その35「ギュオンギュオン!獣力開花」

 理央は、その眠っていた能力の開花を、戦いで確かめようとする。早速マクに戦いを挑む理央は、マクの拳を片手で止めてみせる。マクは激臨の大乱を終結させると宣言。理央に、自分に並ぶことを不遜だと思い知るよう戒めた。残されたラゲクは理央にかつてのマクの姿を重ねる。ラゲクは理央とメレに「ある事件」のビジョンを見せた。

 それは、シャーフーの元へ怒りを募らせたマクがやってくる光景だった。実は、ブルーサ・イーが後継者に選んだのはシャーフーであったが、シャーフーは実力で勝るマクを推薦したのだ。マクはそれを侮辱だととらえ、シャーフーに対して怒りをぶつけてきたのである。マクはこの時から、自分より強い者の存在を認めない男となり、臨獣殿を打ち立てたのだ。ラゲクはマクこそが最強であり、理央にマクを倒すことは不可能だと告げる。

 拳聖たちの鼓動は弱まり始めていた。このままでは拳聖たちの命が危ない。美希は「新しいページに書き込むのはあなた達自身」と告げ、レツをはじめ獣力開花に疑問を抱くゲキレンジャー達を諭した。マクを倒すことが拳聖を救う道だと信じ、ゲキレンジャーは戦うことを決意する。

 怒臨気で興奮状態になったリンシーたちが大挙して暴れる中、ラン、レツ、ゴウ、ケンの4人は必死で人々を守るために戦う。ジャンは一人、凄まじい「ゾワンギ・ゾワンゴ」を追った。最強であるマクを求めて辿り着いた先には、理央が居た。ジャンはスーパーゲキレッドとなって理央と戦い始める。獣力開花を果たした二人の力は互角。理央は「マクを倒せ」と言い、新しい大乱の幕開けがやって来ると告げる。ジャンは、マクに苦戦している4人に合流した。

 一人獣力開花の手応えを感じているジャンは、無類の強さを発揮し、サイブレードを受け取って過激気研鑽まで果たしてしまう。一撃を加えられ怒るマクは猛攻を仕掛けるものの、なおもジャンに押され、遂にサイブレードで身体を貫かれる。ラン、レツ、ゴウ、ケンに「ギュオンギュオン」と唸る力を感じろと言うジャン。その言葉を聞いて獣力開花を自覚し始めた4人は、ジャンに続く。そして激気合一により、遂にマクを一敗地にまみれさせた。マクは頂に在り続けるべく、巨大化を果たす。

 「臨獣拳はどうなってしまうの」と胸騒ぎを感じるラゲクの後ろに、「終わるのですよ」とロンが立つ。ロンは拳魔の役目の終わり、即ち理央の修行の終わりを告げ、金色に輝く竜の獣人態となった。ラゲクはその姿に恐れおののく。ロンは一撃でラゲクの命を絶ち、理央が登るのは「残るは未踏の頂」だと呟いた。

 巨大戦へと展開したマク対ゲキレンジャーの戦い。理央はマクの最期を見定めるのが務めだとメレに告げ、巨大戦を見守る。サイダイン登場で形成を逆転したゲキレンジャーは、ゲキゴリラ、ゲキペンギン、ゲキガゼル、ゲキウルフ、サイダインを合体させ、サイダイゲキファイアーを完成させた。仁王立ちで受けんとするマクを吹っ飛ばすサイダイゲキファイアー。マクは己の力の喪失に疑念を抱きつつ、爆発四散した。同時に拳聖たちは元に戻ることが出来た。ジャンは理央との新しい大乱の始まりを予感していた。

 臨獣殿に戻ってきた理央とメレの前に、ロンが現れる。人を超えた理央に、獣を超える幻獣拳の存在を示すロン。理央は「新たな時代が来る」と宣言した!

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
横手美智子
解説

 ゲキレンジャー、そして理央メレが獣力開花を果たしていく激動編。拳魔たちの終焉により、臨獣拳そのものが瓦解するというショッキングな展開をも示す。さらに、新勢力である幻獣拳が登場。ロンの正体と併せ、1話にして勢力図を塗り替える事態となった。

 今回のメインテーマは獣力開花である。獣力開花はブルーサ・イーの激気魂によって、発展途上の獣拳の使い手にもたらされるものであり、このことは新旧の世代交代の様相を強く押し出すものとして扱われている。拳聖達は慟哭丸で動けない状態のままであり、マクに抗う者はゲキレンジャーしかいない。一方の理央は、マクの拳を片手で止めるほどの実力を得るに至る。そして拳魔たちは次々と倒れ、最早理央とメレの上に立つとされる者は、臨獣殿にいなくなってしまうのだ。

 この獣力開花、すぐに実感できるものではないらしい。レツは彼らしくまず疑問を抱き、ランは「前向きに解釈しようと」試みる。ゴウはとにかくマクを倒すしかないという切迫感から行動しようとし、ケンに至っては獣力開花が意に介さないかのように振舞っている。

 一人だけ異なるのはジャンである。ジャンは、各局面を鋭敏な感覚によって切り抜けてきた経歴がある。今回もその鋭敏で純粋な感覚は健在で、獣力開花を逸早く自覚した。正に「考えるな、感じろ」だ。理央が強さをひたすら欲する者ならば、ジャンは強さにひたすらワクワクする者だ。激獣拳の本質が、ジャンの言葉で「ニキニキ」「ワキワキ」だとすれば、ジャンは激獣拳の本質に一番近い人物だと言えよう。

 それは、かつてシャーフーがマスター・ブルーサの後継者に選ばれていたことにオーバーラップする。シャーフーは「強さ」という属性に欲を持たない人物だ。一方のマクは、「強さ」という属性にとり憑かれた人物である。これはそのままジャンと理央に重なる。シャーフーとマクの齟齬によって起こされた激臨の大乱。今度はジャンと理央が中心となり、大乱の幕開けとするのだろうか。

 ジャンの強さは、理央戦で「まだまだ行ける」と自覚し、マク戦で大いに発揮される。理央との対戦では、これまでのような一方的な闘いにはならず、あくまで互角の拳士の試し合いといった趣。この構図は実にカッコいい。マク打倒の為に共闘かと思われたが、意外にも理央はジャンにマク打倒を託す形をとる。理央は拳魔たちを疎ましく思ってはいたが、マスターであるという気持ちは持っていたようだ。自らが手を下すのではなく、自らと互角の力を有するジャン、そしてゲキレンジャーたち激獣拳にマクを打倒させ、マクに一種の礼儀を果たしたのだと考えられる。ジャンのマク戦では、過激気を研鑽するなど(ケンの立場は…という言葉が一瞬頭をよぎるが)獣力開花による強さの覚醒を存分に発揮。かつて過激気によって理央を圧倒した時のようなカタルシスを生む。

 ゲキレンジャーというシリーズの特徴に、メンバー1人が何かに目覚めたら、瞬く間に他のメンバーに波及するというものがある。これは一人一人の覚醒を丹念に描くよりも、スピード感のある展開を可能とすべく用意されたものだろう。だが、常に唐突感は否めない。今回もまたしかりで、ジャンが「ギュオンギュオン」を感じないかと問うだけで、他のメンバーが獣力開花を自覚してしまう。しかも、今回はセリフだけで説明されてしまい、唐突感の上に唐突感を積み重ねてしまった。獣力開花が(美希の「10ページのノート」という説明に象徴されるように)掴み所のない「概念」のようであるが故、映像化が困難であったのは理解できるが、最高に盛り上がる場面に水を差すようなシーンになってしまったのは否定できないところだ。その後、それぞれ個人の強さが発揮されるならばまだしも、直後にゲキバズーカをはじめとした「激気合一」で済ませてしまったのも、唐突感を盛り上げてしまっている。他のシーンがそれなりの緊張感を際立たせているだけに、落差による脱力感を喚起させてしまい、実に残念だ。

 巨大戦では、サイダイゲキファイアーが登場。派手なビジュアルが非常にカッコ良く、迫力も十分なのだが、残念ながらこの登場を手放しで褒めることができない。それはこの形態が獣力開花の末に誕生したものなのか否かが今一つ不明だからだ。「俺たちギュオンギュオンだ!」とジャンが言ってはいるものの、他のメンバーがノって来ない。純粋に「合体」していないのも原因だろう。パワーインフレをうまく作品に取り込むには、それ相応の説明も重要であることが、何となく露呈してしまったようだ。

 マクの死は、カタの死ほどショッキングではなく、むしろ「超えられた者の無念の咆哮」といった趣で、案外カッコ良く処理されている。それよりもショッキングなのはラゲクの突然の死だ。ロンがその正体(獣人態)を現し、ラゲクがそれに恐れおののく姿もさることながら、一撃で水飛沫と化して消滅するという呆気ない最期も衝撃的だった。ケンに一度敗れているラゲクが、ゲキレンジャーに勝ることはないものの、今後の動向には注目していたのだが、ここまで簡単にリストラされてしまうとは。ただ、幻獣拳の強力無比なパワーを表現するに、格好の場面ではあった。ロンの派手ながらスタイリッシュな獣人態も、臨獣拳とは一味違う。幻獣拳の衝撃的デビューは、このラゲクの最期という瞬間に果たされたのだ。

 エピローグには、理央とロンの対面が用意された。ここまで来ると意外な感じもするが、理央にとってロンは初顔である。幻獣拳の存在についても語られ(勿論破格のテロップ付)、理央とメレが次なるステージに立ったことが示される。ロンは影では「理央」と呼び捨て、理央の前では「理央様」と呼んでいるため真意を量りかねるが、少なくとも理央とメレが幻獣拳の使い手になっていくことは疑いようもない。

 この第三勢力台頭の様子、何となく既視感を感じていたが、「仮面ライダーストロンガー」のブラックサタンとデルザー軍団の交代劇に良く似ている。デルザーの軍師であるシャドウがブラックサタンをかき回し、ストロンガーにこれを滅ぼさせることでデルザーが台頭してくるのだ。このシャドウにあたるのがロンである。ただし、このケースと明らかに異なるのは理央メレの存在。ロンは理央を立てることで幻獣拳の覇権を打ち立てようとしている(ように見える)。果たして、幻獣拳の行き先やいかに…?