第23話「ダブルエージェント」

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ダブルエージェント

 本編の尺の殆どが過去編で、しかもオプティマスやプロール、ラチェットが全く出て来ないという、いかにもトランスフォーマーらしいエピソード。

 バンブルビーとアイアンハイドの出会い、センチネルとの関係、スパイの存在、バンブルビーに怨恨のあるワスプと、実に盛り沢山の要素が詰め込まれていて、その上、現代編と過去編を行ったり来たりする複雑な構成であるにも関わらず、非常に分かりやすく、またテンポ感が素晴らしい。さすがです。

 ストーリーの方は、サラッとまとめるのが難しいので、ここでは触れずに続きの本編紹介に譲ります。では、早速続きを御覧頂きましょう。

 現代編と過去編が錯綜するので、今回はルールを決めます。文中、【現代編】【過去編】と明記しますので、ついて来てくださいよ(笑)!

 冒頭は【現代編】。「元オートボット兵士」のワスプが、サイバトロン星より脱走したという連絡が入ります。ワスプは、スパイの嫌疑で投獄されていたようです。

 逃走するワスプは、センチネルに追われています。

ダブルエージェント

 このワスプのスタイリングを見ると、サイバトロンモードのバンブルビーと酷似している事に気付きます。その理由が、後でちゃんと語られるから凄い。ちなみに、エナジースティンガーっぽい装備も有しています。

 追跡するセンチネルですが、よく見るとスタイルがサイバトロンモードに戻ってますね。

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 センチネルが出てきたという事で、エリートガードが脱獄者の追跡任務を負っていることが分かります。

 このワスプは結構優秀なヤツで、スペースブリッジの基部を撃ってこれを作動させ、まんまと逃げおおせます。センチネルは受難続きですねぇ。まぁ、過去編でも散々な目に遭うわけですが。

 さて、ここでワスプの名を聞いたバンブルビーは、彼と出会った訓練生時代を思い出します。【過去編】に突入です。

 これが訓練生時代のバンブルビー。サイバトロンモードはシリーズ開始当初にも登場しているので、既にお馴染みですね。

ダブルエージェント

 ここでワスプが登場。

ダブルエージェント

 バンブルビーを、エリートガードになるには小さすぎると評するなど、結構口の悪さが際立っています。ただ、ワスプ自体も割と小型で、バンブルビーとあまり変わりません。それもその筈、バンブルビーとワスプは同じタイプのプロトフォームから生まれたとされているのです。

 トイの方に目を向けてみると、この後登場するアーマーハイドと、ラチェットのサイバトロンモードが酷似しており、彼等も同じプロトフォームではないかと思われます。この設定は、トランスフォーマーではポピュラーな「リデコ/リカラーモデル」を成立させやすい秀逸な設定だと思います。

 【現代編】。メガトロンは、オートボットに送り込んでいるスパイと交信しています。

ダブルエージェント

 姿はノイズに隠れて判明しません。このスパイ、一体何者なのか、ワスプなのか?
 実に興味を惹かれるわけですが、何とメガトロン様、

「ロングアーム!」

と朗々たる若本節で呼んじゃってるんですよ!あ~(笑)!!

 まぁ、ね。一応、ね。まだ本編にロングアームは出てきていないので、聞き流される事を前提にしてるんでしょうね。そうだよね…。

 なお、この交信はバンブルビーとアイアンハイドに傍受されてしまいます。バンブルビーは真っ先にワスプを疑い、ワスプの捜索に乗り出そうとします。アイアンハイドはオプティマスに連絡する方が先だと主張しますが、いつもの如く、バンブルビーは内緒で出かけるのでした。最近、このパターン頻出ですね。

 再び【過去編】。バンブルビーは訓練生となり、センチネル教官の元、5人のチームで訓練を受けることになりました。

ダブルエージェント

 左から、バンブルビー、アイアンハイド、ワスプ、アーマーハイド、ロングアームです。ただし、彼等にはまだ名前がなく、何とセンチネルが名付けた事が明らかになります。

 それぞれの由来は次の通り。それぞれの特技等が由来になっています。

 手足を伸縮させる能力を披露したオートボットに、「ロングアーム」。

 いかなる攻撃も寄せ付けない硬い装甲を披露たオートボットに、「アーマーハイド」。

 射撃の名手であるオートボットに、「ァオ、ゴいレーだ」という感想を持ち、「ワスプ」。

 いきがり、誤って建造物を破壊したオートボットに、「バンバン撃ってビル壊しやがって。お前の名前はバンバンビー」。さすがにマズイと思ったのか、「いや、バンブルビー」。

 レッキングボールをセンチネルに直撃させた「アイーン野郎」のオートボットが、「ハイうも」と言ったので、「アイアンハイド」。

 いやぁ、感心しました。よくぞ考えたものだと。

 逆に英語だと語源が圧倒的に分かりやすい。ロングアームはそのまま。ワスプとバンブルビーは同じプロトフォームから生まれているので、どちらも「ハチ」の仲間だし、アーマーハイドは元々アイアンハイドで「鉄皮」の意味、アイアンハイドはバルクヘッドで、多分図体のデカさが由来だと思います。

 日本語で原語版どおりの由来を説明するのは、キャラクターの名前の入れ替え等もあって困難なので、敢えてダジャレで処理したと。いやぁ、実に素晴らしい。いい仕事です。

 なお、センチネルは彼等に、オートボットの兵士としてどのような仕事に就きたいかを尋ねています。それぞれの答えも以下に列挙。

バンブルビー「エリートガードに入って、宇宙の平和を守りたいです」

ロングアーム「エリートガードの情報部に入りたいです」

アーマーハイド「エリートガードの戦士になりたいです」

ワスプ「エリートガードの司令官になりたいです」

アイアンハイド「あ、その、自分はスペースブリッジの修理士になりたいなって思うであります」

 エリートガードはやっぱり花形だということが分かりますね。ちなみに、当時のセンチネルのエンブレムはまだエリートガードのそれではないので、まだエリートガードに入っていなのかも。

 話は逸れますが、今回はオートボットの「兵士」という言葉が頻繁に出てきます。

 G1の時代は、結構このあたりが厳密に決められていて、オートボット側は「戦士(サイバトロン戦士)」と呼ばれ、ディセプティコン側は「兵士(デストロン軍団)」でした。当時のトイを見ると、「合体戦士」と「合体兵士」といった具合に、はっきりと分類されています。日本語版は。

 故に、私なんかは「兵士」と聞くと、どうしてもディセプティコン側のイメージがあって、軽く違和感を憶えてしまうのです。

 さて、当時のバンブルビーは、愚鈍に見えるアイアンハイドを敬遠しており、しきりに「友達ではない」という言葉を繰り返します。これが今回のテーマの一つになっており、現代編で親友になっている二人との良い対比になっています。

 訓練生時代のバンブルビーは、現在と同じくお調子者ですが、かなりのおっちょこちょいでもあり、巻き起こす事件がことごとくセンチネルに被害をもたらすのです。

 例えば、オイルを運ぶ最中に足を滑らせ、居合わせたセンチネルをオイル塗れにしてしまいます。

ダブルエージェント

 バンブルビーが失敗する度に、訓練生達は腕立て200回よろしく、トランスフォームの鍛錬をさせられます。

ダブルエージェント

 やっぱりトランスフォームは、こんな風に自然に行われるべきですね。

 その日、バンブルビーはメガトロンと交信するスパイの存在をキャッチ。

ダブルエージェント

 バンブルビーは、その現場から立ち去ったワスプに疑いを向けます。

 そのスパイの存在に関して、何とバンブルビーはロングアームに相談するのです。

ダブルエージェント

 敢えて本編の流れを無視しますが、ロングアームにとって、これは好都合以外の何物でも無かった筈。バンブルビーを巧く誘導すれば、自分にかけられるべき嫌疑をワスプにかける事が出来るわけです。細かいチャンスを最大限に活用する、スパイとしての力量が良く分かります。

 ここからバンブルビーの奮闘開始。エリートガードの機密ボックスに偽装した罠を仕掛け、スパイの決定的証拠を掴む作戦に。

 しかし、引っかかったのはセンチネル…。

ダブルエージェント

 バツとして、またもや連続トランスフォーム鍛錬が課せられます。

 それにもめげず、今度は会話を傍受して証拠を掴む作戦に。

 ところが、傍受したのはセンチネルとクリフジャンパーの会話(というよりセンチネルの一方的な愚痴)。しかも、拡声スイッチをあやまってONにしてしまい、ウルトラマグナスの悪口を一帯に響かせてしまったのです。

ダブルエージェント

 このクリフジャンパーがいい味出してますね。

 憤怒するセンチネルは、またまた連続トランスフォーム鍛錬をチームに課します。

 度重なるバンブルビーの失敗の巻き添えを食い、とうとう、ワスプとアーマーハイドはバンブルビーを懲らしめる為に、ロッカーに閉じ込めてしまいます。

ダブルエージェント

 それを助けたのはロングアーム。巧みな心理作戦を粛々とこなすロングアームの姿は、正体を知った後では実に不気味なのですが、知らないまま見るとイイヤツでしかないのが凄いです。

 【現代編】では、わからず屋のバンブルビーに愛想を尽かし、アイアンハイドが帰ってしまうというくだりが。

 再び【過去編】。今度は実戦的な訓練に入ります。

 模擬弾での訓練でしたが、途中から何者かが(って、多分ロングアームですけど)砲塔に細工を施し、本物のレーザービームが発射され始めます。

ダブルエージェント

 レーザーの砲撃に遭うバンブルビーを救ったのは、アイアンハイド。「余計なことしちゃったかも知れない」といいつつ、身を呈してバンブルビーを逃がそうとします。いいヤツですね。

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 更に、レッキングボールの一撃がタワーを破壊し、見事レーザー砲を押しつぶすことに成功。ところが、センチネルがその巻き添えに。

 慌てた二人はその場から逃走してしまいますが…。

 一方、【現代編】では、バンブルビーが岩の下敷きになってしまいます。

 またまた【過去編】。ロングアームは、持ち物検査こそがスパイを暴くチャンスであるとバンブルビーに告げます。さらに、ワスプのロッカーのキーを盗み、ワスプのロッカーから証拠を見つけ出せばいいとアドバイス。

 バンブルビー、完全にロングアームの術中にハマってしまったわけですね。

 そして、バンブルビーがワスプのロッカーを開けると…。

ダブルエージェント

 中に通信機があり、遂にセンチネルはワスプがスパイであると確信。

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 ワスプのオートボットのエンブレムを剥がすセンチネル。正に、「剥奪」です。

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 バンブルビーに、「復讐してやる、バンブルビー!いつの日か、必ずな」という恨みの言葉を残し、ワスプはクリフジャンパーに連行されて行きます。

 スパイ騒動の後、センチネルは、自分を下敷きにした犯人を遂に特定出来なかったと吐露。ここからがセンチネルという人物のヘンな処なのですが、彼は、「犯人」を特定するのではなく、アイアンハイドを「一番ダメなロボット」という理由で軍から追放するという暴挙に出るのです。

 アイアンハイドに助けてもらったバンブルビーは、さすがに耐えかねて、自分が犯人だと名乗り出ます。

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 こうして、結局「軍」からは除隊となったと思しきアイアンハイドと、同じく咎を受けて除隊となったバンブルビーは、スペースブリッジの保守要員となりました。

 アイアンハイドは、元々希望していた職種だった為、大喜び。一方、エリートガードを目指していたバンブルビーは、溜息ばかり…。現在の活き活きとしたバンブルビーの姿からは、想像できない落胆振りです。この落胆振りを見ると、バンブルビーがいかにオプティマス達に支えられて変わったかが分かりますね。

 【現代編】。バンブルビーは、岩の下敷きになったまま身動きが取れず、アイアンハイドを邪険にしてしまった事を、後悔していました。

 ところが、アイアンハイドは、バンブルビーを助けに来たのです。

ダブルエージェント

 バンブルビーが心配で密かに尾行していたというアイアンハイド。結局、ケンカをしていても、互いにいいヤツだと思っている二人。そして、二人は互いに「一番の友達」と思っているのでした。過去編の感情との対比が実に見事で、二人の友情を育んだ時間の流れを強く感じる処ですよ。

 で、ワスプについての報告をするオートボット。何と、ロングアームは情報部長官に就任していました。言語版では「Prime」の一人ですから、大した出世なのです。

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 しかし、ロングアームの正体は…。

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 ディセプティコンの変装の名手…。

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 ショックウェーブ!

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 トイでも見事に再現されている、秀逸な変装術に拍手。

 G1のショックウェーブと同じく、一ツ目のトランスフォーマーですね。

 かつてG1にもパンチ/カウンターパンチ(ダブルスパイ)というスパイが居ました。また、「マイクロン」にもダブルフェイスというキャラクターが居たりと、トランスフォーマーにおいて、スパイ系のキャラクターは結構ポピュラーです。ただ、ショックウェーブとスパイはイメージ的に結びつかず、意外性があって面白いですね。

 G1アニメ版では、ショックウェーブはメガトロンに超忠実なキャラクター。逆にコミック版では、ディセプティコンの覇者となるようなキャラクター。こんな二面性が、今回のキャラクターに反映されているのかも知れませんね。