第47話 メフィラスの遊戯

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ストーリー

 ミライの周辺が突如変わった。メフィラス星人はミライの夢の中に現れ、「ただ倒すだけでは面白みに欠ける」とし、ウルトラマンメビウスを倒すのはGUYSだと宣言する。夢から覚めたミライは、休暇をもらったことを思い出す。公園に来ていたミライは、子供たちがメフィラス星人の人形でメビウスの人形を袋叩きにしている様に戦慄する。ミライは上空に、メフィラス星人の円盤が滞空しているのを見た。子供たちは、自分達を守ってくれているメフィラス星人の宇宙船だと言う。

 ほくそ笑むメフィラスの脳裏に、初代ウルトラマンが語りかける。「これは私とメビウス、1対1のゲームなのです」と言うメフィラスは、子供たちの命を盾に、初代マンの手出しを牽制した。メビウスにも人間にも指一本触れずに、このゲームを成立させる自信を魅せるメフィラスは、グロマイトを召喚し、自ら地上に降り立った。ミライはメビウスに変身するが、メフィラスはグロマイトをさっさと片付けてしまう。GUYSにメビウス打倒を命ずるメフィラス。攻撃してくるGUYSメンバーに対し、メビウスは懸命に呼びかけるが、一切応答がない。成す術のないメビウスは姿を消してしまった。メフィラスは「GUYS諸君はゲームの駒なのです」と高笑いし、同じく姿を消した。

 ミライは、テッペイの通う大学に向かい、テッペイに会う。メフィラスが侵略者だと説明するミライだったが、テッペイはメビウスこそが侵略者だと認識していた。その場から逃げ去ろうとするテッペイを追うミライは、CREW GUYSの攻撃で傷ついた腕を押さえて座り込んでしまう。テッペイはミライを放っておけず、傷の手当をした。「君が、何だか他人じゃないような気がして」テッペイは違和感を隠せない。

 ミライの進言により、メフィラスの円盤を調査することにしたテッペイは、ミライをディレクションルームへと招き入れる。メフィラスの円盤から、人間の脳に直接作用する力が発信されていることに気付くテッペイ。メビウスに関する人々の記憶が、メフィラスによって置き換えられているのだ。そこへCREW GUYSの面々が帰還してきた。彼らの話を聞き、隠れていたミライはたまらず飛び出してしまう。ミライに銃を向けるリュウ達。ミライはファイアーシンボルの描かれたメモリーディスプレイをリュウに見せるが、リュウのメモリーディスプレイにはファイアーシンボルが描かれていなかった。ミライは思わず涙をこぼし、その場から去った。

 ガンウィンガーで飛び出したミライに、テッペイが同乗している。その後を追うリュウ達。メフィラスの声が響く。ガンウィンガーを攻撃する命令だ。テッペイに説得を促すミライだったが、テッペイはメフィラスの言葉の方を信用し、ミライに銃を向けた。「仲間と衝突することなんて出来ないし、メフィラスと戦う勇気もない」と言うテッペイに、ミライは懸命に自分のことを思い出すよう説得する。一方のリュウ達も、同様に違和感を感じていた。

 そんな葛藤の中、テッペイはかつてミライに「お守り」をもらった事を思い出す。「違う…これは違う!」テッペイが手にした黒い「お守り」に、ファイアーシンボルが浮かんだ。テッペイはミライを思い出したのだ。テッペイの呼びかけと、メビウスに変身したミライの、身を挺して仲間を守る行動を目の当たりにし、リュウ達も一様にミライ=メビウスを思い出した。

 バーニングブレイブとなったメビウスを援護すべく、ガンフェニックストライカーにバインドアップした3機は、メフィラスの宇宙船を撃破した。地上に降り立つメフィラス。それを見たハヤタは、初代マンに変身した。メフィラスは、メビウス、初代マン、GUYSと渡り合う。メフィラスの攻撃をものともしない初代マンは、「無駄な抵抗は止めろ。お前の仕組んだこのゲーム、お前自身が手を出した時点で、既にお前の負けだったのだ」と言い放つ。メフィラスは率直に敗北を認め、四天王が破れた意味を理解したと語った。再度の挑戦を宣言し、メフィラスは去っていった。

 初代マンはメビウスに、ウルトラ兄弟が地球を離れることを伝える。「私が地球人を愛したように、君もまた、彼らを心から愛し、信頼しているはずだ」初代マンはメビウスにそう言い残した。ミライは仲間の元へ帰っていく。物陰から優しい眼差しで見守るハヤタ。テッペイはその気配に気付いたが…。

 その頃、メフィラスは宇宙空間で「皇帝」の粛清を受け、人知れず散っていった。

解説

 真打登場とばかりに、遂に初代ウルトラマンが登場。凄まじい緊張感を湛えたエピソードにて、限りなくオリジナルに近いキャラクターとして登場するメフィラス星人と、再び対峙する。実は、初代マンの単独客演は、「正史(無論、「ティガ」を除くという意味)」において本エピソードが初となる。

 ハヤタ=初代マン登場の今回は、他の客演エピソードとかなり趣が異なる。基本ストーリーはミライとメフィラス星人のみで展開し、周囲の人物(つまりGUYSメンバー)がそれに少しずつ関わっていく形式。メフィラスが作り出す虚構と、真実の世界から互いに手を伸ばすのが、テッペイとミライであり、テッペイとミライが出会った時点から、少しずつ虚構の壁が溶け出していく。

 ハヤタは、虚構の中に居ながら唯一真実を知る者として登場するが、手を出さない。メフィラスによって手を出せないようにされているくだりは語られているものの、むしろ初代マンは敢えて手控えているという印象がある。さらに初代マンはメビウスを信じ、メフィラスの遊戯を静観しているようにも見える。

 この奥ゆかしさこそが、初代マンの真骨頂であろう。ウルトラセブン以降とは異なり、基本的に初代マンは物言わぬ謎めいた宇宙人であった。そのウルトラマンが雄弁に語るのは、ウルトラマン・第1話、第39話でのハヤタやゾフィーとの「会話」を除けば、ウルトラマン・第33話「禁じられた言葉」、つまりメフィラス星人と対峙したときのみである。

 本編での印象を総合すれば、かつてメフィラス星人のゲームを、ハヤタの姿で一笑に付した経験のある初代マンが、今度はメフィラスのゲームを審判する役として登場していると言える。メフィラス星人に敗北を宣言したときの神々しいまでの立ち姿は、映画版に登場した初代マンとは別種の輝きを放つ。映画版は俗に言うAタイプ造形を再現したものだが、今回登場の初代マンはCタイプ造形を再現したもの。「ウルトラマン」における、Aタイプの荒削りな戦闘スタイルを映画版で、Cタイプの洗練された戦闘スタイルを今回で、再現したように思えて仕方ない。CGによるスピーディなバトルシーンが盛り込まれていたが、随所にスーツアクションのカットを絶妙なバランスで織り交ぜることにより、違和感を極限まで緩和。Cタイプ・初代マンの存在感を損なうことなく、非常に高い再現性を獲得したと言える。仁王立ちでメフィラスの光線を受け流す様は、「待ってました」状態であろう。

 メフィラス星人は、非常に微妙なポジションで描かれている。前述の第33話「禁じられた言葉」に登場したメフィラス星人と、スタイルから言動、声(オリジナルと同じ加藤精三氏!)まで踏襲しており、また、ウルトラマンとの互角の戦いぶりから見ても、同一人物と見て良いだろう。しかし、「皇帝」に宇宙空間で抹殺される様子を見た後は、同一人物であって欲しくないと思えるから不思議なものだ。メフィラスのある種の潔さは、卑怯者でありながら紳士的な味わいを感じさせ、「皇帝」による抹殺に同情すら覚えてしまう。同情を誘うという点では、オリジナルとは随分異なる故、やはり同一人物ではないということだろうか? 大変難しい問題だが、見る者によって解釈が異なるよう仕掛けられているのだろう。

 さて、今回は虚構と現実の狭間をミライが揺れるという構造の為、映像的に様々な仕掛けが施されている。登場する人物は殆ど黒い扮装で登場し、ミライのデニムが浮いて見えるというウマい表現を随所に見ることが出来る。その「黒」は、「約束の炎」を消す闇としても表現されており、ミライの配ったお守りというアイテムが、効果的に使用された。ファイアーシンボルの浮かび上がるシーンは、「人間を侮ってはならない」とグローザムに警告したメフィラスが、またしても人間の心に負けた瞬間だ。最終局面を前に、GUYSとメビウスの絆を再確認するには、正に打ってつけのシチュエーションである。

 テッペイにも注目しなければならない。テッペイがミライとの絆を思い出す一連のシーンは、テッペイ自身が勇気を出す過程ともダブらせて描かれており、テッペイの精神的成長を否が応でも印象付ける。しかも、ガンウィンガーを単独で操縦しており、パイロットの技能も遜色ないレベルとなっていたことが分かる。テッペイファンにとっては嬉しい場面だ。

 エース登場時より、GUYSメンバーそれぞれとウルトラ兄弟が関わるのだが、テッペイも例外ではない。ただし今回は、初代マンとの関わりというより、テッペイ自身がいかにミライとの絆を思い出すかに焦点が据えられ、初代マンとの関わりは非常に薄い。この部分は、ジャックとジョージの関わりと同様、やや取って付けたような感じを受け、少々残念だ。

 その他、旧来ファンをアッと言わせるシーンが続出。懐かしい効果音楽と共に、メフィラスの背後に迫る初代マン、オリジナルと同じポーズでグリップビームを発射するメフィラス、ハヤタの変身シーン(オリジナルのバンクを使用)、八つ裂き光輪(オリジナルの効果音使用)、「必ず、また君たちに挑戦しにやって来ます」と言い、オリジナルと同じ消え方をするメフィラス等々…。旧作の要素を継承し、オマージュを交えつつ、換骨奪胎した本エピソードは、存分に傑作の薫りを漂わせている。

データ


監督

アベユーイチ

特技監督

菊地雄一

脚本

小林雄次