The Yes Album (サード・アルバム)

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サード・アルバム(EXPANDED&REMASTERED)

 イエス第三作。初期の傑作として位置づけられ、組曲形式や大作主義を持ち込んだプログレッシヴ・ロック・グループとしてのアイデンティティを確立しつつある様子が見て取れる、重要なアルバムだ。

 オープニングの「ユアズ・イズ・ノー・ディスグレイス」から既に組曲形式の大作で、ポジティヴ・パワーを湛えた関連性のある楽曲が次々と連なっていく方法論は、後の「危機」に繋がるものであることは明白。

 こういった楽曲の組み立て方やアレンジメントの細やかさの要因は、やはり新たに加入したスティーヴ・ハウに依るところが大きい。バンクスと明らかに違うのは、極めて理性的にアレンジの裏表を縫った演奏を繰り広げることである。他のパートに重きが置かれるときは控えめに、かつ細かいアルペジオで支え、自らのソロではテクニックの嵐というスタイルだ。完全なソロ作品である「ザ・クラップ」が収録されているのも、ハウの存在意義を前面に押し出しているようで興味深い。

 組曲形式のナンバーは他にも多数収録されている。プログレの「長く複雑な」特徴は、様々なハウのギター・プレイを聴くことが出来る「スターシップ・トゥルーパー」や、見事なコーラス・ワークが光る「アイヴ・シーン・オール・グッド・ピープル」、複雑なリズムを次々と出現させるハウとケイのコラボレーションが絶妙な「パペチュアル・チェンジ」と殆どの曲に当てはまるのだが、そこに聴き易さが加わるところがイエスならではと言える。これらの楽曲は、後々の重要なレパートリーとして永く残っている。それほど本作がイエスにとって、ターニング・ポイントであり重要な作品であることは論を待たない。

Time and a Word (時間と言葉)

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時間と言葉(EXPANDED&REMASTERED)

 イエスの第二作。オーケストラとの共演というアプローチを全面的に展開した作品である。この時期、オーケストラとの共演アルバムを製作したグループは多く、その意味では当時新鮮に響いたかどうか、疑問ではある。

 一般に、このアルバムの評価は「中途半端」とか「アンバランス」といった言葉で表されることが多いが、なるほど、大音量でストリングスやブラスが大袈裟にかぶったりするところなど、そのように評されても仕方のないところ。現にギタリストのピーター・バンクスは、このオーケストラ・サウンドに自らのギターの音を掻き消されたとして、不満を露にし脱退してしまった。

 ただ、魅力あるナンバーが収録されているのもこのアルバムの一面。ケイとスクワイアがドライヴ感を発揮する「チャンスも経験もいらない(カヴァー曲)」や「ゼン」、明るいメロディを重厚なリズム・セクションが支える「スウィート・ドリームス」、後々までの重要なレパートリーとなるバラッド風の「時間と言葉」。これらは傑作ナンバーと言えるだろう。

 いずれにせよ、「サード・アルバム」以降の音楽性とは異なる方面で、イエスの側面を味わって楽しむには格好のアルバムだと言えるだろう。

Yes (ファースト・アルバム)

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ファースト・アルバム(EXPANDED&REMASTERED)

 イエスのデビュー作。重厚なリズム・セクションと、リッチなコーラスに彩られたポップ・チューンは、今聴いても十分新鮮。適度な緊張感もあり、ジャズやブルーズのテイストも散りばめられ、イエスとしてのアイデンティティは、未完成ながらもこのアルバムに感じられる。

 「アイ・シー・ユー」と「エヴリ・リトル・シング」がカヴァー曲。どちらも原曲からかなり距離を置いたアレンジメントが施されており、結構楽しめる。オリジナル曲もその後のイエスを考え併せると、2、3倍は楽しめる。冒頭を飾る「ビヨンド・アンド・ビフォア」や、「サヴァイヴァル」の、少々マッタリとした展開に分厚いコーラスとガリガリベースが絡むところなど必聴。

 ところで、ファーストの特徴は、何といってもピーター・バンクスのギター。スティーヴ・ハウ加入後のイエスと決定的に違うのは、やはりこの一点に尽きる。トニー・ケイとリック・ウェイクマン二人のキーボード・プレイヤーの違いに比べ、より大きなギャップがあると思える。そのバンクスのプレイが光るのは、皮肉にも2つのカヴァー曲である。

 一方、「ルッキング・アラウンド」のように、ケイのグルーヴィなオルガンが鳴り響く佳曲も。以上のような楽しさに満たされたファースト。しかしながらこのままでは、イエスがプログレ・バンドの彗星になることは出来なかっただろう。

イエス (Yes) ヒストリー

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 「モザイクの海上を飛ぶ、精密機械に彩られた音楽ジェット機」


 同じプログレでも、クリムゾンの対極に位置するのが、このイエスである。

 「対極」と位置づけたのは、クリムゾンが内省的エネルギーの爆発を、外へ発散させているのに対し、イエスが常に開放的なエネルギーを、複雑なアレンジに乗せて聴き手に送り出しているからだ。

 さらにイエスはプログレッシヴ・ロックというジャンルに自らを置きつつも、高い完成度を誇るポップスを産出し、80年代のナンバーワン・ディスコ・ヒット・ナンバーをも送り出すそのポジティヴ・パワーに魅力がある。「イエス」という「肯定」が音楽性にも端的に現れ、グループ内部にゴタゴタが起きようとも、成立したアルバムが常に前向きな光を発している稀有な存在なのだ。

 クリムゾン同様、メンバーチェンジが多いのも確かだが、何となく離散したメンバーが帰ってきたり、最新ラインナップが「黄金期」メンバーの現在形(つまり全員還暦前後)であることなど、微笑ましい一面もあって、とにかく物凄く魅力的なグループなのだ。

Live (ライヴ)

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ライヴ

 突如2001年に再編成されたロキシー・ミュージック。メンバー構成を見ると、ブライアン・フェリーは勿論、アンディ・マッケイ、フィル・マンザネラ、そして何とポール・トンプソンという布陣! これには驚くしかない。しかし、「アヴァロン」や「ハート・スティル・ビーティング」で完結した世界があるロキシーに対して、「再編成」というキーワードが馴染まなかったのも事実。

 ところが、2年後に届けられたライヴ盤の素晴らしさたるや、フェリーの美意識の高さ、マッケイやマンザネラといったメンバーのミュージシャンとしてのプライドをビシビシと感じさせるものであった。よくある昔のグループの再結成モノは、年季の入ったミュージシャンが往年の曲を「円熟味溢れる演奏で再現」し、「寄る年波」をファンに対して認識させる少々辛いものなのだが、ロキシーに関しては全く当てはまらない。

 まず「リ-メイク/リ-モデル」から始まる構成に度肝を抜かれる。ファースト・アルバムの一曲目だ。この曲のみならず、全体的にハイ・テンポで展開され、傑作「ストリート・ライフ」、「アウト・オブ・ザ・ブルー」、「ヨーロッパ哀歌」などなど、とても書き切れないが、オリジナルをハイ・レベルで再現し、さらにブラッシュ・アップさせた印象を受ける。

 ロキシーズ・ベストといった曲目、多数公演からの架空のライヴ構成といった「VIVA!」と同様の手法など、フェリーの計算高さに感服する。ロキシー・ファンは必聴中の必聴盤だ。

Heart Still Beating (ハート・スティル・ビーティング)

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ハート・スティル・ビーティング(ライヴ・イン・フランス 1982)(紙ジャケット仕様)

 ロキシー・ミュージックのラスト・アルバムにしてライヴ盤。ただし、1990年に発売されており、実に「アヴァロン」から8年が経過している。正式には、「アヴァロン」がラスト・アルバムと言えよう。

 以前にもライヴ盤「VIVA!」があったが、こちらはよりストレートにライヴ・セットを伝える内容になっており、収録時間も長い。1990年と言えば、既にCDがLPに取って代わった時期だけに、この作品もCDで発売されたようだ。この紙ジャケは、その際欧州で限定リリースされた2枚組LPを元に作られている。

 いきなり内容よりジャケットの話になってしまうが、解散からかなり経って発売されたにもかかわらず、従来のロキシー・ミュージックが織り成すトータル・アートの世界が完璧に継承されているのが分かる。実に、フェリーの美学に唸らされる部分である。

 内容の方はと言うと、「アヴァロン」期のライヴの充実度がよく分かる名盤となっている。中期ロキシーのパワーと、後期ロキシーのイリュージョナルなサウンドが見事に合致し、これぞロキシーとしての完成形かと思わせる内容である。「フレッシュ・アンド・ブラッド」や「アヴァロン」が既にフェリーのソロ・プロジェクトに限りなく接近していたのに対し、このライヴ盤はロキシーのグループとしてのアイデンティティを強く感じさせる音を発しており、ライヴ自体が緻密なプロデュース・ワークの元に構成されているのは驚嘆に値する。

Avalon (アヴァロン)

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アヴァロン(紙ジャケット仕様)

 「サイレン」と並ぶ、ロキシー・ミュージック最高傑作にして、オリジナルに限ればラスト・アルバム。そして、ロック史上に残る名盤中の名盤である。

 「マニフェスト」、「フレッシュ・アンド・ブラッド」を経て、フェリーが得たものを総投入したプロダクション作品であり、ロキシー・ミュージックとしての個性というよりは、むしろブライアン・フェリーの個性を反映したアルバムと言える。すべての音が奥行きのある空間を漂い、それらを完全にコントロールすることから生まれる幻想に満ちた世界。ポップ・ミュージックの頂点であり、未だこの作品を超えるものはある意味存在しないのではないか、とも思える。

 完璧なプロダクション、緻密なアレンジ、シンプルでシャープなインスト、丁寧なミキシング、それらの総合芸術がこの作品を産み落としたことは間違いない。「夜に抱かれて」、「アヴァロン」、「タラ」などを聴くと、幻の空間に飛翔していくロキシーを感じ取ることができる。それはつまり、もうロキシーとしてやるべきことはやりつくし、開放された姿だ。勿論、前作までに見られたような16ビートの導入もごく自然で、幻想味溢れる空間に強力なグルーヴ感を加味していて素晴らしい。

 この後、フェリーはソロへと活動の中心を移行していく。そして、同様の手法を用いて「ボーイズ・アンド・ガールズ」のような傑作をモノにするのだ。

Flesh and Blood (フレッシュ・アンド・ブラッド)

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フレッシュ・アンド・ブラッド(紙ジャケット仕様)

 ロック史に残る傑作アルバム「アヴァロン」の陰に隠れて印象の薄い本作。だが、珠玉のナンバーが並ぶ隠れた傑作である。ロキシーではご法度(?)だったカヴァー曲が2曲(「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」と「霧の8マイル」)含まれており、いよいよブライアン・フェリー主導のプロジェクトは勢いを増してきた。

 前作よりも、格段にプロダクションの緻密さを感じさせ、全体の統一感も素晴らしい。また、16ビートのダンサブルなリズムが散りばめられており、「セイム・オールド・シーン」などはシンセ、ベース、ドラムス、ギターが完璧にグルーヴ感を演出、これ以上無いカッコ良さがたまらない。ここに透明感が加わるのだから、コアなブリティッシュ・ロック・ファンも思わずハッと聞き入るに違いない。

 一方、「オー・イエー」や「マイ・オンリー・ラヴ」といったバラッドが一層深みを増している点も見逃せない。従来のロキシーのバラッドと言えば、フェリー独特のヴォーカルがキャンプな世界を演出していたのだが、ここでは極限にまでソフィスティケイティドしたような、大人のロックを聞かせている。

 「アヴァロン」に繋がる重要なアルバムであると共に、ポップ・ミュージックが超えられない一線を引いたアルバムとして、高く評価されてしかるべきである。

Manifesto (マニフェスト)

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マニフェスト(紙ジャケット仕様)

 「サイレン」で一旦解散したロキシー・ミュージックが、再結成してリリースしたアルバム。前作までの雰囲気を残しつつも、次作より展開されるダンサブルでクリアなサウンドへの変化を、つぶさに観察できる過渡期のアルバムである。

 過渡期とは言え、それなりに完成度が高いのがロキシー・ミュージックの凄いところ。全体的にフェリー主導の部分が強まってきており、「ブライアン・フェリーの音世界」とも言うべきサウンドが、段々と完成されていくのが分かる。従来のロキシーっぽい曲の代表は、「マニフェスト」や「トラッシュ」。ソウルっぽさが意欲的に導入され、次作からの重要な要素に発展していく様が見て取れるのが「ダンス・アウェイ」、「クライ、クライ、クライ」である。つまり、このアルバムを通して聴くと、従来のロキシーから次作からのロキシーへの変化が見られるということになる。

 「スピン・ミー・ラウンド」などは、何度聴いても鳥肌モノで、空間に漂う音符の流れに逆らわず、自由に操るフェリーの様子が見えてくるようだ。この雰囲気は、次作よりむしろ「アヴァロン」に近い。

 もし「サイレン」と「アヴァロン」を聴いた方は、この「マニフェスト」を聴いてみて頂きたい。なぜ「サイレン」のような音を作り出したグループが、「アヴァロン」のような音を創出したか、分かって頂ける筈だ。

VIVA!ロキシー・ミュージック(ザ・ライヴ・ロキシー・ミュージック・アルバム)(紙ジャケット仕様)

 ロキシー初のライヴ・アルバムは多分に戦略的な、「ライヴ・アルバムかくあるべき」とも言える素晴らしいものだ。一聴しただけでは、普通のライヴ・ドキュメントに聞こえてしまうが、実は緻密なプロデュース・ワークに彩られた準スタジオ盤と言えるような内容である。

 まず、各曲は必ずしも同日に収録されたものではないということ。クレジットを見ると1973年11月、1974年11月、1975年10月と実に広い期間に及んでいる。次に、オーヴァー・ダブが効果的に使用されていること。オーディエンス・ノイズにも同様のことが言える。

 音質の統一、オーディエンスの歓声のダビングなど、緻密なポスト・プロダクションによって、いかにも同日のライヴのような雰囲気が出されている為、長いスパンで収録されたことがにわかに信じ難いのだが、それが一流のプロデュース戦略というものだろう。ロキシーというグループが持つ、実体と幽体の間を揺れ動くような微妙な存在感を実に良く表している。

 虚の中に実を生む。昨今の安易なポスト・プロダクションを一蹴するだけの計算が、ここにはある。