第8話「スパイ小作戦」

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 こんな事を言っちゃうとナンですが...。

 先輩ゲスト編じゃない方が、面白くないかい(笑)?

 というくらい、今回は面白かったですね。

 ゴーカイジャーの当面の目的である、「全てのスーパー戦隊の力の入手」がザンギャックにバレるという展開は、見事に大河ストーリーの重要なトピックを担っているし、ほぼ全編がコミカルに運んでいくという展開は、見る者を飽きさせません。

 勿論、先輩ゲスト編も面白いですよ。先輩ゲスト編は、これまでのところ、スーパー戦隊シリーズ恒例のパワーアップ編のエッセンスを取り出し、先輩ゲストと絡ませる事で成立させている構造なので、シンプルでありながら「見た目」が豪華。だから、安心してみていられる上にワクワク出来るわけです。

 一方、先輩ゲストの登場が望めない「通常編」は、先輩ゲスト編に負けないよう、わざとハードルを上げているように見えます。

 したがって、マーベラス達の意外な一面や、各々の性格に起因する突飛な行動、シチュエーションコメディになるよう仕立てられた演出等々、あらゆる要素が盛り沢山状態で突っ込まれています。少なくとも、私にはそんな風に見えますね。

 今回は、シチュエーションコメディの要素が色濃く出ていて、実に楽しい見せ方を披露してくれました。

 続きの方で詳細に分析してみましょう。

 そうそう、今回の「スパイ小作戦」、往年のアメリカ発傑作ドラマ「スパイ大作戦」のパロディなのは一目瞭然なんですが、実はもしかして、クレヨンしんちゃんの劇場版に合わせていたりして...?


 今回がどのくらい特異かと言うと、ナビィを延々と探しているというシチュエーションが、CMまたぎになるくらい特異です。

 はっきり言うならば、このナビィ探しは、「占い」の前に繰り広げられる、マーベラス達の「ショートコント」と同種。今回は、その「意味のない」シチュエーションが延々と続くのです。

 しかし、それが「意味あるもの」となるのが、今回のこれまた特異な処。

 どの辺りが「意味あるもの」かと言えば、それはスニークブラザースのエルダーとの絡みで繰り広げられるドタバタ。ストーリーとしては、殆どと言って良い程、意味はありませんが、とにかくマーベラス達の個性を存分にあぶり出しています。

 そして重要なのは、エルダーを探してドタバタになるのではなく、あくまで気付かないままドタバタに見えるよう、巧妙に演出されている事。それは、エルダー視点で演出されているからで、エルダー周辺をウロウロするマーベラス達の個性あふれる言動が、見事にシチュエーションコメディの醍醐味を感じさせてくれます。

 この辺り、「ゴセイジャー」でスベっていたギャグ描写とはかなり差が付いています。思うに、海賊さん達は、元々面白い人が集まっているから、面白いのではないでしょうか。

 ここで、ザンギャックが把握している5人の経歴と、その面白い人振りを並べてみましょう。

 マーベラスは、「赤き海賊団」の生き残りである事が判明します。回想シーンは、以前のアカレッド登場シーンをそのまま用いたものですが、あのアカレッドは「赤き海賊団」の頭領的立場だったのかも知れませんね。

 マーベラスの面白さは、キャプテンの威厳を保ちつつ、結構お茶目な処です。常にマイペースで遊んでいるように見える処は、キャプテンの余裕であると共に、彼の「面白い事が好き」という面を表しているようです。したがって、「面白い事」の塊となるコミカルシーンに於いても、彼自身が主役になれるシチュエーションは多々あるわけです。

 ジョーは、何とかつてザンギャック特殊部隊の一員だった事が明らかに。5人の中でも戦闘能力が抜群で、どこか影を感じさせる(最近はそうでもなくなりましたが・笑)のは、そのような過去が影響しているようです。

 ジョーの面白い処は、容易に挙げられるでしょう。ジョーの本分は「ストイック」。新しい技能を手に入れる為なら訓練を厭わず、普段から常にトレーニングを欠かしていないのは、今回の一連のシーンでも明らかです。したがって、そのジョーのストイックさが、コメディの対象となります。今回も、いきなり腕立て伏せ10回分を追加でやりはじめたり、ことルーチンワークに関しては融通の効かない面を持っているようです。

 アイムは、ザンギャックに滅ぼされたファミーユ星の王女との事。言動からセレブリティな雰囲気が感じられていましたが、お嬢様どころではなく、お姫様だったわけです。

 アイムの場合は、お姫様だからこその面白さがあります。こういう類のキャラは、大抵一般庶民とのギャップで笑いをとるのですが、アイムもそういう面があり、しかもそれ一辺倒にならないよう、気を使われているようです。今回は、全般的にいたって真面目であり、暴走気味な他メンバーのブレーキ役を担っていました。戦闘になると、途端にお嬢様キャラから脱皮してしまうのも、面白いですね。

 ルカは、ザンギャックの武器倉庫から、最高純度のエナジークリスタルを盗み出したという過去が判明。非常にアグレッシヴなキャラとしての存在感は、「ゴーカイジャー」の中でもピカイチです。

 ルカの面白さは、やはりそのキャラクター性にあるでしょう。喜怒哀楽の表現が突出している為、あらゆるシチュエーションで目立つ事が出来ます。勿論、コメディにも欠かせない人物。特にツッコミをやらせたら抜群ですし、逆にキレ気味のボケも似合います。「ゴーカイジャー」は5人ともムードメーカーに成り得るキャラですが、ルカはハカセと共に突出しているのではないでしょうか。

 ハカセは、「こいつはまぁいいだろう」とザンギャックに評価されている人物。もうこの時点で笑えるのですが、もしかすると、無視されているだけに何か恐ろしい一面を持っているかも知れないと思わせる、ミステリアスな部分もあります。

 ハカセには、基本的にドジで小心者というキャラクターが与えられており、これはスーパー戦隊シリーズでも比較的珍しい立ち位置です。初期イエローキャラのように、ドジなキャラクターは割と散見されますが、小心者というのは極めて珍しいので、異彩を放っていますね。彼はキャラクターの成り立ちだけでコメディを演じる資格があるのです。

 まぁ、こんな感じでキャラクターを俯瞰してみましたが、それぞれが海賊を名乗るだけの重い過去を持っている一方、逆にコミカルな振る舞いが似合うという、多層的な造形がなされている事が分かりますね。故に、超シンプルなストーリーでも、キャラクターが立っているのだと思います。

 さて、今回の大きなトピックとして挙げられるのは、やっぱりスニークブラザースでしょう。エルダーに千葉繁さん、ヤンガーに檜山修之さん。この芸達者お二人の登板は、やはり嬉しいものがあります。

 思いっきり私事になってしまいますが、このお二人と言えば私の中では断然「ビーストウォーズ」なんですよ。「ビーストウォーズ」は音響監督の岩浪さんの指示で、アドリブ全開のコンテンツとなりましたが、ベテラン千葉繁さんのアドリブの凄まじさたるや、もはや伝説です。檜山さんは、途中「ビーストウォーズメタルス」からの参入でしたが、広島弁でローカルネタ等をまくし立てる強烈なキャラで、これまた凄まじかったわけです。

 もう今回はシビれましたね。こういう特撮TVドラマでは、割とアドリブの入る余地が少ないのではないかと思いますが、やけに楽しそうなアドリブ込みの掛け合いが聞こえてくると、やっぱり嬉しくなってしまいますよ。現場の演出陣の領分を尊重しつつ、細かいネタを入れて「より面白い物に仕上げる」というスピリット、これに尽きます。

 おっと、図らずも長くなってしまったので、恒例の豪快チェンジをまとめておきます。

 今回は、ガオレンジャーに続き、何とデンジマンとゴーグルファイブという、オールドファン感涙のセレクト。

 ガオレンジャーは、恐らく次回への「引き」として登場してものと思われます。つまり、力を手に入れる前のバトルを見せておくことで、差異を見せようという事でしょう。変身時に「牙吠」の文字がインサートされるなど、演出も抜かりありません。

 デンジマンは、チェンジの際にスーツ展開のエフェクトを踏襲していたのが高ポイント。そして、チェンジ後にマスクを押さえるポーズがさらなる高ポイントでした。デンジマンのデザインは、スーパー戦隊シリーズの基礎を築いたものであり、現在の目で見てもかなりハイブロウなデザインですよね。戦闘シーンには、デンジパンチをフィーチュア。両拳を打ち合わせて火花が散るとか、嬉しすぎます。完全に仮想空間内で戦っているような画面作りだったので、「デンジマン」独特の泥臭さが無かったのですが、こういう演出もアリですね。

 ちなみに、デンジパンチは、当時バンクフィルムがデンジレッドのものしか用意されていなかったので、レッド専用武器のイメージが強いですが、実際は5人共使用可能な武器です。

 そして、最後はゴーグルファイブ。チェンジの際にいきなり空中回転して現れてましたが、実際、オリジナルにも変身エフェクトが無かったので、あれはあれで正解なのです。変身エフェクトが本格化したのは、次作「ダイナマン」からであり、それまで目立ったエフェクトを有していたのは「ジャッカー」と「デンジマン」だけです(「サンバルカン」にもあるにはありましたが、ごく一部の話数にしか登場しません)。

 ゴーグルファイブといえば、新体操の技。今回は最も「見た目が面白い」武器である「ゴーグルリボン」を登場させ、その個性を発揮しています。

 ちなみに、ゴーカイジャーに戻った後、マーベラスが「ストップ・ザ・バトルだ」と発言していますが、これは「ゴーグルファイブ」のエンディングテーマが由来です。歌ネタはたまに登場するので気を抜けません(笑)。

 続いて他の小ネタを挙げておくと、ハカセが戦闘中に「ドレミファミレド」とやっていたのは、キレンジャーのキーステッカーへのオマージュじゃないか? とか、巨大戦が冒頭とクライマックスで二度あって珍しいとか、ゲスト編とそうでないエピソードで、オープニングのタイトルコール前の映像がちょっと違う事に、今更気づいたとか、そんな感じです。

 次回は、獅子走、もとい「獅子、走る」です。ガオレンジャーは、私自身、違和感を抱えながらも引きこまれたシリーズなので、楽しみです。