その21「ビキビキビキビキ!カゲキに過激気」

 過激気習得に至らぬまま、約束の時を早めた理央の待つ場に向かうジャン、ラン、レツの3人。ジャンは一人、何のために戦うのかを考えていた。拳聖ゴリー・イェンの言う戦いの意味の問いかけが、ジャンの胸中を巡る。その頃、カタとラゲクは街を破壊し、人々の絶望と悲鳴によって理央の戦いを彩ろうとしていた。

 遂に理央との再戦が始まる。だが過激気を見出せないゲキレンジャーは、やはり理央の強力な力に翻弄され、次々と倒れていく。理央はマスター・シャーフーの「何故戦うのか」という問いに対し、「それが俺の道だからだ。内なる声が力を求め続ける限り、勝ち続ける」と答えた。シャーフーはそれが理央の恐れの現れだとし、「孤独なひな鳥のようじゃ」と告げる。激昂した理央はランとレツをいたぶり、殺そうと攻撃を開始。ジャンは未だ戦いの意味を見出せずにいたが、倒れたランとレツ、そして街の人々の悲鳴を感じ取り、立ち上がる。「守りたいからだ。みんなを守る。守りたい! だから、俺は戦うんだ!」ジャンは過激気を発現させた。スーパーゲキクローを取り出したゲキレッドは、スーパー・ビースト・オンでスーパーゲキレッドとなった。スーパーゲキレッドの凄まじい過激気は、破壊された街を元に戻し、理央に突進、突き一発で吹き飛ばしてしまった。「守りたい」という気持ちによって、ランとレツも過激気を発現、スーパーゲキイエロー、スーパーゲキブルーとなった。

 ブトカ、ワガタクも加わり、スーパーゲキレンジャー達の総力戦が開始される。過激気を身につけ、スーパーゲキレンジャーとなった3人は、相手に反撃の暇を与えることなく、次々と強力な技を炸裂させた。敗れた理央は地に倒れ付す。なおも立ち上がろうとする理央を心配するメレは、理央を抑え、カタとラゲクに助けを求める。カタとラゲクはブトカとワガタクを復活、巨大化させた。

 過激気により、ジャンはゲキゴリラ、ランはゲキペンギン、レツはゲキガゼルを実体化させる。さらに、ゲキタイガー、ゲキチーター、ゲキジャガー、ゲキエレファント、ゲキバット、ゲキシャークも召還。ブトカとワガタクを一気に破壊した。しかし、ブトカにワガタクの臨気が集合、2人分の臨気を宿してブトカが復活する。美希やマスター・トライアングルのアドバイスを受け、ゲキゴリラ、ゲキペンギン、ゲキガゼルを獣拳合体させるゲキレンジャー。ゲキファイアーの誕生だ。ゲキファイアーは自慢の拳でブトカを圧倒、凄まじいパワーで一気に粉砕した。メレは戦いを見つめる理央のおののきを感じていた。

 戦いが終わり、岐路に着くジャン達を目にした理央は、ジャンを「白虎の男に連なる者」と称した。理央は「次は潰す」と宣言し、ジャン達の前から去るのだった。

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
横手美智子
解説

 新要素満載のパワーアップ編にして、ゲキレンジャー大逆転のエピソード。敗北、修行、勝利のパターンを繰り返し、その度にカタルシスを発露させてきたゲキレンジャーだが、今回のカタルシスは従来のものとは格が違う。前半の再戦による再度の敗北、後半の大逆転と、カタルシスに至る王道パターンを見事に取り入れつつも、圧倒的なテンポとキャスト陣の熱演、そしてまさに「カゲキな」ド派手演出によって、文字通り画面から常に「ビキビキビキビキ」という迫力が伝わってくる。

 前半の展開は、焦りを感じた(ようにしか見えない)理央が、予定を早めてゲキレンジャーとの再戦に臨むというもの。この部分は前々回にて展開された理央優勢の死闘とほぼ同じであり、過激気を発現できないジャン達3人が、圧倒的に強い理央に対して手も足も出ない。前々回の展開を繰り返しているのは冗長だとも言えるが、後半のカタルシスに対する周到な仕掛けであることに気付けば、必要不可欠な「苦戦」だ。何しろ、本エピソードにおいて、過激気は突如発現するのであり、修行のプロセスはとうに終えているのである。冒頭でいきなり過激気を発言させ、理央を叩きのめす様を30分間描くのでは、どちらが正義か分からなくなってしまうだろう。

 この前半部でも実に見所は多い。これまで臨獣殿の連中は(理央も含めて)気まぐれな者が多く、ゲキレンジャーが生命の危機に瀕するという感覚には乏しかった。ところが、今回はランもレツも理央によって絶命寸前にまで追い込まれる。スーツが解けた後の苦悶の表情は、演技力の向上が手に取るように分かり、説得力抜群だ。また、理央も決して手を抜いているのではなく、臨獣ジェリー拳や飛翔拳を用い、新たな技を披露するなど、臨獣拳の拳士としてのプライドを賭けている点も凄い。この切迫感のさなか、ジャンが戦いの意味を見出すという展開は、既視感こそ否めないが非常に熱くて良い。これまでは、ただ臨獣拳に対する敗北の悔しさを払拭する為に強さを追及してきた感のあるジャン。それは純朴なパワーの希求だったのだろう。今回において、「守りたいから戦う(このテーマは、「仮面ライダークウガ」以来、あらゆる場所で繰り返されすぎ、既に魅力がスポイルされている感はあるが)」という目的を見出したことで、やっと漢堂ジャンは正義のヒーローとなったのだ。それを表現するかのように、過激気を習得してからのジャンの声は、意図的な演出か否かは量りかねるが、若干押さえ気味のトーンになっている。

 前半部では、他にカタとラゲクの都市破壊シーンが見られる。このシーンでは、かなりのけが人(場合によっては命を落とした人も?)が描写され、近年では少々珍しいショッキングなシーンとなった。ただし、美希はともかくとして、マスター・トライアングルがモニターを凝視したまま、破壊活動を見て焦っているという、珍妙なシーンを生み出してもいる。確かにジャンのほとばしる過激気によって、街は元に戻るのだが、苦悶する民衆を前に何もしないというのは、「獣拳不闘の誓い」だけでは説明不足であろう。しかしながら、このシーンが、ジャンの「守りたい」という戦いの意義のきっかけになっているのは間違いなく、上級キャラクターの処理の難しさが垣間見られる一編だ。

 後半はカタルシスに次ぐカタルシス。矢継ぎ早、怒涛、息もつかせぬ、あらゆる形容を許容する贅沢な構成だ。

 スーパーゲキレンジャーの、いかにもパワーアップしたデザインの分かり易さ、過激気の余剰が排気ダクトから噴き出すという演出の派手さ、どれをとってもダイレクトなカッコ良さに溢れ、「マジンガーZ」から連なる、いわゆる「パワーアップ競争」の爽快感が、未だ古さを失わないことを証明している。さらに、このスーパーゲキレンジャー大逆転劇の爽快さは、理央にも要因を求められる。前半の自信に満ち溢れた理央が、スーパーゲキレッドとなったジャンの攻撃全てをかわすことすらできず、文字通り一敗地にまみれる。この「堕ち行く感覚」がまさに鳥肌モノであり、臨気凱装が解けた後の表情を見るにつけ、大映ドラマのクライマックスかと思えるような感覚に陥る。これが単なる悪役であれば、極めてノーマルな感動に落ち着くのだが、そうはならない。理央はやはりゲキレンジャーと等価の存在なのだと、改めて感じ入るのだ。先に「大映ドラマの~」としたが、これは「鼻持ちならないヤツに、圧倒的な力で仕返しする」というシチュエーションに近い。そのシチュエーションでは、大方のパターンにおいて「鼻持ちならないヤツ」に情感的な描写が見られるのだが、今回理央にも「おののき」というその感覚が導入されている。

 クライマックスは、ゲキゴリラ、ゲキペンギン、ゲキガゼル、そしてそれらが合体したゲキファイアーの登場である。既存のゲキビーストも飛び出し、9体ものゲキビーストが暴れまわる様は圧巻。ゲキファイアーの「とにかく力」といった面を強調した描かれ方も凄い。あれほど拳の力を強調する演出は新鮮である。

 このように、終始圧巻の画面を見せてくれる本エピソードだが、ジャンの精神性に依存しすぎた故の「過激気の習得=限界突破」という図式の弱さ、ランとレツの唐突な過激気習得、拳聖とゲキレンジャーのパワーバランスへの疑問など、弱点も散見される。あえて好意的に解釈するとすれば、3人は三山戦で既に素養的な限界は突破しており、後は精神性の問題に帰結していたのではないか、ジャンの過激気発現が、ランとレツの導火線に点火したのてはないか、拳聖は過激気という要素を除いてあまりある老練たる技量を有しているのではないか、などとすることができる。