Mission 42「突撃!メガゾードの中へ」

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 正統派ヨーコ編。今回はメサイアカード編の中では出色の出来だと思います。文句なく面白かったです。

 エンターの思惑と、それに追随するエスケイプ、エンターの思惑を体現する大仕掛けのメタロイド、土壇場でメサイア自体の復活を思わせるどんでん返し...。ヴァグラス側の一体感が実に心地良く、ちょっと暖かみのある話を織り交ぜつつ、ゴーバスターズ側との攻防戦が目一杯描き切られていたと思います。

 ネガティヴな感情を利用されるという筋書きは、「仮面ライダーウィザード」との近似性を示しましたが、その後のポジティヴな感情すらもメサイア復活に利用されるという、なかなか気の利いたエクスキューズも用意されました。ゴーバスターズの活動が結果的にヴァグラスに利用されてしまう、初期のパターンを踏襲していて面白かったですね。

 異次元列車のアイディア自体は、それこそ「ウルトラQ」から登場しており、その後、印象的なものでは「ウルトラマン80」の傑作エピソードである「まぼろしの街」等があります。このテのエピソードはやがて、より取り回しの利くバスが好んで用いられるようになり、東映ヒーロー作品では百出といった感も。そして、異次元列車の究極である「仮面ライダー電王」へと結実します。

 今回は、異次元列車という意味合いを「ゴーバスターズに邪魔されにくい」という方面に振り切って、密室劇を成立させた上で、ヒロム達の攻略にもスポットを当て、「ゴーバスターズ」初期のスパイアクション的な側面を取り戻した感覚になっています。今回の「面白さ」はそこにあるのではないでしょうか。

 メサイアカード編で一旦「ゴーバスターズ」の抱えていた要素をリセットあるいは抑制し、定番の東映ヒーローモノを思わせる方向性を打ち出して来たものの、それが本シリーズの雰囲気と必ずしも合致せず、常に違和感の横溢が見られたわけです。今回は、初期編の「攻略」という要素を前面に打ち出した作風であり、やはりこの雰囲気こそが「ゴーバスターズ」に相応しいのではないと思わせます。

 ただ、それだけではないのが良い処で、その「良い処」が集約されたのは、今回のヨーコでしょう。

 最早、ヨーコはメンタルな弱点を克服していく必要のある少女ではなく、戦隊ヒロインとして完成された存在であり、それはメサイアカード編における主人公側の「路線変更」の結果です。しかし、それが面白味をスポイルしているかというと、全く以てそうではなく、むしろ頼れるヒロインとしての風格すら漂っていたのは特筆すべき点でしょう。

 密室の中で被害者の面々を励ます為に歌を歌う(しかも実に安定した歌唱力!)という、超古典的なヒーロー像に倣った行動を見せたにも関わらず、ヨーコなら有り得るという雰囲気に落ち着いているのは、ヨーコというキャラクターの方向性が、制作のベクトルと非常に巧く合致した結果。そして、「子供扱いしないで」と常に物申して来たヨーコが、ヒロム達に無用な心配を与えていないシーン(コーヒーでくつろいでいる処を陣に咎められる!)をわざわざ挿入して、既にヨーコに不安要素が皆無であるかのように描写されたわけで。

 ダメ押し的に巧いのは、前述のシーンで陣だけが焦っていて、陣がヨーコより遙かに年上である事をサラッと感じさせる演出と、メンタル面で遜色ないヨーコでも、自らの行動(エネルギー補給用のお菓子を配ってしまう)で後からピンチに陥ってしまうという、タクティクス面での弱さの露呈。特に後者は、往年の東映ヒーローにある「自己犠牲の美徳」をも思わせて好感。しかも、助けた者に助けられてピンチを打開するというカタルシスまで。こういう細かい部分の積み重ねが、今回の面白さに繋がっている事を実感しますね。

 さて、メガゾードのメタロイド化というアイディア自体はあまり新味を感じない上に、元々メガゾードとメタロイドの差異が感じられにくい質感なので、劇中にてセリフ等で説明されない限り、よく分からないわけですが、メタロイドならではの滑稽な言動(今回で言えば、車内アナウンスにこだわったセリフの数々)が良いアクセントになっています。

 最近は、巨大戦の革命を謳っている「ゴーバスターズ」にしては、従来の巨大戦に近い構成になっていたりと、やや満足度を落としていたように見受けられますが(それなりに毎回工夫があり、巨大戦がルーチンワークになっているわけではないので、単に視聴者側の「慣れ」の問題だとは思いますが)、今回はかなり見事だと思います。

 今回はそもそも「巨大なメタロイド」が相手なので、全編巨大戦に成り得る可能性もありましたが、それは例の「ロボットプロレス」で一度やっているので、今回は敢えてクライマックスに決着を持ってきたのでしょう。通常の等身大戦をアバンタイトルでやり、変則的な等身大戦を「車内」で展開し、ヒロムとリュウジの突入シーンを巨大戦とのコラボレーション(ゴーバスタービートの「梯子」を伝って突入するシーンがあまりにも素晴らしい)で見せるといった具合に、非常に変化に富んだ素晴らしいシーンを作り上げていました。

 他にも、エンターの秘密にヒロムが気付くシーンがあったり、エスケイプがメサイアの新型メガゾードを操縦したり、新要素が次々と登場。年末に向けた盛り上がりを仕掛けていて、期待を煽ります。煽るだけ煽っておいて、そうでもなかったというパターンに陥らない事を切に願います(笑)。

 次回は定番のクリスマス譚になりそうです。歴代戦隊でもかなりぶっ飛んだエピソードをぶつけてきたりするので、期待したい処ですね。