その36「ムキュムキュ!怪盗三姉妹」

 スクラッチでは、サイダイオーの分析と共に、ケンが操獣刀の使い手に相応しいかどうかが議論されていた。といっても、それは中華を食べつつの談義程度のものだったが…。

 一方その頃、レツはシャッキーの引越しの手伝いをしていた。エレハンの住まいにシャッキーが引っ越してくるのだ。その最中に見つけた時価20億円のダイヤ。それはエレハンが香港のセレブにプレゼントされたものだという。そのダイヤを、ローズ、リリー、チェリーの「怪盗花吹雪三姉妹」が盗み出したから大変。レツはその騒動の最中、命の危機にさらされるが、間一髪チェリーに助けられる。しかし、ダイヤはまんまと盗まれてしまった。

 リンシーの落ちこぼれが頭首の間へやって来た。リンリンシーになりたいとメレにアピールする落ちこぼれリンシー。メレはそんな落ちこぼれリンシーに賄賂を要求する。「賄賂」を探して街に出た落ちこぼれリンシーは、偶然「怪盗花吹雪三姉妹」に遭遇。ダイヤを奪おうとする。そこへレツ、エレハン、シャッキーが登場。レツは三姉妹を襲うリンシーを華麗な技で撃退した。エレハンは三姉妹の持つダイヤを見て喜ぶ。三姉妹は怪盗であることを隠して必死に誤魔化したが、結局ダイヤはエレハンの手に。

 ダイヤを取り返したい三姉妹はレツ達3人を酒宴に招く。三姉妹はあの手この手でダイヤを手に入れようと奮闘するが、どれも空振りに終わる。長女のローズは一計を案じ、強力な酒で3人を酔わせることにした。計略どおり酔いつぶれる3人。「美しいものを美しく奪う」という流儀に反するとして、三女のチェリーは姉たちのやり方に疑問を呈した。レツを連れ出してダイヤを返すチェリーは、レツの美しい技を見て感激していたのだ。レツの技の美しさは盗めない。チェリーは盗みをやめるとレツに宣言する。

 しかし、姉たちが許すはずもない。ローズとリリーの二人はレツに襲い掛かった。だが、完全に酒のまわったレツは酔拳で反撃を開始。チェリーは益々レツの技の美しさに見惚れるのだった。

 その隙にブトカの外装を被った落ちこぼれリンシーがダイヤを奪う。「賄賂」を受け取ったメレは、無限烈破でリンシーを強くしようとするが、ツボを間違えて巨大化させてしまう。巨大な「ブトカ」を察知したジャンの言葉を受け、ケンは現場に急行する。ケンは操獣刀の所有権を巡って散々からかわれており、頭に血が上っているのだ。サイダイオーで猛攻に告ぐ猛攻を加えるケン。落ちこぼれリンシーはケンの暴走の前にあえなく四散してしまった。チェリーはレツに礼を言い、三姉妹は去っていった。

 ダイヤがガラス玉であったことに立腹したメレは、臨獣殿へと帰ってくる。そこにロンが、同胞であるサンヨを連れて戻ってきた。サンヨは棺を引き摺っており、その棺の中にもう一人の幻獣拳使いが眠っているという。ロン、メレ、サンヨ、そして棺の中の者の4人で「幻獣王」理央に仕えると、ロンは宣言する。

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
小林雄次
解説

 ゲキレンジャー、臨獣殿共にほぼお遊びに徹したエピソード。何故かゲキビーストの総集編的色合いも加味されている。構成要素の何もかもがてんでバラバラでかなりメチャクチャなのだが、勢いとノリで楽しめる作品である。

 冒頭、シャッキーが何故エレハンの処へ住むことになったのかは、「青鮫島からの通勤が大変」という言葉で説明されるが、この「通勤」に何の意味があるのかはよく分からない。しかも、何故か引越し主であるシャッキーの荷物ではなく、エレハンの荷物を整理しているように見えるという、これまたよく分からない場面より始まる(シャッキーの居場所を確保するために整理していると言えないこともないが)。エレハンは香港のセレブからダイヤをもらったと発言していたが、実は具体的な地名が登場するのは、TV本編では今回が初めてである。地理の曖昧さによって獣拳の分布図をわざと模糊していた目論見は、ここで一部が破られたことになる。小さいことだが、意外に重要なのではないだろうか。かの獣源郷ですら、国内外含めて一切場所が不明なのだ。

 続いて「怪盗花吹雪三姉妹」がエレハンのダイヤを盗みにやって来る。だが、最終のオチがガラス玉だったことを考え合わせると、「ラズベリーダイヤ」という名前が一人歩きしていることになり、少々不自然だ。「怪盗花吹雪三姉妹」は、その内2人(小野友紀、人見早苗両氏)がゲキレンジャーに参加しているスーツアクトレスの顔出しということで、コアなファンに向けられたいわゆるサービスであるが、コミカルな演技のウマさ(ここは流石と言える)、川村ゆきえ氏のチャーミングな雰囲気が見事に融合し、高いキャラクター性を発揮している。本エピソードの楽しい雰囲気は、正にこの3人が支えていると言っていいだろう。

 その中にあって、レツとエレハン、そしてシャッキーが合コンになだれ込むくだりは自然だ。三姉妹としては、「酒」と「色気」を武器にする必然性があるし、この一連のシーンは各キャラクターが特にコミカルなので非常に面白い。あざとい笑わせ方に走ることなく、焦る三姉妹と翻弄されるレツたちの対比で笑わせていて、なかなか上品だ。

 その後、ローズとリリーがレツに戦いを仕掛けるのは、レツが「酔拳」と「睡拳(?)」を披露する為だけが理由と思われるほど強引。ここまで来ると、既に強引だの破綻だのが些細なものに思えてくるほど麻痺しており、さほど気にならないのが凄い。演出のパワーだろう。アクション監督の石垣広文氏が「五星戦隊ダイレンジャー」で酔拳に類似した拳法の使い手・キリンレンジャーのスーツアクターを務めたことも関係しているのか、レツの酔拳は非常に完成度が高く、高木万平氏のしなやかな動きが見事に合致していた。そもそも酔拳が美しいものかという疑問もあるが(とは言え、前述のキリンレンジャーはスマートな優男だったが)、レツが披露することで美しさが納得できるものとして表現されているのは、驚嘆に値する。高木氏の努力の成果、ここに極まれりといったところだろう。

 レツ以外のメンバーは何をしていたかと言えば、ひたすら中華料理に舌鼓を打つという趣向。デザートに杏仁豆腐まで登場するこだわり振りだ。ジャンが前回のラストで神妙な面持ちをしていたことには一切触れられておらず、ひたすらケンを「からかう(とランは明言)」ことに終始していたが、これはこれで正解だろう。ここでは各ゲキビーストが紹介されているが、テンポも良く、総集編的な間延び感は一切感じられない。ラストのケンの暴走振りまで楽しく見せることに成功している。

 さて、そのコミカル具合は臨獣殿にも波及。コミカルな展開に邪魔(?)な理央は終始瞑想中。「落ちこぼれリンシー」とメレが中心となってドタバタと活躍する。リンリンシーになるには、試しの房を通過する必要があるのだが、何とメレの采配によっても決定できるということが判明。しかもメレの采配を得るには賄賂が必要ということも発覚。…と書いていて馬鹿馬鹿しくなるほど可笑しな設定を用意し、メレのコメディエンヌ振りを際立たせている。メレ(というより平田氏の演技)は、コメディでもシリアスでもその個性を際立たせていて素晴らしい。

 この落ちこぼれリンシーがダイヤ争奪に関わってくるのだが、(ケンの暴走振りが強烈故に)メレの手にダイヤが渡った時点で既にダイヤなどどうでも良いことになっている上、単なるガラス玉だったという、どうにも救いようのないオチが待っている。「理央に献上しようとしたら、ダイヤを素手で破壊される。幻獣王に相応しいパワーだ」ぐらいにまとめていけば良かったようにも思えるが…。

 ラストは、ロンが幻獣拳の使い手の一人であるサンヨを登場させ、理央を「幻獣王」と呼ぶという展開に。こちらはシリアスな雰囲気となっているため、異常なほど浮いている。しかしながら、幻獣拳の連中の獣人態は非常にカッコ良く、「魔法戦隊マジレンジャー」の冥府十二神を彷彿させる雰囲気だ。

 以上、スラップスティックなエピソードを長所短所織り交ぜて紐解いてみた。が、長所はシーン作り、短所はストーリーと言わざるを得ない印象となってしまった。