第16話「激突!戦隊VS戦隊」

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 怒涛の展開の後編。
 ですが、これまでのエピソードに比べると、あまり褒められた出来ではなかったような...。

 「笑顔が優しい外道」という言葉がピッタリな、素晴らしいキャラクター作りを評価出来るバスコでしたが、対抗するマーベラスがやや弱い。まぁ、マーベラスだけ突出して強力なキャラクターだと、五人揃ってゴーカイジャーという意義が薄れてしまうので仕方ないですが、それでもバスコとサシで勝負すると言った前半に比べると、ちょっと弱い感じは否めません。

 ただ、冒頭で述べた「褒められない」というのは、マーベラスの事ではなく、全体的に見渡してそういう感想を抱いたわけで、サブタイトルで煽りに煽っている割には、こじんまりと纏まってしまっているというか...。その、何だか煮え切らない感じだったんですよね。

 勿論、マーベラスと仲間の関係の特殊性とか、バスコのキャラクターの立ちっぷりとか、ザンギャック出てこなくても話が成立してしまうとか、興味深い点は沢山あり、相変わらずアクション面の完成度もすこぶる高いです。しかしながら、「ゴーカイジャー」というシリーズ自体の、これまでのテンションが半端無い感じだったので、ややトーンダウンしてしまったという感想を引っ込められなくなってしまいました。

 「ちょっとね」と思う部分は、見所とかなり絡みついているので、うまく解きほぐせるかどうか...。続きの方で試みてみます。

 今回は、マーベラスが四人の仲間をバスコに人質にされ、レンジャーキーとナビィ、ゴーカイガレオンを引き渡すよう要求されます。

 要するに、この状況をマーベラスがどう打開するかというのが見所で、実の処、マーベラス以外がどう動くかという部分は、あまり本筋とは関係ありません。

 いわゆる王道な展開で行くと、「耐えて待つんだ。きっとマーベラスが助けに来てくれる」という事になるのでしょうが、そこは一筋縄ではいかない海賊達。マーベラスに面倒をかけない(これが「借りを作らない」というイメージだと、もっとカッコ良かったんですが)とばかりに、あの手この手で脱出を試みます。これが実にコミカルかつサスペンスフルな展開になっていて、今回の大きな見所の一つになっています。

 しかし、その後の展開が壊れないよう、四人の脱出劇はバスコによって華麗に阻止されてしまう事に。

 ここに問題点が二つ潜んでいます。一つはメインのマーベラスを喰ってしまった事。

 メインのマーベラスをガンガン前に出してくる作風を期待していたのですが、脱出劇が非常に面白かった為に、マーベラスよりも四人が目立ってしまい、マーベラスに対する感情移入がしにくくなっています。前回では、マーベラスへの感情移入はなくて正解という論を持ち出しましたけど、今回はマーベラスのメンタルな部分に迫るようなシナリオだったので、感情移入を許す作風の方が相応しいと感じました。

 もう一つは、この脱出劇が簡単に阻止された事で、何となく時間稼ぎっぽく見えてしまった事。

 ハカセが猿の真似をしたり、ダクトを這い進んだりといった細かい部分が非常に良く出来ているので、最後の呆気無い見つかり方が拍子抜けの感を強くしてしまい、このくだりが蛇足に感じられるのが惜しいです。マーベラスの逆転劇への布石となるような何かが欲しかったのですが、私自身も巧い案が思いつかない...。

 いずれも、脱出劇をマーベラスのドラマと乖離させてしまっている要因なんですよね。もっと有機的な結びつきがあると良かったと思います。

 一方、マーベラス自身の見所としては、まず苦悩する様子が挙げられるでしょう。

 元来、マーベラスには「情」の部分が欠如しており、そこからどう変化していくのかがシリーズの縦糸であろう事は、想像に難くありません。今回は、仲間を如何にして助けだすか、そして、その際如何にバスコの要求に乗らないかという、マーベラスの考えるベストを達成する為の苦悩なのですが、そこに何となく仲間への情が入り込んでいるのが巧い処。

 その発露としては、大逆転劇の端緒となる、「レンジャーキーぶちまけ」が、言葉なき意思疎通を前提としていた事や、エピローグで、ゴーカイガレオンに戻ってきて「嫌ならすぐに出て行く」と悪態をつくルカ達に対し、「ありがとう」と聞こえないように呟く辺りが顕著。

 一見、「言葉なき意思疎通」は「情」と切り離せそうですが、彼等の信頼関係は情とは不可分だという印象があります。というのも、信頼関係は利害関係のみでも充分成立し得るものですが、これまでのエピソードから分かるように、利害関係を超えた部分で、充分「仲間」というキーワードを抱えて動いているし、クールな海賊戦隊も、仲間同士の結びつきは「熱い」という印象がある筈。短絡的に捉えれば、今回のマーベラスの苦悩は、情を発端としている事に、異論はないものと思います。

 よって、今回のマーベラスの「弱さ」は、情の明らかな発露によって、やや普通の戦隊ヒーローにシフトしたこと故の露呈だと言えるのではないでしょうか。そして、感情移入を許すキャラクターに変化している一方で、構成的に感情移入し難いキャラクターのままである事が、中途半端な印象を与えている気がします。

 他には、マーベラスが最初のレンジャーキーに出会い、そこでアカレッドとの出会いを果たす回想シーンが見所として挙げられます。

 最初のレンジャーキーが、アカレンジャーであったのも示唆に富んでいますが、まぁこれは、たとえばいきなりブルースワローのキーだったりすると意味が分からないので(笑)、いわゆる象徴としての処理と考えるのが妥当でしょう。これにより、マーベラスの運命が決定づけられるという感覚が漂うので、アカレンジャーのキーひとつだけがあるというのは、非常に巧いと思います。

 そして、アカレッドと対峙するわけですが、前回のマーベラスの印象とはやや異なり、アカレッドと出会う以前から、現在のマーベラスのキャラクターは固まっていた様子。前回は、赤き海賊団の終焉がマーベラスの現在の性格を形作ったと結論付けましたけれど、どうやら元々ああいう性格だったようです。ただ、アカレッドとの出会いは一旦マーベラスの性格を変化させ、赤き海賊団終焉と共に、また現在のマーベラスの性格に変化したと捉えるのもアリだと思います。

 ここで、バスコの方へ目を向けてみましょう。

 バスコのキャラクターはかなり立っていると思いますが、中途半端な面も見えます。例えば、ラッパラッターを使うばかりで、あまり前面に出て来ないとか、追加戦士のレンジャーキーを奪われたのに、あまりこだわらないとか。

 これは逆から見ると、自ら手を汚さない卑劣漢であるとか、手駒の一部(?)を奪われたくらいでは動じない余裕とか、そういった面を強調する結果にはなっているのですが、悪役にしては飄々とし過ぎているので、どうも憎めないキャラになってしまっている感がありますね。マーベラス同様、視聴者の強い感情の対象にならない為に、中途半端に見えてしまうのかも知れませんね。

 私が想像するに、バスコは、「六人目」のミスディレクションだったのではないでしょうか。

 予告で判明する通り、「六人目」のゴーカイシルバーは、全くの別人なわけですが、バスコのヒロイックな出で立ちやレンジャーキーへの知識の深さ、狡猾さ、マーベラスとの因縁等々、最初に敵として現れる「六人目」に相応しい風格を備えており、スーパー戦隊シリーズに慣れた視聴者ならば、何となく、バスコこそが追加戦士ではないかという感じを得た筈。で、それは見事に裏切られるわけであって、シリーズ構成的に一捻りしたかったのではないでしょうか。

 まぁ、この試み、雑誌等の事前情報が全く皆無であれば、概ね成功しているのではないかと思いますが(笑)。残念ながら、事前情報の収拾に余念のないファンにしてみると、中途半端な処理だったかも知れません。

 さて、恒例の豪快チェンジですが、今回も前回と同様に、追加戦士軍団との乱闘になる為、混乱を避けて披露されません。ただし、ハカセが脱出の端緒を作る為に、シンケングリーンへとチェンジしました。このシーン、マーベラスがぶちまけたレンジャーキーの中から、物凄く巧い具合にシンケングリーンをキャッチしてますが、実は殆どの戦隊ヒーローが切断系の武器または技を有しているので、実は何でもOK。でも、やっぱり斬るなら侍がいいね〜ハカセだからグリーンがいいね〜といった、軽いノリだったと思います(笑)。

 サブタイトル通りの戦隊VS戦隊の構図は、追加戦士軍団VSゴーカイジャーという構図だったので、豪快チェンジ入り乱れての大乱戦というより、巧妙に整理されたバトル(敵味方を容易に判別出来るという、あまりに計算されつくした凄いバトル)となり、アクションそのものの完成度はすこぶる高いのですが、何となく「お利口さん」というか、やっぱりこじんまりとしている感がありました。

 巨大戦は、まさかのバスコ繰り出すリキッドロイドによって展開。ザンギャックの介入なく巨大戦をやってしまったので、もはやザンギャックの存在意義すら危ういものになってしまいましたが(笑)、バスコの存在感を高めるには良かったのではないでしょうか。リキッドロイド自体は、CGを駆使した軟体描写が素晴らしかったですね。

 次回は、六人目がいよいよ登場です。予告で充分うるさい人物だという事が分かり、「シンケンジャー」の源太に近いキャラクター性を感じさせますが...。どう展開するのか期待が高まります。