第13話「ヘッドマスターをくいとめろ!」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

ヘッドマスターをくいとめろ!

 お~ま~え~と~作ろう~♪戦いのないみ~らい~♪

 というのは、「戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー ザ・ヘッドマスターズ」という長いタイトルのアニメの主題歌の歌い出しですが、これをまんま反対にしたキャラクターの登場が面白いですね。

 「アニメイテッド」って、作画部分は別として、構成・制作の主導はアメリカ側の筈ですけど、処々に日本制作版の影響があったりして、興味深いのです。まぁ、今回のマスターソンが、前述の主題歌へのアンチキャラクターを標榜しているわけではないでしょうけど、偶然とは思えない部分もあるんですよね。

 トランスフォーマーシリーズ自体が、もはやアメリカ版も日本版もアメコミ版も包括したユニバースとして展開されている事に留意しなければなりません。私は、「ザ・ヘッドマスターズ」以降の日本主導のシリーズが、コンボイの扱いの酷さもあってあんまり好きではないので、どうしてもアメリカ主導版バンザイトロンになってしまうのですが、「アニメイテッド」を見ていると、トランスフォーマーは多国籍で多角的な宇宙を形成しているという事を意識せざるを得なくなる。そんな感じを受けます。

 「アニメイテッド」は、これまでのどのメディアにおけるトランスフォーマーとも異なる時間軸ではありますけど、実はかなり最大公約数的なシリーズだったりするのではないでしょうか。

 さて、今回のストーリーですけど、サムダック社のマスターソンなる人物が、戦争用のロボットを密かに開発する過程で、他のロボットを乗っ取って自分の戦力にするというアイディアを思いつく処から始まります。

 サムダック社は戦争用のガジェットを一切開発しないというポリシーなので、マスターソンはクビになってしまうわけですが、マスターソンは自らの会社を起こすべく、ヘッドマスターを名乗ってアイアンハイドの身体を乗っ取り、そのデモンストレーションとばかりに暴れるというのが、大筋。

 そこに、アイアンハイドの破壊性と創造性を絡めて、事態の収束までを丁寧に描いています。

 なお、今回登場するヘッドマスターは、日本版のヘッドマスターではなく、アメリカ版3話構成のアニメシリーズである「ザ・リバース」が主なモチーフになっています。

 日本版のヘッドマスターは、頭部に変形する小型ロボット自身がトランスフォーマーの本体でしたが、リバース版のヘッドマスターは、パワードスーツが変形して頭部になる設定で、頭部に変形後は中にパイロットがいて、パートナーとなるトランスフォーマーと知性を連携させるという設定です。

 書いてて気付きましたが、今回のヘッドマスター、見た目は「ザ・リバース」ですが、身体自体に意思がないという部分は日本版の踏襲ですな。

 では、見所をチョイスしたので、続きをどうぞ。

 本編に入る前に。

 今回よりオープニングに効果音がつくようになりました。

 元々オープニングテーマがアゲアゲなチューンで、怒涛の美麗作画なのに加え、効果音が鳴り響くことでさらにテンションアップ。見ていて疲れるのは否めない(笑)。

 ただ、「ギガゴゴ」連発は古いファンからすると非常に嬉しいところでもありますね。個人的にあの変形音は「発明」だと思っていまして、遂にトランスフォーマーのアイデンティティの一つとして認知されるに至ったのは、なかなか感慨深いものがあります。

さて、本編の方に移ります。

 戦争ロボットを作らないというポリシーを持つサムダック社の中にあって、異端の技術者であるマスターソンが今回のメインキャラクターです。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 マスターソンは、得意げに自らの「発明」をサムダックに披露しますが、その「発明」は、頭部型ロボットによって、別のロボットのボディを強奪し、意のままに操る事が出来るというもの。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 マスターソンは「(敵の)戦争ロボットをゲットする」と表現してますが、これについての元ネタは後ほど。

 その方法自体は、対象のロボットの頭部を切り取ってドッキングするという、なかなかエグいものなのですが、そもそも「ザ・リバース」には、ヘッドマスターに志願したトランスフォーマー達が、自らの頭部を差し出すという、日本のメンタリティからはなかなか生まれ得ないシーンがあります。

 なお、元々ヘッドマスターの企画は「鋼鉄ジーグ」がヒントになっているという話も。確かに、ジーグの頭部はサイボーグ・宙ですからね。

 当然、サムダックはマスターソンをクビにします。

 マスターソンは高らかに笑いながらミサイルをぶっ放すという凶行に出ますが、その流れ弾が街へ…。

 一方、街を救いつつも、いつも街に被害を与えてしまうアイアンハイドは、それを挽回すべくインタビューで、「アイアンハイドは怖くない」ということをアピールしています。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 そこに、マスターソンが誤って放ったミサイルが流れて来ます。現場に居合わせたアイアンハイドが、見事ミサイルを迎撃!

 しかし、やっぱり街を半壊させてしまい…。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 アイアンハイドのキャラクターは、この破壊にアイデンティティを求めているのですが、それに相反する「抜群の心優しさ」と良い対比になっていて、それが今回の骨子でもあります。

 そして、たまたま現場に居合わせた少年の前に、アイアンハイドが誤って破壊した報道ロボットの頭部が。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 って、これダニエルじゃないか!

 ご存知ない方の為に説明しておくと、ダニエルとは「トランスフォーマー2010」の人間側の主役であり、初代「トランスフォーマー」にけるスパイクとカーリーの息子です。キャラクターはかなりデフォルメされていますが、顔の雰囲気といい、服装といい、ダニエルそっくりです。

 この子がこの後のストーリーに関わってくる事はないので、単なるお遊びですけど、やってくれますねぇ。

 で、アイアンハイドはその破壊性を気に病み始めるわけです。

 壊す代わりに創造はどうか、と芸術を勧めるサリ。ここでアイアンハイドは高精細なペイント機能を用いて、オートボットの集合図を描いて見せます。この図は一番最後のカットにも印象的な再登場を果たします。

 サリは、「機能」を使うのではなく、感じたままに描いたり作ったりすることが大事だというのですが、アイアンハイドはその持て余す力の所為で、細かい作業を失敗してばかり。

 この「芸術」、一応クライマックスにおける解決方法の基盤にはなるのですが、繋がりが今一つ希薄で、ちょっと強引なまとめ方になっているような気がします。

 一方、マスターソンは自分の会社を起こすべく、デモンストレーション用の「身体」を探していました。アイアンハイドの破壊力を見て、

「お前に決めた!」

と出かけて行き、アイアンハイドの身体を強奪して、

「ゲットだぜ!」

と叫ぶ…。これ、元ネタ分かりますよね。ポケモンです。同じテレ東だからいいのか(笑)。

 結果、アイアンハイドは頭部だけに…。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 なかなか衝撃の画です。

 アイアンハイドの頭部には、超小型のボディが急場しのぎで与えられ…。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 実にかわいい。

 一方、アイアンハイドの身体は、マスターソン=ヘッドマスターによって意のままに操られ、破壊活動をさせられています。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 スパークの所在は身体側にあると思われますが、基本的に意識を司る頭部は、身体の行動を知覚してしまうのです。「体がやってることが分かるけど、止められない」というのが、アイアンハイドの感想であり、彼のもどかしさが遺憾なく表現されています。

 ヘッドマスターは、テレビ電波を乗っ取って要求。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 その内容は、「太陽融合発電所を乗っ取った」、「1時間以内に、サムダックに10兆円を持って来させろ」というもの。

 10兆円!

 デトロイトでは円建て換算なのだ(笑)!

 思わず大笑いしてしまいました。まぁ、これはある意味「分かっててやってる」のであって、1,000億ドルより子供たちがピンとくるからなのですが、正直、アメリカで円はないだろうと思ってしまいますね。

 ここで、オプティマスの「いい考えがある」が登場!

ヘッドマスターをくいとめろ!

 よって、オートボットが未曾有の危機に巻き込まれるのは確定…ではなく、今回は割といい作戦。ただ、詰めはやや甘いですけど。

 1時間のタイムリミットは、太陽炉がマスターソンによってオーバーロードを起こした為であり、爆発前に制御棒をリセットする必要が生じているのでした。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 警察車両に偽装したオートボットが到着。

 金を受け取ろうとしたマスターソンを包囲します。

 プロールのホログラム警官が立っていたり、オプティマスの牽引しているコンテナがG1コンボイ仕様だったりと、一瞬のシーンに小ネタ満載なのが嬉しい。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 しかし、「いい考え」ではあったのですが、残念ながらマスターソンは想像を超えた悪いヤツで、金を受け取ろうと受け取るまいと、太陽炉は爆発させるつもりであり、これはサムダック社への復讐なのです。

 社会貢献著しいサムダック社ですが、こんな具合に内外問わず敵を作ってしまう事も多く、ちょっとしたエスプリになっていますね。

 オートボットが対抗している間に、サムダックが太陽融合炉を止めようとしますが、マスターソンの攻撃が影響したりで、なかなか巧く事が運びません。

 オートボット VS ヘッドマスターにおける秀逸なカットをいくつかチョイス。

 アイアンハイドの能力に加え、ヘッドマスター自身も手榴弾やミサイル等の強力な兵装を装備。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 バンブルビーが跳ね飛ばされたアイアンハイドの頭部をナイスキャッチ!

ヘッドマスターをくいとめろ!

 ヘッドマスターを追い詰め、包囲するオートボット達。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 しかし、ヘッドマスターは分離して逃亡。

 オプティマスは、「頭を使う」と称してアイアンハイドの頭部にウルトラアンカーを噛ませて、投擲!

ヘッドマスターをくいとめろ!

 しかし、ヘッドマスターは更に小型ロボに変形して逃亡!

ヘッドマスターをくいとめろ!

 まさか変形するとは思いませんでした。ちゃんとG1ヘッドマスターへのオマージュになっていますね。

 で、逃亡したヘッドマスターを追跡する間もなく、誰が融合炉の中に入って制御棒を元に戻さなければならない程、事態は切迫。

 ここで、アイアンハイドが提案。即席ロボットを作り、太陽炉の制御棒を元に戻させるというアイディアです。このアイディアはすぐさま実行に移され、ロボットが完成。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 融合炉の中で、溶解しながらも制御棒を戻していくロボット。

ヘッドマスターをくいとめろ!

「どう?ラチェット。芸術も役に立つこと、あるでしょ?」

 アイアンハイドは茶目っ気たっぷりに告げます。これにはちゃんと伏線があって、アイアンハイドが「芸術の練習」をしているシーンで、ラチェットは「芸術など何の役にも立たん」と言い放っていたのでした。「アニメイテッド」に、こうした応酬が巧みに織り交ぜられている事は、何度も述べているとおりです。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 アイアンハイドの個展が開かれ、例の即席ロボットも展示されていました。オプティマスは、

「やっと分かった気がするよ。芸術というのは、感じるんだ。これを見ると感じるよ。そう、誇りを」

と言って、ある一枚の「絵」を見ます。

ヘッドマスターをくいとめろ!

 それは、アイアンハイドが最初に「機能」で描いたオートボットの集合図でした。

 このラストシーンをどう受け取るかは、色々だと思います。

 額面通り、オプティマスが芸術というものを理解したという解釈もOK。しかし、オプティマスが見たのは「機能による図」であることから、結局オプティマスは芸術について有用性でしか理解出来ていないとも言えるのです。

 いずれにせよ、オートボット達が人間にまた一歩歩み寄ったのは、間違いないでしょうけどね。

 この回は、トランスフォーマー アニメイテッド VOL.4 [DVD]に収録。テレビ未放送の幻のエピソード「死を呼ぶ宇宙怪物!」も収録!