SirMilesのマニアックな日々

騎士竜戦隊リュウソウジャー 第19話「進撃のティラミーゴ」

 コメディ…いやコミカルな一編ではあるのですが、今シーズンらしくちょっと重めな感覚も織り交ぜ、メルトとティラミーゴの友情を掘り下げた、少しグッと来る名編に。

 前回は変身解除、今回は脱出不能といった具合に、意外と危機に陥りやすいリュウソウジャー。こういう時こそ、各々ができることをやり抜くという意志が表出し、それが解決に繋がる、戦隊のプリミティヴな醍醐味に繋がるんですよね。

アラクネーマイナソー

 アラクネーは蜘蛛の意匠で表現される怪物ですが、蜘蛛の要素を上半身に集中させつつも、蜘蛛そのものからは少し離れたデザインが秀逸そのもの。しかしながら、その貌のデザインはかなりのトラウマもので、学校に現れたら本当に怖いのではないでしょうか。

 そのデザインの醜怪さとは裏腹に、「弱い」という属性が付与されているのが面白く、学校内に張り巡らされた「ルールの罠」の中でこそ本領発揮するタイプというのも良いですね。

 能力もソースも単純そのものなので、純粋に仕掛けのみを楽しむことができるのも長所。敵味方入り乱れて怪現象に巻き込まれていくストーリーをシンプルにする効果がありました。

 子供に直接被害をもたらしたマイナソーということだからか、コウとカナロの怒りのほどは凄まじく、ギガントキシリュウオーで一気呵成に決着を付ける巨大戦の迫力がインパクト大でしたね。

滝裕可里様!

 「仮面ライダービルド」での複雑なキャラクターでも記憶に新しい滝さん。「ギャバン THE MOVIE」での典型的な被害者系ヒロインから、「ウルトラマンギンガS」では武闘派ヒロインに、そして「ビルド」に至っては敵味方を揺れ動くミステリアスなヒロインと、その変幻自在のヒロイン像で高い特撮ファン人気を誇りますが、今回は戦隊初出演ということで、ゲストながらも印象的なキャラクターとなりました。

 カナロに求婚されるシチュエーションは、瞬時に左手薬指の指輪によって砕かれるあたり、今回はそこに面白さを求めていないことが分かります。ただ、前回を見ていれば、カナロが指輪の件を「学習」したことが分かって笑えるというポイントでもありました。

 小学校の教師として、ルールの大切さを説きつつもその裏でルールが守られないことに苛立ちを感じているという、ある意味非常にリアリティのある設定が秀逸。そこからマイナソーが生み出されるという流れからして、マイナソーは生み出され放題であることが感じられて恐ろしいのです。

 アラクネーの蜘蛛糸と、ルールによる束縛とが関連付けられているのも巧く、元となった人間とマイナソーの表裏一体な部分が、今回は特に強調されていたように思います。

 これで滝さんは四大特撮への出演制覇となりましたが、戦隊のみ「ゲスト」なので、ここは何とか女性長官役とかでのレギュラー出演をお願いしたいですね!

メルトとティラミーゴ

 この二人が今回のメイン。

 ティラミーゴは日常的に散歩を楽しんでおり、そのコースの途中で色々な人と知り合っていることになっていました。この世界観は完全に不思議コメディシリーズの世界観で、「リュウソウジャー」がファンタジー戦隊であると同時に、不思議な市井のリアリティとナンセンスコメディとを内包している、ちょっとチャレンジングなシーズンになっていることが分かります。

 ティラミーゴのような現実世界とは相容れないキャラクターに関しては、基本的に市井の人々との関わりがないことにされるのが常でしたが、このように積極的に関わらせることによって、新しい魅力が引き出されそうですね。

 そもそもリュウソウ族自体が、その長命ぶりもあってかなり人間とは異なる感覚で描写されているため、騎士竜に関してもこうした方針が採りやすいのかも知れません。

 さて、「メルトはティラミーゴに好かれていない」という設定ですが、これは前回まであまり巧く機能していない設定だったのではないかと思います。そもそもとして両者の相容れない要素の印象が弱く、コウとバンバの関係のような深みはほとんど感じられません。

 しかしながら、深みはないにしろ所々でギャグとして二人の関係性を描写してきて、今回をより良い状態で迎えたことには大いに意義がありました。

 協力せざるを得ない状況下、理論派と肉体派の究極の対極として両者がそれぞれの「できること」をカードとして切ることにより、自体を打開するプロセスは実に見事でしたね。ティラミーゴも乱暴さだけでなく、慎重すぎるメルトへのカウンターとしてアイディアを出すなど、その知能もしっかり描写し、人々に慕われるキャラクター性により厚みを増しました。

 それにしても、作戦に悩むメルトと力ずくで打開しようとするティラミーゴの対比は楽しかったですね。クレオンの余裕っぷりと慌てっぷりのギャップがその楽しさをさらに加速させていました。

ワイズルー

 今回の真のギャグ要員はワイズルーだったのかも知れません。敵味方関係なくルールの罠に突き落とすマイナソーによって、ワイズルーも被害に遭い、人知れず児童に化けて静観していたというのが素晴らしく可笑しいです。

 ワイズルー変身体の子役も、実に達者な表情で印象を残しました。ワイズルー、次回で退場とかなければいいですが……。

トワ

 特筆すべき点として、トワの児童への優しい声かけのシーンを挙げておきます。最年少メンバーの「お兄さん」的なヒロイズムの体現が、実に爽やかでした。

次回

 次回はそのトワがメインにフィーチュアされます。また「一人残る」パターンのようですが、今回とどう変化を付けてくるか楽しみですね。

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