タグ「スタジオアルバム」が付けられているもの

Country Life (カントリー・ライフ)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

カントリー・ライフ(紙ジャケット仕様)

 前作で新しい方向を示したロキシーが放った第4作。前作よりもさらにロック化。ハード・ロックとフェリーの美的感覚が最高の形で結実した傑作だ。

 各人の演奏も実に的確で素晴らしく、コーラス・ワークも充実している。全体的に音像がシンプルになっており、ミキシングのセンスもいい。このあたりは、次作「サイレン」でより鋭い形で示されることになる。

 ロキシーの代表曲「アウト・オブ・ザ・ブルー」は名曲で、ブレイクに入るベース・ソロが異様なカッコ良さを湛えている。退廃的なムードを漂わせているが、本作にあってはかえって異色である。このアルバムでは、「オール・アイ・ウォント・イズ・ユー」や、T・レックスっぽいリズムの「イフ・イット・テイクス・オール・ナイト」などのような明るい曲やロックのパワーを湛えたものが多い。

 ただし、まだプログレっぽい曲も残っており、次作からのようなシンプルなハード・ポップ・ロック第一主義になっていないところが面白く、聴き応えのある要素だ。

'Stranded' (ストランディッド)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ストランデッド(紙ジャケット仕様)

 イーノが脱退、「美少年マルチ・プレイヤー」エディ・ジョブソンが加入しての、心機一転アルバム。前作A面の雰囲気を残しつつも、より「音楽的」になったのが特徴で、これはジョブソンの功績だろう。

 「ストリート・ライフ」のような、前作までの作風を継ぎつつもよりロックのダイナミズムをうかがわせる曲や、傑作「アマゾナ」のように落ち着いた雰囲気の中、フェリーの計算されたヴォーカルが飛び込んでくるところなど、一層の飛躍を感じさせる。

 リズムに関してもよりノリを追及した形となっており、後に展開される「ロキシー節」は、この作品にて既に現れていると言っていいだろう。一方、「祈り」、「ヨーロッパ哀歌」(名曲!)のように重厚な雰囲気を漂わせた曲もあり、後々失われていく要素もあって変化が楽しめるアルバムとなっている。

 本作は、「マザー・オブ・パール」に止めを刺す。これぞ「ロキシー節」いや「フェリー節」!全編ハード・ロックかと思いきや、突然耽美的感覚に溢れたキッチュなバラッドに。さぁ、酔ってください。

For Your Pleasure... (フォー・ユア・プレジャー)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

フォー・ユア・プレジャー(紙ジャケット仕様)

 ロキシー・ミュージックのセカンド・アルバム。基本的にはファーストの作風を受け継いでいるが、早くも変化を見せ始めている。

 オープニングを飾る「ドゥ・ザ・ストランド」を例に出すと、ファーストの1曲目と同様のリズムでありながら、よりダイナミックでキャッチーなロックへと変わっている。同様のことは、アルバム前半の曲にはすべて当てはまる。

 アルバム後半は、音の作りや流れがプログレっぽく、これはこれで斬新である。ただし、イーノがもたらすアヴァンギャルドな部分というのは希薄で、むしろこれはプロデューサーの志向だろう。実際、このアルバムはA面とB面でプロデューサーが異なっている。

 問題は、初期ロキシーをグラム・ロックと呼んでいいのかということだ。私としては、人工物の匂いが漂うアルバムのトータル・アートや、裏ジャケに見られるメンバーの格好から、グラム・ロックとして良いと思う。そもそもグラムには純粋に音楽的なジャンルの定義はないわけで、こうしたショーマンシップ的な精神が根底にあるか否かの問題だからだ。

Roxy Music (ロキシー・ミュージック)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ロキシー・ミュージック(紙ジャケット仕様)

 ロキシー・ミュージックのデビュー・アルバム。強烈なジャケットで印象を残すアルバムだ。

 ところが、ジャケットの強烈かつ下世話なイメージとは、随分とかけ離れた音楽を鳴らすのもこのアルバムの特徴だ。それはノスタルジックなサウンドを骨格としながらも、突如として現れる殆ど効果音と化したシンセ・サウンドや、フェリーの独特のヴォーカルに顕著。それらは特にエロティックなわけでもないし、特に聴く者のウケを狙おうとしているわけでもない。あるのは、実験的な姿勢である。

 ここでは、フェリーとイーノの志向がかなり一致していると言えるだろう。早くも分裂するセカンドとは異なり、二人のリ-メイク/リ-モデル志向は違和感無く融合している。

Emerson, Lake & Powell (エマーソン、レイク&パウエル)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

エマーソン・レイク&パウエル+2

 エイジアで多忙なカール・パーマーに代わり、ハードロック界のスーパードラマー、コージー・パウエルを迎えたエマーソンとレイクは、新たなグループ「エマーソン、レイク&パウエル」を結成。新生ELPとして華々しくデビュー...したかに見えたが、パーマーは「ELP」の表記を承諾しなかった。ここに、ELPであって「ELP」でない、不思議なグループが誕生した。

 デビューアルバムにして唯一のスタジオ盤となった本作は、「トリロジー」、「恐怖の頭脳改革」そして「ラヴ・ビーチ」の融合とも言える、ELPのエッセンスとキャッチーな佳曲が同居するパワー溢れる快作となった。

 まずオープニングの「ザ・スコアー」から既に圧倒される。エマーソンの華麗に華麗すぎるキーボード・ワークが冴え、インストゥルメンタルかと思わせつつ、レイクのパワフルなヴォーカルでさらに派手な展開。要所要所にヘヴィ・ドラマーとしてのパウエルのアイデンティティが散りばめられ、新生ELPを強烈に印象づける。

 「ラーニング・トゥ・フライ」、「ザ・ミラクル」まで組曲っぽい構成でキャッチーな楽曲を聴かせる。キャッチーでありつつやはりパウエルのキャラクターが反映されヘヴィである。「タッチ・アンド・ゴー」はそれらキャッチーな楽曲群の中でも群を抜くカッコ良さで迫る。

 一方で「火星-戦争をもたらすもの」のようにホルストの「惑星」のカヴァーも見られ、クラシカルな題材を好むエマーソンの趣味が伺えて微笑ましい。しかし、カヴァーはあくまでヘヴィでソリッド。

 総論すれば、このアルバムはひたすらカッコ良いアルバムである。「ラヴ・ビーチ」あたりのアルバムに偏見をお持ちの方は、是非これを聴いて当時のELPを再評価してみては?

Love Beach (ラヴ・ビーチ)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ラヴ・ビーチ(K2HD/紙ジャケット仕様)

 ELPファンの多くが、まずジャケットに仰天する。ニコニコした3人が、ラフな格好で浜辺に立っている...。この強烈なビジュアルは、従来のELPのイメージからは完全に離れたものだ。

 内容で言えば前半5曲。これがこのアルバムの印象を決定付けている。従来のELPには希薄だったギター・サウンドがかなり前面に出ており、レイクのヴォーカルもかなりやわらかい。歌詞も何だか歌謡曲っぽく、ここにはプログレッシヴ・ロックの象徴だった彼らの姿はない。エマーソンのシンセ・ワークも「歌モノ」であることを理解しきっているような、盛り上げに徹する姿勢だし、パーマーのドラムも彼にしては珍しく(?)リズム・キープをしっかりやっているような印象。そう、前半はレイクのアルバムなのだ! 思えば、この時点でプログレッシヴ・ロックが「オヨビでない」ことを3人とも良く知っていたのではなかろうか。これらのナンバーを聞くと、培ってきたテクニックやメロディの組み立て方を、余裕の表情でサラッと違和感無く使用していることがわかる。ELP流のポップ・ミュージックを作るなら、レイクを中心に制作するのが妥当であり、その方向性はかなりの水準で達成されていると思う。

 後半、「キャナリオ」で突如シャッフルのリズムに乗ったお得意のELP節が現出する。皮肉にも、ELPのイメージはエマーソンそのものだったのがここで判明してしまった。最後の「将校と紳士の回顧録」は、組曲というプログレの構成要素に則ってはいるが、レイクのヴォーカルが中心。前半の雰囲気を踏襲した上で、プログレの要素を織り込んだ佳曲だ。

 「キャナリオ」以降、ELP節で締めくくるのではなく、こういった粛々としたナンバーを持ってくるあたり、トータル・バランスが良く、世間の低評価は是非とも吹き飛ばしておきたいものだ。

Works Volume 2 (作品第2番)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

作品第2番(K2HD/紙ジャケット仕様)

 「Volume 2」の名が示すとおり、前作の続編として位置づけられているが、その実、前作に漏れたナンバーを中心に、前作より前のアルバム未収録曲を追加収録したものである。

 構成的にバラつきがあるため、まとまったイメージがなく散漫という言葉がピッタリだが、1曲1曲を独立させて聴くと、なかなか魅力的なナンバーが並んでいることが分かる。いくつかのナンバーは、シンセサイザーをフィーチュアしたシンプルなELPサウンドであり、前作におけるオーケストラの大仰なサウンドからすれば、随分と懐かしさを伴う作風と言えるだろう。

 問題は、「孤独なタイガー」や「あなたのバレンタイン」といった、シンプルで懐かしさを伴うナンバーはほぼ「恐怖の頭脳改革」時期のテイクであることや、前作に漏れたものはやはりオーケストラとの競演がメインであること。この2極の乖離がこのアルバムを聴き辛いものにしている。かといって、前作のアウトテイクが魅力に乏しいわけではなく、「君を見つめて」、「夢みるクリスマス」、「ホンキー・トンク・トレイン・ブルース」といった個性が爆発した傑作中の傑作ナンバーがある。蛇足だが、レイクのヴォーカルがアヴァンギャルドな「恐怖の頭脳改革」は、同タイトルのアルバムに収録される予定は元々なかったようだ。

 本作の不当に低すぎる評価は、どうやらボーナス・トラック集をオリジナル・アルバム仕立てにしてしまったという構成に原因がありそうだ。しかし、曲順を変えたり、録音時期別に分けて聴いたりすると、また物足りない。全く不思議なアルバムだ。

Works Volume 1 (ELP四部作)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ELP四部作(K2HD/紙ジャケット仕様)

 「レディーズ・アンド・ジェントルメン」以後、ELPはほぼ解散状態にあった。長期オフをそれぞれのスタイルで満喫した3人は、エマーソンの「オーケストラとの競演」という構想に触発されたレイクを中心に、再び集合することとなった。

 放たれた本作は、従来のスタイルからは全く異なるものであった。2枚組というヴォリュームもさることながら、実質が3者のソロ作品を前面にフィーチュアしたものだったからだ。アナログで言うとそれぞれの面が平等に与えられ、残った1面はELP名義の曲で締めくくるといった内容である。

 エマーソン・サイドは、ジャズや現代音楽などエマーソンのスタイルを存分に盛り込んだピアノ協奏曲。当然ロックらしさは皆無だが、エマーソンの作曲術やテクニックを楽しめ、後の重要なキャリアとなる映画音楽家への布石ともとれる内容。レイク・サイドは従来のレイクのソロ・ナンバーを、オーケストラとの競演によってスケール・アップさせた豪華版の趣だ。ここでのヴォーカルは、彼のベスト・パフォーマンスではないかと思う。パーマー・サイドは、ファーストに収録された「タンク」のリメイクを含む、彼のドラムス、パーカッションをフィーチュアした分厚いオーケストラ・サウンドが中心。ELPファンにとっては、パーマー・サイドが最も興味を惹かれるところではないだろうか。

 肝心なのはやはりELPサイド。うるさいくらいの凶暴なキーボード・ワークが冴える「庶民のファンファーレ」は傑作で、ELPの代表曲だ。「海賊」は従来とは異なるスケール感の演出を、オーケストラとの競演で成立させており、ロックとオーケストラとの融合という点において相当な完成度を誇っている。

Brain Salad Surgery (恐怖の頭脳改革)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

恐怖の頭脳改革(K2HD紙ジャケット仕様)

 誰がなんと言おうとELP最高傑作! ELPが運営するレーベル「マンティコア」からの、記念すべきELP第1号アルバムでもある。

 髑髏のようなオブジェがあしらわれた近未来的なカヴァーを開くと、メデューサが現れるという、変形ジャケットの極みとも言える卓越したアート・ワークと、これぞプログレという気概に満ちた素晴らしい楽曲と演奏。ELP3人のクリエイティヴな衝動と音楽を構築したいと欲する姿勢が高次元で結実し、さらにそのパワーによって昇華された傑作である。

 「聖地エルサレム」の荘厳な雰囲気は、初作より見られた賛美歌系チューンの完成形で、オルガンとレイクのヴォーカルがこれ以上ない調和を果たしている。「トッカータ」は前作までの作風に頼ることなく、3者3様のプログレッシヴ・テクニックが前衛的な実験精神と共に融合したパーカッシヴで攻撃的な傑作ナンバーで、パーマーのエレクトリック・ドラムが冴えに冴える。「スティル...ユー・ターン・ミー・オン」は、レイクのソロナンバーの最高傑作。「用心棒ベニー」のようなおふざけナンバーでもテクニックを惜しみなく投入。

 そして「悪の経典#9」に至り、遂にこのアルバムの本領が発揮される。目まぐるしく変わるロック・ナンバーの第一印象が高らかに幕開けを告げ、フリージャズ的な展開でグイグイと進行する第二印象、シンセをベースにした壮大なロック・シンフォニーで、近未来的な雰囲気を持つ第三印象。スタイル的に殆ど繋がりの無い三つの楽曲が、まるでうねりのあるストーリーを見るかのように展開されていく様は圧巻の一言。ELP未体験者に是非ともお勧めしたいアルバムだ。

Trilogy (トリロジー)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

トリロジー(K2HD紙ジャケット仕様)

 「展覧会の絵」が予想外のヒットを飛ばし、勢いに乗ったELPが放ったのがこの「トリロジー」だ。3部作という意味を持つタイトルは、アルバム全体を現すものではなく、あくまで一曲のタイトルを持ってきたに過ぎないようだが、規模は小さいながらも組曲形式の曲が多い野心作である。

 「タルカス」に比べ、足元が軽くなった印象を受けるこの作品だが、それはよりキャッチーな方向性を大作主義に持ち込んだことが影響しているように思われる。「永遠の謎」組曲は初作以来の作風を色濃く漂わせているが、レイクのソロそのものとなった「フロム・ザ・ビギニング」に代表されるメロディアス路線や、名曲「ホウダウン」のように爆発的な明るさを湛えたハイ・テンポなインスト、新型ムーグを用い、実験精神に溢れた「奈落のボレロ」など、新しい路線も散見される。

 事実、そういった点から、「散漫だ」という意見や、ガリガリのプログレ路線に乏しいことから「おとなしい」といった意見もあるが、それはあくまでコアな見方を突き詰めていった結果で、この作品への正当な評価とは言えない。悠大さ、明るさ、陰鬱さ、これまでELPが提示してきた様々な要素が贅沢に圧縮されて収録されている。

 また、キャッチーな部分でヒットを狙ったにしても、健全な方向性から来る爽快な作風だと思うし、本作は傑作に違いないと思うのである。

Tarkus (タルカス)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

タルカス(K2HD紙ジャケット仕様)

 ELPのセカンド・アルバム。前作で既に示された方向性を拡大すべく、「プログレ」の記号的解釈を実践(これは現在的な見方ではあるが)してみせた初期の傑作である。

 このアルバムのハイライトは、無論タイトル・チューン組曲「タルカス」である。見開きジャケットを開くと、表ジャケに描かれた怪獣タルカスが色々な怪獣を次々と倒していくが、マンティコアによって目を突かれてスゴスゴと退散する様子がいっぱいに描かれている。この展開はそのまま組曲の内訳と一致し、楽曲の楽しさをより増幅する名アートだ。5thコードを多用した足元をさらわれるようなアレンジメントや、怒涛の複雑怪奇な変拍子、暴れまわるエマーソンのオルガンやシンセ、レイクの叙情性溢れるヴォーカル、無駄がなく興奮必至の組曲展開など、ELPの集大成の一つだ。

 後半の小曲集も、それぞれ個性的で何一つ重複するテイストがない。「ジェレミー・ベンダー」のような軽いタッチから、「ビッチズ・クリスタル」、「タイム・アンド・プレイス」のように煌びやかまたはヘヴィなハードロック・チューン、荘厳な賛美歌チューン「ジ・オンリー・ウェイ」と色とりどりだ。ちなみに、「アー・ユー・レディ・エディ」はプロデューサーのエディ・オフォードをネタにしたおふざけである。このような余裕もこのアルバムの魅力だ。

 「タルカス」、これは本当に凄すぎるアルバムである。

Emerson, Lake & Palmer (エマーソン、レイク&パーマー)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

エマーソン、レイク&パーマー(K2HD紙ジャケット仕様)

 ELPのファースト・アルバム。キース・エマーソンがザ・ナイスから持ち込んだ方法論に、グレッグ・レイクの叙情性溢れるテイストと丁寧なプロデュース・ワークをプラス、そこへ明らかに強力無比なドラミングをカール・パーマーが提供することによって生まれた作品だ。

 この作品には、後に展開されるELP節すべての雛形がここにはあると言って良い。それはつまり、けたたましいドラム・パターンをきっちりしたベースが制御、完成したリズム・セクションに乗ってエマーソンのシンセサイザーやハモンド・オルガンが暴れまわり、これに留まる事を良しとしないレイクとパーマーが、自らの見せ場をバッチリ主張するというパターンである。オープニングを飾る「未開人」、そして「タンク」がその好例である。

 一方、レイクがクレムゾンより持ち込んだ叙情性を強く感じさせる「石をとれ」は、陰鬱なテーマながらエマーソンの美しいピアノが色を添え、傑作ナンバーとなっている。また、「運命の三人の女神」は、多少未消化な組曲ではあるが、3者の見事な演奏力を堪能させるものとなっており、後の「恐怖の頭脳改革」の原石を思わせる。

 パターンを重視するあまり、とうとう分裂してしまった後半と違い、この時点ではまだ絶妙と呼べる以上の完璧なバランスで均衡している。他のパートを理性的に尊重し、美しいアンサンブルをなしている。そういった意味で、「まだ君はバランスを保っていられるかい?」と歌われた「ナイフ・エッジ」は象徴的である。

Dandy in the Underworld (地下世界のダンディ)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

地下世界のダンディ(紙ジャケット仕様)

 私的には最高傑作に推したいアルバム。ボランが、自らを自分から最も遠い処へ置いて見せた前作から一転、ボラン・ブギーの集大成とも言えるべき作品に仕上がっている。

 黄金期のリズムやメロディの組み立てに忠実であり、なおかつ数々の挑戦によって得てきた財産を投入したニュー・ボラン・ブギーとも言える内容は、その充実度からボランの意欲を感じさせるに十分。ボランが自らをよりダイレクトに歌ったと思われるタイトル・チューンの素晴らしさ、ブギー色に溢れた「深紅色の月」、近作の作風が結実した「宇宙の舞踏会」...。あぁ挙げればキリがないのでこの辺りで打ち止めということに。

 しかし、結末を知ってしまった者にとっては複雑な心情を掻き立てられるアルバム。1977年9月16日、30歳のバースデイまであと2週間という時、妻グロリア・ジョーンズ(「ズィンク・アロイと~」からメンバーとして参加している)が運転する車が事故、助手席のボランは帰らぬ人となった。生前「30まで生きられないだろう」と語っていたのは有名な話だ。

 これだけ意欲に溢れた(ボランはショービジネスの世界で再起を賭けている時期で、その試みはかなり成功していた)アルバムが、天に旅立つ前の地上への置き土産に見えてしまう。歴史を前提に聴くと、華やかなブギーが一層寂しさを喚起する。

 「地下世界のダンディ」は銀河の彼方へと飛び去ってしまった。

Futuristic Dragon (銀河系よりの使者)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

銀河系よりの使者(紙ジャケット仕様)

 「ブギーのアイドル」でボラン・ブギーの再検証を行ったボランは、またもやそこに安住する事を好しとしなかった。放ったアルバムはよりソリッドでグルーヴィになったボラン流ファンク・ロック。ソリッド、グルーヴィと書くと、「ズィンク・アロイ~」に回帰したように捉えられがちだが、一聴すれば、すぐに全く異なる作風であることに気付くだろう。

 ノリの良さ、リズムの重厚さ、ストリングスの華麗さ、シンセ音の煌びやかさ、どれをとっても上級の旨み。正に「いいとこどり」なアルバムなのだが、意外に印象が薄い作品でもある。前作で失われつつあった「ある種の毒」が、この作品ではほぼ消滅、カッコ良さが前面に押し出されているのが原因だろう。上級ばかりを取り揃えすぎたことにより、突出した個性というものがスポイルされているのだ。

 ただ、「ズィンク・アロイと~」で試行された刺々しいリズムの導入や「ブギーのアイドル」で顕示されたポップスの手法を元に、この作品を作ったのだと考えれば、この作風に納得がいく。ともすれば両極端になりそうな2つの要素がうまく重ねられており、昇華した結果だ。

 余談だが、ボーナス・トラックに収められた「人生はエレベーターの如く」は、人生は空気(のように掴みどころがない)と歌われた「ライフ・イズ・ア・ガス」、人生は不思議なものだと歌われた「ライフ・イズ・ストレンジ」を思うと、ボランの人生を象徴しているようで切ない。

Bolan's Zip Gun (ブギーのアイドル)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ブギーのアイドル

 ソリッドな前作から一転、可愛らしいコーラスで幕開ける本作は、ボラン・ブギーの原点を省みるような、そんなシンプルかつドライな感覚に溢れた作品だ。

 全体に明るい曲が多く、「電気の武者」や「ザ・スライダー」の頃に見られたある種の毒々しさはほぼ失われていて、そこが本作の評価が低めである原因だろう。ただし、その毒々しさが受け入れられない人には絶対的にオススメできる作品。ボラン・ブギーの良いところが抽出されているし、プロダクションも「ズィンク・アロイと~」ほどではないが、かなり緻密。ボラン流正真正銘のポップ・ミュージックになった曲群が、楽しさを喚起するだろう。

 「売れていないが傑作」的ナンバーが多いのも特徴。オープニングを飾るどことなくほのぼのした「ライト・オブ・ラヴ」、ズンチャカ・リズムが正にボラン・ブギーの「シンク・ズィンク」、正統派ボラン流ハード・ロックでありながら、何となくグルーヴィな「ジップ・ガン・ブギー」など、聴いているだけでワクワクする曲が並んでいる。そのオリジンを黄金期に求めることはできるが、よりシェイプアップされたそれらは、確実に変化を遂げている。

 蛇足だが、邦題「ブギーのアイドル」は秀逸だ。「ボランズ・ジップ・ガン」とするより遥かにインパクトがある。こういう奮ったネーミングが、是非とも日本の洋楽界に復活して欲しいものだ。

スイング・アロイと朝焼けの仮面ライダー(紙ジャケット仕様)

 激しくリズミックなギター・リフが高らかに幕開けを告げる。1曲目のこの興奮度、これまでのボラン・ブギーとはかなり印象が違う。これぞ異色作中の異色作と評されるアルバムである。

 何やら長ったらしいタイトルからは、コンセプト・アルバムっぽい印象を受けるが、楽曲の流れからそういった意図を汲み取ることは難しい。「仮面ライダー」をたまたまテレビで見たボランが、それをヒントに作り上げたアルバムとされているが、特に「仮面ライダー」にインスパイアされた部分というのは存在しないし、かなり文言と音楽が乖離した作品である。

 しかし、それはコンセプト・アルバムを期待するからであって、音に耳を傾けてみれば、それらはこれまでのT・レックスひいてはボランのブギーにない意欲的なリズムの導入が確認される。冒頭に書いたような「ヴィーナスの美少年」のソリッドなギター・リフに始まり、グロリア・ジョーンズが参加して、過去の作品とは趣の異なるソリッドなコーラスを響かせる「悪魔のしもべはのろまが嫌い」、「星空のソウル」。新しい風を吹かせようとした意気込みは十分で、ふとした拍子に聴きたくなる隠れた名盤。1度じゃその良さは分からない!

 ちなみに、ボーナストラックの「トラック・オン」はボラン本来のチープなゴージャス感が溢れに溢れた傑作。グロリア・ジョーンズのコーラスは正に狂乱の一言!

Tanx (タンクス)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

タンクス(紙ジャケット仕様)

 タンクス、つまりThanksの変音語を冠したこのアルバム、さながら「大ヒット御礼」といった趣である。ジャケットに戦車(タンク)が散りばめられており、Tanksという意味もあるようだ。とにかく沢山の短い曲が畳み掛けられるように連なり、その各曲が個性を放つという贅沢極まりないアルバムである。

 では、このアルバムは前々作、前作と比してどうなのか。答えは「リズミック・ボラン・ブギー」とでもしておこうか。シンプルなブギー・サウンドに意欲的なリズムを導入し、いわゆる「横ノリ」を感じさせるアレンジメントが光る。代表曲を挙げれば、二種類のリズムを聞かせる「テマネント・レディ」、印象的なギターのカッティングが光る「カントリー・ハニー」あたりだろう。これは「グレイト・ヒッツ」を除いて次作となる「ズィンク・アロイと~」へと繋がる重要な要素でもあるのだが、ここではまだ華やかなスパイスとして実に効いている。

 勿論、人工物っぽいヤバさは全開。「エレクトリック・スリム」や「マッド・ダーナ」あたりは、むしろ最高潮であろう。そんな中、人工物系と、従来のアコースティック系の音とが静かに融合を果たすのが、「ライフ・イズ・ストレンジ」だ。

 ボーナス・トラックを除いた最後の曲「レフト・ハンド・ルーク」はこのアルバムでは異色の一曲。スロー・テンポに乗って淡々と歌うボラン、中盤からゴスペル風に盛り上がり、コーラスがうるさいぐらいに鳴り響く。あたかもグラム終焉に対するはなむけのように聴こえるのは私だけか。

The Slider (ザ・スライダー)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ザ・スライダー(紙ジャケット仕様)

 「ジープスター」、「テレグラム・サム」等ヒット曲連発中のT・レックスが放ったのが、この「ザ・スライダー」。ここには、ボラン・ブギーの完成形が真空パックされている。「真空パック」と書いたのは、T・レックスの音楽がヤバそうな人口甘味料にまみれたような、そんな強烈さや危うさを備えているからだ。

 「ロック・オン」に代表されるように、より強力になった大げさなバック・コーラスや、「メタル・グルー」に聴かれるような、さらにボラン・ワールドの拡大を促すヴィスコンティのストリング・セクション、「チャリオット・チューグル」などで炸裂するボランのハード・ロック感覚。どれをとっても前作の暗部を払拭するかのようなパワーに溢れている。聴いていて「キモチイイ」アルバム、それがこの「ザ・スライダー」だ。

 のっけから「メタル・グルー」つまりメタルの導師と名乗る内容も凄いが、「テレグラム・サム」等、このあたりのシングル・ヒット曲は一度聴くと二度と忘れられない。完成度もすこぶる高く、ボランの余裕すら感じられる。

 中には「ミスティック・レディ」や「スペースボール・リコシェット」のように、前作までのアコースティック色を踏襲したものもあるが、儚世感といったものはなく、むしろハードな曲の間を埋める清涼剤の役割を果たしているのが素晴らしい。本作はグラム・ロック・ムーヴメントの立役者としての自信が伝わってくる、正に傑作である。

Electric Warrior (電気の武者)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

電気の武者+8 30thアニヴァーサリー・エディション

 マーク・ボランが、ティラノサウルス・レックスをT・レックスへと再編(改名)し、アルバム「T・レックス」を経て発表したのが、このアルバム。前作がまだマーク・ボランとパーカッショニストのミッキー・フィン二人だけのユニットだったのに対し、ここでは、ドラムやベースを加えた編成になっており、いよいよグラム狂乱の時代は幕を開けるのである。

 ここでのボランのヴォーカルは、まだ抑え気味の部分も多く、後に展開される「チープなゴージャス感」を伴ったギラギラしたブギーとは一味違う。「エレクトリック・ウォリアー」というタイトルや、何やら電気の粒子をまとっているように見えるジャケットのボランからも連想されるように、ティラノサウルス時代のシンプルなブギーが、電気の力で増幅され、まさに拡散しようとしている様子を聴き取ることができる。

 「マンボ・サン」の抑制不能な衝動を小出しにしているような感覚や、「モノリス」のような今にも泣き出しそうな雰囲気、そして「ゲット・イット・オン」の素晴らしいノリとシンプルなギター・リフのカッコ良さ。グラム・ロックという一言では表せないロックの感覚が満ち満ちており、それがこのアルバムの魅力でもあるだろう。

 「コズミック・ダンサー」や「ジープスター」で聴かれるような、プロデューサー=トニー・ヴィスコンティのストリングス・アレンジも、不自然なような自然なような不思議な存在感を醸し出している。それは極めて美しく、極めて脆く、極めて切ない。ちなみにヴィスコンティのストリングス・アレンジは、かなり有名で、他にデイヴィッド・ボウイなど多くのアーティストと「共演」している。

T.Rex (T・レックス)

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

T・レックス+9

 ドラッグ・カルチャーとの迎合によってファンを獲得してきたティラノサウルス・レックス。しかし時代は変化する。その変化を敏感にキャッチしたマーク・ボランが、ティラノサウルス・レックスをT・レックスへと改名して発表したのが、ヒット・シングル「ライド・ア・ホワイト・スワン」であった。

 そのおよそ2カ月後に発表された、所謂「T・レックス」のデビューアルバムが本作。ティラノサウルス・レックス名義の前作「ベアード・オブ・スターズ」で取り入れられたエレクトリック・ギター・サウンドを、本作でも積極的に採用しているが、まだマークとミッキー・フィンのユニットという性格からか、雰囲気としてはティラノサウルス時代と大差ない。

 だが、ジャケットの写真はグラム・ロックの到来を予言し、サウンドメイキングには後のT・レックス・サウンドに欠かせないトニー・ヴィスコンティやフロ&エディが参加。大ヒットした次作「電気の武者」のエッセンスは既に散りばめられている。

 冒頭と締めに配された「チルドレン・オブ・ラーン」は少しコンセプトアルバム風味。「ジュウェル」から始まる曲群は小品揃いだが、後のスーパー・ポップのリズムとアイディアが凝縮されており、まさに発掘を待つT・レックスの化石といった趣である。8曲目の「ベルテーン・ウォーク」はドラムとベースが加われば、「ザ・スライダー」あたりに入っていてもおかしくない。なお、10曲目の「ワン・インチ・ロック」と14曲目の「ウィザード」はティラノサウルス時代のシングルタイトルのエレクトリック・ヴァージョンで、よりエキセントリックに仕上げられている。

 紙ジャケット盤には9曲のボーナス・トラックが追加されており、「ライド・ア・ホワイト・スワン」が収録されているのが嬉しい。出来れば「ホット・ラブ」も欲しかったところだが...。