Yesshows (イエスショウズ)

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イエスショウズ(紙ジャケット仕様)

 「ドラマ」の後、イエスがほぼ解体されてしまった時期にリリースされたのが、この2枚組ライヴ盤。

 先の傑作ライヴ盤「イエスソングス」の続編としての製作意図が、「イエスソングス」との重複曲がないことや、「イエスソングス」後のベスト的選曲になっていることからも読み取れる。イエスの実体が薄い「ドラマ」期に、黄金期メンバーによるイエスの姿を感じさせるライヴ盤をリリースするあたり、多分に戦略的ではある。

 一見して「海洋地形学」~「トーマト」までのベスト選曲であることは疑いないが、パーソネル的に「ドラマ」収録曲がないのは当然だが残念。また、パトリック・モラーツとリック・ウェイクマンの参加音源が混在しており、全体のまとまりやライヴの疑似体験といった主旨で聴くのは少し辛い部分がある。

 「海洋地形学」以降の曲は全体的にハードなものが多いのも特徴で、当然そのあたりから選曲された本作はハード一辺倒にならざるを得ず、「イエスソングス」で聴かれたようなうねりといったものは期待できない。しかしながら、やはり演奏は一流。各人のテクニックが存分に堪能でき、「究極」、「クジラに愛を」、「儀式」といった傑作ナンバーのライヴを聴く事が出来るのは、至福と言えるだろう。

Drama (ドラマ)

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ドラマ(紙ジャケット仕様)

 ウェイクマン、そしてイエスの「顔」とも言うべきアンダーソンが脱退。窮地に立たされたスクワイアの大胆な試みは、「ラジオスターの悲劇」で大ヒットを飛ばしたトレヴァー・ホーンとジェフ・ダウンズからなるバグルスを吸収合併するというものだった。元々バグルスの2人がイエスのファンだったということも手伝って、スクワイアの思惑はすんなりと通用した。

 プロダクションが緻密で、よく出来たプログレッシヴ・ロック・アルバムである。「マシーン・メシア」では、ホーンがアンダーソンを彷彿させるハイ・トーン・ヴォーカルを披露しているが、他のパートは過去のイエスと異なり、かなりヘヴィな音作りになっている。このあたりは、ダウンズの醸し出すキーボード・ワークの雰囲気に拠るところが大きい。「白い車」に至ってはダウンズの誇るシンセ・オーケストラの独壇場で、過去のイエス・ワールドとは全く異なっている。

 一方、「夢の出来事」では、変拍子、明るいメロディといった部分が本来のイエス・ミュージックを感じさせる。「光を越えて」では、ホワイトの安定感溢れるドラムやメロディの組み立て方が、後の90125イエスへの展開を予感させる。「光陰矢の如し」は「イエス」という単語が連発される、疾走感溢れるナンバーで、往年のスピード感を強く感じさせる。

 このように、イエスになろうとする要素と、後のエイジアで展開される、複数の楽器のユニゾンで厚みと奥行きを出す方法論や、アンダーソンほどの華がないホーンのヴォーカルなどとがズレを生じさせており、スクワイアの妙に元気なベースを除けば、後にダウンズとハウが参加するエイジアのアルバムに聞こえてしまう部分が多い。「レンズの中へ」などは傑作ナンバーながら、その感覚が最も強い曲に挙げられるだろう。

Tormato (トーマト)

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トーマト(紙ジャケット仕様)

 「究極」のテイストを受け継いだアルバムかと思いきや、よりコンパクトでハードな楽曲が並んだ傑作。「究極」で見られたような、キラキラしたものが奥行きを伴って迫り来るような感覚はなく、よりライヴ感を重視した音作りが成されている。

 リバーブも控えめ(というより殆ど無いような印象)、いかにも「スタジオ録りです」といった感じは、ポストプロダクションにおける手間を省略したような印象を与えるが、その部分を減点するようでは、このアルバムの魅力を堪能することは出来ない。例えば、オープニングを飾る「輝く明日」~「歓喜」。ウェイクマンの派手なキーボード・ワークと骨太なリズム・セクションが目立つが、音像に奥行きを与えられなかった分、引き締まって聴こえる部分も多く、アンダーソンのヴォーカルまで含めて非常にタイトである。余計な装飾がないことで、イエスの骨格をビシビシと体感できる。

 「輝く明日」~「歓喜」と同様の傾向は、他のナンバーにも見られる。ハウの泣きギター(?)で始まり、見事なコーラス・ワークと力強いヴォーカル、ウェイクマンの波打つようなシンセ・フレーズが印象的な「クジラに愛を」、複雑なコーラス・ワークで畳み掛ける「自由の解放」、シンセの電子音が特徴的な、楽しい題材をそのまま曲に仕上げた印象の「UFOの到来」、珍しく足元の軽いホワイトのドラミングと、インプロヴィゼイションのような各パートが意外性を喚起する「自由の翼」。

 一方、叙情性と幻想性を追及した「マドリガル」、「天国のサーカス」、「オンワード」といったナンバーもあり、聴き手を飽きさせない構成は見事である。この作品の本質は、「メンバーが協力して楽しい作品を作った」ことにある。まとまったサウンドや寓意に満ちた詩、挙げられる魅力要素は数多く、それまでのイエス・ワールドに対する先入観を捨てて聴く事が出来れば、このアルバムの持つ緊張感と開放感の波を心地よく感じられるだろう。

Going for the One (究極)

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究極

 初めて聴いたときは衝撃的だった。オープニング・ナンバーはのっけからディストーションの効いたハウのスティール・ギター。ノリの良いロックンロール系リズムに度肝を抜かれる。アンダーソンのこれまで以上にハイ・トーンなヴォーカル、独創的なコーラス、ウェイクマンの超速弾きシンセ。素晴らしくハイ・テンションなタイトル・チューン「究極」はイエスに新しい側面を加えた印象的な1曲だ。

 本作を聴くと、精緻なモザイクのような緻密に過ぎるイエス・ミュージックはない。むしろパワーに溢れた、各人の技量に依存したライヴ感溢れる音作りになっており、ダイナミックな量感に圧倒される傑作アルバムだということが分かる。

 アンダーソンの持つ叙情性と、ハウのマイルドなアコースティック・ギターが見事なコラボレーションを成す「世紀の曲り角」、次なる「パラレルは宝」は、ウェイクマンのチャーチオルガンがシアトリカルな効果を存分に発揮する。「不思議なお話を」はスロー・テンポな曲ながら、アンダーソンの澄んだヴォーカルとハウの爽やかなギター、ウェイクマンのきらびやかなシンセ、スクワイアとホワイトによる足元のしっかりしたリズムセクションが冴える傑作。

 そして、何と言っても真に「究極」なのは、シャープなプログレ・ナンバー「悟りの境地」。幽玄の彼方から迫るアンダーソンのヴォーカルに始まり、目くるめくハウのギターとウェイクマンのキーボード・ワークが展開されていく。スクワイアの骨太なベースとホワイトのズッシリとしたドラミングが支える中、自由に飛び回るヴォーカル、コーラス、ギター、キーボード。見事なアンサンブルで幻想に満ちた世界を描ききった超傑作ナンバーだ。

Yesterdays (イエスタデイズ)

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イエスタデイズ(紙ジャケット仕様)

 イエス初のオムニバス盤である本作は謎に満ちている。その謎の主体は、その選曲にある。冒頭の「アメリカ」と最後の「ディア・ファーザー」はオリジナル・アルバム未収録曲とあって、未収録曲を収録するスタンスを採ることの多いオムニバス盤としての手法に基づいている為例外とするが、その他の曲がすべて「ファースト・アルバム」と「時間と言葉」の曲で占められているのだ。

 発売時を考えると傑作アルバムが出揃っているので、「こわれもの」や「サード・アルバム」、「危機」「海洋地形学の物語」「リレイヤー」といったアルバムから壮大な組曲がエディットされてでも収録されそうなものだが、そういった作品はなぜか一切無視されている。もしかしたら、「サード・アルバム」で名声をものにしたイエスが、それ以前の歴史をファンに知ってもらおうと意図したのかも知れないし、単に本人達のノスタルジーであったのかも知れない。

 実際、このオムニバス盤を聴いていると無性に初期2枚が聴きたくなる。本オムニバス盤発売時のイエスは、モラーツの脱退や音楽性の試行錯誤などもあって、結構疲弊していたのではないだろうか。初期へのノスタルジーという解釈は、強ち外れとは言いがたいのではないか。

 以後、かなりのオムニバス盤が発売されるイエスだが、ここまで極端で妙な個性を放つものは現れようがない。

Relayer (リレイヤー)

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リレイヤー

 「海洋地形学」発表後にリック・ウェイクマンが脱退し、その後任としてイエスに加入したのは、ウェイクマンとは全くことなるアプローチを見せるパトリック・モラーツ。そのモラーツ加入時唯一のアルバムが、この「リレイヤー」である。前作があまりにも壮大であったのに対し、この作品は割とコンパクトにまとめられている。ただし「危機」と同じ全3曲(A面に1曲、B面に2曲)という構成であり、「プログレッシヴ・ロック」としてのフォーマットは守られた形となった。

 しかしながら前作より、ひいては「危機」の頃よりも随分とハードで派手な作風になっている。1曲目の「錯乱の扉」は前作のアプローチをよりハードな作風に発展させたような大曲。モラーツの音色はこれまでのイエスと比べて明らかに異質なものであり、ハウのギターにも少なからず影響を与えているようだ。また、細かいフレーズが繰り出されながらも全体的にテンポが早く、凄いナンバーだ。途中アンダーソンによって歌われる「スーン」の清涼感も素晴らしい。

 「サウンド・チェイサー」では、モラーツの影響か、フュージョンっぽいエレピに導かれてスクワイアまでフュージョンっぽいベース・フレーズを弾いていたりする。そこをアンダーソン節が従来のイエスに引き戻すあたりが面白いところだ。「錯乱の扉」に比べてさらに展開は目まぐるしく、イエスが最もプログレ寄りの姿勢を見せたナンバーと言って良いだろう。

 終わりを締めくくる「トゥ・ビー・オーヴァー」はゆったりした壮大なナンバーで、他の2曲とは全く違った印象。ただしアレンジメントは一筋縄ではいかず、ハウとモラーツがそこかしこに細かいフレーズを織り込んでいる。本作の美点は、こういった妥協のなさであろう。

Tales from Topographic Oceans (海洋地形学の物語)

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海洋地形学の物語(紙ジャケット仕様)

 新ドラマーのアラン・ホワイトと共にツアーを終えたイエスが発表したのは、2枚組全4曲という「これぞプログレ」と言わんばかりのコンセプト・アルバムだった。何やら宗教めいた歌詞や奥行きのある音場作り、壮大なスケール感。要素を引っ張り出すと傑作の香りに包まれたアルバムであると断言できる。

 アンダーソンの呪文のようなヴォーカルから幕開ける「神の啓示」は、ウェイクマンのシンセサイザーがかなり前面にフィーチュアされた、シンフォニックなナンバー。前半はゆったりとしたリズムで推移していくが、突然後半よりテンポ・アップし、ホワイトならではの重厚なリズムとウェイクマンの驚異的なソロが堪能できる。2曲目「追憶」は、一転してコーラス・ワークを重視した静かなナンバーだが、そこは簡単にいかない本作、後半はハードなハウのアルペジオをフィーチュアしたものに変化していく。

 異様に細かいフレーズが続々と重なるオープニングが鮮烈な「古代文明」は、変拍子と不協和音を多用した幻想味溢れる構成で、イエスとしては少々異色のナンバーである。ただし、ハウのアコースティック・ギターが延々とフィーチュアされるなど、イエスならではの要素も縦横に感じられる。最後を飾る「儀式」は、本作のハイライト。各インストゥルメントの複雑で不思議なコラボレーションと美しいコーラス・ワーク、特にホワイトが作り出すドラムは一見オーソドックスでありながら、実に各パートをうまくリードしており、この安定感がイエスにもたらした影響は大きい。

 制作中にリック・ウェイクマンが「冗長だ」という類の発言をしたそうだが、強ち外れてはいない。しかしながら本作を強く傑作に推したいところ。何といっても2枚にわたり各人の力量が如何なく発揮され、魅力的なフレーズがそこかしこに現れる贅沢さがたまらない。さらに、「危機」までに比べミックスなどポスト・プロダクションに緻密さが感じられるのが良い。音が綺麗だ。

Yessongs (イエスソングス)

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イエスソングス(紙ジャケット仕様)

 イエス初のライヴアルバム。3枚組という圧倒的なヴォリュームで迫るほぼフルセットのライヴは圧巻である。勿論、ワン・ステージを収めたものではなく、一連のツアー日程からピックアップして構成されているのだが、ブラッフォードとホワイトの違いを除けば、全体の統一感は良好であり、臨場感はほぼ完璧と言っていいだろう。

 選曲等、ベスト盤的な構成を持つところもニクイ。実際、後々まで受け継がれる「危機」までの「ベスト」の曲目は、このライヴ盤選曲にほぼ集約される。ウェイクマンのソロ作品「ヘンリー8世と6人の妻」の一部がパフォーマンスされるところも聴きモノだ。この演奏はウェイクマンのベスト・パフォーマンスとの評判もあり、いかにこの時期のイエスがノッていたかが分かる。

 それにしても、この演奏を聴く限り、スタジオ盤と何ら遜色ない。それほど構成力、演奏力共に確かなものであり、それがイエスというグループが珠玉たる所以である。拡大された「ザ・フィッシュ」など、インストゥルメントの奏力は勿論だが、コーラスワークが完璧に再現されている点に特に注目していただきたい。つまり、「ヴォーカリスト」はアンダーソンその人だが、「シンガー」としてはスクワイアもハウも名を連ねることが出来るわけだ。「シベリアン・カートゥル」や「アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル」といったコーラスが最重要になるナンバーに関しても、何ら不満要素はないのだ。

 ライヴツアー中、ブラッフォードが脱退するというアクシデントがあったが、代役のアラン・ホワイトは完璧にパーカッション・プレイをこなしている。特に「危機」のような複雑怪奇なアレンジメントを、短期間で覚えて演奏したとは思えない。この力量が、今後のイエスを支えていくことになる。

Close to the Edge (危機)

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危機

 問答無用のイエス最高傑作。全3曲という構成は、紛れも無くプログレッシヴ・ロックの記号的解釈を誘うことができるが、このアルバムは当然それにとどまることが無い。前作で得られた強固な各人のコラボレーションが、さらに拡大解釈と詳細設計を施され、1枚のアルバムに作品として収められている。それは効果音から一糸乱れぬコーラスまでを完璧にコントロールした、一種のインダストリアル・プロダクションだ。

 長尺でありながら、一気に聴かせる構成力。複雑なアレンジを、窮屈さを感じさせること無く適度な緊張感を維持して盛り込む類稀な演奏力。あらゆるアイディアを見事な構成力でまとめたタイトル・チューン「危機」は、イエスのプログレッシヴ・ロック・グループとしての側面を最も象徴した一曲だ。ロックならではの高揚感も、ここではさながらシンフォニーのようなドラマチックな高揚感へと昇華される。フィナーレに至る部分は何度聴いても鳥肌モノだ。

 2曲目「同志」は、一転してハウのアコースティック・ギターをフィーチュアした穏やかなパートより開始される。全編がハートウォーミングなフレーズで彩られ、ウェイクマンのメロトロンが壮大さを演出する。ここでは、スケールの大きなイエス・ワールドが演出されており、1曲目との対比が鮮やかだ。

 そして、最後を締めくくるのは、軽やかなフレーズで人気の「シベリアン・カートゥル」。細かい音符が織物のように一つの曲を形成しており、複雑な構成ながらポップな雰囲気を醸し出す代表曲。「同志」とこの曲は後々までずっとライヴで演奏されており、「サード・アルバム」の楽曲群と並んで最重要レパートリーになっている。

Fragile (こわれもの)

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こわれもの

 イエスの代表作といって、これを挙げる人は多い。それほど、このアルバムには「イエスらしさ」が溢れている。その「らしさ」とは、つまり緻密なアレンジが生むダイナミズムと、次々と繰り出されるフレーズがまとまりを見せて曲を成すこと、さらにポップなフィーリングであると説明できるだろう。

 まず1曲目「ラウンドアバウト」から既にその特徴が顕著である。骨太かつ疾走感溢れるベース、タイトで正確無比それでいて個性的なドラミング、バッキングでありながらフレーズとして成立するギターワーク、驚嘆すべき手数でアレンジの幅を広げるキーボード・プレイ。それら全てがこの1曲に集約されている。

 このアルバムのもう一つの特徴は、各人のソロ系ナンバーが収録されていることである。ウェイクマンのキーボード・ワーク「キャンズ・アンド・ブラームス」、アンダーソンのコーラス・ワーク「天国への架け橋」、ブラッフォードの手によるアヴァンギャルドな「無益の5%」、ハウのアコースティック・ナンバー「ムード・フォー・ア・デイ」、そしてスクワイアの「ザ・フィッシュ」。それぞれのテクニックやアイディアが、小品に詰まっているようで面白い。ただ、トータルの完成度における評価を次作「危機」に譲った形になっているのが、これらソロ作品による散漫なイメージ故であることも付け加えておかなければならない。

 本作は、そういったソロ作品に費やされて、前作のような大作が少ないのだが、「天国への架け橋」から「南の空」へ繋がるシークェンスや、「遥かなる想い出」から「ザ・フィッシュ」への組曲的な構成など、前作を思わせる部分が継承されており、全員が素晴らしいコラボレーションを見せる「燃える朝焼け」では組曲・大作として結実する。このアルバム構成は見事と言うほかない。