SirMilesのマニアックな日々

魔進戦隊キラメイジャー 7〜11話 他

 よもやこんな事態になるとは…。TV界に吹き荒れる制作不能の嵐。そんな中でも、なんとか休止せずに放送を継続する本作に、最大限の敬意を表したいところです。

 さて、各メンバーの紹介エピソードを終えたところで、今度は設定の地固めをするのが1クール目の定石ですが、その方針を踏襲しつつぶっ飛んだ作風を連発する「キラメイジャー」。新しいのに既視感もある、エキセントリックで安定した作風の秘密はどこにあるのでしょうか。

7・8話は新ガジェット登場編

 基本的に今シーズンにおける新ガジェットは、(少なくとも現在は)キラメイストーンありきの上で充瑠のヒラメキによって生み出されるものですから、必然的になんらかの形で充瑠がストーリーの中心に来ることになります。

 当然、この前後編も充瑠がメインですが、ヒーローサイドには最近の特撮には珍しい「特訓」が仕込まれ、各々の得意技を改めて振り返るという構造にもなっており、充実度は高いです。しかも充瑠は特訓に疲れて寝込んでしまうという、レッドらしからぬキャラが実に素晴らしい。そのことがオラディン王との時空を超えた精神の不思議な邂逅を引き起こし、それが逆転への道になるという流れもさすがといったところです。

 一方で敵サイドは、兄弟邪面師を登場させてガルザの非道ぶりをアピール。こういうキャラの掘り下げを新ガジェット編で行うのは、バランス感覚に優れていていいですね。ご都合主義を感じさせないので好きです。

 ロボ戦も工夫に満ちていて、敵側のロボであるスモッグジョーキーが、ヒーロー側のロボ・キングエクスプレスに変化するという、実に挑戦的な機構が鮮烈。ロボの「気まぐれ」をストーリーと構造双方のギミックにしてしまうのが凄いですね。

 この前後編は、ある側面ではガルザがメインと言っても良く、後のSP版で振り返ってたりします。

9・10話はヒロイン編

 9話では、瀬奈の競技カルタに打ち込んでいたという過去が登場し、愉快な邪面師と共に盛り上げまくってくれます。

 10話は時雨の追っかけに尻込みしまくる当人と、世話役の小夜がコンビで活躍する話ですが、時雨のダメっぷりと小夜の大人の魅力(?)が炸裂していて、実質的には小夜の活躍エピソードになっていました。

 両話とも、どこかステレオタイプに過ぎるゲストや、ストーリーにおける漫画的表現といった要素が目立っており、それらがヒロインの個性的な魅力を際立たせるという構造は、まさしく「荒川先生が投げるヒロイン変化球」。この初期段階において思い切ったなぁ…という感想も抱きましたが、振り返れば初回からこの「ネタ感」こそが肝になっているんですよね。「キラメイジャー」はネタ重視のエピソード(いわゆる「バラエティ編」)を毎回展開するという示し合わせがあるのではないかと思うわけです。

 瀬奈は、斬り込み隊長の属性を持つ珍しいヒロインなので、「文化系」のアクトに「良い違和感」があって良かったですね。これも発想の元は「瀬奈に着物を着せてカルタをさせる」ことではないかと勘ぐりますが(笑)。

 時雨の「表イケメン、裏オクテ」という朴念仁ぶりは最高。ずっと「格好良くてヘンな人」を貫いて欲しいところですが、小夜と共に大人ポジションの妙味を味わいたい気持ちも勿論あります。このエピソードは先日惜しくも亡くなられた上原正三先生の得意とする「歌もの」も踏襲していて、Twitterでは「スパイダーマンブギ」や「なんだなんだブギ」といった語句が飛び交いました。他にすぐ思いつくだけでも、「銀河ハニー」に「まぼろしブルース」、そして最大のインパクトを誇る「不思議ソング」がありますよね。

 小夜のヒロイン属性は結構複雑です。大人のイメージを持たせつつも、これは工藤さんのキャラクター性なのか少女性が垣間見え、時に見せる冷酷さといったものを兼ね備える姿は、「ニンニンジャー」の霞姉の後継者というのが妥当な捉え方でしょうか。時雨に代わってあらゆる事態を解決してしまいましたし、間違いなくキラメイジャーの「美しき元締」でしょう。

エピソードZERO、他

 エピソードZEROは嬉しいサプライズでした。何しろ未見だったもので…。このお話を見るか否かで、結構各メンバーの印象が変わりますね。緊急事態下での措置でしたが、これを見られたことは、シリーズを視聴する上でかなりのプラスになりました。

 1・2話のSP版は、カットされた部分を多く復活させた特別版。私が実のところ凄く気になっていた充瑠の「各メンバーの呼び方」。1話は全員呼び捨てにしていたのに、2話ではさん付けになっていたりと、統一感のなさを感じていたのですが、実はカットされていたシーンで説明されていたということが分かり、これも大収穫。いや、この「収穫」自体も緊急措置の賜物なので、本当は本編でちゃんと説明して欲しかったところですけど…。

 その後のバラエティ番組のパロディは、さすが総集編を数多制作してきた戦隊だけあって手慣れたもの。作風のバラエティ性から笑いとの親和性も高いわけで、声優の方々の好演もあってハイクォリティでした。各キャラの個性もこのパロディ編でかなり深掘りされたように思います。「禍転じて福となす」を地で行ってましたね。

いよいよ

 新作の放映体制が整ってきたようですね。ようやく来週より「再開」となります。新戦士チラ見せという苦肉の策で、インパクトが削がれなければ良いですが…。

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