あれこれと細かい未解決部分を取り上げる余地がない。そこで、モロボシ・ダンという「人間」がどういう経験をしてきたか、という部分にスポットを当てている。この部分も、前回の郷秀樹とほぼ同じだ。

 しかしながら、前回のような消化不良な感覚は殆どない。何故か。それは、ウルトラセブンというキャラクター自体が「客演に慣れている」からに他ならない(勿論、旧来ファンがセブンの客演に慣れているという意味だ)。セブンは、「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA」「ウルトラマンT」に単独でゲスト出演し、「ウルトラマンレオ」ではダンとしてレギュラー出演、「ウルトラマン80」では妄想ウルトラセブンという形ではあるが、その姿を見せている。モロボシ・ダンとしての登場は、意外なほどに少ないのだが、セブンとしての客演回数は兄弟中でも随一だ。

 出演歴が証明するように、セブンは実に客演向きのキャラクターなのだ。そのキャラクター性故に、グローザムに立ち向かう勇姿は短いながらも実に味わい深い。格闘術はセブン放映当時よりも軽やかだが、パワフルな打撃、アイスラッガーの一撃、何故かウルトラダブルフラッシャーを連想させるポジションでのエメリウム光線発射など、サービス満点だ。

 そして、モロボシ・ダンである。馬に乗って登場するのは、映画版で牧場にて働いていたことを継承したもの。ウルトラセブン・第1話「姿なき侵略者」で自らを「風来坊」と称した彼のイメージに合致している。メビウスが磔になる様子は、ウルトラセブン・第39話「セブン暗殺計画(前篇)」、第40話「セブン暗殺計画(後篇)」からの引用(磔ポーズの両腕の角度までも再現)であり、ダンの脳裏にもその時の思い出がよぎる。

 そのダンの想いは、「人間であろうと宇宙人であろうと、君を君として認めてくれた仲間達が」というセリフや、「俺が受けた、悲しい思いだけは、君に味わわせたくない」というセリフに切ないほどに現れている。前者はウルトラ警備隊のアンヌ隊員が、ダンに向かって投げかけた言葉「人間だろうと宇宙人だろうと、ダンはダンに変わりないじゃないの。たとえウルトラセブンでも」より。後者に具体的なソースはないが、死を賭しての戦いの彼方に、ウルトラ警備隊の面々との悲しい別れがあったこと、そして、宇宙パトロール隊MACの隊長に就き、多くの仲間の犠牲を目の当たりにしたことを踏まえてのセリフだろう。モロボシ・ダンの物語において、「ウルトラマンレオ」の「史実」が踏襲されたことは、ファンとして素直に喜ばしい。

 これらのセリフを述べるシーンにおいて、ダンが、様々な場面で地球人との友情を感じてきたことを、しみじみとしたタッチで描写しており、感慨深い。そこは、地球人との軋轢を多く経験した郷秀樹とは、少し異なるところであろう。それが、前回と今回のタッチにも現れているようで面白い。

データ


監督

村石宏實

特技監督

村石宏實

脚本

川上英幸