第7話「灼熱巨人の挑戦」

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灼熱巨人の挑戦

 バンブルビーのキャラクター性にスポットを当てたお話。

 初代G1アニメのバンブルビー、つまりバンブルは、アニメイテッドのバンブルビー同様、他のサイバトロニアンより小型という設定になっており、少年っぽさが魅力のキャラクターでした。人間に一番近い処に居るトランスフォーマーというイメージは、そのまま実写映画版に引き継がれましたが、実写映画版は大型スポーツカーであるカマロだった為、小型というイメージはやや薄れています。

 アニメイテッドでのバンブルビーは、オリジナルであるバンブル同様、再び小型のオートボットというイメージで造形されています。しかしながら、完全にオリジナルと一緒ではない処がミソで、初代バンブルは小型であるが故に、自分にしか出来ない仕事があることを誇りに思っているキャラクターでしたが、アニメイテッドのバンブルビーは、小型であることを気にしていたり、他の者にからかわれたりするキャラクターになっています。ただし、今回の話だけかも知れませんが。

 アニメイテッドのバンブルビーの強みは、小型である事よりもスピードに長けていること。これは初代にはなかった要素です。このあたりは、実写映画版のカマロが大きく影響している気がします。

 なお今回は、メルトダウンなる怪人が事件を引き起こします。これまでにもちらほら登場している、人間の敵キャラの範疇に属するキャラクターですが、それまでがオートボットの保安官的活躍を描写する為のキャラクターだったのに対し、メルトダウンはディセプティコンに匹敵する本格的な敵キャラになっています。

 そう、今回はディセプティコンが一切登場していないのです。日本の子供向けアニメでは、こんな構成がとられることはまずありません。まぁ、G1を深く味わっていれば、何ら驚くことはないのですが。ただ、アニメイテッドはオートボットが主役であることは動かし難いようで、平然とディセプティコンが主役の話等を展開していた初代G1アニメと比べると、やはり時代が変わったという感は強いですね。

 ストーリーの方ですが、前述のメルトダウンは元々ミスター・ブラックというバイオテクノロジーの大家で、警察への戦力配備のビジネスでサムダック博士と競っており、そのデモンストレーションとして、ミスター・ブラックのバイオテクノロジーの成果とロボットの対戦ゲームを開催する処から始まります。

 それはファンゾーン警部へのプレゼンでもあったワケですが、ミスター・ブラックの成果であるコロッソス・ロードスなる怪人と、バンブルビーの対戦において、コロッソス・ロードスは暴走してしまい、ファンゾーン警部はもとより、ミスター・ブラックに出資していた投資家への評判も失墜。

 オートボットとサムダックを逆恨みするミスター・ブラックは、バンブルビーの破片と自ら開発したステロイドのハイブリッドによって、オートボットの金属すら溶かす液体を作り上げるのですが、その液体自体が暴走してしまい、その液体と融合したミスター・ブラックはメルトダウンと化してしまうのでした。

 そして、メルトダウンとオートボットの一大攻防戦が始まるのですが…。

 と、こんな感じです。これまでで一番ストーリーをちゃんと解説したな(笑)。

 この基本ストーリーに、バンブルビーと仲間達の関わり合いが絡められるのですが、その辺にも触れつつ続きをどうぞ。

 冒頭から、いきなり自信たっぷりのマイクパフォーマンスを披露するミスター・ブラック。

灼熱巨人の挑戦

 バイオテクノロジーの大家という知性派でありつつも、いかがわしい実業家といった風情が強いキャラクターです。

 対戦カードは、ミスター・ブラック側の代表コロッソス・ロードスと、ロボットの代表として登場したバンブルビー。

灼熱巨人の挑戦

 コロッソス・ロードスは、小柄で貧弱な感じですが、肩に装備されたユニットの電気的刺激とステロイドで、こんな巨人に!

 肩のシリンダー状ユニットが、ピストンしながら身体に刺激を与えていくあたりの描写は、なかなか気持ち悪い印象ですな。

灼熱巨人の挑戦

 ここで、身体の大小関係を逆転させて見せるという演出により、バンブルビーが小型のトランスフォーマーであることを、巧緻なタッチで印象付けています。

 結局、この後コロッソス・ロードスは暴走し始め、リングを飛び出してなおもバンブルビーを襲うのですが、その過程で派手に建造物や車輌を破壊してしまい、ファンゾーン警部はミスター・ブラックとの契約破棄を言明します。

 コロッソス・ロードスの件はオートボット達が駆けつけて落着したものの、売上(?)のかかっているミスター・ブラックにしてみれば、実に痛い状況であり、こんな感じでファンゾーン警部に食ってかかります。これじゃあプレゼンに成功する筈もなく…。

灼熱巨人の挑戦

 更には投資家にも見限られたミスター・ブラック。バンブルビーの装甲の一部と特性ステロイドを混合してオートボット打倒の野望に燃えます。が、その混合ステロイドが暴走し、ミスター・ブラック自身に取り付いてしまいます。

灼熱巨人の挑戦

 ミスター・ブラックにしてみれば、知性を持たない地球製のロボットの限界を突破すべく、人間を強化し、かつ人間の脳を強化の為のコントロール中枢とすることを選択したわけですが、それは暴走という形でことごとく失敗していることになります。

 これは、人間の傲慢に対する皮肉であり、またロボット達を主役とするアニメであることに安定感を与える為の、担保の一つであるとも考えられます。

 とはいえ、当のオートボット達は、試合に出たバンブルビー批判で盛り上がっており、アイアンハイドとプロールに至っては、かなり酷いことも言っています。

 さて、ミスター・ブラックがドロップアウトしたことで、俄然有利になった筈のサムダック博士も、プレゼンの際に失敗。

灼熱巨人の挑戦

 デモンストレーションに出した警察ロボットは、大爆発を起こしてしまいます。

灼熱巨人の挑戦

 今回、日本版では大幅にカットされてしまったのか、ファンゾーン警部の奥さんはロボットに関する事故に遭ったらしく、サムダック博士は、

「警部の奥様の身に起きたような不幸な事件は、二度と起こりません」

などと発言しています。この部分が非常にわかりにくく、ファンゾーン警部の心情は殆ど理解出来ません。単なるロボット嫌いに見えてしまう。また、サムダック博士がアドリブで、

「二度起きた~」

とおどけているので、余計に浅いものになっています。

 ただ、確かにこの方が、メルトダウンとオートボットの攻防戦だけを印象付けるに適してますけど。

 さてさて、ミスター・ブラックは怪人・メルトダウンと化してしまいました。常に溶解し流動する液体が身体を覆っている状態なので、特殊スーツを身に付けています。いかにもアメコミの超人的で、なかなかカッコいいですね。

 サムダック博士の失敗の原因は、このメルトダウンが仕掛けた溶解液にありました。
 
灼熱巨人の挑戦

 で、メルトダウンはサムダック博士を襲撃すべく、サムダック社に出現したわけですが、サムダック社は危険を感知するとバリアで覆われる仕組みになっており、オートボット達は中に侵入出来ません。ここではさっきとは逆に、オートメーションの危険性が謳われていますな。

 ラチェットのマグネットパワーでバリアに穴を作り、何とかバンブルビーだけ侵入に成功。まずここで小型ロボットの優位性を見せています。エレベーターホールを肩と足のタイヤを使って上昇するバンブルビーは実にクールです。

灼熱巨人の挑戦

 前述のように、冒頭の対戦に出演した所為で、バンブルビーは他の面々より疎まれていたのですが、やっぱり仲間は仲間。すったもんだあってバリアが解除された際に飛び込んだアイアンハイドが、バンブルビーを助けます。しかも、メルトダウンを掴んだ手が徐々に溶解されるという苦痛に耐えて…。

灼熱巨人の挑戦

 一方、ビルの外ではコロッソス・ロードスが大暴れ。

 オートボットは大苦戦を強いられますが、コロッソス・ロードスが鳴り始めた鐘の音に苦痛を感じるのを見て、オプティマスが鐘を叩き、ようやく撃退。

灼熱巨人の挑戦

 さらに、アイアンハイドを助けるべく、バンブルビーも溶解液の洗礼を。

 言葉ではなく、行動で友情を示すあたりがいいですね。一連のバトルは知性的で、かつ合理的。しかもそれなりに熱い。

灼熱巨人の挑戦

 最後は、ラチェットの機転でメルトダウンをバリアで囲んでしまい、一件落着。メルトダウンは、自らの溶解液に浸されて…ここでシーンが切り替わってしまったので、顛末は分からず。

灼熱巨人の挑戦

 エピローグでは、小型で俊足であることを誇ってはしゃぎまわるバンブルビーの様子が。これで、バンブルビーも初代バンブルの真の後継者足り得たか。

 この回は、トランスフォーマー アニメイテッド Vol.2 [DVD]に収録。