その6「ジュワーン!って、何?」

 モリヤは敗れたカデムを大いに馬鹿にした。メレはモリヤが秘伝リンギ・魔毒の使い手なのか、量りかねていた。

 スクラッチに画商・ピエール藤代が現れ、レツを「深見先生」と呼んで探しに来た。レツは屋上で絵を描いていた。レツの絵を欲しがる藤代に、レツは「未完成です。まだ、足りないんだ」と言って固辞した。

 モリヤがビル街に現れた。ジャン達は早速駆けつけるが、自在にビル壁を歩き回るモリヤに翻弄される。「この素晴らしい技にかなうヤツはいない」と言うモリヤ。レツはその言葉に奮起し、モリヤの足を捕らえる。モリヤを叩き落すチャンスだったが、レツはあくまで「モリヤの世界」で勝負することにこだわった。モリヤは余裕を見せ、去ってしまう。

 マスター・シャーフーは、修行としてビルの窓拭きを命じた。レツは早速窓拭きでビル壁を制する修行を始めた。ランは、「レツはもっと高いところを見ている」とジャンに教える。その頃、モリヤの元に理央が現れ、「ゲキブルーがあいつの弟ならば、面倒な相手になる」と言い、とどめを刺すよう命じていた。

 藤代は大金を持ってレツの元に来るが、レツは「あの絵には感動が足りない」とし、やはり絵を売ることを断る。レツはかつて高い評価を受けた画家であった。レツの兄は激獣拳の使い手であったが、他界。レツはマスター・シャーフーに「激獣拳の感動に触れてみたい」と言い、弟子入りしたのだ。モリヤの気配に、レツは絶対の自信を見せた。

 モリヤとレツの、ビル壁での戦いが始まった。レツは窓拭きで養った優秀なバランス感覚を以って、モリヤを完全に翻弄した。「勝つ決め手は、人を感動させることさ!」レツはモリヤに勝利した。

 一敗地にまみれたモリヤは巨大化。ゲキレンジャーもゲキトージャとなって対抗した。モリヤは、腕を切り離す秘伝リンギ「速生腕」でゲキトージャを翻弄するが、レツは既に「感動のない技」を見切っていた。ゲキトージャは見事勝利。メレは大したことのないモリヤの実力にお冠だ。

 レツは絵に大輪の花を描いて完成させた。藤代は、なおもレツの絵に固執している。レツの修行は続く…。

監督・脚本
監督
竹本昇
脚本
横手美智子
解説

 画家だったという、初回からはまるで想像の付かない経歴が印象的なレツ編。また、レツの「ファンタスティック・テクニック」が非常にウマい形で表現された、完成度の高いアクション編でもある。

 モリヤのバトルフィールドの特殊性故に、今回レツ以外の2人には、あまり活躍の場が与えられない。レツ編ならではの、レツ独壇場という、凄い設定だ。

 モリヤの壁歩きは、カット割や合成、アングルで見事に成立した自然な描写。対するゲキブルーの「壁歩き」は、重力の影響下にあることを充分意識した上で、体術を駆使したスタイルで描写され、驚嘆に値する美しいアクションを見せている。メレが思わず見とれたのも納得、だ。ファンタスティックなアクションとは、こういうものを言うのだろう。

 レツの過去は、画家であること以外にも断片的に語られる。まず、理央の口から「ヤツの弟」という言葉が出てくる。つまり、レツの兄は理央の知る人物であり、理央は激獣拳をレツの兄と共に学んでいたかも知れないわけだ。また、その兄が既に他界していることも、レツの回想から判明する。「復讐」というタームも飛び出し、理央とレツの因縁めいたものが、ここから読み取れはしないだろうか。

 ピエール藤代の存在は、レツの「絵画」のアーティストの側面を浮き彫りにする者。モリヤは、レツの「技」のアーティストの側面を浮き彫りにする者だ。両者の「胡散臭さ」が共通しているのは、偶然ではあるまい。ただし、ピエール藤代は悪人ではなく、物語のコミカルな部分を担うキャラクターである。それだけ、今回の本来の雰囲気は重いものであった。それに同調するかのように、臨獣殿側にも、何となく不穏な空気が流れ始めた。

 レツの画家としてのセンスは、「ルネ・マグリット」風。不可思議な空間を描き出す絵画の数々は、このエピソードだけで披露されるには惜しい完成度であった。なお、個展のレツの紹介パネルは、雰囲気満点でちょっと笑える。