Episode 14 悪魔 -メフィスト-

 傷心の孤門が出会ったリコの名を持つ少女の家族は、ビーストに襲われていた。両親は殺され子供は人質となったのだ。孤門は度重なる絶望から立ち直るべく、憎しみを力に変えようとしていた。

 幼い兄妹は、奇妙な行動をとり続ける両親に戦慄する。両親は既にビーストに乗っ取られていたのだ。孤門と凪はチェスターαで出動。「愛する人たちをビーストに奪われた」とする凪と孤門は奇妙に共感する。

 一方その頃、姫矢は溝呂木の襲撃を受ける。悪魔の如く誘惑の言で姫矢に迫る溝呂木。現場に到着した凪の目前で、遂に溝呂木は闇の巨人メフィストと化す。応戦するウルトラマンだが、メフィストの強大な戦闘力に苦戦する。

 そして、ビースト・ノスフェルの正体を現わした兄妹の両親。ノスフェルは少女リコを眉間に捉えてしまう。メガキャノンチェスターのフォーメーションを完成させ、怒りのままノスフェルを撃つ孤門! 爆風は容赦なくリコを重傷へと至らしめる。その現実に呆然とする孤門…!

解説

 元旦の放映休止をはさんだ新年第1弾は、負の感情で戦いの力を得ようとする孤門が、またも味わわなければならない絶望から幕開ける。しかしながら、派手なシーンもふんだんに盛り込まれ、重苦しさだけが前面に出るということのないバトル編となった。

 溝呂木の言は、ファウストにも増して悪魔的。「その痛みは誰にも知られない」「何のために戦う?」など、姫矢の決意を揺さぶるような誘惑の言葉が中心となり、ファウストの「仮面劇」を当然の如く凌駕する溝呂木の冷笑が、シーンをより不気味に演出する。それに全く動じない姫矢を描くことで、彼の精神的な強さが映し出されるのだ。

 一方で、「怒り」「憎しみ」という溝呂木がキーとするであろう感情を共有し、孤門と凪が共感していくプロセスは衝撃的かつ効果的。孤門のその感情を溝呂木が利用しようとしていることは容易に想像がつくのだが、そこに凪がどう関わっていくのかも今後注目しなければならない。とにかく、今回は「ビースト撃破」「凪との共感」という2大カタルシスが、それら負の感情によってもたらされているわけで、深い矛盾を含んだ展開をいともサラリと描く手法に拍手を送りたい。

 今回をバトル編と称したが、ネクサス対メフィストの、光線やメタフィールドなしでの肉弾戦のオンパレードは、まさにバトル編と呼ぶに相応しい充実ぶり。また一部がビーストと化した両親と孤門のアクロバティックな立ち回りは、ウルトラマンレオの通り魔星人たちを彷彿とさせ、ファンにとっては楽しい場面(シーンは危機的だが)となった。

 ラスト、少女の置かれた事実を知って愕然となる孤門に対し、兄である少年が「一生お前を許さない」と詰め寄る。孤門がビーストに対して抱いた感情がまさか自らに向けられようとは。市川森一氏がウルトラでかつて描いた「裏切りと報復の物語」が、新たな時代でまたも展開されたのだ…。