Episode 31 鳥 -バード-

 瑞生の心中には、いつしか憐を守りたいという気持ちが芽生えていた。その一方で、凪は新たなウルトラマンの戦い方に疑問を感じる。そして、孤門は自分に出来ることはないかと憐に問いかけるが、憐は「ラファエル」についてはまだ話すことが出来ないと語る。孤門は憐との会話の中で、吉良沢と憐がアカデミーでの友達だったことを知る。松永管理官は思いに任せて行動する若者たちを静観し、その方がコントロールしやすいと東郷に報告する。

 リザリアスがアンノウンハンドに強化されて再び出現。ナイトレイダーはスクランブルし、憐はウルトラマンとなって戦場へ赴く。ウルトラマン=憐の戦い方を学習したリザリアスに苦戦するウルトラマン。アンノウンハンドによって更なるパワーアップを果たしたリザリアスに、何の勝算も無いまま突進するウルトラマン。とっさに凪はミサイルを放ちウルトラマンを止めた。隙を見たウルトラマンは、リザリアス撃退に成功する。凪は気付いたのだ。青いウルトラマンは自らを全く省みることなく、戦略もなしに戦っていることを。

 憐と吉良沢のアカデミー時代-。憐は鳥ばかりを見ている吉良沢に興味を示し、アカデミーを抜け出して海へ行こうと誘う。吉良沢は海までたどり着けない未来を予知し、憐には同行しなかった。海に行った憐は拾った貝殻を密かに吉良沢に渡す。吉良沢もそんな憐に少し心を開いていた。

解説

 憐と吉良沢(そろそろ「優」に変えたい気分だが)の過去が明かされるエピソード。ここにきて、吉良沢のキャラクターは「計算高い特殊能力者」から大きく変わったと言えるだろう。それを端的に示すのが、「君はTLTにいるには優しすぎる」という孤門に向けた言葉だ。この言葉は、裏返せば「TLTで働くには優しさを捨てなければならない」ということであり、憐を思いやる気持ちと、憐を戦力として冷徹に考えなければならないこととが、吉良沢の心中で葛藤し、かろうじて現在はTLTに在籍する冷静さを保っている印象がある。

 今回はアカデミー時代の二人が見られるわけだが、性格は現在と何ら変わるところはないようだ。また、一口にプロメテの子といっても色々なタイプが存在するようだ。吉良沢は予知能力に優れているために半ば心を閉ざし、傍目に心を閉ざしている印象のない憐には、未来を予知する能力はなさそうである。

 さて、今度は本話全体の構成についてだが、クライマックスにウルトラマンとビーストの戦闘を持ってきており、オーソドックスならではの安定度を示す。実のところ憐のウルトラマンは強く、あまり苦戦している印象がない。それは苦戦するシーンがあってもその後ですぐに勝利するからであり、今回は凪のサポートも相まってその爽快感がかなり高く設定されていた。ドラマ自体は謎が次々と投げかけられあるいは解決していくことで重さを増しているだけに、そのバランス感覚がこのところ非常にうまいと思う。

 今回はテロップを含めて細かいシーンを観察すると、またもや謎が浮かび上がってくる。まずはテロップに「三沢広之」が登場。どこに出るのかと見ていれば、殆ど気付かないM・Pの出動シーンのワンカットのみ。重要度の高いキャラとはとても言えない露出でありながら、重要キャラクター扱いされるということは、クライマックスに向けたキーキャラクターとして存在している可能性が高い。次に「ラファエルはまだか?」のタイピングをあたかもイメージシーンのように演出しているラスト近くのカット。タイプしている手は監視者のものなのだろうか? このシーンを見るにつけ、メモリーチップの喪失は特に問題ではなさそうだ。そして、憐の「自分の未来は一つしかない」という意味合いのモノローグ。近い将来、憐の生命に関わる何事かが起こる可能性が高そうなのだが…。果たして?