GP-01「正義ノミカタ」

 6ヶ月前。

 我々の住む世界とは異なる世界・マシンワールドでは、蛮機族ガイアークを追い詰める大捕物がいよいよ大詰めを迎えていた。炎神スピードルとバスオン、そしてベアールVは、ガイアークのケガレシア、ヨゴシュタイン、キタネイダスを追い詰め、マシンワールドから追い出すことに成功する。

 その半年後、日本。

 蛮機獣ショウキャクバンキが結婚式を襲う。そこに現れたのは、江角走輔、香坂連、楼山早輝の3人。3人はショウキャクバンキの放つウガッツ達をなぎ倒していく。3人は「正義ノミカタ」を名乗り、ゴーオンジャーに変身した。ゴーオンジャーはウガッツ達を次々と倒していく。その戦いを目撃する城範人と石原軍平。ショウキャクバンキはゴーオンジャー達の持つ炎神ソウルから聞こえる声と、その力にある確信を得た。そしてゴーオンジャー達の必殺技を逃れ、その姿を消す。

 戦いが終わって勝利を喜ぶ走輔達の元に軍平が現れ、その力をどうやって手に入れたかと問う。連と早輝はその場をはぐらかして去っていった。

 ガイアークの根城・ヘルガイユ宮殿では、ショウキャクバンキによってゴーオンジャーの存在と、それに炎神が関わっているということについて報告がなされていた。それを受け、早速ケガレシア、ヨゴシュタイン、キタネイダスの3人はショウキャクバンキを使って「ビックリウムエナジー」の実験を開始する。パワーアップしたショウキャクバンキは、街に有害な煤煙を撒き散らすべく出撃した。

 ボンパーの報告を受けた走輔達3人は、すぐに迎撃を開始。ゴーオンジャーはゴーオンギアを手に、ショウキャクバンキを追い詰めるが、蛮ドーマ軍の大群の襲撃を受ける。

 スピードルは自分たちの出番だと言い、ゴーオンジャーに炎神キャストを使うよう指示する。炎神ソウルが炎神キャストにセットされ、炎神達は巨大な元の姿に戻った。ゴーオンジャーは炎神達に乗り込み、蛮ドーマ軍を蹴散らしていく。

 蛮ドーマ軍が全滅した頃、ビックリウムエナジーの準備が終了し発動を果たしたショウキャクバンキは巨大化する。迎え撃つ炎神達は、エンジンオーへと合体した。エンジンオーとショウキャクバンキの巨大戦が開始される。ショウキャクバンキは連と早輝の機転によってその能力を封じられてしまい、チャンスをものにしたエンジンオーが、必殺技を放って勝利した。

 戦いが終わり一息つく走輔達の前に、範人、そしてまたも軍平が現れる。軍平は、いきなりゴーオンジャーに加入して手伝ってやろうと言い出す。範人もゴーオンジャーの力を手に入れたがっている様子だ。

 走輔達は2人から逃げるようにギンジロー号で走り去った。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 スピードル!

今回の連メモ

 「作戦終了確認は、慎重に」

監督・脚本
監督
渡辺勝也
脚本
武上純希
解説

 新戦隊「炎神戦隊ゴーオンジャー」開始!

 例年、前作の余韻冷めやらぬ中での新戦隊開始は、期待と不安が入り混じる中で迎えることとなるが、このゴーオンジャー、文字通り最初からぶっ飛ばしており、そのような複雑な感情を吹き飛ばすパワーを発散していた。

 第1話はパイロット作品の性格を持つことから、設定編でありつつも世界観と演出方針を明確に見せていかなければならないのだが、それはやはり長い歴史を誇るスーパー戦隊シリーズだけあって、高水準で達成されている。このあたりは、もはや安心して視聴できるレベルを確立しており、視聴者は新しい戦隊の「つかみ」に集中することが出来るのだ。

 「ゴーオンジャー」は、戦隊シリーズの中でも、かなり明快な勧善懲悪の構造を打ち出していると思われる。それは制作側より明言されているということもあるが、この第1話の印象からも充分に感じられることだ。初回のゴーオンジャー登場は3人で、そこに後にゴーオングリーンになる範人とゴーオンブラックになる軍平が絡んでくるという変則的な面はあるものの、それは初回より5人分のキャラクターを描き分けるより、3人分のキャラクターを描き分けて印象付けるという方針を採った結果だと思われる。また、ショウキャクバンキ以前にもガイアークとの戦闘経験があることを匂わせており、かなりの時間を要する結成譚を後回しにして完成されたヒーロー像を描くことに徹している。これは、「ゴーオンジャー」の基本情報となるガジェットや技、変身プロセス、キャラクター等をテンポ良く紹介していく手段としてはうってつけであるし、このシリーズに必要となるであろう疾走感を高める役割も果たしている。

 初回を見て最も印象的だったのは、ゴーオンジャーが「メット」を脱ぐことである。スーパー戦隊シリーズで明確に強化スーツを着込むという感覚を表現したのは「バトルフィーバーJ」の第1話が最初(背中のチャックを手で閉めている!)。その後、「超新星フラッシュマン」にて変身プロセスに「シャット・ゴーグル」という素顔のキャストを使ったバンクシーンが挿入され、「救急戦隊ゴーゴーファイブ」ではゴーグル内部を透過してキャストの顔を映すという演出が行われた。さらに「忍風戦隊ハリケンジャー」では、頻繁にマスク前部を開放するという演出が取り入れられている。だが、ゴーオンジャー達がメットだけを外した状態でスーツを着込む頻度は、第1話を見ただけでも群を抜いて多く、エンディングに至ってはその状態でダンスまで披露している。このメットを着脱すると言う設定は、レーサーのヘルメット着脱をイメージしているものと思われ、変身前後のシンクロ効果を高めている。ヘンな話、早輝のメットオフ状態にグッと来る男性諸氏は多い筈...。変身前にいきなりウガッツ達と素面アクションを繰り広げるところもポイントが高く、この作品に対する並々ならぬ意気込みを感じることが出来る。まだアクションや演技は固い印象だが、これからの主役陣の成長には大いに期待できるところだ。

 さて、炎神の設定は、「高速戦隊ターボレンジャー」を嚆矢とするビークル戦隊と、「恐竜戦隊ジュウレンジャー」を嚆矢とするファンタジー戦隊のハイブリッドである。ビークル戦隊は前述の「ターボレンジャー」を初め、徹底したギャグ路線が印象的な「激走戦隊カーレンジャー」は勿論、「轟轟戦隊ボウケンジャー」あたりも範疇に加えていいだろう。ビークル戦隊の特徴は、メンバーそれぞれが個性的な合体メカ=ビークルを操縦し、そのマスクデザインにビークルの意匠が落とし込まれること、車に関連したアイテムを持っていることなどが挙げられる。一方のファンタジー戦隊は、合体メカが生物あるいは精霊的な属性を持ち、ヒーローとの意思の疎通が可能であること、マスクデザインにそれらの意匠が落とし込まれること、科学とは乖離した神秘的な力がパワーソースであることなどが特徴で、「ジュウレンジャー」以降数年継続した後、近年では「魔法戦隊マジレンジャー」や前作「獣拳戦隊ゲキレンジャー」あたりを挙げることが出来る。

 先に挙げた「カーレンジャー」や「ゲキレンジャー」は、ファンタジーとサイエンスのエッセンスを微妙にミックスしており、「ゴーオンジャー」の設定に先んじるハイブリッド型であるとも言える。しかし、「ゴーオンジャー」の設定が真に新しいのは、ハイブリッドの度合いがフィフティ・フィフティだということだ。「カーレンジャー」のビークルには明確な意思が感じられず、ファンタジーの味はあくまでビークルの出所が「クルマジックパワー」という魔法だというスパイス的なものに過ぎない。一方、前作「ゲキレンジャー」は「気」が中核を成す物語で、テクノロジーは「気」を利用する為のちょっとしたガジェットであり、作品にリアリティを与える為の気の利いた要素に過ぎない。「ゴーオンジャー」は果敢にも、明確にコクピットの存在する明らかにメカの組成を持った「生命体」を持ってくることにより、ハイブリッド作品を成立させようとしている。近作の大作ヒット映画である「トランスフォーマー」や「カーズ」といった作品群を参考にしていることは想像に難くない。

 メカ生命体という要素だけで捉えると、サイエンス・フィクションに見られがちであるが、ファンタジーな味は「炎神ソウル」といった魂の存在が握っている。つまり、炎神達はメカの体とスピリチュアルな「ソウル」を分離可能な存在であり、この考え方が既にファンタジー寄りなのだ。しかも、炎神達は饒舌でキャラクターがはっきりとしており、「ドルドルドル~」「オンオン~」「ブイブイブイ~」とカートゥーンな喋り方をするのである。一方で、ゴーオンジャーの操るガジェットはカートリッジ(炎神ソウル)を駆使したいかにもメカニカルな遊びに溢れており、前述の「メットオン/オフ」もリアリティを高めるのに一役買っている。この徹底振りと絶妙なバランス感覚には、私など甚だ恐れ入ってしまったのだ。

 ところで、一方のガイアークにも注目しなければならない。

 蛮機族ガイアークは、近年の戦隊にはない単純明快な悪役ぶりが光る。前作「ゲキレンジャー」では悪役自身が重いドラマを背負った主人公的扱いであり、前々作「ボウケンジャー」では、敵組織が乱立し互いに対立するという複雑な構図を持っていた。さらに遡った「魔法戦隊マジレンジャー」では単純な悪の組織と割り切れず、「特捜戦隊デカレンジャー」は基本的に単独犯罪者の取り締まり(殲滅)が任務であった。このような流れの中にあって、ガイアークは初期戦隊のような確固とした組織こそ感じられないものの、禍々しい根城があったり、環境破壊という明確なポリシーがあったり、デザインとして悪役に相応しいものだったりと、なかなかの徹底振りだ。「首領」にあたるキャラクターの設定がないのが残念だが、3人の「大臣」はなかなか個性的で、特にケガレシアは久々のセクシー路線復活とあって、悪女振りも徹底している。

 蛮機獣に至っては、「~バンキ」という明快なネーミングが懐かしさすら感じさせ、デザイン、モチーフ共に明確な「環境問題」から拝借。初期戦隊のような何でもアリなケイオスティックな怪人群も見てみたいが、モチーフの統一感はシリーズの統一感につながるため、逆に歓迎されるべき要素であろう。

 第1話全体を見渡すと、アイキャッチに可愛らしいアニメーションを配置するなど(「地球戦隊ファイブマン」で見られた「ファイブくん人形」の試みに近いイメージだが、より作品世界にマッチした印象)の斬新な演出もあるにはあるが、どちらかと言えばスーパー戦隊シリーズへのオマージュがかなり強い。蛮ドーマ軍戦闘機と炎神の、第1話ならではの豪華絢爛な特撮バトルは初期戦隊のメカ戦を彷彿させるし、変身プロセスは「マジレンジャー」や「ボウケンジャー」を想起させる。名乗りのスピーディさとナパーム使用は「科学戦隊ダイナマン」を、エンジンオーのゴーオングランプリは「カーレンジャー」を彷彿させる。また、アクションの組み立て方は「太陽戦隊サンバルカン」あたりの、いわゆる「金田治アクション」が色濃く、メンバーの構成は「超獣戦隊ライブマン」に酷似している。更には、ギンジロー号での移動という点は「忍者戦隊カクレンジャー」の猫丸を思わせるのだ。

 このような既視的スタイルを採りつつも、充分に新しく仕上がっているのはさすがと言うべきだろう。それにはやはり、「ハイブリッド」「3+2構成」など数々の斬新な試みが働いているのは間違いなく、オーソドックスでありながらも1年間のシリーズ展開が実に楽しみだ。

 ちなみに、本作のナレーションはスピードル(浪川氏)が担当しているようだが、今後他の炎神達が担当する可能性もある。状況説明を行うナレーションは最近の特撮TVドラマ全般であまり見られなくなったので、劇中の登場人物によるものだとしても、これはこれでかなり新鮮だ。