その3「シオシオ!そうじ力」

 臨獣殿「試しの房」。ここは、リンリンシーとなるべくリンシーを選抜すべく、力を試される場所。勝ち残ったのは、臨獣バッファロー拳・ギュウヤであった。理央は激獣拳の奴らに力を示せと命ずる。

 ジャンは、ランやレツのようなビーストアーツのトレーニングに挑戦するが、ロボタフにのされてしまう。マスター・シャーフーは、ジャンに特別メニューの修行を命じた。それは「雑巾掛け」。「暮らしの中に修行あり」それがマスター・シャーフーの持論であり、修行の暁には「そうじ力」が身に付くという。ジャンが張り切ったのも束の間、臨獣殿の気配を感知し、3人は街へと向かう。

 街にはギュウヤが出現。3人はゲキレンジャーとなって立ち向かう。ジャンはパワー勝負を挑むが、ギュウヤの圧倒的なパワーに押されてしまう。レツは技で、ランはスピードで挑むが、ギュウヤはリンリンシーになりたての身体に慣れておらず、退却した。

 焦るジャンだが、それでもマスター・シャーフーは、雑巾掛けを命じる。その雑巾にはウェイトが仕込まれていた。修行の最中に破れた雑巾を、美希に取り替えてもらったジャンは、すっかりやる気を無くしていたが、美希から「マスター・シャーフーの修行メニューは最高よ」と激励される。「修行して勝つ!」ジャンは闘士を燃やして修行を再開した。

 再び現れたギュウヤに、ランとレツが立ち向かう。卑怯な戦法で戦いを有利に進めるギュウヤの前に、ジャンが登場。ジャンは「そうじ力」を最大限に発揮し、その超パワーでギュウヤに勝利した。

 ギュウヤは巨大化、ゲキレンジャーはゲキトージャで対抗する。パワーに加え、スピードでゲキトージャを圧倒するギュウヤだったが、ゲキトージャは3人のテクニック・スピード・パワーを体現。大頑頑脚でギュウヤを粉砕した。その頃、臨獣殿には「五毒拳」と呼ばれる5人の拳士が招聘されていた。

 戦いの後、ランとレツもかつては「そうじ力」を鍛えていたことを知るジャン。その様子はVTRにしっかり収められており、ジャンはそれを見て大いに笑うのだった。

監督・脚本
監督
渡辺勝也
脚本
横手美智子
解説

 話数の数え方を「修行その○」としているだけあり、修行を一つずつ達成する様が痛快。今回は何と雑巾掛けという、何とも地味な修行だ。

 掃除は、禅寺などの描写でポピュラーな「修行」だが、主に精神面が重視される。しかしながら、このエピソードでは、何とウェイト入りの雑巾を使ってパワーアップを図るという、肉体面の修行を重視。この辺りの楽しさ、分かりやすさは折り紙付きである。

 雑巾に、わざわざウェイト用のポケットが用意されているなど、楽しい描写が満載。美希やランが重そうに持ち上げる雑巾を、ジャンやマスター・シャーフーがいとも簡単に(普通の雑巾のように)片手で持ってしまうあたりで、この2人のパワフルさがさり気なく表現されているのもポイントだ。

 今回初めて、「試しの房」が登場。この「試しの房」がいわゆる「怪人製造マシーン」に当たるわけだが、リンシーの覆面が取れて、額のエンブレムが現れるというプロセスは、これまでのシリーズにない斬新なアイデアだ。

 その「試しの房」をくぐり抜けたギュウヤは、マキリカとはうって変わって、パワー重視のキャラクターとして登場。「パワー対パワーでは相性が悪い」というランの言葉は、最初のバトルの際に、スピードやテクニックによってギュウヤが翻弄される様子を踏まえてのもので、アクションとセリフとの調和が取れていることに、特に注目しておきたい。

 そして、属性の相性の悪さを打ち破るほどの「そうじ力」が、実に痛快だ。パワー対パワーの相性が悪ければ、相手を上回るパワーを発揮すればよいという、あまりにも潔い論理は、ジャンのキャラクターにピッタリ。さらには、心技体がそれぞれ別の要素を学ぶ前に、ジャンは、ランとレツのレベルに達する必要があるという意味も内包しているようだ。

 3人の名乗りが、マスター・シャーフーによって与えられたものであることも判明。「アンブレイカブル・ボディ」という、3人の中でも特に難しいタームを、よくぞ覚えたものだとジャンに拍手しておかなければならない。やはりジャンの潜在的な知的能力自体は、かなり高いレベルということになろうか。

 今回のゲキトージャ対ギュウヤ戦では、アッと驚くようなミニチュアワークに溜息。オープン撮影や合成、スタジオ撮影を取り混ぜ、実景かと思わせるようなカットから、マンガ的な楽しいカットまでサービス満点の出来栄えである。特にアオリのカットが秀逸。信号機をファイト開始のゴングに見立てるのも楽しい演出だ。